2017年12月21日木曜日

3_159 海の水の寿命 2:アウターライズ断層

 海の海溝から少し離れた海側に、地形的な高まりがあり、アウターライズと呼ばれています。その高まりは、断層によってきできたものでした。この断層には、別の重要な役割もあることがわかってきました。

 海は、少なくとも38億年前から、そして現在まで、継続的に存在していた可能性があります。一時、全球凍結などで海の機能をなくしていたこともあるのですが、長い地球史から見ると、そればささやかな不在期間といえるでしょう。
 では、海の水はいつまで存在し続けられるでしょうか。これは、海に関する未来予測です。どのように予測していくでしょうか。原理は簡単です。現在のプレートテクトニクスで水の収支をみて、それを未来に延長していきます。
 現在の地球で海水がなくなるのは、マントルの中に取り込まれていく作用が大きいと考えられています。一方、沈み込む海洋プレートからは、マグマの形成や火山活動などによって、地表に戻される水もあります。いくつもの火山の噴気で水蒸気の起源を調べると、化学組成から海水に由来することがわかっています。それらは沈み込む海洋プレートから絞り出されたもののようです。この海洋プレートに沈み込み伴う海水と、地表に戻される水の収支が、見積もれれば、海水の未来が予測できるはずです。
 水の収支の見積もりは以前にもなされていたのですが、海洋地殻にどの程度水が取り込まれるかとして、考えられていました。海洋プレートの海洋地殻だけでなく、マントルにも、どの程度の水が取り込まれるかを検討したのが、今回の報告です。その検討から、海水の、思わぬ未来が見てきました。
 海の水の未来についての論文は、2017年10月24日、イギリスの科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。筆頭著者は広島大学の畠山航平さんで、博士課程の大学院生の方でした。タイトルは、
Mantle hydration along outer-rise faults inferred from serpentinite permeability
(蛇紋岩の浸透率から推定されるアウターライズ断層沿いのマントルの含水)
というものです。
 このタイトルには、いくつか難しい言葉があります。まず蛇紋岩ですが、もともとカンラン岩という岩石が、変質で水を多く含んでしまったものです。カンラン岩は、マントルを構成している岩石です。つまりマントルにもし水がたくさん入り込んだた蛇紋岩なっていく可能性があります。
 海底の地震探査によって、海溝付近のアウターライズ断層で水を含む領域が、広がっていることがわかってきました。アウターライズ断層とは、海洋プレートが沈み込む時、海溝より海側に盛り上がっている地形(アウターライズ)があります。その地形は、断層(アウターライズ断層)によってできています。この断層は、プレートが沈み込む時折れ曲がるので、その時引っ張りの力によりできる断層(正断層と呼ばれます)です。アウターライズ断層は、マントルまで達しています。断層にそって水が入り込んでいくと、マントルに達します。以上のことから、海洋マントルに水が浸透している可能性があることが指摘されていました。
 そこで、畠山さんたちは、千葉の嶺岡帯と海洋地域(パレスベラ海盆、マリアリ海溝、トンガ海溝)から得られた蛇紋岩を用いて浸透率を調べました。その結果は、次回としましょう。

・予行演習・
今年の我が大学の最後の授業は、26日です。
この日は、私の4年生のゼミでは
卒業研究の発表会の予行演習をすることになっています。
大変だった卒業研究の執筆から
時間があまりたっていなのですが、
私のゼミの学生は、予知通りのペースで仕上げてくれました。
執筆の方はなかなか順調でしたが、
発表の方はどうでしょうか。
まあ、予行演習しておけば、
安心して年越しができでしょう。

・師走・
現在、本の初稿の校正をしています。
そこそこのページ数なので、
時間もかかるので手間どっています。
なんとか今週中に終わせなければなりません。
次なる2つの論文の締め切りも近づいているので
のんびりとはできません。
毎日ぎりぎりのスケジュールで
その時その時を過ごしている気がします。
師走だからでしょうかね。