2018年2月1日木曜日

6_152 重さの単位 4:プランク定数

 質量の基準を、人工的な物質に頼るのではなく、物理定数に置き換えるために、人工的物質を精度良く測定ることが、おこなわれています。その測定から、定数を正確に決めていくことになります。

 質量を正確に測定するために、同位体組成がはっきりとしている元素(ケイ素)の単結晶の真球を基準にすることにしました。この真球の質量は約1kg、直径は約94mmですが、その質量とサイズを正確にはかっていきます。
 まず質量は、日本のキログラム原器と比較して、超高精度の真空天秤を用いて測定されました。ただし、このケイ素の球の表面には、非常に薄いのですが(数nm程度)の酸化膜などが形成されてしまいます。その膜の厚さと組成を決めて置く必要があります。そのために、X線光電子分光法と分光エリプソメトリーを用いたシステムを開発して、非常に高精度で厚さ(0.1nmの精度)と組成を測定していきます。純粋なケイ素でない部分のデータで測定して、補正をおこなっていきます。
 サイズの測定は、レーザー干渉計という装置を用いています。この装置は、レーザー光線で光の1波長より短いサイズとなる1nm以下を測定することが可能な装置でです。2000箇所(さまざまな方向から)で直径をはかっていきます。その精度は0.6nmになり、これは結晶の原子間の距離にあたるほどのものです。これにより球の正確な体積がわかります。
 もちろん温度が変化すると体積が変動するので、球の温度も精密に測定されています。その精度は、6/10000°Cとなっています。
 皮膜の補正をされた正確な質量、正確な体積から、密度が計算できます。ケイ素の結晶構造とモル質量は、すでに正確に測定されているので、その値を持ちれば、正確な質量が得られます。このようにして求められた精度は、2×10^-8になるといいます。この精度は、1kg当たり24µgになります。これは、国際キログラム原器の現状の精度が50µg程度(5×10^-8)だと考えられているのですが、それより半分以下の精度となります。
 質量を求めるのが目的ではないのです。その精度が重要になります。なぜなら、今回紹介した研究がケイ素の真球をキログラム原器の代わりにしようとするのではないからです。
 長さの単位が、メートル原器から、光が真空中を伝わる⻑さを基準になりました。光速という定数が、長さの基準になっていることになります。質量も同じように、物理定数に基準を移行しようと考えられています。
 その方法には、アボガドロ数に基づくもの、プランク定数に基づくものなど、いろいろなものがあります。アボガドロ数、またはプランク定数が、現在の質量の精度より正確に求められれば、それが質量の基準になるのです。
 今回の研究では、精密な測定からプランク定数を正確に求めることが目的だったのです。2.4×10^-8という精度は、現状では世界最高水準の精度で決定したことになります。キログラム原器以来、約130年ぶりとなる質量の定義が改定できることになります。その決定は、国際的に機関(国際度量衡総会)がおこなわれます。
 2011年10月の国際度量衡総会の時のデータは、当時もっとも精度のよかった値と、2つの測定値が7桁目で異なり一致しませんでした。そのため決定は見送られました。そしてこの会議のとき、「キログラムの大きさは、プランク定数の値を正確に6.62607XX × 10^-34Jsと定めることによって設定される。」ことが決められました。XXのところを正確に決めるということです。プランク定数を正確に決め、そこから質量を定義することにされました。
 今回のデータも含めて、いくつかの測定値をもとにして、今年2018年11月の会議で、プランク定数の値が決定されることになります。

・2月になると・
早いもので、もう2月です。
1月はセンター試験、大学の後期講義の終了、
学科の4年生の卒業研究の報告会、
そして定期試験も終わりました。
次は大学入試の時期となります。
バタバタしていますが、講義がないときなので
隙間時間に仕事ができるのが、ありがたいです。

・ライフワーク・
最近、研究上のライフワークとして
なにを今後していくのかについて再考しました。
そして、いくつかの修正を加えました。
いつもこの時期に自身の研究について
考えることにしています。
そのきっかけは、学内の競争的資金の申請が
この時期にあるからです。
それを獲得するために、
来年度の研究をどうするのかについて考えています。
長期計画と来年度の計画をいつもこの時期におこないます。
なかなか楽しい時期もであります。