2017年10月5日木曜日

4_143 残念 2:天鳥の褶曲

 今回の調査では、天気が良かったのに、断念した露頭がありました。台風による激しい波浪のために行けなかったところでした。そんな心残りの露頭を紹介しましょう。

 私には、何度も訪れたくなる露頭があります。その理由は、いろいろなのものが考えられるのですが、ひとつは見事な地層が露出しているところです。事前に写真などで見ていることもあるのですが、やはり実物を見る時に感動できるようなものです。もうひとつは、どうも私は人があまり来ないところを好むようです。そしてたどり着くのに少々大変なところに、より心を動かされるようです。
 そんな露頭として、和歌山県西牟婁(にしむろ)郡すさみ町の口和深(くちわぶか)の天鳥(あまどり)の褶曲があります。以前にも紹介したことがありますが、周辺には天鳥の褶曲以外にもいくつか褶曲があります。でも、私は天鳥の褶曲が気に入っているので、この近くに来た時は、見に行くようにしています。
 国道からヤブに入ってくのですが、目印もありません。そして踏み跡を下りていき、海岸に降りるのには少々険しいところも通ります。海岸にでても、海岸沿いを少し進むのですが、波があると渡れないところを越えなければなりません。このような苦労してたどり着いた先に、天鳥の褶曲があります。その大変を乗り越えた先に見ることできるので、より一層その貴重さ、不思議さを感じてしまうのかもしれません。
 今回も干潮図を見ていきました。しかし干潮が早朝なので、昼過ぎが満潮だったので、できるだけ早目に着くようにしたかったのですが、別の地域を巡っていったため、少々時間がかかりました。たどり着いたのは、昼前になっていました。でも、目的地を目指しました。
 なんとか海岸に下りましたが、11時を過ぎていました。天気はよかったのですが、台風の影響で波が荒くなっています。露頭を目指そうと海岸沿いを進んだのですが、波が荒くて近づけそうもありません。でも諦めきれないので、別のルートを探ることにしました。踏み跡を途中までもどって、今まで進んだことのない道を行くことにしました。
 天鳥の褶曲より東に降りるところは、以前に来たことがありました。そこは急な崖を降りて進んでいくと、海岸の反対側から天鳥の褶曲にたどり着けます。しかし、今日は波が高いので諦めました。
 踏み跡を東に向かってさら進むことにしました。海岸に出ました。今まで来たことのない海岸でした。波は高いのですが、奥まった入江になっているので波は来ません。そして、露頭もあり地層を見ることができました。そこにもサイズは小さいのですが、いくつか褶曲がありました。目的のものとは違っていたのですが、褶曲をみることができ、収穫となりました。
 しかし、そこの褶曲は、天鳥のものと比べると、やはりスケールも形も見劣りしました。天鳥の褶曲は3回目指して、2回たどり着きましたが、今回は断念しました。ですから次のチャンスがあれば、再訪したいですね。

・秋の足音・
北海道は、紅葉が進んでいます。
9月末には、旭岳や利尻で初雪の知らせがありました。
わが町から見える手稲などの山並みには、
まだ積雪も冠雪もありません。
そういえば、雪虫も飛んでいませんし、
まだ霜も下りていません。
でも、先週末はストーブを焚きましたが。
着々と秋は深まっています。

・付加体・
海岸沿いの調査では、干潮の影響もあるので、
毎回、事前に干潮図を調べていきます。
しかし、今回は台風による激しい波浪のために断念しました。
今回の天鳥の褶曲は、
四万十帯の牟婁(むろ)層群に属しています。
四万十帯は、付加体として、
沈み込む海洋プレートの陸側にできた地質体です。
詳しくは、エッセイ「109 天鳥の褶曲:嫋やかな褶曲」
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/2014/109.html
をご覧にいただければと思います。