2018年12月20日木曜日

2_165 絶滅からの復活 3:厚いK-Pg境界の層

 これまで見つかっているK-Pg境界は、薄い層しかありません。短期間に一気に堆積しているので、時間経過の記録はほどんどありません。今回の試料は、厚くいろいろな記録が残っていました。

【訂正】前回のエッセイで、「K-Pg境界の衝突の堆積物は、ほんの数mmでした」と書いたのですが、「数10cm」の間違いでした。「数mm」は他地域の層厚でした。この地域ではもっと厚くなっています。訂正してお詫びします。

 メキシコのユカタン半島沖の、Site M0077と呼ばれる海底で、ボーリングされたコアによる研究がなされました。研究対象にされたのは、144cm分のコア(core 40 section 1)でした。以下で示す「長さ」は、コアの上部からの深度を意味しています。
 深度110cmまでは、スエバイト(suevite)と呼ばれる岩石でした。スエバイトとは、一部溶けた物質を含んだ岩石で、衝突によってできたものです。灰色の岩石で、上方に向かって細粒化しています。級化組織とよばれるもので、一度の堆積作用により、粗いものから細かいものまで溜まったようです。で、110cmから34cmまでの76cm分は、「遷移帯」と名付けられ、上方に細粒化した褐色で細粒の石灰岩(微晶質方解石質石灰岩、micritic limestone)になっています。ここにも級化組織が見られます。34cmから0cmまでは、まだら状の模様をもった白色の半遠洋性石灰岩となっています。
 この遷移帯が重要なので、詳しく見ていきましょう。遷移帯の下部(110cmから54cmまで)は、明瞭な層構造(葉理と呼ばれます)があり、化石をほとんど含みません。これは、津波や数日後の余波の波の力による底層流によるものだと考えられています。上部は、隕石の破片、微化石(Planolites)や生痕化石(Palaeophycus)を含んでいます。
 遷移帯から上部の半遠洋性石灰岩は、プランクトンを含んでいるので、時代を決めることができます。この石灰岩の最下部から、衝突後、3万年後くらいたった年代の化石が見つかっています。34cm以浅では、通常のプランクトンが復活しています。3万年後には、生態系が復活しているようです。
 世界各地のK-Pg境界の地層の厚さは、数mm程度ほどしかなく、しかも地層として成層しているわけでもなく、時間変遷を調べることができところがほとんのようです。それに対して、今回、ボーリングがおこなわれたグランド・ゼロでは、スエバイトと76cm分の遷移帯(34cmまで)までが、K-Pg境界時に形成されたと考えられます。スエバイトも遷移帯も級化組織があるので、衝突による直接の擾乱による堆積作用と、その直後に起こった堆積作用という2度の記録を残していると考えられます。短期間に堆積したものですが、時間経過を記録しているとみなせます。この地層を詳しく調べると、衝突その直後の様子がわかりそうです。
 そこからわかったことは、次回としましょう。

・寒暖差・
週の後半から週末にかけて大雪になりました。
ところが、週初めに雨となりました。
雪が残っているところに雨だったので、
道路が非常に滑りやすく、何度がすべってしまい
歩くのが怖いほどでした。
今年は本当に気温の変化が激しいようです。

・年末には・
わが大学の講義は今週で終わりです。
その後は祝日を挟んで補講日が続くのですが、
実質的な講義は、今週までなので一段落です。
私は、年末をあまり気にしないで、
通常通り仕事をしていく予定です。
長男は帰省しないようですので、
一人少ない家族での年越しとなります。

2018年12月13日木曜日

2_164 絶滅からの復活 2:生態系の回復

 K-Pg境界の大絶滅は、絶滅のシナリオについての議論は多くあるのですが、生態系の回復過程については、あまり多くは語られていません。今回の報告は、生態系の回復についての報告となっています。

 K-Pg境界の大絶滅については、このエッセイもで、何度か紹介したことがありました。今回のエッセイは、その後の生態系の回復についての報告の紹介でした。
 生物の絶滅、それも大絶滅を起こすには、ある一定の期間、異変が継続する必要があるはずです。動物だけでなく、植物も大絶滅しています。植物は種子で少々の期間であれば環境異変をやりすごすことができます。すぐに異変が終わり、環境が復元すれば、種子が発芽できるので回復できてしまいます。ですから、多くの植物種までも大絶滅するには、種子も発芽できずに、死に絶えるような影響が、一定期間継続している必要があります。
 原因となる衝突は一瞬のできごとでしたから、そこから引き続き起こされた現象が、継続したり連鎖したりするような絶滅シシナリオが必要になります。多くのシナリオでは、そのような長期の影響を想定していました。
 さて、絶滅からの生態系の回復は、地域によって差が生じたと考えられていました。特にグランド・ゼロ周辺では、生態系の回復も遅れたと考えられています。なぜなら、激しい衝突で発生した熱によって、大規模な熱水活動も起こり、重金属などの有害成分が海洋中への大量に放出されました。それに、なんといっても、直接、生態系が完全に破壊されたため、回復が遅れたと考えられています。
 隕石衝突のグランド・ゼロでは、直径200kmほどのクレーターができました。生態系の完全な壊滅によって、クレーター内では特に生態系の回復が遅れたと考えられています。クレーター内でもとのような生態系が回復するには、30万年ほどの期間が必要だったとされています。
 今回の報告は、生態系の回復に新しい解釈を示したものでした。その対象とした地域がグランド・ゼロ地点でした。もし、グランド・ゼロでの回復期間が推定できれば、他の地域では、それよりもっと早く回復したと考えられます。
 今回の報告は、グランド・ゼロでの地質調査に基づくものです。衝突地点は、海なので、国際深海科学掘削計画(IODP)で海底のボーリングがなされました。メキシコのユカタン半島北部の沖あいで、800mのコアが掘られました。そこから、K-Pg境界をまたいで1mのコアを詳しく調べられました。コアのデータから、生物の回復を期間を探ろうというものでした。K-Pg境界の衝突の堆積物は、ほんの数mmでした。そしてそれより上の数日から数年分の堆積物から、海底環境の変化を探ることになりました。その詳細は、次回としましょう。

・厳冬期仕様・
北海道では、何度かの寒波の襲来がありました。
間に非常に暖かい時期もありましたが、
大雪が降って、真っ白な冬景色になりました。
何度か除雪も入りました。
私も完全な厳冬期仕様になっています。
今年は、少々、遅めの白銀の世界でしたが、
北海道らしい冬到来となりました。

・来年に向けて・
大学は来週でレギュラーの講義が終わり、
それ以降は補講の期間、そして冬休みとなります。
推薦入試も終わり
1月のセンター試験と一般入試に向けて
ちゃくちゃくと準備が進んでいます。
もちろん試験を実施する大学では
教職員ともども、その準備が行われていきます。
師走ですが、来年に向けて準備が進んでいます。

2018年12月6日木曜日

2_163 絶滅からの復活 1:グランド・ゼロ

 白亜紀末の恐竜の絶滅は、地球の歴史、生命の歴史において、大きな事件でした。事件のあったことは、多くの証拠から検証されています。しかし、絶滅に至るシナリオ、絶滅からの復活のシナリオは、まだ十分ではありません。

 白亜紀末、K-Pg境界と呼ばれる時代の恐竜絶滅の事件は、多くの人がよく知るものになっています。それは長年かかって、研究者たちが作り上げ、普及してきた結果でもあります。恐竜だけでなく、その時生きていた生物も同時にたくさん絶滅したこともご存知だと思います。生物の絶滅率は、約76%に達したと考えられています。絶滅率とは、個体数ではなく、生物種が76%と絶滅したいうものなので、非常に大変な絶滅になります。
 絶滅の直接の原因が、隕石の衝突によるものであることも、よく知られていることでしょう。衝突した隕石は、直径10kmほどで、メキシコのユカタン半島の北の海に落ちました。その衝突によって、激しい衝撃波、さまざまな放出物(高温高圧で変形したり、変成したり、溶けたりしたものも含みます)、想像を絶する大津波など、人類がこれまで経験したことのないスケールの現象が、いろいろと起こりました。もちろん、衝突とその時の激しい現象から派生したさまざまな異変、例えば大規模な森林火災(日本でもススの地層が見つかっています)や酸性雨、太陽光の遮蔽(長期の暗闇)など短期の異変から、長期におよぶ気候変動など、さまざまな時間スケールの異変があったと考えられています。
 絶滅は、陸だけでなく海でも、また他の大陸でも起こっているので、さまざまな場や環境へ、それも広域にダメージが及んでいます。絶滅の原因が隕石の衝突という瞬間的な事件なので、地球史的には短期間に激しい天変地異があったことが伺われます。非常に興味の湧くテーマですが、そのシナリオはまだ完成していません。
 さて、今回紹介するのは、絶滅のシナリオではなく、絶滅からの生物種の復活に関する新しい見解です。論文は、今年の5月に権威のある科学雑誌、Nature(オンライン版)に報告されました。論文のタイトルは、
Rapid recovery of life at ground zero of the end Cretaceous mass extinction
(白亜紀末のグランド・ゼロでの生命の急激に復活)
というものでした。
 グランド・ゼロという言葉は、2011年のアメリカ同時多発テロ事件、9.11で倒壊したワールド・トレード・センターの跡地をそう呼んだので有名になりました。しかし、もともとは英語で、爆心地を意味する言葉です。特に、核兵器(原子爆弾や水素爆弾)など、巨大な爆弾による爆心地をいうことが多いようです。広島と長崎の爆心地も、グランド・ゼロと呼ばれています。K^Pg境界の衝突の爆心地も、グランド・ゼロとなります。
 グランド・ゼロで、生物が急速に復活しているという報告でした。詳細は次回以降としましょう。

・K-Pg境界・
K-Pg境界は、もともとはK-T境界と呼ばれていました。
しかし、地質学の学界で、時代名称として
第三紀(Tertiary)が使わないという決定がでました。
第三紀が消え、古第三紀と新第三紀に区分されました。
そのため、K-T境界は、
白亜紀(Cretaceous)-古第三紀(Paleogene)となり、
現在では、K-Pg境界と専門家では呼ぶようになりました。
まだ普及していないかもしれませんが、
専門家はこの時代名称を使い続けていく必要があります。
根気強く使い続けていれば、隕石による恐竜絶滅のように
やかがては、市民に普及していくはずです。
本当は、恐竜絶滅の時にK-Pg境界を
使っていればよかったのですが・・・。

・冬への身構え・
今年の北海道は、冬の到来が遅かった分、
寒さへの体の対応も少々遅れ気味です。
初冠雪や里への初雪で、冬の到来を感じます。
ただし、体の方は、少々鈍感で、
寒波が来ると体にも冬の到来が伝わるようです。
ですが、何度か積雪、そして何度かの寒波がありました。
冬が到来したことを、体も理解したようです。
寒さに対して、心構えと身構えもできました。

2018年11月22日木曜日

3_175 マントル内の水 3:SPring-8

 今回の報告は、ダイヤモンドアンビルという小さな装置で、非常に小さい部分でなされた実験でした。その微小部分の結晶を調べるために、世界最大のエネルギーを発生できる、最高の装置で分析しています。

 ダイヤモンドアンビルは小さい装置ですが、非常に高圧を発生することができます。ただし、前回紹介したように、高圧を発生は、ダイヤモンドの先端を少し平らにしたところだけです。非常に小さい場でしか高圧を発生できません。できる結晶も非常に小さいものとなります。それでも、ダイヤモンドを使うメリットがあるからです。ダイヤモンド特有の性質があることで、その場観察ができることです。
 ダイヤモンドは、硬いだけでなく、透明な結晶です。透明ということは、光を通すことになります。通常の可視光だけでなく、レーザー光線やX線なども通します。レーザー光線は、光を通さない物質を高温にすることができます。また、X線は結晶構造を調べるために利用されています。
 レーザー光線を絞れば、小さい部分を高温にすることができます。レーザー光線は比較的小型の装置でも発生できます。レザーポインターを想像すればいいでしょう。もちろん、高温にするために大型になりますが。レーザー光線は、光を似た性質があるので、レンズで絞ることができます。ダイヤモンドは透明ですので、狭い部分であっても、絞ったレーザー光線を当てることで、高温が発生できます。
 ダイヤモンドアンビルでは、ダイヤモンドの先端で高圧を発生し、絞ったレーザー光線を当てることで高温にできます。その高温高圧の状態、つまりマントルの条件を、手軽につくり出すことができる装置です。
 結晶構造はX線で調べることができ、X線が強ければ強いほど、より詳細に調べられます。小さな結晶の構造を調べるには、X線のビームの直径を小さく絞る必要があります。ここに問題があります。X線のビームを絞ると、断面積に反比例して強度が低くなります。つまり絞れば絞るほどX線の強度は弱まっていきます。
 絞ったX線で強度を出すためには、非常に強度の大きい、つまり相当大きなエネルギーをもったX線を発生しなければ、小さく絞ることができません。それを満たすのが、SPring-8なのです。
 SPring-8の加速器では、電子を加速して貯蔵することができます。加速した電子を、磁場で曲げると電磁波やX線が発生します。電子が高速であればあるほど、強いX線が発生できます。SPring-8は、周囲1436mもある大きな加速器です。世界最長のもので、発生するエネルギーも世界最大となっています。SPring-8では、X線を1μm以下に絞ることができます。このサイズのX線ビームであれば、ダイヤモンドの先端に、高温高圧でできている状態のままで、結晶の構造を調べることができます。
 これが、今回の実験に用いられた装置と仕組みとなります。2つのダイヤモンドの先端でおこなう非常に小さな実験ですが、それを分析する装置は世界最大のものとなっています。日本でしかできない実験なのです。

・里の雪・
山は何度も積雪がありました。
でも、里の雪はまだです。
火曜日の朝、少し雪がちらついていたのですが、
積もることはありませんでした。
何度も天気予報では、降るといっていても
雪がないほうが、楽なのですが、
あまりに降らないと少々心配するのは、
いかがなものでしょうか。
このマガジンは火曜日の朝、書いて送信しています。
寒波がきているようなので、
火曜日の夜以降、雪が降るかもしれませんね。

・次なる構想へ・
2つ目の論文が一段落がつき、
3つ目の論文はデータが集まっていなので、
空白の期間ができました。
ですから、例年より少々早めに
次なる著書の準備をはじめました。
あるソフトで作ったもので、
本のときは他のソフトでつらなければなりません。
そのために、まずは図表の移行です。
大量の図があるので、その整理から始めています。
それと共に骨子も考えていきます。
量が多いと大変なのですが、楽しくもあります。

2018年11月15日木曜日

3_174 マントル内の水 2:理論計算とダイヤモンドアンビル

 水酸化鉄が高圧でも結晶として存在できることを発見できたのは、日本が誇るスーパーコンピュータ京でのシミュレーション、ダイヤモンドアンビルで高圧を発生した実験、強力な放射光を発生するSPring-8で分析したものでした。

 前回、マントルに水酸化鉄が存在するという報告をお話しました。この報告を発表したのは、愛媛大学の西真之さんと共同研究のチームで、最先端の装置を用いたものでした。最先端の装置とは、京(けい 神戸市の理化学研究所計算科学研究機構 かつては世界最速を誇ったスーパーコンピュータ)、ダイヤモンドアンビルやSPring-8(兵庫県播磨科学公園都市の理化学研究所・播磨研究所 大型で強力な放射光を発生する装置)などを用いた研究でした。その概要を紹介しましょう。
 水酸化鉄は、鉄を含む岩石が水と反応したときできる鉱物です。水酸化鉄は、玄武岩などで簡単に形成され、比較的低圧で安定に存在する鉱物です。水酸化鉄は、これまで高圧になると分解すると考えられていました。しかし、京を用いて理論計算をしていくと、水酸化鉄は高圧(80万気圧付近)でも分解することなく、より高圧で存在できる結晶構造(パイライト型)に変るという結果がでてきました。
 理論計算(第一原理計算と呼ばれています)では、物理条件によって結晶構造が安定かどうかをシミュレーションしていく方法です。量子力学の理論に基づく複雑な計算なのですが、コンピュータの計算能力が上がったことで、より正確に計算できるようになりました。その結果、水酸化鉄は高圧で分解することなく、別の結晶型になって存在できる可能性がでてきました。あとは、実際に実験で確かめる必要があります。
 高圧でできる結晶ですから、高圧状態にしたまま、結晶構造を調べるという技術が必要になります。そこに登場するのが、ダイヤモンドアンビルとSPring-8という装置です。
 ダイヤモンドアンビルの「ダイヤモン」とは宝石のダイヤモンドのことで、「アンビル」とは台座のことです。ダイヤモンドアンビルは、2つのダイヤモンドを台座にした高圧発生装置です。ダイヤモンドの先端を少し平らにしておきます。先端同士を合わせて、平らなところに試料を入れて高圧を発生する装置です。装置自体はシンプルなものです。
 ダイヤモンドアンビルの原理は、平底の靴とハイヒールのカカトで足を踏まれたときの違いを想像するとわかりやすいです。同じ体重であっても、ハイヒールのように尖ったカカトで踏まれるので、非常に痛くなります。これは、同じ圧力(体重)であっても、面積が小さければ小さいほど、大きな圧力を発生することになります。その圧力の発生の原理を、本物のダイヤモンドを使っておこなった実験となります。
 ダイヤモンドを使うのは、SPring-8の能力を使うためです。その内容は、次回にしましょう。

・例年とは違う天候・
北海道は、寒暖が繰り返しています。
黒岳には、例年に比べて早い初雪ありました。
私の町から見える山並みにも、少し前に冠雪があり、
その後も何度か山には降雪はありました。
里では、まだ初雪がありません。
これは、かなり遅い記録となっているようです。
先週末には日高に野外調査にいったのですが、
雪がなくて助かりました。
今年は、夏の天候も、台風襲来も、初雪も、
例年とは少々違っているようですね。

・頭を使っている・
今年は研究がはかどっています。
論文を書く時は、頭は休むことなく働き続けています。
頭は、睡眠をとることで休めることができます。
最近、論文を書き続けているので、
頭を使っているためでしょうか。
朝までぐっすり寝れます。
もしかしたら、老化かも。

2018年11月8日木曜日

3_173 マントル内の水 1:水酸化鉄

 地球深部は、興味深いとろこです。しかし、実際に掘って試料を入手できるのは、ほんの一部です。工夫をして調べるしかありません。実験室で高温高圧条件をつくりだし、深部を再現するという方法があります。

 少々古い記事ですが、2017年7月のイギリスのNature誌に掲載されたものですが、地球内部の水の挙動に関する論文があります。
  The pyrite-type high-pressure form of FeOOH
  (水酸化鉄(FeOOH)のパイライト型高圧型)
というタイトルです。水酸化鉄という化合物が、パイライト型という結晶構造で、高圧で安定に存在することがわかったということを報告しているものです。タイトルは、シンプルなのですが、実は複雑な内容でもあります。
 この水酸化鉄は、結晶ですが、鉱物名がついていないのは、天然の鉱物として見つかっていないためです。水酸化鉄でもいろいろな結晶型があってもいいのです、今回はパイライト型の結晶であることがミソです。
 パイライト(pyrite)とは、黄鉄鉱という鉱物で、化学組成はFeS2です。結晶の形としては、六面体や八面体、正十二面体などになりますが、今回の水酸化鉄では、八面体になっています。今回報告されている水酸化鉄では、正八面体内部の中央に、鉄原子が存在し、6つの角にあたるところに、酸素原子が4つ、水素原子が2つがあります。鉄の周りの酸素と水素の原子の数が、化合物の2倍になっていて少々ふしぎです。それらの元素は、隣の正八面体と共有しているので、実質は半分になるので、鉄原子1個に対して、酸素原子2個、水素元素1個の比率になり、FeOOHという結晶式となります。
 実はこの水酸化鉄は、2016年のNature誌で、マントル深部では、水素と酸化鉄に分解すると報告されていました。今回の報告は、分解せずに安定に存在することがわかったというものです。
 では、この水酸化鉄が、高圧で安定であるということに、どんな意味があるのでしょうか。また、その結晶の形が高圧で存在するはずのものなのに、どうしてわかったのでしょうか。次回以降紹介していきます。

・最後の野外調査・
先週末、2泊3日で、
日高地方へ今年最後になる野外調査にでました。
静内、浦河、様似、えりも、広尾と
日高山脈のふもとを襟裳岬を経てまわりました。
帰りも大樹から浦河に抜ける天馬街道を通りました。
幸い天気には恵まれ、
非常の気持ちのいい調査になりました。
山は紅葉は終わっていましたが、
裾野では、まだ紅葉が残っていました。
心地よい天気で野外調査ができました。
精神心的にリフレッシュしました。
肉体的に結構つかれましたが。

・3つの論文・
現在、論文3編を抱えています。
今月締切の論文が2編(A論文、B論文)、
1月締切りのものが1編(C論文)あります。
今月のA論文は現在推敲中で、時間さえあれば
今週中に投稿できると思います。
なんとか予定通りに進めたいものですが。
B論文の骨子はでき、データも揃いつつあります。
あとは書く時間がとれるかどうかが勝負です。
これは、自分で工夫、優先順位をつけて
都合つけるしかないですね。

