2017年11月9日木曜日

2_155 最古の生命化石 3:グラファイト

 今回の報告は、変成作用を受けた堆積岩からのものです。そこにあった生物の痕跡が消されたものでした。しかし、それで諦めるこなく、多数の分析値から面白いアイディアで生物の痕跡に迫っています。

 いよいよ今回、最古の生命化石の実態を紹介していきましょう。
 カナダのラブラドルに分布しているサグレック岩体と呼ばれる古い地質帯の中に含まれているヌリアック(Nulliak)表成岩と呼ばれるものであります。表層岩とは、地質学(第四紀や応用地質では違う意味に用います)では、主には地球表層でできた堆積岩類ことを指します。特に古い時代の岩石の生成場として、重要性を強調するためにいうことがあります。
 この岩体では、すでに年代測定が行われており、39億5000万年前の堆積岩であることがわかっています。堆積岩を詳しく調べていくと、グラファイトが残っていることがわかってきました。いく種類かの堆積岩やその中に含まれているノジュール(団塊)のグラファイトの詳しく調べ、分析されています。
 さて問題はこちらの岩体は変成作用を受けていることです。もともと生物の形態を化石として残していた岩石があったとしても、変成作用を受けると、その形態がほとんど消えてしまいます。なぜなら、変成作用を受けると有機物が分解してしまうからです。有機物とは、炭素の他に水素や酸素がくっついてできているのですが、変成作用で起こる脱ガスで、炭素以外の軽い元素が一緒に抜けていきます。そのために、変成作用を受けてしまうと、有機物からできている形態や成分などの痕跡が消えてしまうのです。
 今回の報告は、その点で工夫をしています。有機物や化石の形態の消失というハンディと思われる性質を逆手にとって、非常にユニークで、面白い方法を提案しています。
 変成作用で有機物が消失すると、残った炭素はグラファイトという鉱物になります。変成作用で形成されたグラファイトを詳しく調べると、変成作用における温度の履歴が読み取れることは、以前から知られています。グラファイトの結晶化のとき、推定される温度は、536˚C以上であったことがわかりました。これは、他の変成鉱物から見積もられた、580~800˚Cという変成温度と一致しています。
 このことから、堆積岩中のグラファイトは、変成時に外からもたらされたものではなく、もともと岩石中にあった有機物が変成作用によって変わったものだということになります。グラファイトの化学成分(炭素同位体比)は、変成作用によって大きな値へと変化していきます。ですから、一番低い値は、より堆積岩時代の値に近いことになります。
 一方、炭酸塩岩で無機的(生物が関与せずに)できた化学成分(炭素同位体比)は、変成作用とともに小さな値へとなることも知られています。炭酸塩岩でも、炭素同位体比を測定して、その変化から初期的(変成作用を受ける前)の値を見積もることができます。
 つまり、同じ炭素同位体組成ですが、無機的起源と生物起源と違ったものでは、変成作用によって、まったく逆の値の変化がおこることになります。2つの値を比べると負の相関ができます。これは、生物起源でも無機起源でも、変成作用を受ける前の値を、多くの分析値があれば、見積もることが可能だということになります。
 では、それらの値から、いったいどのようなことが、読み取れるのでしょうか。それは、次回としましょう。

・ノスタルジー・
11月はいくつか祝日がありますが、
私は、4年生の卒業研究の添削のために、
祝日でも大抵は大学にでています。
土曜日も、ほぼ毎週でています。
もちろん、学生の添削のためだけでなく、
自分の仕事もすることになるのですが。
私が働き出した頃は、また土曜日が半日出勤というのが
当たり前の時代がありました。
その時代へと戻ったと思えばいいのです。
あの頃は、もっと生きるのが大変でしたが、
どこか明るさがあったような気がします。
単なるノスタルジーでしょうか。

・冬タイヤ・
北海道のわが町でも、何度か雪が降り、
遠くに見える山並みは、
もうすっかり雪化粧になっています。
木々の紅葉もほぼ終わり、
多くの木は裸になってしまいました。
いよいよ冬の到来です。
我が家の車は、先月の激しい嵐があったとき
積雪もあったので、冬タイヤに替えました。
来週と再来週には遠出の出張があるので、
慌てて冬タイヤにしようとすると、
混んでいることがあるので、
早目に履き替えました。
でも、雪道の運転は怖いのです。