2017年8月10日木曜日

2_150 オルドビス紀末の大絶滅 4:水銀の濃集

 水銀が地層に濃集しているという現象が、なかなか厄介な問題です。それは、異常な現象だと思われます。なぜ地層に濃集するのかを考えるために、通常の作用ではないことを示しておく必要があります。

 前回のエッセイで、オルドビス紀末の大絶滅に、新たな原因を示した論文があり、そのキーワードとして、米中、3層準、水銀があったことまでを紹介ました。
 米中、3層準、水銀とは、オルドビス紀に大きく離れた地点(米中)で、それぞれで共通に3つの違った時代(3層準)に、水銀が地層中に濃集するという現象(水銀)が見つかったという事実を、キーワードにしたものでした。これらのキーワードに示された事実を、どう説明するかが課題となります。
 水銀濃集が3つの層準で起こっていました。地殻で水銀は(0.08~0.05ppm)と非常の少ない成分ですが、濃集部は地層の値と比べて、数倍多くなっています。周囲の地層と比べると水銀の濃集は、目立ったピークになる値を持っています。ただし、そこにはいくつかの特徴があります。データを見ると、この増加は少々複雑なものになっています。
 最初(もっとも古い)の濃集は、南中国のデータは試料がなくてわかりませんが、アメリカでは起こっており、時代名称よりオルナタス異常(Ornatus Anomaly)と呼ばれています。この異常は、何度も繰り返して水銀の濃集がおこっています。少なくとも目立ったピークは2つ、小さなピークがいくつかあります。
 次は、オルドビス紀末期(ヒルナンティアン期、Hirnantian)にヒマンティアン(Hirnantian)氷河期があるのですが、はじまる直前(後期カティアン期、late Katian Age)に短期間で急激な増加が、アメリカでも南中国でも起こっていています。一度だけの現象ですが、明瞭で急激な濃集で、時代名称より「上部パシフィカス異常(Upper Pacificus Anomaly)」と呼ばれています。
 最後が、氷河期の間に、南中国では水銀の濃集が度々おこっています。ところが、アメリカでは小さな濃集はあるのでは、明瞭ではありません。
 3つの濃集といっていますが、単純な濃集ではなく、分析のグラフをみると何度かの繰り返しのピークや、短期間で強烈なピークなど複雑な濃集のパターンが含まれています。その濃集メカニズムでは、このような不規則のパターンを説明できなければなりません。
 では、水銀が、なぜ濃集したのか、そのメカニズムを考えていきましょう。
 通常の堆積作用では、水銀の濃集は起こっていません。水銀を堆積物に濃集するメカニズムとして、論文では、一つの可能性を示しています。海洋では有機物の水銀が結合することで濃集するという報告があることを紹介しています。堆積物中に有機物が増えることで、水銀が増加することがあります。有機物が多く堆積していれば、水銀の濃集の原因が解明されたことになります。
 その効果を見るために、論文では、有機物の堆積量の指標として全有機炭素(total organic carbon、TOC)という値を用いられています。調査された時代では、TOCの量の変化はバラバラで、水銀の濃集とあまり相関はないように見えます。その相関を明瞭にするために、水銀とTOCの比(Hg/TOC)もグラフにされています。水銀の濃集時にHg/TOCが変化せずTOCだけが増加すれば、有機物の増加が原因となるはずですが、そうはなっていませんでした。3つの水銀濃集層では、Hg/TOCも大きな値をもっています。このことから、水銀が海洋中に多く供給されたためと結論付けられたことになります。
 では、水銀はとこから来たのかという疑問となります。次回としましょう。

・水銀・
水銀は、常温で液体の金属で、
熱による膨張率が大きく、
かつては体温計などに使われていました。
ただし、毒性の強い金属なので、
漏れると危険な物質となります。
現在では、デジタル体温計が普及したので、
家庭ではほとんど見られなくなりました。
身近なところでは、医療用の機器やランプに使われています。

・帰省中・
現在、私は、帰省中です。
このエッセイは予約送信をしました。
家族で家内の実家の横浜と、
私の実家の京都に連続して帰省してます。
家内と長男は横浜で1泊のみで帰宅。
次男と私は、私の横浜から京都へ移動しての3泊となります。
飛行機のチケットは入手しているのですが、
横浜の京都のJRがのチケットは
まだ購入していませんでした。
お盆直前の帰省ラッシュで乗り物が混みそうなのですが
失念していました。
急いで購入したいと思っていますが、
どうなるでしょうか。
無事に京都までたどり着けているでしょうか。