2018年11月1日木曜日

2_162 ムカワリュウ 3:ティラノサウルス

 2016年に発見された1個の化石は「ムカワリュウ」と呼ばれました。ムカワリウは、ティラノサウルスの仲間であったことが、2018年6月に発表されました。この1個の化石が意味することはどんなことでしょうか。

 2016年6月に北海道の中央に位置する芦別市から、「ムカワリュウ」が発見されました。2018年6月にその内容がやっと発表されました。化石の出た地層は、エゾ層群の羽幌川層でした。時代は白亜紀後期コニアシアン(8630万~8980万年前)です。
 この地層からは、サメの歯の化石や貝化石もでていましたが、2016年にアマチュアの人が、これまでにない化石を発見しました。長さ9cm、高さ6cm、幅5cmほどの円柱形で、かなり大きなもので、動物の脊椎の骨のような形でした。北海道大学と三笠市立博物館が、この化石を調べました。形だけでなく、CTスキャンで内部構造も調べたところ、脊椎の骨のうち、円柱形をしている「椎体」であることがわかりました。サイズや形から、体長6メートルほどの中型のティラノサウルス類のものの可能性が高いことがわかりました。
 発見された地層のコニアシアンという時代は、ティラノサウルスがあまり見つかっていない時代でした。そして、ティラノサウルスが大型化していく時代でもありました。両方の意味で、重要な化石であると考えられています。
 日本では、20世紀後半から化石が見つかりはじめます。化石は過去に生きていた生物が、土砂に埋もれていくわけですから、近年に化石が増えたわけではありません。見つかる機会が増えたことになります。20世紀後半は、日本各地で開発が進み、それまで人があまり入ってこなかったところが切り拓かれていき、道路が山間にも入り込み、これまで人目に触れていなかった地層が調べられるようになったからでしょうか。そんな地層の中に、恐竜が生きていた時代にできた地層もありました。
 21世紀になると、化石の詳細な記載が日本人研究者から発表されるようになってきました。これは、海外などで経験を積んだ日本の研究者の育成が進んできたことを表しているのでしょう。日本の身近なところから恐竜化石が見つかるようになり、その化石がすぐに研究者に渡り調べることができるシステムが完成してきました。日本でも恐竜を研究できる環境も整ってきて、後進の育成も進んできた結果なのでしょう。
 今後も化石の発見の機会は増えていくのでしょうが、それが恐竜のような重要な化石であれば、しかるべき研究者が研究されるシステムができてきました。これからは、重要な化石はすぐに記載が進んでいくでしょう。

・野外調査・
今週末、日高山脈を浦河から襟裳岬をまわり
広尾まで抜ける調査にでます。
できれば、もう一度、野外調査に出たいのですが
そろそろ雪が季節なので
今シーズンの最後の調査になるかもしれません。
自家用車は冬タイヤにはしていますが、
峠で雪が降る時期は、野外での調査は厳しくなります。
今年は、いろいろな事情から
野外調査を道内で何度も行うことになりました。
道南を主にして、他にも道央、そして今回の日高など、
7回の調査を週末を使って行いました。
その多くは、2泊3日ででかけました。
往復にそれなりの時間がかかるので
短期の調査ではロスも多いですが、
大学の講義を休むことなく、気軽にいけます。
また時間調整をしなくてもいいし
時期が限定されることもないので楽でした。

・季節感・
いよいよ11月です。
雪虫も何度か飛びました。
手稲の山並みも、冠雪はまだみていません。
わが町で初霜はありましたが、初雪はまだです。
黒岳の初雪は早かったのですが、
里の雪は遅いようです。
大学では推薦入試の季節に入ります。
後期の講義も半ばになってきました。
大学ではいくつかの年中行事があるので、
季節に変動あっても、季節感は感じます。

2018年10月25日木曜日

2_161 ムカワリュウ 2:手取層群

 もっとも有名な恐竜はティラサウルスでしょうか。北米大陸で主に見つかっていました。20世紀末あたりから、日本や中国でも見つかってきました。それらの発見で、ティラノサウルスのルーツは、アジアであることがわかってきました。

 1978年の岩手県でのフタバスズキリュウの発見以降、1980年代になると、熊本県や群馬県でも、恐竜の化石が次々と発見されてきました。石川県・富山県・福井県・岐阜県にかけて広く分布する手取(てどり)層群という地層が注目されていました。
 手取層群は、中生代のジュラ紀中期から白亜紀前期(約1億8000万年~約1億2000万年前)にかけて堆積したものです。この時期、日本列島は、まだ大陸の一部になっており、ユーラシア大陸の縁に位置していました。手取層群からみつかっていた植物化石は、高緯度地域の温暖で湿潤な環境で育つものでした。
 1999年、福井県の手取層群から見つかった、1本の歯の化石の記載報告が出されました。この歯の化石は、肉食の恐竜のティラノサウルスの仲間のものということがわかりました。
 ティラノサウルスは、北米大陸で立派な化石が多数産するので有名です。ティラノサウルスの仲間は、白亜紀の終わりの北米大陸で広く繁栄していました。最も古い化石は、白亜紀後期までしか遡りませんでした。北米大陸で、独自に進化していた可能性もありました。
 石川県の手取層群からも、類似のティラノサウルスの仲間の化石がみつかってきました。手取層群の堆積時には、ティラノサウルスの仲間が多数生息していた環境であたことがわかってきました。
 さらに、類似の肉食恐竜の化石が、中国の遼寧省からも発見されています。ユーラシア大陸の東部には、ティラノサウルスの仲間が広く生息していたことになります。北米大陸でティラノサウルスの仲間が繁栄していた白亜紀後期よりずっと以前、白亜紀前期には、ユーラシア大陸ですでに出現していたいたことになりました。
 白亜紀後期初頭、アジアと北米両大陸が陸続きになったことがわかっていますので、その時、ティラノサウルスたちは北米大陸に渡っていったと考えられるようになりました。
 現在では、日本では、恐竜化石の産地は、15都道府県で30地点以上あります。今回、北海道芦別市で2016年に見つかった恐竜の化石は、ティラノサウルスの仲間の化石でした。地層は、手取層群より新しい白亜紀後期(8630~8980万年前)の地層からでした。その詳細は次回としましょう。

・残念・
先週末、道南へ調査にでかけました。
今回の調査は、好天に恵まれました。
秋の盛りの素晴らしい景色の中、
3日間かけて、道南で野外調査をしました。
天気と景色は最高だったのですが、
調査の成果は今ひとつでした。
予察で見かけていた地層を調査したのですが
思っていたほどのものではありませんでした。
もう一つ、もしかしたらと思っていたものがあったのですが、
そちらは変成作用を強く受けていたので、
やはり目的にはかないませんでした。
なかなか、こちらの思っているように
自然は胸襟を開いてくれないですね。

・冬へ向かって・
調査から帰ったら、急に天候が荒れてきました。
冷え込みはそれほどではないのですが、
風が強く、雨も混じっています。
これでわが町の、紅葉も一気に終わってしまうのでしょうか。
雪虫は、わが町で大量発生は見れませんでしたが、
道南でみることができました。
雪虫をみると、秋の終わりを感じます。
先日、自家用車を冬タイヤにしました。

2018年10月18日木曜日

2_160 ムカワリュウ 1:1934か1978か、それとも21

 恐竜の化石の発見は、日本でも最近はよく聞くニュースとなりました。しかし、化石の発見は、ほんの40年ほど前のことです。恐竜研究や研究者養成は、もっと後のことでした。

 かつて日本では、恐竜の化石はほとんど見つかることがなく、恐竜発掘や研究は欧米での話だと考えられていました。ですから、恐竜研究をしたければ、アメリカやヨーロッパにいって、そちらの標本を借りて、研究しなければならない状況でした。日本では、恐竜の研究者も少ない状態でした。
 日本で最初の恐竜の発見は、1934年のことでした。北海道大学の長尾巧教授のもとに、恐竜の化石が発見されたという一報がありました。場所は、当時日本領であった樺太の川上炭坑(現シネゴルスク)の病院の建築現場でした。化石を取り出すために、建築中の病院を壊しています。3年かけて発掘した結果、全身の60%(40%とも)の骨が発掘されました。今でも、日本でもっとも保存状態のよい恐竜化石となっています。
 その恐竜は、ニッポノサウルス・サハリネンシス(Nipponosaurus sachalinensis)として、1936年に報告されました。通称、ニッポノサウルスという名称と呼ばれています。しかし、この化石の詳しい研究は、ほとんど進められることなく、北大に埋もれたままになっていました。その後、2004年に再び研究されて、ハドロサウルス科の恐竜で、大人になる前のもの(2歳~3歳の亜成体)だとわかりました。復元骨格のレプリカがつくられ、現在では、北海道大学総合博物館と国立科学博物館に展示されています。
 樺太は当時日本領だったのですが、現在はロシア領になっています。ですから、日本産とはいいづらいものがあります。
 日本国内での発見は、1978年、岩手県岩泉町茂師(もし)で発見されたフタバスズキリュウ(学名:Futabasaurus suzukii フタバサウルス・スズキイ)です。首長竜のプレシオサウルスの仲間です。上腕骨が発見され、発見場所にちなんでモシリュウと呼ばれています。これも、2006年に佐藤たまきと真鍋真主、長谷川善和館さんたちが記載して、新属の新種の首長竜と判明しました。
 最初の恐竜の発見が40年前のことですから、日本の恐竜発掘の歴史は、浅いものです。また、恐竜の記載の状況を見ると、恐竜の研究者も、21世紀になって、やっと何人も育ってきたように見えます。今では、日本各地から恐竜の化石が、各地で研究者が育ってきました。

・復元骨格・
ニッポノサウルスの復元骨格には、少々、思い出があります。
当時国立科学博物館の地学部長をされておられたSさんと
ある学会誌で博物館の特集を組むことになりました。
その時、一緒に編集作業をしているとき、
Sさんから、国立科学博物館で
ニッポノサウルスのレプリカを作成している
という話を聞きました。
それはいい思い、二人で相談して、
その特集の表紙をニッポノサウルスの復元骨格で飾ることにしました。
その表紙は、なかなかいい出来だったと思っています。

・雪虫・
北海道は、ここしばらく、
はっきりしない天気が続いています。
一日のうちで、晴れたり、曇ったり、
雨が降ったり、それが繰り返されます。
先日の晴れた日の夕方、
今年はじめての雪虫を見ました。
しかし、大量発生ではなく、少ない数でした。
雪虫が飛ぶと初雪が近いと言われていますが、
今年の秋の深まりは、人にも雪虫にも、
ややこしいようです。
でも、着実に、冬は近づいています。

2018年10月11日木曜日

6_157 TESS 3:ミッション

 新しい宇宙望遠鏡には、新たなミッションが託されます。その結果は、科学者の期待を裏切るほどであって欲しいものです。TESSの主たるミッションは、地球のような惑星が、特別なのか普遍的なのか、を検証することです。

 TESSは、Transiting Exoplanet Survey Satellite、「トランジット系外惑星探索衛星」の略なので、トランジット法を用いて系外惑星を見つけようというものです。トランジット法とは、惑星が恒星の前を通るときの明るさの変化をとらえるものでした。宇宙空間ですから、大気の影響を受けないで精度良く観測できます。
 最後に、TESSのミッション(使命)について、説明をしていきましょう。TESSは、安定してはいるのですが、不思議な軌道を用いています。月の共鳴軌道と呼ばれるもので、大きな楕円の軌道で、月によって安定したものだそうです。これまで使われたことがない軌道でが、地球からかなり離れたところめぐります。そのため、地球近辺のデブリや大気の影響で、観測装置や本体の損傷が最小限になると考えられています。
 この軌道で、13.7日ごとに地球に近づくことになります。そのため、観測データを近づいた時、3時間ほどで一気に送信する仕組みとなっています。4台のカメラで、最初の1年は南天を、あとの1年は北天を観測して、全天のほとんど(85%)を網羅することが、ミッションになっています。
 探査は、主系列星の恒星を対象にしています。主系列星でも、太陽に似たG型と赤色矮星(M型矮星)やそれに近いK型を中心に観測されます。赤色矮星とは、私たちの太陽より暗く小さい天体なのですが、その数は非常に多くなります。惑星で、恒星に近いところを巡っているのものが、見つかりやすくなります。赤色矮星でそのような軌道の惑星であれば、表面に水がある可能性が高くなります。
 TESSのミッションでは、太陽系に近い(地球からおよそ300光年以内)、50万個の恒星が対象になり、これまで見つけることが難しかった、地球程度のサイズの惑星で、比較的長い(2ヶ月)の公転周期の天体なども見つけられるのではないかと考えられています。
 TESSの最初の写真が、2018年5月に送られてきました。そこには、ケンタウルス座近辺の天体が20万個以上写っているそうです。ケプラー宇宙望遠鏡は、多様な系外惑星の発見し、私たちの太陽系が、惑星系の典型ではなく、多様性の一つに過ぎないことを教えてくれました。TESSでは、地球のような水や生命が存在しうる惑星が、特別なのか、普遍的なのかを教えてくれることが期待されます。今後も注目していきたい話題です。

・秋めいて・
北海道は、秋が本格的になってきました。
日が出ているうちは、室内は暑いくらいでしたが、
日が陰ると、一気に肌寒くなりました。
先日の日曜日、自宅で、はじめてストーブを焚きました。
しかし、2時間ほど焚いたら、暖かくなったので切りました。
そんなストーブを焚いたり消したりの日々が
少しずつ増えてくる季節になりました。
いよいよ秋が深まってきました。

・入試・
大学は、入試が始まっています。
AO入試は9月から始まっていますが、
いよいよ本格的になります。
続いて、推薦入試、そして一般入試となります。
来年度から新しく大学入試共通テストが実施されるのですが、
今年の11月には、そのプレテストが行われます。
高校2年生が対象のプレテストとなります。
まだ私たちには、、詳細は知らされていないので、
どのようになるのでしょうかね。

2018年10月4日木曜日

6_156 TESS 2:ケプラー宇宙望遠鏡

 宇宙からの観測は、費用がかかるし、動かすためのエネルギーも必要だし、メインテナンスもできないし、などという欠点は多々あります。大気の影響がないという点は、非常に大きなメリットになっています。

 前回は系外惑星の最初の発見の経緯を紹介しました。1995年の最初の発見を契機に、次々と新しい惑星が見つかってきました。最初の発見は、前回説明したようなドップラー法でしたが、惑星が恒星の前を通るときの明るさの変化をとらえるトランジット法、手前の天体の重量により実際より明るく見える効果を利用する重力レンズ法、などいろいろな方法でも、系外惑星が発見されるようになってきました。
 地表の望遠鏡を用いた系外惑星の発見を受けて、2009年に、NASAはケプラー宇宙望遠鏡を打ち上げました。大気の影響のない宇宙空間から観測をするためです。ケプラーは、恒星の明るさの変化を調べるトランジット法で観測をおこないました。惑星の存在や特徴も調べていくものです。
 当初の運用計画では、3年半で10万個の恒星の観測をすることになっていました。その結果、多数の4000個以上の惑星候補を発見しました。惑星候補とは、今後検証が必要ですが、惑星の存在の可能性を捉えたということです。今後の詳細な観測で確定してくことになります。
 運用期間を5年以上も過ぎた2018年には、推進剤がなくなりそうなので、観測は休止になりました。しかし、2016年5月15日までに、2325個の系外惑星を発見しています。大きな成果となりました。
 多数の系外惑星の発見から、多様な惑星系ががあることわかってきました。多様な惑星として、ホット・ジュピター以外にも、特異な軌道を持つもの(エキセントリック・プラネット、逆行惑星)、木星より小さい海王星サイズの惑星(ホット・ネプチューン)、地球の数十倍から数倍のサイズの惑星(ミニ・、ネプチューン、スーパー・アース)、そして地球に似た惑星、水がありそうな惑星(海洋惑星)など、多様な惑星が発見されてきました。私たちの太陽系の惑星は、多様な惑星系のひとつに過ぎなかったのです。
 宇宙からの観測は、非常に有効であることが、ケプラー望遠用によって、証明されました。そこで次期の宇宙望遠鏡としてTESSが打ち上げれました。詳細は、次回としましょう。

・台風の影響・
10月になり、北海道は秋めいてきました。
ただし、不順な天候もあり、
紅葉の進み具合があまりよくないようです。
先週末に調査にでたのですが
台風の影響で、2泊のところを1泊にしました。
札幌周辺は台風の影響はほとんどなかったのですが、
大雪から十勝にかけてはなかり雨が降ったので、
途中で中止してよかったです。
今週末にも、また台風が・・・

・はやぶさ・
宇宙望遠鏡は、手間も時間もかかる観測になります。
アメリカのように国力ある国では
一国で打ち上げ、運用することできます。
日本では、一機ずつの費用を抑えて、
特化した目的での観測となります。
はやぶさ、はやぶさ2などはその典型でしょう。
最近は、はやぶさの調査も気になっています。

2018年9月27日木曜日

6_155 TESS 1:ペガスス座51番星b

 私たちの太陽系以外の惑星を、系外惑星と呼びます。1995年以来、多数の系外惑星が見つかってきました。もっと多数の惑星が見つかる探査が、はじまっています。系外惑星の新しい探査も含めて、紹介していきましょう。

 私たちの太陽系は、地球が属している恒星系のことをいいます。私たちの銀河には、数千億個の恒星があります。しかし、1995年まで、私たちの太陽系以外で惑星の存在は確認されていませんでした。
 1995年10月6日、マイヨールとケローにより、太陽系以外の恒星からはじめて惑星が見つかりました。木星サイズの惑星でした。この惑星は、ペガスス座51番星bと命名されました。惑星サイズは木星の半分ほどで想定内でしたが、その軌道が天文学者の予想を裏切る特異でした。太陽からの地球の距離を単位(auと略されています)であわらすことがあるのですが、その単位でみると、ペガスス座51番星bは0.05auのことろでした。太陽系で一番内側にある水星が0.387auですから、それよりずっと太陽に近いところに惑星があったのです。これは予想外の発見でした。
 太陽に近いため、惑星の環境は非常に暑いものとなります。大きさが木星のサイズで、なおかる暑いので、「ホッと・ジュピター」と呼ばれるようになります。
 この発見で、太陽系外に惑星が存在することは、私たちの惑星系が銀河や宇宙内で、特別なものではない可能性を示したことになります。他にもいろいろな影響を与えました。その後、一気に系外惑星の発見が相次ぎました。
 太陽系外で惑星を探す方法にはいくつかあるのですが、この発見は、恒星のふらつきを観測するものです。そのふらつきは、波長伸び縮みを観測することで、惑星の存在を間接的に推定するものです。ドップラー法と呼ばれています。この方法では、恒星の近くを巡る惑星、質量の大きな惑星が発見されやすくなります。ペガスス座51番星bはその条件を満たしていました。
 ただし、太陽系の例から、質量の大きな惑星の公転周期は年単位だと考えられていました。そのため、長期の観測が必要だと考えられており、いくかの観測はなされていたのですが、データの解析がなされていませんでした。しかし、この発見を契機に、データの解析が進められたところ、次々と系外惑星が発見されました。
 その後も系外惑星の発見は続きます。その経緯と最新情報を紹介していきます。

・ケプラー・
以前、このエッセイで、
ケプラーという系外惑星を調べる
宇宙望遠鏡を紹介しました。
ケプラーの発見の衝撃は大きなものでした。
そして今回、新たな宇宙望遠鏡として、
TESSが打ち上げらました。
このTESSの紹介をしていくことにしました。
TESSは一体なにを目指しているのでしょうか。

・道央調査・
週末に、道央の方に調査に出ることにしました。
本州の調査が地震のために、中止になったので、
その代替として北海道の中央部を見て回ることにしました。
来年度以降の予察とも位置付けています。
北海道は急の秋めいてきたので、
北海道の中軸部では雪が心配になります。
天候ばかりはどうしようもないので、
天候に合わせて行動するしかありません。

2018年9月20日木曜日

5_159 火星の水 4:地下の水

 火星の地下に広がる氷の下に、H2Oの水がある可能性が示されました。複雑な解析や前提があるのですが、今まで生物の存在に対して、否定的な状況だったのですが、これは明るい材料となりそうです。

