2017年11月2日木曜日

2_154 最古の生命化石 2:一長一短

 これまで見つかっている最後の生命化石とする報告で確実なものは35億年前のものです。それより古い化石は、証拠や根拠には、一長一短があり、確定にはいたっていません。そんな最古の化石のこれまでの現状をまとめました。

 前回、最古の生命化石が発見されたという新たな報告があったということを紹介しました。目新しいこととして、発見場所がカナダであること、年代は39億5000万年前で非常に古いこと、変成作用を受けた岩石から見つかったことを挙げました。いずれもこの化石が本物であったら、最古だけでなく、特異な化石の発見の情報となります。
 今回の報告の特徴を示すために、これまでの最古の化石についての情報をまとめておきましょう。
 多くの人が化石で生物だと認めているものは、西オーストラリアのノースポールの約35億年前の化石でした。生物の形態も炭化物として残しており、細胞分裂をしているような状態もありました。一般の人がみても化石だと思えるような画像として提示されていました。もちろん、形だけでな根拠が足りないので、化学的なデータもつけられており、科学者たちにも根拠を提示しています。生息環境は深海底の熱水噴出孔周辺で、初期生命の誕生の場と考えられるところでもありました。
 前回も紹介しましたが、グリーンランドのイスアでは、38年億前ころの地層が分布しているので、最古の生命探しにいつも登場するところです。最近の報告では、37億年前の岩石から、生命がつくったらしきストロマトライト状構造が見つかったというものがありました(エッセイ「最古の化石」にて紹介)。ストロマトライト状構造とは、25億年前ころの浅海でできた地層から大量に見つかる同心円状のつくりをもった岩石です。シアノバクテリアという種類の生物がつくった構造だとされています。ですから、グリーンランドの38年億前ものも、生物がつくったものでないかという報告でした。ただし、まだ確定はされていません。
 西オーストラリアのジャックヒルにある堆積岩から、花崗岩(火成岩)中でできた41億年前のジルコンという鉱物が見つかりました。マグマからできた鉱物なのですが、そこに生命の痕跡があったと報告がなされています(エッセイ「41億年前の生命」にて紹介)。しかし、生物の存在の傍証とはなりえますが、直接の証拠とはいえません。また、どんな生物であったか、どんなところに棲んでいたのかも不明です。
 カナダのハドソン湾東岸沿ヌブアギツク帯の地層で、チューブ状やフィラメント状(繊維状)になっている鉱物(赤鉄鉱)が見つかりました。このような形態の鉱物は、熱水噴出孔に棲んでいる生物群に見つかるものと似ています。化学的な証拠も提示されていました(同じくエッセイ「41億年前の生命」にて紹介)。でも、生物の直接的な証拠ではありませんでした。さらにこの地層の年代が、37億7000万年前より以前、多分42億8000万年前のものではないかとされていますが、時代が定っているわけではありませんでした。
 いずれも古い岩石で、生命の痕跡も非常かすかなもので、認定がなかなか難しくなります。ですから、どうしても反論がでてくることも多くなります。西オーストラリアのノースポール以外は、かすかな痕跡ですから、それぞれの主張に一長一短があり、なかなか確定には至らないようです。
 さて今回の報告ですが、2017年9月27日発行のNature誌に
Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada.
(カナダ、ラブラドルの39億5000万年前の堆積岩からの初期生命の痕跡)
というタイトルで掲載されたものした。報告者は、東京大学大学院生の田代貴志さんたち、若手を中心とする研究グループでした。
 この報告の詳細は、次回以降としましょう。

・思いを巡らすだけ・
古い化石の出る産地には興味があります。
グリーンランドのイスアには
以前行ったことがあるのですが、
海外調査にはほとんど出れなくなりました。
ですから、今回登場した、
西オーストラリアのジャックヒルや
カナダのハドソン湾東岸沿ヌブアギツク帯
など、行きたいところは
一杯あるのですが、行けません。
せいぜい論文にでている露頭写真をみて
現地に、思いを巡らすだけですね。

・冬の到来・
週初めは、台風の影響でアラレや雨が降り
風も吹き、寒くて、ひどい荒れ模様となりました。
里でも薄っすらと雪化粧をしてました。
すぐに溶けはしたのですが、
秋も終わってしまったようです。
朝夕は当たり前にストーブをたくようになりました。
いよいよ冬の到来を感じさせる季節となりました。