2018年4月26日木曜日

2_158 恐竜の卵 2:鳥とワニから

 過去の生物の生態を探るのに、現生の生物の生態の類似性を利用できます。過去の生物にも、そのような生態があったという根拠が必要です。その根拠は化石に頼るしかありません。

 恐竜の卵の温め方に対する報告がありました。名古屋大学の田中康平さんと北海道大学などの研究者と共同でおこなわれ、Science Reportに2018年3月に報告されました。そのタイトルは、

Nest substrate reflects incubation style in extant archosaurs with implications for dinosaur nesting habits

というものです。著者らが示してている日本語訳は、

巣の素材は現生主竜類の営巣様式を反映し、恐竜類の営巣方法に関する見識を与える

とういものです。難しい日本語訳ですが、簡単にいうと、現在生き残っている恐竜の子孫を参考して、恐竜の卵の温め方を推定していこう、ということです。
 鳥類は、恐竜の子孫であることがわかってきたことを、前回紹介しました。生物は、環境によりその生態も形態も変化し、それが進化へと繋がります。しかし、どこかに祖先の特徴や生態を残していることもあるはずです。そんな現在の生物の生態から、過去の祖先への繋がりを見出していきます。さらに、前回紹介した卵の化石の産状を詳しく調べて、恐竜の卵の育て方の様子の痕跡を探っていきます。それらを突き合わせて、もっともらしい卵の温め方を推定していこうというものです。
 まず、現生生物で恐竜の直系の祖先である鳥類から見ていきましょう。鳥類は恒温性の生物なので、卵を自身の体温で温め、孵しています。たとえ南極のような極寒のところでも、親鳥が温めて孵すことができます。
 恐竜の直系の子孫でありませんが、ワニの仲間も「主竜類」という恐竜と同じグループに属します。ですからワニの生態も参考になるはずです。鳥類と違ってワニは変温動物です。親が抱いて卵を暖めることはしません。ワニは水辺の生き物です。以前、フロリダに行った時、みることができたワニの巣は、水辺の近くですが、小高くなった陸地で水に浸からないところに草を盛り上げて、卵を産み付けていました。ガイドの説明では、太陽熱や有機物の発酵熱を利用していとのことです。他にも、地熱を利用する方法もあるようです。
 ところが鳥類の中には、時に子育てで横着をするものもいるそうです。ツカツクリという鳥は、盛り土をして、その中に卵を生みます。親鳥は卵を温めません。しかし、土に含まれている植物が発酵することで盛り土全体が熱を発します。ワニと同じ方法です。他にも、土に穴を掘った砂の中に卵を埋めるものもいるそうです。これは、卵を温める方法として、太陽熱や地熱を利用するものもいると考えられています。
 現生の鳥類やワニ類で卵の温め方を調べ、その結果発酵熱を使う巣では平均で7.3度も気温より高く、地中の砂に埋め太陽熱を利用する巣では平均で3.9度でした。
 つまり、恒温性のない生物でも、気温より卵をの温度を高くして孵す方法があるということです。では、恐竜は本当に、これらの温める方法を利用していたのでしょうか。化石からその根拠を見出すう必要があります。それは次回としましょう。

・主竜類・
本文中で、主竜類という分類をしめした。
主竜類とは、現生の生物では、ワニ、鳥類が
化石生物では恐竜や翼竜が含まれるものです。
爬虫類はもっと上の分類群になります。
ですから、鳥類と恐竜は同じ主竜類で近いのですが、
そのカメと鳥類やワニより
ワニと鳥類の関係の方が近いのです。
ですから、恐竜とワニ、鳥類との関係を調べることは
充分近縁なので、意味のあることなのです。

・週末からゴールデンウィーク・
今週末から、いよいよゴールデンウィークです。
私は、ゴールデンウィークの前半に道内の調査にでます。
観光地からは、はずれたところにいくのですが、
道中の道路の混雑が心配です。
調査地に入れば、混雑はないとは思うのですが。
あとは天気ですが、こればかりは心配してもしかたがありません。
その様子はエッセイで紹介きればと思っています。