 火星の表層には、恒常的なH2Oの水はないのですが、地下で水を見つけたという報告がありました。
 火星の南極には、H2Oの氷があります。氷だけでなくチリも混じっている、多層構造になっているようですが、巨大な氷を主成分とする塊があります。広さは200 kmもあるようです。オロセイさんの報告では、それらの氷の層の下、1.6 kmほどの深さのところに、20 kmの広さにわたって、明るく見えるレーダーの反射が見つかりました。
 この明るい部分は、氷の可能性もあったのですが、堆積物の組成や地下の温度構造を想定して、詳しく解析していきました。この明るい部分は、固体状の物質としては強すぎるため、液体の水が染みこんだ堆積物と氷との境界面であることだと推定されました。さらに、装置の検出限界を考えると、液体の水の厚みは、少なくとも数十cm以上となると推定されています。
 かなり複雑な処理をしていますし、いくつかの仮定もおいているので、今後も検討が必要になります。もしこれがH2Oの水の層だとしたら、という仮定が持てるような根拠ができのです。
 この水の層は、地下の深いところに、広くひろがっているので、恒常的に存在しそうです。この水が、どのようにできたのか、そしてどれくらい前にでき、途絶えることなく継続しているのか、などの疑問は今後、解かなければなりません。これまでは、火星生命の探査では、否定できな証拠しか出てきませんでした。これは、火星生命にとっていは、非常に有望な証拠となります。
 もし火星に生命が誕生していれば、そして地球生物のように水を基本的に必要とするものであれば、この水の存在は重要な意味を持ちます。火星には、かつては海や河川もありました。その頃に誕生した生物が、火星の表層から海や河川が恒常的に存在できなくなるような環境になってきたとき、この地下の氷の下に逃げ込んだかもしれません。そして、水が長期間存在していれば、今でも生きのびているかもしれません。などという妄想がもてるようになりました。
 少々深いところですが、この水の層までボーリングすればいいのです。そして、そこに生物いるかどうかをチェックすればいいのです。火星生物の存在する可能な環境が見つかってので、その検証ができるのです。今まで生物の現在の生存にとって、あまり有利な証拠はなかったのですが、今回の報告は希望が持てるものとなりました。

・通常号・
前回は、北海道胆振東部地震で、
急遽作成したエッセイを配信しました。
今回は通常号に戻って、続きのエッセイとなります。
火星の水は、生命の起源となったのでしょうか。
生命は誕生したとしても
現在まで生き延びるは大変だったでしょうか。
真実を知りたいものです。
今後の探査や研究が待たれます。

・後期のスタート・
大学の授業がはじまりました。
地震の被害を受けた学生はいないようですが、
精神的にダメージを受けた学生はいるようです。
一人で地方から出てきた学生にとって、
知り合いの少ない都会での被災は、
心細い思いをした学生もいるようです。
自宅で家族と共に過ごしても、
精神的には疲労感があったのですから、
一人暮らしの学生には辛い体験となったようです。

2018年9月13日木曜日

6_154 台風と地震と

 予定していたエッセイを変更して、今回の北海道の連続した災害について考えたことを書きます。

 今回、北海道は台風21号の被害を受けた直後に、地震が起こりました。私事になりますが、2つの災害での私の状況を書きながら、災害、防災ついて少し考えたことを書きます。とりあえず時系列で私の状況を説明します。

9月4日(火)
 大学の同窓会、同期の同窓会を札幌にておこない、11時ころ列車で友人と共に最寄り駅に帰る。雨が降っているが、まだひどくはなっていない。夜、台風のひどい強風と雨となり、時々目覚める。3時ころ、ひどい音が我が家の外でする。向かいの家のトタンが飛んできたものであった。隣人と消防が、我が家のチャイムを鳴らして、自宅に入ってきて、ベランダに引っかかったトタンを撤去してくれる。
9月5日(水)
 大学に家内に車で送迎してもらう。線路に倒木があり各地でJRが運休している。国道脇で巨木が何本も倒れているのを見えた。夕方、多くの線路が復旧しだしたので、翌日の調査には出かけられそうであるので、一安心する。
9月6日(木)
 明け方3時頃、大地震発生。その直後に停電。一旦は目が覚めるが、翌朝調査にでかけるので再度無理に寝る。余震で何度も目が覚める。朝、停電は継続中であった。大地震であったのはわかるが、停電で情報が届かず、様子がよくわからない。飛行機で調査地に向かう予定であったので、自家用車で出かけるつもりで、準備を進める。スマホやラジオで、地震の被害として、JRやバスなど公共の乗り物の全面運休、信号の停止がわかる。危険なので車での空港移動を躊躇する。7時頃、飛行機も全便運休になったことがJALのホームページでわかり、調査の中止を決定する。9時から、旅館やレンタカーでキャンセルの連絡をする。最初の旅館に連絡したとき、発送した荷物の転送を頼む。水とガスは大丈夫。食料も冷蔵庫、冷凍庫にあるので2日は大丈夫だと思う。懐中電灯を集めたら、家族分や全体の明かりになるものが2つあり、電池も数日は大丈夫そうである。緊急用のラジオもあった。昼、大学のある地域は電気が回復した(ということが、7日に大学に連絡して知る)。
 水が止まるという、次男が、ウワサを聞き、風評だとは思ったが、もしもときのために、バケツに水をためる。水は止まる気配はないが、昼から、家内に手元にある材料で、数回分の食事にできるように、カレーをつくりおきしてもらう。食後、20時ころには家族全員就寝。私はぬるくなりかけたビールを消費する。
9月7日(金)
 大学では電気の復旧しているので、車で大学に出る。途中の道路は、信号がほんが消えているが、一部のみで点灯しているだけであった。家内が車に乗って帰る。研究室をチェックしたところ、被害は軽微であった。インターネットもつながっている。スマホの充電をしならが、同窓生にメール連絡をする。昼、家内に車で迎えにきてもらい、自宅に帰る。夜、ガスで土鍋でコメを炊くが、少々固めになったが食べられる。ラジオで状況をチェック。私はベッドに入り寝始める。22時前、次男が通電したいうので、外を見ると街灯がついている。ブレーカを入れて、自宅の電気機器を順次確認する。ほぼ問題なく復旧している。久しぶりテレビからの情報を少し見て寝る。
9月8日(土)
 大学に車でいく。同窓生などにメールで安否確認の連絡をする。帰りにコンビニを覗くが食料は空っぽであった。家内が朝、生鮮食料を少し入手。残っている冷凍食品で、一旦解凍されたものを様子をみて食べていく。
9月9日(日)
 午前中、地元のスーパーやホームセンターをめぐり状況をみる。緊急用商品が空っぽになっている。生鮮食品も少ないが、少しずつ流通で配送されたものが、並べられるが、一瞬で購入されていく。流通の回復は認められる。
9月10日(月)
 いつものように歩いて、大学に出勤する。地震の被害は流通に残っているが、見た目にはわからない。歩いていくる時、あちこち寄り道をしながら、被害状況をみると、台風の被害が目につく。倒木によって遮断された道路の通行の確保や危険の回避のみが応急処理でなされている。

 ここ数年、被害の大きな災害が各地で起こっています。北海道のように連続して起こることは稀まもしれませんが、災害は多くなっています。自分も被災してみて、防災について考えました。
 まずは自身や家族の身を守ることが、基本となる思います。まずは、自衛といえるでしょう。次に地域住民の助け合いや連携が必要かと思います。そして、公からの情報提供や支援と、いう順になるしょうか。
 そして情報についていも考えました。スマホとインターネットからの情報は、今回被災してみて、非常に重要で有用だということもわかりました。次男を見ていると、スマホで情報を次々と仕入れるのは、良いことです。
 一方で、その中には風評が多々含まれています。それを慎重に見分ける必要があります。次男が、泊原発の新聞の記事を読んでいたのですが、ヘッドラインのみを読んで、内容をよく読んでないこともがありました。そんな不確かな、思い込みの情報が、よかれと思ってインターネットを通じて流すことが、風評となっていくのだということも実感した。
 インターネットだけでなく、大量の情報がある現代社会で、情報をどう受け入れ、どう処理、どう解釈し、どう他人に発信するのか。慎重であるべきだと痛感しました。重要そうにみえる情報は、一気に拡散していきます。ですから、人の情報に対する心がまえ、インターネットに関するスキルの必要性も感じました。

・災害に対して・
このエッセイは野外調査に出る前に
予約していたものを解除し、
新たに書いたものです。
野外調査を中止にしたので、
大学でもいろいろと予定変更になりました。
出張の取りやめの手続きと、研究計画の変更、
大学生協でのチケットのキャンセルなどを急遽しました。
2年前の熊本地震も調査出発の直前に起こり、
同じようにキャンセルしたことがありました。
災害が続くと、人の心構えが重要であるを痛感します。
自然災害は避けることはできません。
ですから復旧段階で、人が如何に着実に
避難、対処するかが求められます。

2018年9月6日木曜日

5_158 火星の水 3:科学的後退

 存在が証明できれば、そこから次なるステップにいけます。しかし、存在が証明できないときは、後退を余儀なくされます。どのような後退の仕方をするかも、なかなか悩ましい問題です。

 科学は面倒くさい手段を取っていきます。科学的な証明は、証拠と論理に基づいてなされていきます。例えば、火星生命や化石が発見されとしたとしましょう。その生命や化石をだれでも調査でき、検証できれば、その存在証明ができます。その後、生物がどのように誕生したのか、どのような生物なのか、地球生物との共通点と相違点などが、次なるステップとなるでしょう。現状までに、何度かの探査が繰り返されてきたのですが、まだ火星生命(化石)の存在は、確認ができていません。少なくともすべての科学者が納得できるような証拠は、出されていません。
 生物の存在が証明できないのであれば、研究を諦めるかというと、一歩下がってスタートすることになります。
 火星には、生命が誕生でき、長く生存でき、進化できるような条件を満たしていたのか、などを探ることです。前回紹介したH2Oの液体の存在が、生命の誕生にとって非常に重要な条件だと考えられています。ですから、液体の水を火星で見つけることに重点がおかれることになります。
 このステップに関しては、成果を上げています。かつては、水が存在した証拠は見つかっています。火星には、海にできる海岸地形や、河川がつくりだした地形があることは、火星表層の詳細な地形調査でわかってきました。
 2015年のNASAが、火星の表面で「過塩素酸塩」を検出したいう報告をしました。過塩素酸塩は、水が存在しなければ、合成されない物質です。それまでにも、この物資は発見されていたのですが、今回は地質学的に重要な意義を持つ場所で見つかりました。火星には、斜面で、暗い筋ができたり消えたりするところが見つかっていました。それは、季節変化だと考えられていました。5年前に見つかっていた筋で、この物質が発見されました。2つの根拠から、水が存在するとされていました。ただし、水を直接、検出したわけでありませんでした。
 火星の両極には白っぽく見える氷があります。その大部分は二酸化炭素の個体ですが、一部はH2Oの氷であることもわかっています。ですから、恒常的にH2Oの氷があることはわかってきました。
 生命誕生や進化には、液体の水として、長期に渡って継続的に存在している場所があるかどうかが重要になります。もし、現在も生きている生物が存在するならば、そのような現在も水の存在することが不可欠になるはずです。
 これまで、液体の水の存在は不明でした。火星表面は詳細に調べられているので、大規模な海や恒常的な河川はありません。季節変化でできる河川はありそうですが、それは恒常的な水の存在ではありません。
 あるとすれば、地下になるでしょう。しかし、氷ではだめです。液体の水が重要です。オロセイさんたちは、地下でH2Oの液体を発見したとサイエンス誌の報告しました。その手段は、軌道上の探査機のレーダーでした。詳細は次回としましょう。

・熱中症・
先週は、帰省していました。
暑かったです。
北海道は涼しかったので、バテてました。
暑い中、母に関する所用で
あちこち、歩き回ったので、
夜、調子が悪くなってきた。
熱中症になってしまいました。
2日間不調で所用を
こなすのに支障をきたしました。

・老母・
酷暑の京都で、母は一人で、
かなりよぼよぼになっていますが、
たくましく生きています。
毎日、連絡をとっていたのですが、
いつも暑いという言葉を聞いていました。
その暑さは実感しました。
北海道に来ていれば、暑く苦しい思いをしなくて
すんだはずなのですが、まあ、母の希望です。
独居できるかぎり、現状で暮らせればと思います。
子としては、そんな母を
できる限りサポートするしかありません。

2018年8月30日木曜日

5_157 火星の水 2:水の存在

 火星で、恒常的に水が存在する可能性が示されました。かつての調査で、火星には水の痕跡が各地で確認されています。しかし今更なぜ、水の存在が重要になってくるのでしょうか。その発見の意義を考えていきましょう。

 前回、火星探査の歴史の概略を見てきました。そして、現在も継続して使用されている探査機があることも紹介しました。そのうちのひとつ火星探査機マーズエクスプレスの観測データから、火星に地下には、液体の水が存在する可能性があることはわかってきました。
 2018年7月25日の科学雑誌「サイエンス(Science)」にイタリアの天文物理研究所のオロセイ(Roberto Orosei)さんたちの研究グループによる報告が掲載されました。
 Radar evidence of subglacial liquid water on Mars
 (火星の氷河下の液体の水のレーダーによる証拠)
というタイトルの論文でした。
 生命を探そうという探査が以前にもあったことは紹介ました。ですから、水の存在についての探査というと、今更という気がします。しかし、これ論文には、重要な科学的意義があります。前回も述べましたが、生命の存在をまだ確認はされていません。隕石からの化石の報告もありましたが、まだ多くの研究者が認めているものではありません。
 もし、化石が見つかれば、誕生の条件や絶滅の原因が問題になります。もし。現在、生きている生物が発見されれば、その実体や仕組みなどが問題となります。化石でも生物でも、その発見は、非常に重要なものです。
 ところが、現在のところ、SFにでてくるような文明もった生物は地表にはいないことは確実です。さらに、地表を闊歩するような大型の動物、繁茂する植物も地衣類も存在しないようです。微生物や化石は、これまで調べた範囲では、納得できるような証拠は見つかっていません。しかし、見つかっていないことを、議論してもしかたがありません。不在の証明は不可能なのです。
 科学的に考えるのであれば、微生物や小さい化石の存在を発見するには、これまで以上にすぐれた探査機を送り込むか、研究者が火星に長期滞在して探すしかないでしょう。もし生物が、小さくても、地表付近に、ある程度の量が存在しているのなら、精密な探査機での何度かの探査、あるいは人による長期の調査で発見できるはずです。でも、これはすぐには達成できない、難しい探査、調査になります。
 現状では、遠回りかもしれませんが、生物の誕生や生存に必要な条件を探っていくことが、一番の近道かもしれません。現在でも生物が生存しているには、液体の水が恒常的に存在するかどうかが、重要な条件になります。そんな水が発見されたというのが。この論文の意義です。

・地球生物・
水の存在が、生物にとって重要であるとするのは、
地球生物からの類推です。
もし水の存在を必要としない生物がいたとするのなら
この探査の方法は使えません。
しかし、現在の私の科学では、炭素を中心とした生物には
水の存在が不可欠だと考えられます。
他のメタンやエタンなどが液体として存在する条件であったとしたら
どのような生物が存在しうるかはまだ不明です。
炭素以外の元素、例えば珪素などを利用する生物は想像し難いものです。
もしマグマの海が恒常的ある惑星環境なら、
そのよう生物が存在することは可能かもしれませんが。

・想定外・
地球や地球生物、私たちの太陽系が、
ごくありふれた一般的なものだという前提を置くことは
よくなされている仮定です。
「メディオクリティの仮定」などと呼ばれています。
私たちの太陽系は、一般的な惑星系だと考えられていたのですが
太陽系外惑星で、多様な惑星系があることがわかりました。
少なくとも惑星系では、「メディオクリティの仮定」が
成り立たないことは明らかになりました。
自然は人間の想像を遥かに越えるようです。
地球生物も、宇宙に多数、多様に存在する
ひとつ生物タイプに過ぎないかもしれません。
もし、想定外の事実が一つ見つかると、
太陽系の生物自体の見直しも、
必要になってくるかもしれませんね。

2018年8月23日木曜日

5_156 火星の水 1:探査の歴史

 火星は、20世紀から探査がはじまり、21世紀になっても探査が継続されています。それは、研究者が火星に強い興味を抱いているためでしょう。そんな探査から新しいことがわかってきました。

 人類は、古くから火星に並々ならぬ興味を持っていました。火星は、地球に近い天体であること、惑星なので動きが不思議であること、色が赤いっぽく見えること、などで古くからいろいろな想像を掻き立てられる星でした。色が赤く見える惑星なので、戦争や血をイメージさせるので、ギリシア神話やローマ神話など、各地の神話にも、そのイメージを反映した物語がで登場しています。
 19世紀には、ローウェルやスキアパレッリが望遠鏡で観測したところ、運河のような筋が見えたという報告が出され、火星には発達した文明があるという空想がされてきました。そこから、いくつものSFが生まれました。
 20世紀後半には、アメリカのマリナー、バイキング、マーズ・グローバル・サーベイヤー、マーズ・パスファインダーなど、いくつもの探査が実施されてきました。その中には、火星探査で生命の痕跡の有無を調べる実験なども行われてました。1997年のマーズ・パスファインダーにはソジャーナという探査車が地表を動き回って、詳しい調査がなされました。
 1996年には、火星から飛んできた隕石から生命の痕跡(化石)を発見したという研究報告もあり、大きな話題になりました。しかし、現在では、化石ではなく、無機的につくられたものではないか、と多くの研究者は考えるようになっています。
 21世紀にも、何度も探査がなされています。2004年にはスピリットとオポチュニティの2つの探査車が、2008年にはフェニックスが極地付近のクレータ内を、2012年にキュリオシティは長期にわたって長距離の探査をおこないました。
 このような探査からも、生命の存在はいまだ確認はされていなのですが、否定もされていません。現在では、生命が存在できる環境や条件があったのか、あるいは現在もあるのかということが焦点となっています。
 現在稼働中の探査機として、欧州宇宙機関(ESA)のマーズ・エクスプレスから分離したマーズ・エクスプレス・オービターや、2006年に火星の周回軌道に入ったマーズ・リコネッサンス・オービターがあります。
 マーズ・エクスプレスは15年にわたって探査を続けており、搭載された電波高度計からの情報を解析したところ、重要な発見がありました。それは、次回にしましょう。

・短い夏・
北海道は、先週から涼しくなってきました。
大雪山の黒岳では、初雪が観測されました。
初雪は、例年より早いものだそうです。
本州は、例年にない猛暑で、
北海道でも7月から8月上旬は暑い日が続きました。
しかし、先週末から今週にかけては涼しいです。
朝夕は、半袖では寒いので、上着を来ています。
北海道の短い夏も、終わったのでしょうか。

・私の夏休み・
本州はまだ、学校は夏休み中でしょう。
北海道の、小中高校は、今週から学校がはじまりました。
私は、夏休みとして、来週から帰省します。
私だけで、1週間滞在して、母のことで、
いろいろ折衝や対応してきます。
後半の3日、家内が合流します。
もしかすると、一日だけ長男が
合流できるかもしれませんが。
家族があちこちにいると
旅行も兼ねて、あちこちで会うことが
夏休みになってしまいますね。

2018年8月16日木曜日

1_163 大陸の移動 4:シミュレーション

 大陸移動には、従来の考えでは説明できないことがありました。シミュレーションによって検証したところ、別の運動をすることがわかりました。その結果、今まで不明の現象を説明できました。

 プレートの運動は、海洋プレートの動きだけでなく、大陸の移動をも起こします。つまり、プレート運動では、海洋も大陸の移動も説明できなければなりません。これまで、スラブ(沈み込む海洋プレート)が沈み込むときの「引張力」が、プレートの運動の原動力だとされていました。その考えでは、引張力が働けば、海洋プレートの移動の方向に対して、大陸プレートが抵抗力となり、移動速度が遅くなりように働くと考えられていました。これは、相対的に海嶺方向に向かって大陸プレートが移動することになります。このような運動をするのであれば、インド大陸がユーラシア大陸に高速で移動してぶつかったという現象が説明できませんでした。
 海洋研究開発機構の吉田さんと浜野さんのシミュレーションをしたところ、「スラブ引張力」では、大陸プレートの移動が起こらないという結果が出されました。シミュレーションは、いくつかの条件のもとでおこわなわれています。海洋プレートの海嶺と海溝の間に大陸プレートが位置するような場合です。そして、大陸プレートと海洋プレートの粘性の比が大きい(3桁ほど)場合、つまり大陸のマントルが固く振る舞う場合、大陸プレートの移動のスピードが大きくなることが示されました。
 そのような条件では、大陸プレートは、海溝側に向かって進むことがわかりました。これまでの考えでは、海嶺側に向かって進むことになっていましたが、逆方向に進むことになります。大陸が分裂後の移動や、小さく分裂した大陸の高速の移動などが、従来の考えではうまく説明できませんでした。例えば、大陸の分裂とは超大陸パンゲアの分裂のことで、分裂から西洋の拡大へとつながっていった運動です。大陸の高速移動とは、上で述べたパンゲアから分離したインド大陸が、高速の北上してユーラシア大陸への衝突という事実に相当します。
 これらの運動が、吉田さんと浜野さんのシミュレーションでは、説明可能でした。吉田さんと浜野さんの論文のタイトルになっていた「パンゲアの分裂とインド亜大陸の北方移動」の意味するところです。

・お盆には・
今年のお盆は、どのようにお過ごしでしょうか。
私は、いつものように大学で過ごしていました。
大学は16日まで休みですが、
通常の日と同じように、大学でています。
守衛さんのいるところから入ることができます。
記名が必要ですが、いつもと同じように仕事ができます。
私は、弁当をもっていきますので
研究室にさへ入れれば、いつものように夕方まで仕事ができます。
今年もいつも同じような日々を過ごしています。

