2017年4月6日木曜日

2_146 最古の化石 3:熱水噴出孔

 もうひとつの化石発見を紹介します。その場所は、カナダでした。グリーンランドより古い時代の可能性のある堆積岩からでした。ただし、時代はまだ確定していません。

 最古の化石として、最近いくつかの発見があったということで、このシリーズをスタートしました。ひとつは、前回紹介したグリーンランドのものでした。その報告の真偽の程は、まだ確定していないとことも話しました。私も少々疑念持っている一人です。それは、産状がストロマトライト状の岩石であったことでした。
 グリーンランドの化石は、ストロマトライト状の岩石からでした。ストロマトライトとは、シアノバクテリアがつくった構造をもつ岩石でず。同心円状の縞状構造を持っています。シアノバクテリアは光合成をする微生物です。光合成は複雑な化学反応の過程を経なければなりません。そのため、光合成生物にいたるには、進化にある程度の時間が必要だと考えられます。その点が最古の化石に関する大きな疑問点となります。
 では次に、もうひとつの最古の化石の報告を紹介しましょう。ネイチャー誌(Nature)の2017年3月2日号に発表されたものです。カナダ、ケベック州のハドソン湾東岸沿に分布するヌブアギツク帯(Nuvvuagittuq)から見つかりました。報告したのは、イギリスのロンドン・ナノテクノロジー・センター(London Centre for Nanotechnology)の大学院生ドッド(Matthew Dodd)さんとその共同研究者たちです。論文のタイトルは、
Evidence for early life in Earth's oldest hydrothermal vent
precipitates
(地球で最も古い熱水噴出孔の沈殿物中の初期生命の証拠)
というものでした。
 最古の化石の根拠は、次のようなものでした。化石とされているものは、ミクロサイズの赤鉄鉱のチューブ状やフィラメント状(繊維状)になっています。このような形態は、現在の熱水噴出孔にいる微生物や新しい岩石から見つかる生物群集に似ているそうです。また、化石に接している、いく種類かの鉱物の炭素の同位体組成も、生物起源を示唆しています。ある物質の炭素の同位体は生物起源であるかどうを決め手にされています。ドッドさんたちは、このような根拠を集めていくと、海底の熱水噴出孔の環境で、生命活動があった証拠になるとしています。
 ここで注目すべきは、化石が見つかっているという場所(産状)です。熱水噴出孔の沈殿物の中からでした。熱水噴出孔という環境は、最古の生物の生存環境として納得しやすいところだからです。
 現在、多く人が化石だと認めているのは、西オーストラリアから見つかったものです。その生物が生きていた環境は、深海底の中央海嶺の熱水噴出孔やその周辺の熱水の通り道でした。このような環境は、地球の初期に多数存在し、一番生物が発生しそうなところとしても、現在でもっともシンプルな生物(古細菌の仲間)が暮らす環境としても、熱水噴出孔がもっともふさわしいと考えられるところです。今回の化石の見つかった環境は、オーストラリアのもとの似た熱水噴出孔でした。その点では、大いに期待できます。
 今回の化石の年代は、地質学的な推定では、少なくとも37億7000万年前、多分42億8000万年前のものではないかとされています。化石の年代が、まだ確定していない点です。最古というためには、不可欠な情報となります。もし37億年前であっても、最古の化石となりますが、まだ推定の域をでていません。

・新学期・
いよいよ4月になりました。
我が大学の入学式は、4月1日におこなわれました。
土曜日だったので、行われました。
保護者の方々は出席しやすいのですが、
新入生は、日曜日に休んでから、ガイダンスに入ってきます。
その後、一週間休むことなく、ガイダンスから講義に入っていきます。
緊張を強いられますが、
このように新入生の新学期がスタートするのでしょう。

・古い堆積岩・
最古の生物に関する話題は、
常にグリーンランドが中心になります。
理由はこれまで何度も述べてきたように
最古の堆積岩があるところだからです。
新しい発見には、毎回、新しい方法が用いられたり、
新しい情報などが付け加えられて報告されます。
今回は、今までは氷床下にあったものが、
新たに露出して見えるようになったところからでした。
カナダからの報告では、
より古い(?)堆積岩が見つかりました。
そのからの報告になります。
もし時代が最も古いと決まれば、
ここが古い化石探しのメッカになるかもしれませんね。