・入稿・
お盆休みを早め終わり、
16日には仕事をはじめている会社もあります。
私がお願いする印刷屋さんも早めに仕事をはじめています。
業者の方が、大学が閉まっているので
来てもらうことができません。
私が、本の原稿を会社まで、
朝一番に持参することにしました。
そのあとは、街を少しうろうろすることにしています。
一段落のあとのひとときの息抜きでしょうか。

2018年8月9日木曜日

1_162 大陸の移動 3:スラブ

 地球の内部から表層にかけての運動は、熱の対流が原動力となっています。表層のプレート運動を詳細に見ていくと、どのような力が原動力かは、難しい問題となります。大陸の移動に関する新しい考えが提示されました。

 地表での大陸間の精密な観測事実からプレートの運動がわかり、プレートテクトニクスが実証されました。地震波の観測からマントル内の密度差、温度差から、マントル物質の対流が推定され、現在ではプルームテクトニクスと呼ばれる運動論が提唱されています。
 地表では、プレートとして連続的な運動として認識されていますが、マントル内の物質の分布状況を見ると、断続的な運動に依存しているようです。プルームの運動(マントル対流)の原動力は、地球の内部の冷却と熱の放出という物理的な過程でした。物質の運動は断続的ですが、温度の流れとしては継続的に続いているようです。
 大局的には熱放出に伴う対流運動となりますが、表層のプレート運動としてみると、その詳細は必ずしも解明されているわけではありません。
 かつては、海嶺で海洋プレートができて広がる、と単純に考えられていたのですが、それでは海洋プレートの沈み込みも起こらず、深く沈み込むんでいくこともなさそうでした。
 その後、作用しているさまざまな力から、プレートの運動を定量的に捉えるようになってくると、別の原動力が候補になってきました。すべてのプレート運動の原動力は、冷えた海洋プレートが沈み込むときに働く力だと考えられるようになってきました。海嶺でできた海洋プレートが海底をいどうするうちに冷やされ密度が大きくなります。ある密度以上になると、なんらかのきっかけがあれば、海洋プレートは沈み込むことができます。大陸プレートと海洋プレートがぶつかれば、海洋プレートが沈み込みます。海洋プレート同士であれば、より冷えて密度の大きい、古い海洋プレートが沈み込みます。沈み込む海洋プレートの沈み込みが、表層のすべてのプレートの原動力と考えられました。これも、熱の対流の一部と捉えることができます。沈み込む海洋プレートのことをスラブと呼ぶので、この原動力は「スラブ引張力(ひっぱりりょく)」と呼ばれていました。
 「スラブ引張力」によって、海洋プレートの沈み込みだけでなく、海嶺でも張力が発生して、マグマ形成も促します。また、海洋プレートの運動が解明されれば、大陸プレートの運動も自ずから理解されることになります。
 しかし、「スラブ引張力」では、大陸プレートの移動が起こらないという結果が見出されました。海洋研究開発機構の吉田晶樹さんと浜野洋三さんが、2015年のScientific Reportsに報告されました。論文のタイトルは、
Pangea breakup and northward drift of the Indian subcontinent reproduced by a numerical model of mantle convection
(マントル対流の計算モデルによって再現されたパンゲアの分裂とインド亜大陸の北方移動)
というものでした。
 パンゲアとはパンゲア超大陸のことです。超大陸やインドが、なぜ大陸プレートの運動と関係するのでしょうか。詳しくは、次回としましょう。

・集中・
大学の8月の最初の週の試験期間が終わると共に
涼しくなってきました。
皮肉なことです。
私としては、おこないたい作業があったので、
涼しくなり、集中できて助かっています。
一日、しっかりと集中できています。
細かい作業が必要なのですが、はかどります。
そして、校務も一気に行え効率的です。
このまま涼しくなってくれると助かるのですが。

・編集中・
現在、本の執筆が佳境にはいっています。
初稿が完成し、現在、編集作業をこなっています。
進行状況によっては、お盆明けには、
印刷屋さんに入稿したいと考えています。
私としては、できるだけ初稿の校正が少なくなるように
推敲をしていく必要があります。
ただし、少々文章量が増えたので、
予算内で印刷ができるかどうかが、心配です。
もしだめなら、少部数のデジタル出版に
変更することになるかもしれません。
そうなると、初稿の校正は、不可能となります。
まあ、今できることを、限られた時間で
優先順にできる範囲でやるだけです。

2018年8月2日木曜日

1_161 大陸の移動 2:プルーム

 マントル内部の運動は非常に遅いものなので、実測をすることは、不可能です。では、どうして運動を捉えるのでしょうか。それは、動くもののコマ撮り写真をみて、その運動を想像するような方法がとられました。

 プレートの動きは実測されました。しかし、地球内部のマントル物質の運動を捉えることはできるのでしょうか。マントル対流と呼ばれいていますが、その運動の実体が、20世紀末にやっと見えてきました。
 マントル対流の把握は、地震波の観測からはじまりました。精密な地震波の観測網、そしてデータ加工をして地震波トモグラフィという処理によって視覚的に示されました。
 地震波を詳しく調べると、岩石の密度変化を読み取ることができます。マントルが同じような岩石からできるとすると、密度変化は温度変化とみなせます。そのような処理の結果、海溝で沈み込んだ海洋プレートが、上部マントルと下部マントルの間に、冷たいまま大きな塊として溜まっているところが見つかりました。メガリスと呼ばれました。メガリスの下、核とマントルとの境界には、かつてのメガリスが落下したような冷たい固まりも見つかりました。
 一方、温かいマントルの巨大な塊も見つかっています。これはホットプルームと呼ばれました。また、地震波観測で以前から、核とマントル境界に、D"(Dダブルプライムと読みます)というゾーンも知られていました。D"は、周辺の岩石とは、密度や温度の違いがあるところでした。ただし、D"が、核とマントルの境界部に、層として連続して存在するのではなく、部分的にあったり、なかったりするものでした。冷たいところは、メガリスの落下物と判明しました。温かい、あるいは密度の小さいところは、ホットプルームになる予定のものだと考えられました。
 マントル物質の動きはゆっくりとしたもの(年間10cm程度)なので、動きを捉えることは難しいものです。ですが、このような観測事実、状況証拠から、マントル全体におよぶ巨大な対流が想定され、以下のような運動モデルが考えられました。
 新しい海洋プレートが、海嶺で形成されます。できたばかりの温かい海洋プレートは、海底で冷却されていきます。やがて長く海底に置かれて冷えた海洋プレートは、温かいマントル物質より密度が大きくなり、海溝で沈み込みます。冷え切った海洋プレートが、マントルの上部下部の境界に落ち込むのですが、鉱物の物性の妙で、冷たいマントル物質は密度変化は起こるのですが、ある条件では浮力が発生することがあり、留まります。これがメガリスになります。速い速度、温かい海洋プレートでは、メガリスはできず沈み込んでしまうようです。
 メガリスの中にある海洋地殻成分が周辺より高密度になります。長期間溜まって、その成分が増えることで、メガリス全体が周りより重くなり、沈み込みます。海洋プレートから落下するメガリスまでが、冷たい物質の流れとしてコールドプルームとなります。それが、核とマントル境界まで落ち込んで、D"の冷たいところになります。
 巨大な物質が落ち込んくると、質量バランスをとるため、核とマントル境界から物質が出ていくことになります。それがD"の温かい部分です。マントルの中を上昇したものがホットプールと呼ばれるものです。ホットプールは、温かいマントル物質の運動する姿を想定して、名付けられました。ホットプルームの一部が、海嶺を生み出すような火成活動します。他にも海洋底の巨大な海台、長期におよぶハワイの火山なども、ホットプルームが原因だと考えられます。ホットプルームの存在で、海洋域の長期間の火成活動を説明することができるようになりました。
 地球の核と海洋も含めたマントル全体の運動論が、プルームテクトニクスになりました。

・猛暑・
本州は猛暑ですが、いかがお過ごしでしょうか。
極力冷房ある部屋で過ごされているのでしょうか。
北海道では、7月末から8月になって、
気温も上がりました。
ただ、湿度も高くなり、暑さに不慣れで
皆、ぐったりとしてしまいます。
夜は気温が下がるので、寝れるので
なんとか暑い夏を過ごせています。
大学も自宅も、クーラーがないので、つらいです。
今年の夏は、暑くて過ごしにくいようです。
皆様もお体に気をつけてください。

・人に寄り添う・
現在、大学は試験期間で前期が終わろうとしています。
何度か書いたと思いますが、
一番暑い時期に試験は、
学生にとって非常に辛いものです。
本当にこれで学びの集大成、確認が
できるのでしょうか。はなはだ疑問です。
スケジュールをこなすことだけが、優先していますが、
人に寄り添った臨機応変さも欲しいですね。

2018年7月19日木曜日

1_159 大陸の形成 4:地球初期へ

 大陸形成の仮説は、今までの常識をくつがえすものでした。しかし課題もありそうです。この仮説を地球初期に延長していくと、大陸形成の物語にも、答えが出せる可能性を秘めているようです。

 田村さんたちは、厚い地殻(厚さ30km以上)では玄武岩質マグマが、薄い地殻では安山岩質マグマが活動するということを、伊豆小笠原とアリューシャンの海洋島弧のデータを用いて示しました。島弧固有だと考えられる安山岩質マグマは、海洋のできたての島弧で形成され、それが大陸地殻になっていくという仮説を提示しました。今までの常識と反していますが、事実に基づく、大胆な仮説でもありましたが、根拠が明瞭なので説得力があります。
 ある程度の厚さで安山岩地殻が形成されると、今度は玄武岩質マグマが形成されるようにな島弧になっていき、玄武岩質マグマによる島弧地殻の溶融が起こることになります。もしそれが成熟した島弧で、多様な岩石類を多量にあるようならば、島弧の成熟を促すことになるはずです。もし海洋島弧のような環境だったら、玄武岩質マグマが島弧地殻を溶かすので地殻の成長を抑制することになります。この作用の境界や違いは、何に由来ているかは、次なる課題になるでしょう。しかし、今後の検討で、近うちに検証されていくでしょう。
 この普遍性を地球初期に適用すると、もし現在のようなマントルの物理条件であれば、地殻が形成される時は、安山岩からなる薄い大陸地殻の形成が起こり、大陸地殻が一気に大量に形成されることになります。もし地球初期のマントルが現在より高温の条件であったなら、安山岩質マグマはできず、最初から玄武岩質マグマの活動が起こり、玄武岩の海洋地殻が厚くできていくだけで、安山岩質の大陸地殻は形成されることがなかったかもしれません。どちらが起こってい方は今後の課題でしょう。しかし、地球初期の温度条件がある程度精度良く推定できれば、決着を見ることになるでしょう。
 この仮説の検証や議論に今後期待したいものです。もうひとつ大陸の移動に関する報告もあったので、続けてシリーズとして紹介していく予定です。

・危機意識・
北海道もなかなか気温も上がらず、
日照不足も心配されます。
短い梅雨や大雨など、平年とは違った天候が各地で起こっています。
天気予報もなかなか当たらないようです。
いくら科学が進んでも、複雑系の含まれている事象は
不確実な要素があります。
それも含めて予報として聞く必要があります。
でも今回のように警報や特別警報が出るような時は
危機意識を持ち、行動することが重要です。
これが、今回の大きな教訓となりそうです。

・協力体制・
今回の大雨の被害は、広範囲に及ぶもので
被害地域が広く、被害者の数も多くなりました。
災害復旧の目処がまた立たない地域もあるようです。
私の知り合いの地域でも大きな被害がでました。
私は、以前お世話になった地域へ、
寄付をさせていただきました。
その時ふるさと納税でするシステムをはじめて用いました。
そのシステムは、知り合いの地域に対して
他の市がいち早く名乗りを挙げて
事務処理を早急に代行する仕組みが整っていました。
このような協力体制がすぐに整うことは
非常心強いかぎりですね。

2018年7月12日木曜日

1_158 大陸の形成 3:新仮説

 これまでの常識は、実は漠然としたデータに基づくものであるかもしれません。データを、整理したら、新たな事実が判明し、これまで誤解に基づいて常識が構築されてた。そんな実例が、今回の田村さんたちの報告です。

 これまで安山岩質マグマは、厚い島弧地殻のあるところで形成されると考えられてきました。しかし、今回のシリーズで紹介している田村さんたちの報告では、伊豆小笠原とアリューシャンの両海洋島弧では、地殻の薄いところで安山岩質マグマが活動していることを見出しました。これは、今までの常識とは違った結果となりました。
 田村さんたちは、自分たちが見つけた事実、
  地殻の厚い地域(厚さ30km以上)では玄武岩質マグマ
  地殻の薄い地域(厚さ30km未満)では安山岩質マグマ
が活動する、という前提を置きました。つまり、安山岩質マグマが薄い海洋島弧地殻ででき、厚いところでは玄武岩質マグマが活動します。これまでの地質学の常識に反しますが、これが事実です。そのため、島弧のマグマ形成に、新たな考え方(仮説)を導入する必要がでてきました。
 沈み込み帯では、海洋プレートから水分が陸側のマントルに供給されていきます。そのため、マントルの溶融とマグマ形成は、含水量の多い条件で起こることになります。沈み込み帯は、すべて同じ条件となるはずです。
 岩石溶融の高温高圧実験では、圧力が低い条件では、含水マントルでは安山岩質マグマが、高圧条件では玄武岩質マグマが形成されることがわかっています。低圧条件は地殻の薄い海洋島弧(厚さ30km未満)下のマントルで、高圧条件は厚い島弧(30km以上)の条件に相当する、と田村さんたちは指摘しています。これで海洋島弧の事実は説明できました。
 次なる問題は、成熟した島弧の安山岩質マグマの活動の事実をどう説明するかです。高温高圧実験では、高圧条件では玄武岩質マグマができ、マントルを上昇してくると、すでに形成されていた海洋島弧地殻を構成する安山岩、あるいは成熟した島弧地殻の岩石に突き当たります。
 成熟した島弧では、安山岩だけでなく堆積物や花崗岩もあり、玄武岩質マグマによる溶融作用でデイサイト質マグマの形成が定常的に起こます。そして、玄武岩質マグマとデイサイト質マグマのマグマ混合が起こり、島弧の安山岩質マグマができていると考えられています。伊豆小笠原弧では玄武岩質マグマが島弧地殻を溶かすことが知られています。
 今回に報告で私が考えた重要な点があります。海洋島弧に安山岩や玄武岩が活動していることは、すべての地質学者は知っていました。今回の田村さんたち論文は、海洋島弧の地殻の厚さとマグマの関係を調べ、相関があることを示して、それが今までの常識に反していたのですが、事実に基づき、新たな大陸の形成メカニズが地殻に薄い海洋島弧でおこっていると提案しました。
 かつて、同じようなことがあったことを私は思い出します。島弧を代表する、あるいは平均値がマグマが安山岩質だということを多くの地質学者が知っていました。大陸も平均すると安山岩質の組成なることもしっていました。それらを結びつけて、島弧の安山岩が大陸地殻の形成につながることが指摘され、多くの地質学者は目からウロコでした。
 今回の同じような驚きがあり、非常に重要な指摘です。今後慎重に検証していく必要がありますが。
 西之島という海の中の新しい火山が安山岩ばかりだという事実と、なおかつそこで新しい大陸の形成が始まっているのでは、という指摘もなされました。これだけでも、興味深い仮説なのですが、この報告には、もう少し大きな可能性を示しています。それは次回としましょう。

・雨の中の調査・
本州の大雨の頃、
私は道南の4回目の調査にでていました。
北海道も降ったりやんだりの天気で、
なかなか思うように調査ができませんでした。
道路が通行止で予定通りにコースを
進むことができないところもありました。
でも、目的としていた露頭をみつけ、
ざっとですが見ることもできました。
やはり予想通りの露頭でした。
でも、海岸に降りれずに次の機会にしました。

・前期も終盤・
7月になり、大学は前期の授業が
終盤に差し掛かっています。
授業の最後の詰めになっています。
学生はそろそろ期末の試験やレポートなどが
気になってきているようです。
大学の授業評価のアンケートなどもあり、
学生にはいろいろ手間をかけていますが、
これもよりよい授業、学生が望む授業に
近づけるための基礎データとなります。

2018年7月5日木曜日

1_157 大陸の形成 2:常識に反し

 安山岩は島弧を特徴づける岩石です。そして一般論として島弧は、大陸に成長していく、大陸形成の場と位置づけられています。しかし、西之島の安山岩は常識に反していました。その意味することは・・・。

 海洋にできている列島(未成熟な島弧、海洋島弧と呼ばれる)や海の中の火山(海洋島)では、玄武岩マグマの活動が一般です。一方、安山岩は大きな列島(成熟した島弧)の特徴です。地殻の厚くなっている、成長、成熟した日本列島のような島弧での活動が主です。島弧でも、いろいろマグマが活動していますが、一番多い、平均的なものとして、安山岩マグマになっています。これが島弧の特徴だとされていました。
 以上のことから、一般論として、地殻の薄いところ(海洋域)では玄武岩マグマが、地殻の厚いところ(大陸域)では、安山岩マグマが活動すると考えられていました。さらに、島弧が成長していくことで、大陸地殻になっていくと考えられています。
 前回、西之島の火山を紹介したとき、以前の活動も、今回の活動も安山岩マグマであることを示しました。西之島は、もちろん海洋域での活動になります。西之島の安山岩マグマは、これまでの常識とは違っていました。その特徴を説明するためには、地下の様子を調べ、マグマの形成機構なども考えていく必要があります。田村芳彦さんたち海洋研究開発機構の研究グループは、この不思議な事実を解明するために、西之島のある伊豆小笠原弧全体と、同じく海洋島弧であるアリューシャン列島を合わせて検討していきました。
 2つの海洋島弧を詳しくみていくと、地殻にはいろいろな厚さがありました。地殻の厚さと活動しているマグマの関係を詳しく検討していきました。すると、地殻が30km未満の薄いところでは安山岩質マグマが噴出し、30km以上の厚いところでは玄武岩質マグマが噴出していたことがわかりました。これまでの一般論とは、逆の結果がでてきたのです。
 これまで成熟した島弧で大陸地殻が形成されていくという常識ができていました。地殻が薄い海洋島弧での安山岩マグマの形成が起こっているのです。西之島だけなら特別な条件での活動となるかもしれません。2つの島弧での、いくつも火山、マグマを調べた結果なので、一般論となりそうです。つまり、海で大陸ができるかもしれないという可能性でてきたわけです。その仕組みはどのようなものしょうか。田村さんたちの仮説の紹介は、次回としましょう。

・蒸し暑さ・
7月になりました。
6月末から全国的に雨がちの天気です。
台風の影響もあるのでしょうが、
北海道でも蒸し暑い日が続いています。
久しぶりの蒸し暑さに、ぐったりとしました。
でも夜は涼しくなるので、
なんとか寝付けるの助かっています。

・腰痛・
腰痛がでています。
先週の木曜日の夜から痛みがでだし、
金曜日の夜にひどくなり、歩くのもつらくなりました。
土曜日に治療院へいき、
少しましになったのですが、一時的のことでした。
土・日曜日は動かずに、自宅でじっと寝ていました。
月曜日には、大学に来ていたのですが、
曲げ伸ばしすると痛みます。
でも、少しずつは、回復しています。
今週末には調査にでるので、無理できません。

2018年6月28日木曜日

1_156 大陸の形成 1:西之島

 日本列島では、火山噴火は各地で繰り返し起こっています。ですから、少し前の噴火は忘れられることになります。西之島もそのひとつでニュースを聞かなくなりました。でも、研究者たちはこのマグマに注目しています。

 西之島(にしのしま)は、本州から南に約1000km、小笠原諸島、父島の西の方、約130kmにあります。小さな島で、火山噴火も度々起こしている無人です。前回の噴火は1973年で、溶岩の島となりました。太平洋の真ん中の孤島ですから、波の侵食の激しいところです。植生も少なく、野鳥だけが営巣するような状態の島でした。しかし、荒々しい自然が手付かずのまま残されている状態です。海鳥にとっては、住みよい島でもあったようです。鳥獣保護区にされていました。
 直径数百mほどの小さい火山島ですが、周りの深海底から盛り上がっていますので、海面下には巨大な火山体がそそり立っています。その高さは、海底から4000mもあり、直径も30kmもあります。
 2013年11月20日から40年ぶりの噴火が起こりました。その噴火は激しく、旧火口よりさらに西の海底で噴火しました。1973年の噴火では、侵食を受けて島は小さくなっていたのですが、それでも浅い深度のところで、溶岩の海底が広がっていたので、この噴火で島が成長やすい状態となっていました。やがて、火山体は海面上に噴出し、顔を出し100m以上の大きさの島にまで成長しました。2013年12月には、もともとあった島と一体化して、西之島となりました。1年以上活発な火山噴火があったのですが、少し落ち着いたかと思われたのですが、2017年4月より再び噴火を再開しました。今回の噴火では前回より溶岩の噴出量が多くなってきました。そのため島も大きく成長しました。
 2018年6月14日現在、160mほどの標高をもった火山体があり、火口内では白い噴気が確認されており、島の周りの海では変色域が広がっています。まだ、活動中の火山となっています。
 この火山で噴出してるマグマは、安山岩質でした。一般に海洋にできる列島(伊豆諸島)や海洋島(ハワイ諸島)では、玄武岩質マグマの活動が多いのですが、なぜか太平洋の真ん中の西之島では、安山岩質マグマの活動が起こっています。2013年からの噴火でも安山岩質マグマが噴出しました。
 この安山岩質マグマの活動には、どのような意味があるのでしょうか。実は今までの常識を覆す研究が報告されました。

・特別な試料・
活動中の火山を調べるのは危険を伴います。
でも、活動が活発な時は危険を感じますが、
少しでも穏やかになると、火山学者ならだれも
上陸して調べたくなります。
しかし、ここは個人ではいけるところではなく、
保護区でもありますので、
特別な許可をもった人だけが調べ、試料を手にできます。
そんな貴重な試料を得た人からの調査報告がありました。

・北国の青空・
北海道は、なかなか気温が上がらず、
曇では肌寒い日が続いていました。
でも季節は夏に向かっています。
晴れれば、強い日差しとなります。
青空は抜けるような青空となります。
この初夏から夏の北国の青空は
なかなかいいものです。

2018年6月14日木曜日

3_171 核の姿 6:二酸化ケイ素の結晶

 核には、鉄に軽い元素として、ケイ素と酸素が含まれているようです。液体の鉄の中で、結晶化することが実験でわかってきました。結晶化が起こす現象が、地球には重要な意味があったようです。

 東京工業大学の廣瀬敬さんとその共同研究者は、2017年2月に、イギリスの科学誌ネイチャーに、
Crystallization of silicon dioxide and compositional evolution of the Earth's core
(二酸化ケイ素の結晶化と地球の核の化学組成の進化)
という論文を報告されました。
 これは、地球の核では二酸化ケイ素の結晶ができるということを、実験的に示し、さらに結晶することで核に何がおこるのかを検討したものです。
 何度も述べてきましたが、核は、金属鉄からできています。隕石などの類推から、鉄を主とし、ニッケルを少し含む(5%ほど)合金となります。ところが、地震波のデータからみると、その密度をもっと軽くする成分が加わっている必要があります。その量は鉄の密度を10%ほど小さくするほどです。軽い元素ですから、その量はかなり多く混じっていることになります。
 軽い成分の候補として、硫黄と酸素、水素、ケイ素などが考えられ、議論されてきましたが、まだ定まっていませんでした。地球の形成史を考えていくと、最初から核があったのではなく、初期に徐々に形成されていったと考えられます。
 材料物質の隕石が、次々と衝突していた時期があり、その材料のから溶けた鉄が深部に向かって沈んでいったはずです。鉄が、高温のマントルを通り抜けるとき、岩石の主成分であるケイ素と酸素が、鉄に取り込まれたと考えられます。そのため、核の軽元素として、ケイ素と酸素が有力だと目されていました。
 廣瀬さんたちは、液体の鉄にケイ素と酸素が溶け混んでいたと想定して実験をおないました。このシリーズで紹介したダイアモンドアンビルセル装置を用いて高圧を発生し、そこにレーザーで加熱することで高温にもしました。その条件は、133~145万気圧と3600~3700℃という高圧高温で、核の条件に近いものでした。そこで、溶けた鉄の中で二酸化ケイ素がどう振る舞うかを調べました。
 その結果、二酸化ケイ素の結晶化ができることがわかりました。そこから重要なことがわかってきました。核の対流の起源と、そこから地球磁場の形成の問題への答えがでてきそうだということです。
 実験によれば、核最上部で、溶けた鉄の中にケイ素と酸素があれば、それが二酸化ケイ素として結晶化していくことになります。二酸化ケイ素の結晶は、溶けた鉄より軽いので、浮いていきます。浮いた二酸化ケイ素は、マントルの一部になっていきます。
 一方、二酸化ケイ素の抜けた液体鉄は、軽い元素を含む液体鉄より重くなります。同じ液体鉄でも、密度の差があれば、重いほうが沈んでいくことになります。そして核で対流が起こることになります。そこで、重要な関わりでてくるのが、前回の内核の形成時期が若いという結果です。
 その関係は、次回としましょう。

・変動する天候・
北海道は、肌寒い日が続いています。
晴れると暑いくらいなのですが、
曇ったり雨だと、一気に肌寒くなります。
夏になったり、春に戻ったり、変動の激しい天候です。
皆様の地域はいかがでしょうか。
体調を崩さないように、
気をつけなければなりませんね。

・恒例のこと・
大学の前期の講義も、折り返しとなりました。
私のいる学科では、4年生では教職の教育実習、
3年生では介護等体験、特別支援の実習、
2年生では保育士の施設実習など
いろいろな実習が次々と行われています。
そして教職の採用試験もあります。
担当の教員は、その対応に追われます。
このような慌ただしい状況が、7月上旬まで続きます。
その後は、教職の1次の合格発表と
2次試験のための対策講座などが続いていきます。
これは、恒例のことなんですが、
風物詩というには、かなり生々しすぎますね。

2018年6月7日木曜日

3_170 核の姿 5:若い内核

 微小な部分を内核の条件にして、そこで電気伝導度を測定してます。ただし、そのためには、微小部分への特殊な技術の導入が必要でした。その技術を開発をすることで、今回の実験が成功しました。

 今回の実験を一言でいうと、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル装置内に収束イオンビーム加工装置で配線をした試料を内核の条件において、電気伝導率をSPring-8で計測した、となります。少々難しいのですが、少し詳しくみていきましょう。
 ダイヤモンドアンビルとは、2つのダイヤモンドのとがった先端を少し平らにして、向かい合わせにして、押し付けると、その先端には高圧が発生します。先端の面積を小さくすればするほど、高圧になっていきます。先端を直径数10μmほどにして、そこに実験する物質を置きます。ダイヤモンドアンビルでは、約360万気圧という地球中心部の圧力まで発生することが可能です。
 なぜ効果なダイヤモンドを使用するかというと、硬いということと、光もレーザー光も通します。レーザー光を用いると、挟んだ物質を加熱することができます。この装置で目的の試料となる鉄を、内核の温度圧力条件にすることが可能となります。さらに、試料を温度圧力条件を保持したまま、SPring-8から出てきたX線マイクロビームを照射します。そこから出てくるX線回折像から、高温高圧条件のまま結晶構造を求めることができます。
 しかし、これまで試料が直径30μm以下の非常に小さな部分で、電気伝導率を測定することはできませんでした。そこで太田さんたちは、収束イオンビーム加工装置というものを用いて、微小な部分での電気配線をする仕組みを開発しました。その装置を用いて電気伝導率を測定できるようにしました。157万気圧、4500Kまでの条件で電気伝導率を測定しました。
 その結果、約90W/m/Kという値をえました。これはシミュレーションによる値と同じになりました。そこから、前に述べた方法で、内核の年齢を計算したら、約7億年前という値になりました。
 もしこの結果が正しければ、地球誕生から約7億年前まで、約30億年間、内核は存在しなかったことになります。これは、地球誕生時に核内に蓄えられた熱が非常に多く、そして冷めるスピードも遅かったことになります。そして内核の成長速度も非常に速くなります。
 これまで地質学的には、約13億年前に磁場強度が増えた時期があり、それは内核の誕生に関係したものだと考えられていました。今回の結果が正しければ、内核以外で、磁場の変化の原因を考えなければなりません。地球の歴史についても、いろいろと再考が必要になりそうです。
 今回の実験は、鉄を用いておこなわれていますが、核には鉄より軽い元素が含まれていることがわかっています。鉄以外の成分が入っていると、熱伝導率が変化するかもしれません。現実の核の成分で、再度実験を行う必要があります。今回の手法は、そのような成分が加わっていても実験可能だとされていますので、より現実に近い核の成分での実験がなされることが期待されます。
 次回は、もうひとつの核の新知見は、核内で石英があるのではないというものです。今回の結果とも関係するものでもあります。

・道南調査3・
先週後半から今週はじめまで道南にいっていました。
少し雨がぱらついたり、風が強かったりしたのですが、
基本的には調査は順調に進みました。
ただし、目的を達成できたどうかは、問題です。
目的を達成できるような露頭が発見できるかどうかです。
今回は沢筋にはいったのですが、
露出がよくなく、風化も進んでいました。
やはり海岸沿いの露頭がいいようです。
今回新たな露頭をいくつか発見し、
これまでの調査で発見した露頭を再調査しました。
まあ、すべてが上手くいったわけではないですが、
それなりの成果を上げられたというところでしょうか。
来月にもう一度、調査に行く予定です。

・YOSAKOIソーラン・
北海道の初夏を象徴する
YOSAKOIソーラン祭りがはじまりました。
大学のチームも、毎年参加しています。
祭りの初日には、大学で出陣式をおこないます。
私も毎年、見学しています。
今年はゼミの学生もいます。
メンバーの学生は、この6月を目指して
日々練習を積んできました。
がんばって踊ってもらいたいと思います。

2018年5月31日木曜日

3_169 核の姿 4:熱伝導率の測定

 内核と同じ条件に鉄をおいて、電気伝導率を測定をする実験の報告がされました。その結果から、内核の形成速度を見積もり、年齢を求めることができます。そこから得られた結果は、なかなか興味深いものでした。

 東京工業大学の太田健二さんと共同研究者が、Nature誌で報告した論文のタイトルは、
Experimental determination of the electrical resistivity of iron at Earth’s core conditions
(地球の核の条件での鉄の電気抵抗率の実験的決定)
というものでした。電気抵抗率(電子による電気の通しにくさ)の逆数をとると、電気導電率(電子による電気の伝わりやすさ)となります。この報告では、鉄を内核と同じ条件(温度と圧力)にして、電気伝導率を求める実験がなされたことになります。電気伝導率を決定した意味は、次のような理由がありました。
 金属内で、熱は自由電子によって伝わっていきまうす。熱の伝わり方は、熱伝導率です。熱伝導率は電気伝導率の値から求めることができます。熱伝導率で物質内の熱の伝わり方が決まってくると、内核の冷却速度を推定することができます。冷却速度が定まると、内核の形成時期が推定できます。
 理論としては、いくつかのステップは経るのですが、原理は簡単です。ところが、この条件で実験すること、なおかつその状態のまま測定することが難しいのです。これまで実験できていた条件はマントル内のものでしたので、その実験条件からさらに高温高圧条件側へと推定(外挿といいます)してきました。そこから得られた熱伝導率の値は、30W/m/Kというものでした。この30W/m/Kという値から推定される内核の誕生時期は、30億年前となりました。地質学的推定の「25億年前には内核も成長しはじめた」というものと似ていましたので、これでいいのではないかと考えられていました。
 その後、コンピュータによる計算実験がおこなわれ、内核の温度圧力状態では、鉄の熱伝導率が約90W/m/Kという、3倍も大きな推定値が示されました。この値では、従来の内核の冷却速度より3倍も速くなります。形成時期も、非常に新しい時代になります。
 実験の外挿とシミュレーションとの2つの方法による推定値には、大きな違いがありました。そこで太田さんたちは、内核の条件で実験をして、その状態で電気伝導率を測定することに成功しました。それが今回の報告でした。
 実験は、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル装置内に、収束イオンビーム加工装置で配線をほどこした試料をおいて、SPring-8で計測されました。その紹介と結果は、次回としましょう。

・SPring-8・
SPring-8は、兵庫県播磨にある理化学研究所の
大型放射光施設にある
Super Photon ring-8 GeVに由来しています。
SPring-8は世界最高の放射光を発生できます。
電子を光速近くまで加速します。
電子は電荷をもっていますので、
電磁石で方向を曲げることができます。
電子が曲がるとき、細く強力な電磁波(放射光)が発生します。
この放射光を用いて、微小部分の観察に利用されています。
今回の報告はこの放射光を用いてなされました。

・今日から調査・
今日から調査にでます。
今回は、4泊5日の調査になりますが、
実質は3日半の調査となります。
今日は昼前にでて、調査地近くまで移動し、
翌日からすぐに調査できるように予定しています。
今回で道南調査の3度目になります。
いくつかの集中的に調査する地点を見つけていますので、
そこを調査する予定です。
もう一回の調査の予定をしていますが、
それは確認のためとしています。
車で、4、5時間ほどで調査につけますので、
半日の行程で調査地に出向けるのは
なかなか便利です。
ただ、研究テーマに合う地域を見つけるのが難しいのですが。

2018年5月24日木曜日

3_168 核の姿 3:内核の形成時期

 地球の核について新たにわかってきたことが、2つあります。ひとつは、内核の形成された時代が非常に若いということ、もうひとつは核の成分に石英が混じっているいるということが報告されました。まずは、内核の形成時代についてみていきましょう。

 地球は、液体の外核と固体の内核があることは紹介しました。この内核と外核の形成はいつ頃かという話題について報告がありました。その前に、地球の冷却史を概観しましょう。
 地球ができたての頃は、小天体や隕石が頻繁に衝突、合体を繰り返していたので、地球は外から内部まで、高温の状態だったと推定されます。衝突がおさまってくると、冷却がはじまります。このエッセイで何度か紹介していますが、38億年前には海ができきていた証拠があります。つまり、地表は水が存在できるほどに、冷めていたということです。さらに同時期には、プレートテクトニクスが起こっていたこともわっていますので、地球の内部の冷却がすでにはじまっていたことになります。そして、25億年前には大きな大陸が形成され、コアの冷却に伴って内核も成長し始めたと考えられていました。しかし、内核の形成時期については、十分な証拠があるわけでありませんでした。
 液体の核が流動していれば、地球ダイナモ理論というものによって、地球では全体が磁石となり地磁気が形成されることになります。過去の地磁気(古地磁気と呼ばれています)は、地層や火山の磁気の測定から、その存在を知ることがきます。35億年前の岩石には、もう地磁気があったと考えられています。ですから、地球の初期にマントル(岩石部分)と核(鉄の部分)が分離していたと考えられます。
 プレートテクトニクスが働いて冷却がはじまると、ある温度(鉄が結晶化する温度)まで下がってくると、液体から固体が生じるようになるはずです。液体の外核の冷却によって、鉄が固化し沈殿していき、固体の内核ができてきます。内核は高温(5000℃から6000℃)なのですが、圧力が非常に高圧(360GPa以上)なので、鉄が結晶化します。
 核は中心から半径3500kmまではあるのですが、そのうち約1200kmは固体であることが、地震波からわかっています。これが内核となります。地球ではプレートテクトニクスが現在も働いていますので、今も冷却を続けていいます。内核は成長中なのです。
 固体の鉄が沈殿し始めてきたのが、内核の形成のスタート時期となります。実は内核の形成時期については、よくわかっていませんでした。Natureという科学雑誌に、2016年6月に
Experimental determination of the electrical resistivity of iron at Earth’s core conditions
というタイトルで掲載されたものです。詳細は、次回としましょう。

・エゾハルゼミ・
エゾハルゼミに鳴き始めました。
この声が聞えると、一気に初夏に突入です。
青空のエゾハルゼミはなかなかいいものです。
北海道も短い春が終わったのです。
昼間はかなり暑くなっていますが、
朝夕はまだ寒いくらいです。
さすがに、ストーブはもうたかないと思いますが。

・道南調査・
道南に調査に4回でることになりました。
一度目はゴールデンウィーク前半に
2度目5月中旬(先週末)に、
来月早々に3度目、4度目が7月上旬です。
一度目の調査でなかなか面白いところを発見したので、
そこを詳しく調査していくことにしました。
先週は、2回目では、最初の重要箇所を調査を終えて、
次回の3度目は、次なる重要露頭を集中的に調査する予定です。
4度目は、再調査のためにとっています。
詳細は、GeoEssayの方で紹介していきます。

2018年5月17日木曜日

3_167 核の姿 2:独立した証拠

 地球の核が金属の鉄でできている証拠には、どのようなものがあるのでしょうか。見たこともない地球内部の構成物を、どのようにして推定するでのしょうか。核の基礎知識編の続きとなります。

 核(コア)は地球の一番中心にあるもので、成分は金属の鉄からできていることがわかっています。とはいっても、だれも見たことがない地球深部のことです。どのようにして、鉄でできていることがわかるのでしょうか。その根拠を示していきましょう。
 地球内部を探る方法として、地震波を用いるものがあります。地震波には固体だけを伝わる波と、どんな物質でも伝わものがあります。地震波は、物質の性質により伝わる速度が違っています。その違いを詳しく調べて、内部を探る方法です。ひとつの地震で生じた地震波を、世界各地で観測し、詳細に解析していくとで、状態(固体か液体か)や、密度、温度などを、推定することができます。果物のスイカを叩いて中身の状態を確かめるようなものです。
 地震波の解析の結果、地球の中心部にはマントルよりもっと密度の大きく、温度の高い物質からできている核があることがわかりました。そのような物質は鉄に相当しています。同じ金属鉄でも、さらにその内部は、外側に液体の部分と、内側に固体の部分があることもわかりました。
 地球の外部からの証拠もあります。それは、隕石です。
 隕石は太陽系ができた頃の年代をもっています。隕石の中には、地球の材料となったと考えられるタイプ(コンドライト)のほかに、惑星の核を構成していたと考えられるタイプの鉄隕石もあります。鉄隕石は、金属の鉄からできています。これは他の石質隕石とはまったく違った構成物からできており、組織も違っています。さらに、核とマントルの境界にあったと考えられる石鉄隕石や、天体のマントルを構成していたと考えられるエイコンドライトと呼ばれる石質隕石もあります。
 惑星の核を構成してたものが、なぜ隕石として現在の惑星空間に存在しているのかは、なかなか難しい問題です。多分、太陽系の惑星形成の時期は、大量の材料物質があり、それらが非常に激しく衝突、合体していて、やがて微惑星ができ、さらに衝突、合体とともに、破壊もおこっていたようです。その激変は、非常に短い期間におこったと考えられます。各惑星軌道で残っているのは、軌道で最大の天体(惑星)だけとなり、周辺の材料物質はすべてその惑星に集まったことになります。
 しかしその当時の破片の一部が、今も小惑星帯に残っていて、隕石として時々地球に落ちてきているのです。
 このようないくつかの独立した証拠から、地球(他の惑星にも)の内部には金属の鉄からできた核があることが推定されています。そんな核について、新しい情報が出てきました。それは次回としましょう。

・エッセイの再編・
今回、メールの頭に掲載したのですが、
今後、「地球地学紀行」の項目は
今後新たに書かないことにしました。
それは、私が出しているもうひとつの月刊エッセイ
「大地を眺める」と内容が重複しているからです。
そしてどこかへ出かけた時のエッセイを
どちらで書こうか迷うこともあるので、
出かけた時のエッセイは、「大地を眺める」にまとめることにしました。

・南北の差・
もうゴールデンウィークが終わって10日ほどたちます。
西日本では夏日など暑い日が訪れているようですが、
北海道は涼して、自宅では1時間ほどですが、
ストーブを焚いたと家内がいっていました。
今でも時々短時間ですが
ストーブを焚くこともあるようです。
小さい日本列島ですが、
北と南ではだいぶ気候が違っているようです。

2018年5月10日木曜日

3_166 核の姿 1:層の構造

 情報としてしては、少し古くなりますが、2016年と2017年に核に関する新しい報告を紹介していきます。これらの報告で、核の姿がどのように見えてくるようになったのでしょうか。

 地球の中心にある核の話しをする前に、まず地球の構造について、概略をみておきましょう。
 地球の構造として、外(宇宙空間)から内側にむかって、磁気圏、大気、海洋、地殻、マントル、そして核となっています。生物は、海洋か大地と大気の境界付近に分布しています。それらの構成物が、球殻状に層をなしています。それぞれの層を構成している成分は、全く異なったものからできています。
 磁気圏は、地球の磁場が及んでいる範囲のことで、物質ではないので、層として捉えない場合もあります。大気は、気体で空気と呼ばれる成分からできています。
 海洋は、主成分は水ですが、海では海水で、陸地では淡水になります。この水は、不思議な性質をもっていて、太陽に温められると気体として水蒸気となり大気中を上昇していき、やがて冷えて氷や水滴となり雲を形作ります。また、凍ると氷となり氷河や氷床、海氷として、海洋や大陸に固体として存在します。固体の氷は、これまた不思議なことに、密度が水より小さくなり、液体の水(海)に浮いてしまいます。
 地殻を構成するのは岩石ですが、その種類は非常に多様で、同じ岩石名で呼ばれていても、その見かけはかなり異なっています。マントルも岩石からできていますが、地殻のものとは全く違ったカンラン岩と呼ばれる岩石です。核は、金属鉄からできています。
 このような地球を構成してる成分は、それぞれが非常に複雑なものになっています。しかし、このような多様な成分が、実は単純な原理で分布しています。それは、重いものは下、軽いものは上、という原理です。当たり前ですが、地球の重心は地球の真ん中(内部)にあります。そこから外に向かって、密度の大きいもから小さいものへと、順に並んでいるわけです。
 地殻を含めてそれより外側では、実際に物質を手にして、調べることができます。また、マントル物質も稀ではあるのですが、地表に持ち上げられているので、物質を手にすることができます。ずべてではないのですが、マントルまではなんとかその実体を知ることができます。では、地球の一番中心にある核が鉄ができるというのは、なぜわかるのでしょうか。もちろん、物質を手にすることはできません。それは次回から探求していきましょう。

・未知の固体地球・
人類は、宇宙空間に恒常的な基地をつくって、
そこに誰かが滞在しています。
月にもいったことがあります。
ところが、地球内部を進むのは、なかなか困難です。
深海の一番深いところへは、
潜水艇が何度か潜ったことがあります。
ところが、地殻へは、数kmしか人はもぐっていません。
物質として掘り抜いたのも、
せいぜい10km程度しかありません。
固体の地球には、未知の世界が広がっているのです。

・計画変更・
ゴールンウィークは調査で道南にでかけました。
思いの外、重要な露頭をいくつか見つかったので、
再調査をする必要になりました。
そこで、今年度の研究計画を変更の申請をしました。
その結果、道南には少なくともあと3回は
調査にいくことにしました。
研究の進行上、できるだけ夏前には
調査を終えたいと思っています。
今期は、月曜日に講義や校務がないので、
土、日、月の3日間の野外調査が可能となりました。
5月、6月、7月にそれぞれ3日ずつ
調査に出かける予定にしました。

2018年5月3日木曜日

2_159 恐竜の卵 3:化石と現生

 恐竜の卵の孵し方、温め方を、化石から、たどっていく研究について紹介しています。化石は限られた数、情報なので、現生の生物種からの類似性を利用しています。そこに、多様性の中の共通性がありました。

 現生の恐竜に類似した生物の生態から、恐竜の生態を探る方法を考えています。恒温性をもった鳥類は卵を抱いて育てます。ある種の鳥類やワニ類には、草の盛り上げて、その発酵熱で卵を温める方法を取るものもいます。また、地中の砂に埋め、太陽熱で温める方法もあります。このような多様な卵の孵し方は、恐竜も利用していたのではないかと、田中さんたちは推察しました。
 恐竜の巣の化石から、生態を調べてきました。ハドロサウルスの仲間には巣の卵と共に化石になっているものがありました。これは恒温性をもった恐竜が、卵を抱いて温めていた可能性があります。また、ある種の恐竜の巣の化石では、砂岩の中から見つかる種類があります。これは、砂の中に卵を埋めて、太陽熱や地熱を利用して温めていた可能性があります。その他にも、土の発酵熱を使うタイプの巣の化石も見つかっています。
 巣の化石からみると、恐竜の生態としても、現生の生物と同じほどの多様な卵の孵し方をしていたことがわかってきました。
 田中さんらは、さらに考察を進めて、現生の生態から、卵を温めている温度は、砂に埋め太陽熱を利用する巣では平均で3.9度気温より高くなっていて、発酵熱を使う巣では平均7.3度でした。これは、その地の平均気温に対応している可能性があります。太陽熱から発酵熱、抱卵の順に高緯度になっていることになります。ただし、抱卵はどの地域でも可能でしょう。
 化石の巣は数が限られ、引き出せる情報も限られています。しかし、そのような化石でも、似た分布が見つかっています。北極圏では、抱卵していた巣が見つかっていますが、発酵熱の利用しているものも見つかっています。これは、白亜紀後期には温暖化が起こっている時代なので、可能だったようです。
 このような研究で、昔の生物の恐竜にも多様な生態があることが明らかになってくると、私は、生物の多様性とその範囲に思いが至ります。生物の形態や生態の多様性は大きなものです。多くの生物種がいれば、目一杯の多様性を追求ていきます。それはどの時代においても、生物は同じような多様性を追求していきます。結果として、どの時代でも、生物の多様性は、環境や生態が許す限り追求していくことになります。それは時代を越えた普遍性、共通性へとなっていきます。不思議なものですね。

・道南調査・
ゴールデンウィーク前半は、道南に調査にでかけました。
天気には恵まれました。
内陸の調査はうまくいかなかったのですが
海岸沿いの調査はそれなりの成果がありました。
ただ、風が強くて、波が高く
近づけないこともあったので少々残念でした。
今年は、道南で調査を続けていく予定に変更しました。

・好きなこと・
ゴールデンウィークの後半は天気が悪そうです。
北海道は桜の満開の時期なのですが、
どうなるでしょうか。
でも今年はゴールデンウィークも半分は仕事です。
まあ、好きなことですから、いいのですが。

2018年4月26日木曜日

2_158 恐竜の卵 2:鳥とワニから

 過去の生物の生態を探るのに、現生の生物の生態の類似性を利用できます。過去の生物にも、そのような生態があったという根拠が必要です。その根拠は化石に頼るしかありません。

 恐竜の卵の温め方に対する報告がありました。名古屋大学の田中康平さんと北海道大学などの研究者と共同でおこなわれ、Science Reportに2018年3月に報告されました。そのタイトルは、

Nest substrate reflects incubation style in extant archosaurs with implications for dinosaur nesting habits

というものです。著者らが示してている日本語訳は、

巣の素材は現生主竜類の営巣様式を反映し、恐竜類の営巣方法に関する見識を与える

とういものです。難しい日本語訳ですが、簡単にいうと、現在生き残っている恐竜の子孫を参考して、恐竜の卵の温め方を推定していこう、ということです。
 鳥類は、恐竜の子孫であることがわかってきたことを、前回紹介しました。生物は、環境によりその生態も形態も変化し、それが進化へと繋がります。しかし、どこかに祖先の特徴や生態を残していることもあるはずです。そんな現在の生物の生態から、過去の祖先への繋がりを見出していきます。さらに、前回紹介した卵の化石の産状を詳しく調べて、恐竜の卵の育て方の様子の痕跡を探っていきます。それらを突き合わせて、もっともらしい卵の温め方を推定していこうというものです。
 まず、現生生物で恐竜の直系の祖先である鳥類から見ていきましょう。鳥類は恒温性の生物なので、卵を自身の体温で温め、孵しています。たとえ南極のような極寒のところでも、親鳥が温めて孵すことができます。
 恐竜の直系の子孫でありませんが、ワニの仲間も「主竜類」という恐竜と同じグループに属します。ですからワニの生態も参考になるはずです。鳥類と違ってワニは変温動物です。親が抱いて卵を暖めることはしません。ワニは水辺の生き物です。以前、フロリダに行った時、みることができたワニの巣は、水辺の近くですが、小高くなった陸地で水に浸からないところに草を盛り上げて、卵を産み付けていました。ガイドの説明では、太陽熱や有機物の発酵熱を利用していとのことです。他にも、地熱を利用する方法もあるようです。
 ところが鳥類の中には、時に子育てで横着をするものもいるそうです。ツカツクリという鳥は、盛り土をして、その中に卵を生みます。親鳥は卵を温めません。しかし、土に含まれている植物が発酵することで盛り土全体が熱を発します。ワニと同じ方法です。他にも、土に穴を掘った砂の中に卵を埋めるものもいるそうです。これは、卵を温める方法として、太陽熱や地熱を利用するものもいると考えられています。
 現生の鳥類やワニ類で卵の温め方を調べ、その結果発酵熱を使う巣では平均で7.3度も気温より高く、地中の砂に埋め太陽熱を利用する巣では平均で3.9度でした。
 つまり、恒温性のない生物でも、気温より卵をの温度を高くして孵す方法があるということです。では、恐竜は本当に、これらの温める方法を利用していたのでしょうか。化石からその根拠を見出すう必要があります。それは次回としましょう。

・主竜類・
本文中で、主竜類という分類をしめした。
主竜類とは、現生の生物では、ワニ、鳥類が
化石生物では恐竜や翼竜が含まれるものです。
爬虫類はもっと上の分類群になります。
ですから、鳥類と恐竜は同じ主竜類で近いのですが、
そのカメと鳥類やワニより
ワニと鳥類の関係の方が近いのです。
ですから、恐竜とワニ、鳥類との関係を調べることは
充分近縁なので、意味のあることなのです。

・週末からゴールデンウィーク・
今週末から、いよいよゴールデンウィークです。
私は、ゴールデンウィークの前半に道内の調査にでます。
観光地からは、はずれたところにいくのですが、
道中の道路の混雑が心配です。
調査地に入れば、混雑はないとは思うのですが。
あとは天気ですが、こればかりは心配してもしかたがありません。
その様子はエッセイで紹介きればと思っています。

2018年4月19日木曜日

2_157 恐竜の卵 1:鳥と恐竜

 恐竜の卵の化石は、恐竜展などに付随して展示されることがありますが、主役になることはあまりないようです。卵化石自体は、あまりインパクトがないので主役級にはなりませんが、研究では主役になることは度々ありました。

 鳥類は、あるタイプの恐竜の子孫であることは、だいぶ知られるようになってきました。鳥の生態から、恐竜の生態を窺い知ることは、ある程度はできることは容易に想像できます。しかしながら、鳥からは、恐竜の凄さがなかなか実感できそうにありません。
 一番身近な鳥は、フライド・チキンで見るニワトリでしょうか。フライド・チキンの骨は、人の歯にとっては固いものですが、豚や牛と比べると、非常に華奢です。これは、鳥が飛ぶために特化したためです。私たちが食べているニワトリは、飼育下で飛ぶことを諦めましたが、骨は華奢なままです。鳥類は恐竜の子孫ではありますが、骨の頑丈さもサイズも全く違っています。鳥からは、恐竜の巨大さを実感することができません。
 恐竜の化石から一番に感じることができことは、その巨大さや多様さでしょう。ところが、化石からは、恐竜の生態を知ることができません。
 鳥と恐竜化石のどちらにも、長短があるので、お互いで補いながら昔の恐竜を想像するしかありません。あるいは、現世の爬虫類の生態からも補っていけるでしょう。
 さて、本題の恐竜の卵についてです。卵化石は、1923年に発見されました。アメリカ自然史博物館の研究者たちが、モンゴルで初期の人類化石の調査をしている時、偶然発見したものが、最初の科学的記録とされています。それ以降、多数の卵化石が見つかっています。
 中国の雲南省では、約1億9700万~1億9000万年前(ジュラ紀前期)から卵の化石が見つかっており、最古とされています。その化石には孵化前の化石も含まれていというオマケもついていました。
 昨年末(12月1日号)のアメリカの科学雑誌サイエンス誌に、中国北西部で、翼竜の卵の化石が大量に見つかった、という報告もありました。その数は、少なくとも215個で、多分300個ほどの卵化石があるようです。その中には、非常に保存よい化石もあり、卵の中の胚があるものも16個、発見しています。まだ、岩石の中に掘り出せは見つかるのではないかと考えられています。この地層のあったところは、翼竜たちの営巣地だったことになるはずです。
 卵の化石は、形が「卵型」なので、サイズの違いだけで、親がどの種であったかを知ることは難しいものです。ところが、卵と一緒に化石になっている親恐竜の化石も見つかっていることから、ある程度は親と卵の様子を窺い知ることが可能となってきました。

・日本の恐竜・
恐竜の化石は、子どもにとっては
もっとも興味を引く存在ではないしょうか。
生きている動物にも興味がわくでしょうが、
恐竜の巨大さは、迫力満点です。
アメリカやカナダ、モンゴル、中国と比べると
まだまだ、見劣りがするのですが、
日本でもだいぶ恐竜化石が見つかるようになってきました。
そのためでしょうか、日本の恐竜研究者も最近は増えてきました。
化石が多産する地域や、恐竜研究の進んだところで
研究する人たちもだいぶ増えてきました。
そのようなところで経験を積んだ研究者が
日本での発掘を指導することも行われてきました。
恐竜は、子どもだけなく、大人にも魅力ある存在です。
恐竜の研究者が活躍する場が、
日本にも増えてきたのはいいことですね。

・北国の春・
北海道の春もかなり進んできました。
時々寒い日もありますが、
例年より春は早足できているようです。
そして、春になると、出かけたくなります。
多分、北国特有の気持ちかもしれません。
雪が溶けて、暖かくなってくると、
ついつい気持ちがウキウキします。
でも、桜には、まだ早いようですが。

2018年4月12日木曜日

6_153 ホーキング博士追悼

 ホーキング博士が、先月、お亡くなりになりました。ホーキング博士は、宇宙物理で大きな成果をいくつも挙げられており、世界中に知られている有名な科学者です。その訃報に接して思うことを紹介します。

 3月14日、イギリスの物理学者、スティーヴン・ウィリアム・ホーキング(Stephen William Hawking)博士の訃報が、世界中に流れました。ニュースでの報道、科学番組では特番もありました。でも、政治家や芸能人など比べて、その扱いが小さく思ったのは、私だけでしょうか。
 さて、私は地質学を専門としているので、物理学は外野から眺めるだけでした。一般向けの解説書を読んだり、ニュースを見聞きしたり、興味ある成果をエッセイで取り上げたりして、接している程度でした。ホーキング博士の偉大さは、専門ではないので詳細にはわかりません。その前提でお読み下さい。
 以前、彼の本「ホーキング、宇宙を語る」(1989)を読みました。日本だけでなく、世界的にも大ベストセラーになったので、読んだ方もいるかと思います。私はこの本で2つ点で感銘を受けました。
 ひとつ目は、一線級の研究者が、一般向けの本を書いたことです。執筆時点の46歳で、すでに「特異点と時空の幾何学」(1967)、「ブラックホールの蒸発理論」(1974)、「無境界仮説」(1983)など、重要な成果をいくつも発表されていました。超一流の理論物理学者でした。このような成果の評価は、多くの受賞歴が物語っています。なぜかノーベル賞の受賞のないのが残念です。有名な研究者にはノーベル賞を逃している人も何人かいますが、ホーキング博士もその一人でした。
 その一線級の研究者が、科学普及書を書いたのです。最近では多くの研究者が一般向けの本を書くようになってきました。その御蔭で、違う分野の一流の研究者から、現場の最新情報や生の研究生活の話などが聞けるようになりました。かつては、ほんの少しの研究者が、このような科学普及をしていたにすぎませんでした。学界では、一般向けの解説者になることは、一流ではないことのように考えられていました。今でもそのような傾向が残っているかもしれませんが。博士は、そんな貴重な先駆者の一人でした。
 もうひとつの大きな感銘を受けた点は、彼が病気を押して執筆したことです。病気は、あまりに有名な話しです。ホーキング博士は、オックスフォード大学卒業後、ケンブリッジ大学大学院に入学しました。入学から1年後の1963年に「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と診断されました。そして、余命2年と診断されています。当時、ALSは発症から数年で死に至るとされていました。治療の効果でしょうか、進行が非常の遅くなり、長年研究活動に従事されてきました。そんなALSの闘病中での執筆でした。執筆は不自由な状態で苦労されたと思います。
 そしてなんと76歳まで生きてこられました。ある時期から、意思伝達のためにコンピュータによる合成音声を利用されてきましたが、それもホーキング博士のアイデンティティになっていたように思います。
 ホーキング博士のご冥福をお祈りします。

・映画のホーキング・
2004年のBBC制作のテレビ映画「ホーキング」もありました。
私は、CSで見ました。
30歳位までの半生の物語です。
ベネディクト・カンバーバッチが
主演したことも有名になりました。
後の人生は、「博士と彼女のセオリー」で
描かれているようですが、私は見ていません。
いずれ見たいものです。

・アイス・バケツ・チャレンジ・
ALSで連想されるのは、
「アイス・バケツ・チャレンジ」です。
2014年にアメリカ合衆国で始まったALS支援運動でした。
有名人が、氷水を頭からかぶっている様子が
報道され、話題になりました。
これの活動はホーキング博士とは
直接関係がないかもしれませんが、
私には、関連付けられています。

2018年4月5日木曜日

4_147 登別の地獄谷

 3月の終わりに、校務の合間をぬって、久しぶり夫婦ふたりで温泉にいきました。車ですぐにいける登別温泉でした。初日に地獄谷を見学にいきました。何度か来ているのですが、ついつい地質に目がいってしまいます。

 先日、登別に久しぶり家内と温泉に浸かりにいきました。今年の北海道は雪解けも早く、3月下旬なのに高速道路は完全乾いていたので、走りやすくなっていました。昼にでて、途中で昼食をとったのですが、チェックインの3時より早くついてしまいました。暖かい日だったので、ホテルに荷物を預けて、温泉周辺を散策することにしました。
 登別は、地獄谷から大湯沼、倶多楽湖など、観光名所はいろいろあります。倶多楽湖と大湯沼の道は、閉鎖されていたでいくことはできませんでした。地獄谷へは入ることができるので、見学にいくことにしました。地獄谷の遊歩道には全く雪はなく、ハイヒールで歩いている外国人の女がいました。日陰や風は冷たいのですが、日なたは暖かいポカポカ陽気でした。ハイヒールの女性は、なんと半袖でいたので、家内ともども驚きました。
 春の陽気の地獄谷は雪がない分、地層の色合いがよく見えました。地獄谷を取り囲む山は、岩肌がでているため、地層の色がよく見えます。上部には腐食土でしょうか濃い茶色で、そしてだんだん茶色が薄くなってくる火山灰、一部黒っぽい溶岩を挟んで、淡い茶色からそして灰色の濃淡の火山灰へと変化していきます。単調な色合いが、地獄を想像させたのが地獄谷の由来でしょうか。地質学者には、結構いろいろな色が見え、それぞれの色の違いがどんな石や火山灰なのかが気になるところです。
 地獄谷には、温泉の湧いているところ、噴気のあるところが、多数あります。温泉が川の流れをつくっています。灰色の沈殿物のある流れと、硫化物でしょうか黄色から淡い黄色へと変化する沈殿物の流れなどもあります。温泉水にも、いろいろな成分の違いあることがわかります。これも地獄を思い浮かべる景観なのでしょうか。地質学者としては、こんな狭い地域に、温泉水で溶融物の違いあるということは、地下でどんな経路を経てきたのかが気になりました。
 木道の遊歩道を歩いていくと、行き止まりに間欠泉がありました。直径1mほどの池ですが、周囲にはいろいろな沈殿物の結晶ができてました。色も白、暗灰色、茶色などかなりカラフルです。その沈殿物の結晶もさまざまあり、なかなか面白いものでした。同じ鉱物の結晶だろか、それとも何種類かの結晶が混在しているのだろうか、気になりました。
 しばらく間欠泉が噴き出すを待っていたのですが、なかなか吹き出しません。諦めて帰ることにしました。ホテルと地獄谷の間に、泉源公園があります。この公園には、道路に下に間欠泉があります。行く時に見学したのですが、3時間ごとに50分ほど、8mほどの噴出するとのことで待つのは顕ました。行くときは静かだったのですが、帰途に運良く間欠泉が噴出していました。噴出しているのは、一面に水蒸気が漂っていることと轟音でわかりました。近づいていくと、硫化物の匂いがしていました。激しい温泉の噴出が、温泉街の中に起こっていました。
 夫婦で登別の観光を楽しみました。その登別の観光資源は、すべて火山に由来しています。火山の活動で温泉の経路が変われば、湧出量や成分も変わることもあるでしょう。登別の観光資源を支えているのは、活火山であることを忘れてはいけません。そして噴火に対する心構えや備えは必要です。
 家内との観光旅行のつもりでしたが、私は、ついつい地質や活火山を見ていました。

・温泉へ・
長男がこの春に独り立ちをして家を出ました。
また、3月下旬に次男がクラブの合宿で
1週間ほど出かけていました。
おかげで久しぶりに自宅で夫婦ふたりになりました。
子供が成長するまで、なかなか二人で
出かけることができませんでした。
、久しぶりに時間できたので、
夫婦で温泉でもいこうかということになりました。
家内が登別なら行きたいということなので、いくことにしました。
私は、時代村がいいかと思ったのですが、
家内は水族館に行きたいというので、
一泊して翌日にのんびりと水族館を見学しました。

・新入生・
大学はいよいよ新学期が始まりました。
今年は1年生の担任をすることになり
ゼミを持つことになりました。
久しぶりなので、戸惑いとワクワク感があります。
新入生は、最初はどれもこれも
はじめてのことばかりになります。
期待の反面、緊張と戸惑い、不安もあるでしょう。
来週からは授業もはじまります。
いろいろな先生のいろいろな授業、
大学特有のやり方など、
まだまだ緊張感や戸惑いがつづくことでしょう。
でも、教員として、新入生の期待を裏切らないように
精一杯勤めるしかありませんね。

2018年3月29日木曜日

5_155 深海から陸の環境を 4:周期性

 層状チャートには、堆積の周期性も記録されていました。周期性は天体の運動に由来することが多いはずです。ところが、どうもそれだけではない周期性もあるようです。もう少し複雑な要因が考えられました。

 前回は、池田さんたちの報告の重要な点のひとつ目を紹介しました。チャートになっているシリカの堆積量が、全海洋の9割を占めること、そのシリカは大陸に由来すること、を紹介しました。報告には、もうひとつ重要な点がありました。それは、
・シリカの堆積速度に周期性があること
でした。
 シリカの堆積速度の周期性として、10万年から3000万年のものがみつかっており、そこには、約2割から5割ほどの変動があるそうです。
 地球の地層などに見つかる周期の多くは、ミランコビッチ・サイクルと呼ばれる天体運動に由来するものだと考えられています。ミランコビッチ・サイクルは、地球の天体運動ですから、地球の過去の地層などから周期性が読み取れれば、どうのような天体周期に影響を受けたかを推定することができます。
 天体の周期には、公転の離心率の変化(約10万年、40.5万年、数100万〜数1000万年周期)、自転軸の傾きの変化(約4万年周期)、自転軸の歳差運動(約2万年周期)という3つの要因があり、それらが組み合わさって変動が周期性をもちます。特に公転の離心率の変化は、地球と太陽の距離に変化が生じ、日射量にも周期性がでてきます。例えば、離心率変動と自転軸の歳差運動が組み合わさると、夏の日射量が数%〜10数%変動するとされています。
 今回見つかった10万年から3000万年の周期性による変動は、予想される日射量の変化より、もっと大きなものになっていることがわかってきました。これは、層状チャートの周期性が、ミランコビッチ・サイクル以外にも別の要因が加わっていることになります。
 その要因として、池田さんたちは、「超大陸パンゲアのメガ・モンスーンに伴う大規模な降水量変動が、大陸風化速度を非線形的に増幅した」という仮説を提唱されました。
 層状チャートが海で堆積している時代は、陸はひとつの巨大な大陸(超大陸パンゲア)がありました。大陸(岩石)と海(水)では夏と冬の変わり目に、比熱の違い、あるいは温まり方の違いにより、全地球的な季節風、モンスーンが吹きます。夏に海を渡るモンスーンは、陸域に激しい降雨をもたらし、その巨大なものをメガ・モンスーンと呼んでいます。ひとつの巨大な大陸とひとつの海洋という配置では、陸地の熱容量が大きくなり、メガ・モンスーンになる可能性があるようです。激しい降雨は、大陸の風化や侵食の速度を速めます。このメガ・モンスーンが層状チャートの周期を増幅したのではないかというのが、池田さんたちの仮説です。
 これらを総合すると、次のような仮説がでてきます。中生代には超大陸と超海洋という配置があり、温暖な時期でもありました。層状チャートは、ミランコビッチ・サイクルにともなって起こったメガ・モンスーンが陸を激しく風化・侵食したことを記録している、という仮説です。この仮説には、何段階かの仮定があるので、今後、他のデータやより高精度のデータ、より精密なシミュレーションなどが望まれます。

・つかの間の休みを・
大学の学位授与式も終わり、
学科の教職課程の学生のための集中講義も終わり、
一段落の時期を迎えました。
ただし、これは教員としての立場です。
職員の方は、新入生のための準備が、佳境を迎えています。
役割分担でいたしかたがないことですが、
教員はこの間、少しだけ息抜きができます。
少し、休みだけをとろうと思っています。

・家族の形・
子ども成長、親の老化などにより
家族の形は、時間とともに変わってきます。
我が家は、子どもと母の両方で起こりつつあります。
子どもは1、2年の誤差があっても、計画がたち、
親も心構えができています。
しかし、親の老化は、いつくるかはわからず、
その時に対応するしかありません。
離れていると、関係各所に電話をして
対応するかしかありません。
電話は大きなツールです。
顔をみれない、現実の手助けができないなどの不便さがあります。
でも、時間的にも、かなり迅速に対応可能で、
家族用の携帯を母に渡しているので、経済的にも、助かっています。
母の状況は、よくなることはあまりないですが、
少しでも快適に過ごせるように
遠くからですが、手を差し伸べるしかありません。

2018年3月22日木曜日

5_154 深海から陸の環境を 3:シリカの循環

 層状チャートは、シリカが主成分となっています。そのシリカの地球での循環を考えると、海洋での層状チャートの堆積が果たす役割が理解できます。その役割を定量化するアイディアがあります。

 昨年、静岡大学の池田昌之さんと共同研究者たちが、イギリスの科学誌「Nature Communicationsに、
Astronomical pacing of the global silica cycle recorded in Mesozoic bedded cherts
(中生代層状チャートに記録された全地球的シリカ循環の天文学的周期)
という論文を報告されました。
 この論文では、層状チャートが大陸の風化速度の指標になるという可能性を指摘されています。本シリーズで示しててきた、層状チャートのでき方がその原理になっています。層の形成機構はまだはっきりしていないのですが、陸から遠く離れた遠洋で生物のシリカの殻が、深海底に堆積物してできたものがチャートです。
 池田さんたちは、岐阜から愛知にかけて分布している約2億5千万年前~1億8千万年前の層状チャートの堆積速度を調べました。その結果、2つのことが明らかになりました。
・チャートになっているシリカの堆積量が、全海洋の9割を占めること
・シリカの堆積速度に周期性があること
が、重要な発見となっています。
 ひとつ目の発見を見ていきましょう。海洋にあるシリカのうち、深海底でチャートになるのはどの程度なのか、そしてそのシリカがどこから由来しているかに関する発見が、ひとつ目の内容です。
 シリカの海底への堆積は、いろいろな堆積のメカニズムがあるはずです。砂粒が沈むようにシリカも海底に沈降、沈殿していくことがあります。もちろんプランクトンの殻として沈むこともあります。成分ごとに海水中の滞留時間や沈降速度など細かく検討していく必要があります。それを考える時、海洋だけでなく、大陸や大気、岩石の風化や侵食なども考慮して、全地球的に物質の循環を考えていく必要があります。このように成分ごとに、全地球的にどのような物質循環をしているかは、地球化学的数理モデル(改良版GEOCARBモデル)として計算していく手法があります。
 GEOCARBは、過去の大気二酸化炭素濃度を計算するためのモデルなのですが、炭素や硫黄、ストロンチウムの同位体組成などを利用しいて、池田さんたちは推定されました。過去2億5000万年間のシリカの挙動を計算して、層状チャートの堆積した時代の大陸風化速度を推定しました。すると、チャートになっているシリカは、9割が大陸由来であることがわかってきました。つまり、海洋のシリカは大陸の岩石が溶けて河川から海に流れ込んだものを供給源としており、大半が層状チャートになっていくようだということがわかってきたのです。ですから、チャートの堆積速度は、大陸の風化速度をみる指標となり得るのです。深海底のチャートの大陸が風化が結びついていたのです。
 2つ目の発見は、次回としましょう。

・学位記授与式・
先週末、大学では学位記授与式がありました。
大学全体で進めるセレモニーがあり、
その後は、学科ごとに学位を全員に授与します。
集合写真を撮影して、保護者を交えて歓談をしていきます。
小さな学科なので、学生の他にも
保護とも親交ができているので、
味わい深い学位授与式となります。
その後は場所をホテルに移して、卒業祝賀会、
さらに学科の卒業を祝う会と続きます。
4年生との別れを、一日かけて惜しむ
いい一時となりました。

・別れの儀式・
私は、学位授与式が終わると、
撮影した写真を整理しながら、
ゼミや関係の深かった学生に、
餞(はなむけ)の文章を作成します。
学位授与式やゼミの集合写真、
祝う会など写真も交えて作成していきます。
これが教員として、私から最後のメッセージとなります。
学生の顔を思い浮かべながら、書きます。
学位授与式から餞の文章の送信までの一連の作業が
私の4年生との別れの儀式になっているようです。

2018年3月15日木曜日

5_153 深海から陸の環境を 2:層の成因

 深海底でできたチャートは、陸地でもみられます。ただし、陸地では層状チャートになっています。そのでき方には、いろいろな説があるのですが、まだ決着をみていません。なかなか難しい問題です。

 前回、深海底で形成されたチャートが日本列島に見られる、という話をしました。陸地でみられるチャートは、層構造を持っています。そのため層状チャートと呼ばれています。層は珪質のチャートの間に薄い粘土をはさむことで形成されています。この構造が繰り返されることで、層状チャートができます。前回お話したように、チャートは深海底に堆積したプランクトンの珪質の殻が起源です。粘土は大陸から風や海流に運ばれてきた非常に小さい粒が集まったと考えられています。なぜ層ができるのか、なかなか難しい問題です。
 主流とされる説は、生物大絶滅説です。生物の大絶滅があると、プランクトンもいなくなり、その間チャートの堆積がストップします。絶滅の期間は、粘土だけが堆積します。やがて生物が復活していくると、またチャートが堆積します。大絶滅が繰り返し起こることで層構造ができるという説です。
 他の説としては、生物がある時期だけ一気に大繁殖していくという説、他のところに溜まったチャートか粘土か、深海底を移動してたり、混合物が移動して堆積時に分かれて堆積するなどの説が有力です。他の説もありますが、今のところ、根拠が弱かったり、可能性が低かったりします。
 有力な説は、それぞれで根拠を示され、それに対応する露頭がわかっているところもあります。ですからそれぞれが対等の可能性なので、また成因が決着がついていない状態です。いずれにしても、層の形成には、なにか大きな事件が起こっていることだけは確かなようです。
 さて、チャートのもととなるシリカとは二酸化ケイ素からできています。二酸化ケイ素は、岩石の主要な構成成分です。大陸の花崗岩類には7割以上、海洋の玄武岩でも5割ほど含まれています。チャートの素材の二酸化ケイ素は、チャートの下の地殻にも一杯あります。しかし、地殻は岩石からできているので、二酸化ケイ素として海水に溶け込む必要があります。そして、プランクトンは海水に溶けて海の表面付近にある二酸化ケイ素を、殻の材料として取り込みます。たくさん使ったとしても、なくなることはありません。ですから、海に常に、二酸化ケイ素が常に供給されている必要があります。
 シリカの地表の循環を調べると、その多くは大陸の風化により河川から海に運ばれたものだという研究が報告されました。つまり、深海底に堆積したチャートが、巡り巡って、大陸の風化に関係があるということです。その詳細は次回としましょう。

・露頭に惚れる・
現在、私は層状チャートを調べています。
露頭で層構造がきれいに見えるところが最適です。
それぞれの露頭が、どのような成因でできたのかを
認定していくのは不可能です。
でも、野外で見事な層状チャートを見ると
圧倒され、大いに感動します。
そして気に入った露頭には何度も通いたくなります。
ただし、一般の人にはその露頭が
どうみえるかわかりませんが。

・学位授与式・
明日、学位授与式です。
大学では大きなホールでセレモニーがおこなわれ、
その後学科ごとに行事が行われます。
私の所属している学科では、
卒業生に全員に学位記を手渡しします。
今回で私からは最後になります。
保護者のかたも多数出席されますので、
厳かな雰囲気の中、
全員への思いを噛みしめることができます。
その後は大学の祝賀会、そして学科の祝う会という
お楽しみになります。

2018年3月8日木曜日

5_152 深海から陸の環境を 1:チャート

 日本列島でよく見られるチャートは、特徴がある岩石なので、量は多くはないのですが、目立つ石になっています。チャートは、どこで、どうしてできたのかなど、不思議に思えます。そんなチャートから覗く陸の様子はどう見えるのでしょうか。

 深海底は、生物も稀で、冷たく変化も少ないところです。地球上でもっとも安定した環境といえるかもしれません。それでも、地球の時間の流れでみると、少しですが、変化は起こっています。
 海の表層に暮らしていたプランクトンが死んだり、排泄したものが、沈んでいきます。それがマリンスノーと呼ばれるものです。死骸や糞などの有機物は、分解して海水中に溶けていきます。ところが、殻や外骨格、骨格などの硬い部分は残っていきます。
 プランクトンの殻は、大きく分けると炭酸塩(炭酸カルシウム)かシリカ(二酸化ケイ素)からできています。溜まった環境にもよりますが、深海の環境では、炭酸塩からできた殻は、長い時間がたつと溶けてしまいます。ですから、深海底には生物の殻としてシリカだけが残ります。陸から離れた大きな海洋では、陸からもたらされる堆積物は非常に少ないので、シリカだけが堆積します。やがて、固化したものがチャートと呼ばれる岩石になっていきます。
 チャートの堆積量は非常に少なく、地層で1mmの厚さの量がたまるのに数千年かかるほどのスピードと推定されています。しかし、地球には長い時間が流れていますので、それなりの厚さのチャートが形成されます。
 チャートの堆積している場を考えると、大きな海洋の環境を知る上で重要な証拠となるはずです。深海でできたチャートですが、その一部は陸地に持ち上げられています。海洋プレートが海溝で沈み込む時に、海洋地殻の一部が剥ぎ取られて、陸側に付加するというメカニズムが働いています。それが、深海底のチャートが陸地でみられる理由です。このような付加作用は、プレートテクトニクスの一貫として起こっています。
 日本列島は、付加作用が古くから起こっているところで、さまざまな時代のチャートが分布しています。ですから、チャートを調べることで、過去の地球の海洋域の様子を探る材料が、簡単に入手することができるという、地の利があります。
 深海底で形成されたチャートですが、日本列島でみられるチャートは、層状になっています。そのため層状チャートと呼ばれています。その形成メカニズムについては諸説あるのですが、それは次回としましょう。

・春は近い・
北海道は、激しい天候の急変が続きます。
先日は非常に暖かい嵐で、雪が一気に溶けました。
一転、寒い日がきて吹雪となり、冬に逆戻りです。
でも、春は着実に近づいています。
少々荒っぽい変動ですが、
春への移り変わりなのでしょうね。

・恒例行事・
3月は、国公立の入試と後期試験、
私立大学は最後の入試が行われています。
そして卒業式があります。
毎年の恒例行事ですが、
大学の構成員の4分の1が入れ替わります。
まあ、教職員も少しは入れ替わりますが。

2018年3月1日木曜日

3_165 ダイヤモンドの年齢 4:2つの年代

 ダイヤモンドの包有物の年代測定は、小さい上に微量でなされます。その上試料が高価でもあります。でもその年代値には、お金では買えない科学の価値があります。それを理解してくれる人たちも必要になりますが。

 オランダのアムステルダム自由大学のKoornneefと共同研究者は、南アフリカのヴェネティア(Venetia)ダイヤモンド鉱山から産出した26個のダイヤモンドで年代測定をしました。その年代は、太古代の29億5000万年前で、予想通りの古い年代でした。ところが、もうひとつの年代を示すダイヤモンドのグループがありました。その年代が原生代中期の11億5000万年前のものでした。
 一つの産地から2つの年代のダイヤモンドが見つかったことになりました。それも一方は予想されていた古くもので、他方は非常に新しい年代でした。これは、これまでの結果とは違った年代でもありました。年代の解釈が問題となります。
 先行研究で示さたようにダイヤモンドには、いくつかの化学組成の違いがありました。それらのグループのうち化学組成の多様性が大きいもので、新しい年代がえられたのです。ですから、著者らは、以前の研究でえられた23.0億年前という年代が、これら2つの年代値が混合した「見かけの年代」だと考えられるとしました。この論文で示した2つの年代が、ダイヤモンドの本当の年代を表しているということを主張しました。
 では、2つの年代に、どのような意味があるのでしょうか。
 この大陸の下のマントル(キンバーライトが由来したもの)では、太古代(29億5000万年前)に、ジンバブエ・クラトン(Zimbabwe Craton)の南の端の大地溝帯(大陸の分裂するところ)で流体の混染(汚染)作用を受けてダイヤモンドができました。これが古い年代のダイヤモンドの由来となります。
 その後、原生代中期(11億5000万年前)に、大規模なウムコンド大規模火成活動(Umkondo Large Igneous Province)によって、流体による混染作用が起こりました。その結果、以前に形成されていたダイヤモンドの化学組成が、大きく変更し、それに伴って年代値にも変化が起こりました。ただし、データを見る限り、この地域では、このようなダイヤモンドの年代を変更するような出来事は、一度だけだったと考えられます。
 先行研究の数で勝負の研究では、多様性を把握し分類するために必要なものでした。しかし、今回のように、詳細で精度の高い分析による研究は、より深い理解につながります。先行研究の成果に2つ目の研究の成果があります。

・科学への貢献・
この論文で用いられたダイヤモンドは
デビアス社から寄贈されたものだそうです。
宝石として利用できないものですが、
価格としてはそれほど高価ではないものだと思いますが、
いずれしてもデビアス社は太っ腹です。
科学への投資は、無駄にはならないことを
よく理解しているのでしょうか。
ダイヤモンドの起源や成因が明らかになることは、
長い目で見れば、今後ダイヤモンド業界にも
きっとメリットがあるはずです。

・カメのよう・
もう3月です。
大学は、卒業と新入生を迎える準備に入ります。
そして在学生には新年度のために
実習の事前準備もあります。
月日の流れは速い。
それに比べて私の歩みは、遅い。
成したいこと、成すべきことは
多々あるのに、遅々として進まず。
でも、月日の進みを嘆くよりは
ただカメのように歩み続けるしかないのです。

2018年2月22日木曜日

3_164 ダイヤモンドの年齢 3:ガーネット

 ダイヤモンドに不純物が入っていると、宝石には不向きなになります。しかし、地質学者にとっては、その不純物がありがたい情報源となります。ただし、情報は数も必要ですが、質も必要になります。

 ダイヤモンドは、地球深部の特別な環境でのマグマ形成、そして特別な噴火でできました。そのような特別な条件は、地球の初期のマントルでないと達成できないと考えられてきました。そのためには、ダイヤモンドのできた年代を調べればいいのですが、炭素からできたダイヤモンドの年代をどうして測定するのでしょうか。
 炭素の放射性同位体を用いた年代測定があります。この年代測定は、大気中の炭素で放射性同位体が、植物に取り込まれて改変していく性質を利用した方法です。地下深部では、この放射性同位体はできません。それにこの炭素で放射性同位体は、半減期が5730年なので、高い精度で測定しても約6万年前までのものにしか使えません。
 では、どうすればダイヤモンドの年代測定ができるのでしょうか。タイヤモンドの結晶には、不純物として他の鉱物が含まれていることがあります。そのような不純物を利用しようとする方法です。このような不純物は、地質学では包有物(inclusion)と呼ばれます。包有物は、ダイヤモンドに取り込まれているのですが、すでにあったものか、ダイヤモンドと同時にできたことになります。ダイヤモンドの上限の年代を示しているはずです。
 包有物の中にガーネットと呼ばれる結晶があります。高温高圧条件で形成され、地表でも安定に存在できます。この結晶には希土類元素の仲間が比較的多く含まれます。希土類元素の内、ランタノイドとよばれる仲間(周期律表の下に付いている別表の一列目にある元素列)に、サマリウム147(147Sm)という放射性同位体があります。これを用いた年代測定法があります。147Smは半減期が1060億年もあり、古い時代の鉱物・岩石の年代測定に利用できます。
 壊れてできる同位体のネオジウム143(143Nd)も希土類元素です。SmもNdも同じ希土類元素なので、長い時間がたっても挙動を共にしやすく、ガーネット自体も頑丈で安定した鉱物です。147Smから143Ndへの改変を年代測定に用いる方法は以前から、Nd-Sm法として確立されています。小さい結晶の微量な成分での年代測定は、非常に難しいのですが。
 実は、ダイヤモンドに不純物や割れ目などの入ったものは、宝石には適していません。ですからこのダイヤモンドを研究用に利用することは、なかなか有効だと思えます。
 以前にも同じダイヤモンドで研究がされました。多数のガーネット(400個)を用いて調べられたものでした。ガーネットは、4つの化学組成のグループに分けられました。そのうち3つのグループで求められた平均的な年代値は、23.0億±0.4億年前というものでした。原生代の初期の年代であり、これまで予想されていたものとは違っていました。ただし、化学的に違たグループのダイヤモンドで、年代を決めているので、その年代の意味も定かでありません。もう少し厳密な年代値での議論が必要だと考えられていました。
 詳細な年代値が、今回紹介している論文で示されました。いよいよ最後のエッセイでその正体と意味を。

・システム改善・
年代測定では、分析精度が非常に重要になります。
なぜなら求めた年代より誤差が大きければ、
その年代は意味をなさないからです。
昔はそんな分析もよくありました。
小さい試料、微量の試料になるほど、
分析精度を上げることが難しくなります。
同じ分析方法で測定していこうとすると、
どうしても一定以上に精度をあげることは難しいものです。
少しずつでの改善では、大きな精度改善にはなりません。
測定システム全体の変更をするほどの、
思い切った改革が必要になります。
私は、年代測定でそんな経験をしたことがありました。
大変でしたが、新しい手法なのでワクワクしました。

・帰省・
明日から1週間ほど、実家に帰省します。
母のことで、母や親族といろいろと相談しなければ
ならないことがでてきました。
この時期にまとめて休みをとるのは大変でしたが、
他の人に仕事をお願いしての帰省となりました。
親も高齢の上で独居でもあるので、
このようなことは仕方がないことでもあります。

2018年2月15日木曜日

3_163 ダイヤモンドの年齢 2:キンバーライト

 ダイヤモンドは、非常の特殊な条件を満たす場所が必要になります。でも自然界には、そのような条件を満たすキンバーライトがあります。そしてダイヤモンドは今でも採掘されています。

 前回、地球深部でダイヤモンドができる条件として、材料の炭素が多いこと、固い結晶をつくるためには高温高圧でなければならないこと、できたダイヤモンドが石墨に変わらないうちに高速で上昇してくること、などがあることを紹介しました。これらすべてを満たした時、宝石になるようなサイズのダイヤモンドが形成されることになります。そんな難しい条件を満たすものとして、キンバーライトと呼ばれる火山岩がありました。ここまでが、前回の話でした。
 キンバーライトは、大陸地域でも古い時代に形成された地域で活動しています。マグマの特徴としては、玄武岩よりもっと鉄やマグネシウムの多い成分で、カンラン岩質マグマと呼ばれるものです。このようなマグマは、マントル深部でできたものです。
 ダイヤモンドを含むキンバーライトは、地下150kmほどの深さのマントルで形成されたマグマが、高速で上昇してきたことになります。ガスの成分が多いマグマであれば、上昇とともに圧力が大きくなり、そのような挙動を示すことになります。他にも証拠として、形成された周辺のマントルの岩石(カンラン岩、エクロジャイトなど)を取り込んでいること、高速で上昇中に下部地殻の岩石を取り込んでいること、マグマの通り道が細い筒状(パイプと呼ばれる)になっていること、などが挙げられます。
 キンバーライトには、ダイヤモンド以外にも雲母や炭酸塩鉱物、蛇紋岩などを含んでいます。これらの鉱物の存在は、炭素以外にも二酸化炭素、H2O(水の状態とは限らない)などが多い場であったことを示しています。これらの成分は、軽くて揮発性の高い成分となります。二酸化炭素やH2Oは、キンバーライト・マグマをつくるのに必要だったと考えられます。
 ところが、揮発性成分は地球の初期に地球表層に抜けてしまい、現在のマントルには、少ないと考えられます。キンバーライトの存在は、現在のマントルとは矛盾した性質をもっていることになります。これらを説明するためには、古い時代の大陸地域にのみ、キンバーライトが活動しているという特徴が重要な意味を持つことになります。地球を形成史た素材には揮発性成分がもともと含まれていました。ですから、マントルには、地球初期にはもともと多く含まれていたと考えられ、時間とともに地表に出ていったとすれば、古い時代の大陸からだけダイヤモンドが見つかるという特徴も説明できます。
 ですから、もしダイヤモンドの年代測定をしたら、古い時代のものになるはずです。ダイヤモンドの年代は、30億年前くらい(太古代)に形成されたものだと考えられていました。ところが・・・、次回としましょう。

・端境期・
大学は、今がちょうと端境期(はざかいき)です。
後期の講義も試験、成績評価も終わりました。
学生には来週に公開されます。
大学入試の第一弾も終わり、
採点もすみ合否判定をして、合格発表となります。
4年生は、もう気持ちは社会に向いています。
でも、私のいる学科では2年生や3年生が
教育実習の準備でピリピリしています。
そんな端境期です。

・季節外れの帰省・
来週は忙しくなります。
週末から1週間ほど実家にもどります。
母といろいろ相談することがでてきたからです。
いろいろな相談がうまくできればいいのですが、
母も高齢なので順調に進むかどうが心配です。

2018年2月8日木曜日

3_162 ダイヤモンドの年齢 1:炭素

 昨年秋、ダイヤモンドに関するおもしろい報告がありました。ダイヤモンドができた年代は2つの時期があることがわかりました。それが新しい年代なので話題となっています。

 ダイヤモンドは、炭素からできている鉱物です。炭素が集まった結晶は、地表付近では石墨(グラファイト)という鉱物になります。石墨は炭素同士が六角形(六方晶系)に連なっているのですが、層状の構造をしており、層間は原子間に働く弱い力(ファンデルワールス力)で結びているため剥がれやすく、柔らかい結晶となります。爪で削れるほどの柔らかい結晶で、かつては鉛筆の材料として使われていました。
 ダイヤモンドは炭素が非常に強く結びついているので、硬い結晶となっています。炭素原子同士の結合なのですが、ひとつの元素を中心に正四面体の頂点にも元素が共有結合してます。このような結晶を等軸晶系晶と呼んでいます。天然のものでは、もっとも硬い物質です。その硬さのため、宝石としてだけでなく、工業用の研磨剤としても重要な役割があります。
 ダイヤモンドが地球で形成されるには、まず炭素が集まっていること、固く結びついた結晶になるために高い圧力や温度の形成場が必要になります。
 炭素は、地球の表層に多くあります。生物はそれを利用しています。ところが、地表の炭素の多いところは、温度圧力は低く、石墨や有機物しかできません。温度圧力を上げるような自然条件としては、隕石が衝突したような場でなければなりません。実際に隕石衝突のクレータでダイヤモンドが見つかっています。しかし、その量もサイズも小さいもので、宝石や工業用として利用できるものではありません。
 宝石として昔から利用されているダイヤモンドは、地下深部で形成されたものになります。炭素は地球深部にはあまり多くない元素ので、特殊は環境でないと形成されません。そのような場が少ないのですが、深部には存在しているようです。さらに、厳しい条件として、深いところでダイヤモンドができたとしても、石墨に変わることなく地表にまで上がってこなければなりません。通常の火成活動や造山運動などは、ゆっくりと上昇してくるので、ダイヤモンドの結晶は石墨に変わってしまいます。
 このようなダイヤモンドのできかたから、非常に難しい条件が整わなければならないです。実際にダイヤモンドが産出しているのは、限られた場所と、限られた岩石種からだけです。それは、古くに形成された大陸地域で、そこのみで活動したキンバーライト(kimberlite)と呼ばれる火山岩から見つかります。火山岩ですから、マグマが地表に上昇してきたものです。このマグマがダイヤモンドができる環境、条件を満たしているところをとなります。
 その説明は、次回としましょう。

・計画的に・
2月は、入試は採点などがあり、
なかなかお持ち使い時です。
でも講義がない時期なので、
研究に集中できる時期もあります。
2月は短いので、しっかりと計画や目標を定めて
仕事を進めなければなりません。
現在、次の著書の執筆を進めています。
並行はできないのですが、
次の論文も書き進めていく予定です。
ですから2月中の大物を概略を
終わらせておきたいのですが、
どうなることでしょうか。

・祝う会・
4年生と卒業を祝う会の準備を進めています。
毎年学科ではおこなっているのですが、
人数が毎年変わるので、
会場探しがなかなか大変です。
でも、今年は詳しい学生もいて、
皆積極的に動いてくれるので、
私は、見ているだけですみます。
4年生も、学生生活で最後のイベントなので
はりきっているようです。
うまくいくように願っています。

2018年2月1日木曜日

6_152 重さの単位 4:プランク定数

 質量の基準を、人工的な物質に頼るのではなく、物理定数に置き換えるために、人工的物質を精度良く測定ることが、おこなわれています。その測定から、定数を正確に決めていくことになります。

 質量を正確に測定するために、同位体組成がはっきりとしている元素(ケイ素)の単結晶の真球を基準にすることにしました。この真球の質量は約1kg、直径は約94mmですが、その質量とサイズを正確にはかっていきます。
 まず質量は、日本のキログラム原器と比較して、超高精度の真空天秤を用いて測定されました。ただし、このケイ素の球の表面には、非常に薄いのですが(数nm程度)の酸化膜などが形成されてしまいます。その膜の厚さと組成を決めて置く必要があります。そのために、X線光電子分光法と分光エリプソメトリーを用いたシステムを開発して、非常に高精度で厚さ(0.1nmの精度)と組成を測定していきます。純粋なケイ素でない部分のデータで測定して、補正をおこなっていきます。
 サイズの測定は、レーザー干渉計という装置を用いています。この装置は、レーザー光線で光の1波長より短いサイズとなる1nm以下を測定することが可能な装置でです。2000箇所(さまざまな方向から)で直径をはかっていきます。その精度は0.6nmになり、これは結晶の原子間の距離にあたるほどのものです。これにより球の正確な体積がわかります。
 もちろん温度が変化すると体積が変動するので、球の温度も精密に測定されています。その精度は、6/10000°Cとなっています。
 皮膜の補正をされた正確な質量、正確な体積から、密度が計算できます。ケイ素の結晶構造とモル質量は、すでに正確に測定されているので、その値を持ちれば、正確な質量が得られます。このようにして求められた精度は、2×10^-8になるといいます。この精度は、1kg当たり24µgになります。これは、国際キログラム原器の現状の精度が50µg程度(5×10^-8)だと考えられているのですが、それより半分以下の精度となります。
 質量を求めるのが目的ではないのです。その精度が重要になります。なぜなら、今回紹介した研究がケイ素の真球をキログラム原器の代わりにしようとするのではないからです。
 長さの単位が、メートル原器から、光が真空中を伝わる⻑さを基準になりました。光速という定数が、長さの基準になっていることになります。質量も同じように、物理定数に基準を移行しようと考えられています。
 その方法には、アボガドロ数に基づくもの、プランク定数に基づくものなど、いろいろなものがあります。アボガドロ数、またはプランク定数が、現在の質量の精度より正確に求められれば、それが質量の基準になるのです。
 今回の研究では、精密な測定からプランク定数を正確に求めることが目的だったのです。2.4×10^-8という精度は、現状では世界最高水準の精度で決定したことになります。キログラム原器以来、約130年ぶりとなる質量の定義が改定できることになります。その決定は、国際的に機関(国際度量衡総会)がおこなわれます。
 2011年10月の国際度量衡総会の時のデータは、当時もっとも精度のよかった値と、2つの測定値が7桁目で異なり一致しませんでした。そのため決定は見送られました。そしてこの会議のとき、「キログラムの大きさは、プランク定数の値を正確に6.62607XX × 10^-34Jsと定めることによって設定される。」ことが決められました。XXのところを正確に決めるということです。プランク定数を正確に決め、そこから質量を定義することにされました。
 今回のデータも含めて、いくつかの測定値をもとにして、今年2018年11月の会議で、プランク定数の値が決定されることになります。

・2月になると・
早いもので、もう2月です。
1月はセンター試験、大学の後期講義の終了、
学科の4年生の卒業研究の報告会、
そして定期試験も終わりました。
次は大学入試の時期となります。
バタバタしていますが、講義がないときなので
隙間時間に仕事ができるのが、ありがたいです。

・ライフワーク・
最近、研究上のライフワークとして
なにを今後していくのかについて再考しました。
そして、いくつかの修正を加えました。
いつもこの時期に自身の研究について
考えることにしています。
そのきっかけは、学内の競争的資金の申請が
この時期にあるからです。
それを獲得するために、
来年度の研究をどうするのかについて考えています。
長期計画と来年度の計画をいつもこの時期におこないます。
なかなか楽しい時期もであります。

2018年1月25日木曜日

6_151 重さの単位 3:ケイ素の真球

 重さは、なかなか厄介な単位でが、これまでキログラム原器を、なんとか使ってきました。しかし、新しい重さの単位への期待も高まります。新たに正確に決める方法は、これまでのすべての技術の集大成となります。

 現在の質量の単位は、正確にはかったオモリを基準したものです。でも、これはいろいろな問題があることを、前回までのエッセイで紹介しました。科学者たちも、この状態は十分に理解していてて、新たな方法を模索しています。
 他の方法もいろいろ考えられますが、かなり高度な技術が必要になります。安定した元素を基準にするのは、いい考えです。現在、元素一個を操作する技術はあります。しかし、1つの元素の質量を正確に測定する技術はありません
 ある一定量の元素を集めて、その数を正確に数えることができれば、理想の質量の単位にできるはずです。この方法は、原子量と1molを基準にすることで、今までのものとは全く違った考え方になります。
 原子量とは、相対的に決めた原子の質量です。どれかの元素を基準にして、その比率とります。例えば、水素は原子量が1とすれば、炭素は12となります。ただしこれは比率なので、質量にするには、原子をアボガドロ数(6.02214179×10^23)個、集めれ、1molとすれば質量になります。水素1molなら1g、炭素1molであれば12gとなります。同位体がある場合は、その比が正確にわかっていれば、補正は可能です。
 しかし、原子を10の23乗個分、正確に集めたり、その数を正確に数えるのは不可能です。そこで、体積から正確な元素の数を推定し、mol数を決めていきば、質量の基準になるという方法が考えられます。
 体積は、正確な長さの測定さえできれば、長さの精度に応じて決めることができます。ただし、正確な形状をつくって、体積から元素の数を正確に計算できる状態(物質状態)をつくっておく必要があります。
 基準とするには、ひとつ元素からできた均質な物質が必要です。さらに、元素の数を正確に決めるためには、原子が規則正しく並んでいる結晶、それも単結晶が理想的です。単結晶であれば、体積から元素の数を正確に見積もることができます。
 今回、報告されたのは、産業技術総合研究所の工学計測標準研究部門と同部門の質量標準研究グループ、物質計測標準研究部門、表面・ナノ分析研究グループが共同でおこなった研究の成果です。
 元素として、ケイ素(シリコン、Si)が用いられました。ケイ素は、原子番号14です。地殻中に多く、元素としても安定しています。自然界では、同位体として質量数28が92.18%、29が4.71%、30が3.12%という比率になっています。
 半導体物質としても利用されているため、既存の技術が応用できます。現在、純度としては、99.9999999999999%(15・9(Nine)が15個並ぶ)まで高める技術があります。今回の測定では、質量数28のケイ素だけを99.99%まで濃縮して、単結晶がつくられました。
 ケイ素の単結晶の形状を、真球にしています。その真球の凹凸が、正確に測定されました。その精度と結果は、次回としましょう。

・後期の講義の終了・
大学の後期の講義が全て終わり、
定期試験が始まりました。
学科では、卒業研究の報告会もありました。
今週は、校務の会議や打ち合わせ、
出張などがいろいろ校務が入り、
なかなか忙しい一週間となります。
でも、講義の負担がへることは
精神的にだいぶ楽になります。
隙間時間ではなく、集中して研究に没頭できます。
そんな貴重な日が2月ほど続きます。
今から、ワクワクしています。

・大学4年生の心は・
大学の後期の授業が終わると、
4年生の多くは、最後の大学生活の自由を
満喫するのでしょう。
気持ちの中には、
卒業してからの社会への不安と期待、
新しい環境への適応の不安と新天地へ期待
これまでの経験が、社会で試される不安
そして新たな体験への期待
いろいろな気持ちが混在しているのでしょう。
4年生の心は社会に向かいます。

2018年1月11日木曜日

6_148 重さの基準 1:水が基準

 体重を量るには体重計に乗り、重さを量るのはハカリを使います。当たり前のことですが、考えると疑問があります。例えば、ハカリの目盛りを、どのように決めているのでしょうか。目盛りの基準が正確になるかも知れないという報告がありました。

 重さを量る時の単位は、グラム(g)やキログラム(kg)です。重さには、物質が本来持っている属性としての「質量」という意味と、地球の引力(重力)のもとで量った「重さ」という意味もあります。
 同じ物を同じハカリを用いたとしても、違う天体で量ると、目盛りの指す値は違ってきます。これは、引力が違うからです。バネばかりを想像するとわかりやすいかもしれません。地球でも、場所によって引力が異なっているので、厳密に測定すると示す値が違ってきます。これが私たちがいつも量っている「重さ」というものです。
 もうひとつ、物理学で用いる「質量」というものがあります。「質量」は、物がもともと持っている属性です。動かそうとるするときの手応えとして感じるものです。宇宙のどこにいっても、この動きにくさは、その物がもっている本来の性質となります。
 では、質量の単位で1kgという値は、どう定義されているのでしょうか。これが今回の話題です。
 バネを利用したものだと、引力の影響を受けて、場所によって違ってきます。質量を量るときには、引力に影響されない方法を用いなければなりません。とはいっても、量る方法の仕組みは簡単です。質量の基準となるオモリがあれば、それと比べていけばいいのです。天秤とオモリを利用した量り方です。小学校でおこなった、上皿天秤を用いた量り方も、この方法です。
 では、オモリの質量は、どのようにして決めたのでしょうか。おおもとになったオモリのことです。ある時点で正確に量って決めなければなりません。
 かつての質量の基準は、水1リットルを1kgとしました。正確には、「最大密度における純水1リットルの質量」です。水の最大密度は、水温が4℃のときのものです。かつてはこの条件を満たしたものを重さの基準としていました。
 しかし、これにはいくつか問題がありました。
 質量を量る時には、4℃に設定した水1リットルを用意しなければなりません。これは大変な手間を要します。水を入れる容器も温度変化して体積が変わります。正確に量るには問題になります。
 さらに大きな問題がありました。大気圧下と温度を一定にした条件で量ることになるのですが、気圧や温度を正確に測定することが必要になります。ところが、気圧は質量が関与した単位となっています。質量の基準を決めるのに、質量を用いた条件が必要になります。ここに矛盾があります。
 この基準は問題があるので、1799年に変更され、現在の「キログラム原器」と呼ばれるものになりました。「キログラム原器」は次回としましょう。

・冬休み明け・
大学もスタートしました。
でも、すぐにセンター試験があるので、
講義は一時休講になります。
正月は終わって、急に慌ただしくなります。
これから3月までは、通常の授業に加えて
卒業研究の発表会や
いくつもの入試がはじまり、
慌ただしさが加わります。

・冬の雨・
北海道は冬になっても、
晴天率は少ないようです。
先日は、雪が降ったと思ったら、
雨が降りました。
この時期に雨は珍しいものです。

2018年1月4日木曜日

3_161 海の水の寿命 4:課題

 海水が6億年後にはなくなる、という推定を紹介しました。しかし、そこにいくつかの課題もあるようでうす。このような課題が、学界に議論を呼んで、科学を進めていくのでしょう。

 沈み込む海洋プレートにともなって、海水が地球深部に入り込んでいきます。一方、絞り出されて地表に火山などで戻ってくる水もあります。深部に入っていく水の量と戻ってくる量がわかれば、収支が計算できます。
 これまで沈み込む水は、海洋地殻に含まれているものだけによるものだとされていました。ところが、海洋プレートのマントル部分にも水が含まれることがわかってきました。マントルの含水量も見積もり加えると、かなりの水が地球深部に入っていくことがわかってきました。6億年後には、海水がなくなる可能性が指摘されました。
 ここまでは前回まで紹介したことでした。この見積もりには、いくつか問題があるように思えます。実は、似たようなモデルが、以前に唱えられました。
 6億年前ころから、地球の冷却が進み、沈み込む海洋プレートの含水鉱物が分解されることなく、地球深部に沈み込んでいくことになるという考えがありました。この時の証拠は、高圧変成帯の変成鉱物の時代変化をみていくと、明瞭な違いありました。6億年前ころから、海洋地殻の含水の変成鉱物が、地球深部にまで分解されずに入り込むことになります。そして、海水が一気に減少し、海水面が200mも低下したというモデルが唱えられたことがありました。
 その時、私は、いつかの課題があると考えました。ひとつは、マントルに急激に水が入り込むと、マントルの物性が変化しマントルの状況が変わること、その後もそのペースで海水が減っていくと海水がなくなってしまう可能性があること、などでした。これらの課題をどう解いていくかということになります。マントルに水が入ると対流の速度が変わったり、プレートの厚さが変わる可能性もあります。降下プルーム(コールドプルーム)の形成条件が変わり、それに連動して、大規模な火成作用の状況、海洋プレートの形成速度も変わっていくはずです。そのような異変は、地球史に記録されているはずです。それが検証されるかどうか、という疑問でした。
 今回のモデルでも、似たような疑問があります。海洋プレートへの水の浸透は、論文での現象であれば、いつでも起こりうることです。ですから、プレートテクトニクスで常に起こる現象なら、なぜ今も海水があるのか。現状に至るモデルとしてどのようなものがあるのか、気になるところです。
 現在の状態は動かしがたい事実です。もし海水が見積もり通りに減っているでのあれば、過去へ遡ると海水は昔ほど多くかったはずです。ある時以前は、地球は水惑星だったはずです。しかし地球には、陸地でしかできない地層が、38億年前から現在まで見つかっています。ですから、陸がすべて沈むほどの海水はなかったことになります。
 現在から過去の遡った時、ありえない過去が見えるのであれば、なにかが、どこかが間違っているはずです。ある時代に含水量に大きな変化があったのではないか、見積もり間違っていないかなど、議論すべきことろがあるはずです。
 しかし、このような新しいアイディアは、面白いものです。いろいろな議論を沸き起こして、その真偽の確認を進めてもらいたいものです。

・正月・
正月の三が日、我が家では朝に
お雑煮を家族で食べています。
元旦には初詣にもいきます。
元旦はよるは我が家では贅沢な食事を自宅でとります。
2日の夜は、知り合いの中華屋さんに
家族で食事にいきます。
3日は近くの温泉にいきます。
これらを毎年のようにおこなっています。
これが現在の正月の恒例となっています。
でも、家族の形態が変われば、
いずれは変わっていくのでしょう。
のんびりと三ヶ日を過ごしました。
北海道も雪は降りましたが、
比較的穏やかな、年の初めとなりました。

・英気を養う・
私は、4日から大学に出て仕事を初めていきます。
大学の講義は9日からスタートですが、
私には急ぎの仕事があるので、
それをこなさなければなりません。
そのための準備で早目にでています。
年末年始で、5日も、のんびりとした時間を過ごしたのは
昨年の正月以来でしょうか。
英気を養えました。