2017年3月2日木曜日

4_134 日豊の旅 3:海洋プレート層序

 大分県の南の佐伯市の鶴見半島に調査にきました。付加体を構成している海洋プレート層序の代表的な岩石を見ることが目的でした。予定していた露頭へのアプローチはできなかったのですが、道路沿いでいい露頭を見ることができました。他にも思わぬサプライズがありました。

 大分県の海岸線を南下していくと、宮崎県に接する町、佐伯(さいき)市になります。周辺の5町3村が、2005年に、佐伯市に合併しました。祖母山から豊後水道まで、非常に広い市となりました。調べたら、九州では、最も大きな面積を持つ市町村となっているようです。
 佐伯市には、豊後水道につきでた半島があります。鶴見半島と呼ばれています。海岸の北側には県道604号線が通っていますが、南側の海岸は切り立っているので、道はほとんどありません。ただ、もっとも東に突き出た鶴御崎には、自然公園があり鶴御埼灯台がたっています。この地は、九州最東端となるところだそうです。
 県道604号線沿いに調査に入りました。事前の文献調査では、南の海岸沿いに、是非見たい露頭があることがわかっていたのですが、その場所は地図では道はありません。でも現地にいってみないとわかりません。釣り人が通るルートなどがたいての海岸にはあり、アプローチできることもあります。ただし、重要な地質調査では、船を利用して海岸沿いを調べることもあるので、一人で徒歩でいけるかどうかは、いってみるしかありません。
 現在と調査された時代とでは、道路の拡張、切り替えや、町の開発なので、岩石の露出の状況が違っていることも多いので、別の露頭が見つかることがあります。やはり現地にいってみるかありません。
 さらに、似た岩石は地質学的は、連続的に分布しているはずです。周辺を調べれば、露頭さえあれば、似た岩石を見ることができるはずです。
 この鶴見半島に来たのは、「メランジュ」をみるためでした。できれば「メランジュ」の構成要素となっている「海洋プレート層序」の岩石類を見たいと思っていました。
 海洋プレート層序とは、海洋底の岩石を構成している岩石類のことで、下の方から、海嶺で海洋地殻として形成された玄武岩、生物の遺骸が深海底にたまってできた層状チャート、極細粒の陸源物質からできた赤色頁岩、陸地から流れてきた土砂によるタービダイト層からできています。
 これらの層序は、付加作用によって断層によって分断されます。激しく乱れて混在していることもよくあり、もともとの構造が不明になっているものを、「メランジュ」と呼びます。メランジュは、スケールが大きと地質図レベルで、あるいは露頭ごとに違う岩石がでたり、小さいスケールだとひとつの露頭にいろいろな岩石が混在していることもあります。また、メランジュの擾乱の程度によって、もとの岩石すらぐしゃぐしゃになっていたり、メートルサイズでもとの産状が残されていることもあります。
 私は、産状が残された海洋プレート層序の岩石を見たいと思っていました。結局、当初目指していた露頭には近づくことはできなかったのですが、県道沿いで海洋プレート層序の各種の岩石類を、きれいな産状のまま見ることができました。こんな失望と歓喜が両方あると、この地は非常に思い出深いところとなります。

・丹賀砲台・
県道604号線沿いを車で走っていると、
丹賀砲台園地という看板がみえて
分かれ道がありましたので入ってみました。
駐車場があり、管理の人もいます。
尋ねると、現在リフトは運休中なので駐車も入場も無料だとのこと。
朝も早かったので、私しかいなかったのですが、
予定外でしたが、「無料」なので、見学することになりました。
ここには、戦時中「丹賀砲台」があったそうです。
観光については調べていないので、知りませんでした。
巨大なトンネルと長い階段、砲台の跡、
そしてその地上部にはモダンなドームがありました。
砲台として巡洋艦伊吹の大砲が据え付けられたそうですが、
事故で大爆破を起こし、多くの死傷者をだしたそうです。
一度も使用されることはなかったそうです。
ドームはなかなか見ごたえのあるもので、
海洋プレート層序の露頭と共に
サプライズのような思い出となりました。

・健闘を・
いよいよ3月です。
北海道は三寒四温が来ています。
暖かいときは、多くの雪や氷が一気にとけ
道が水浸しになります。
寒いときはかなりの雪が降り、冷え込みも厳しいものです。
温度変化の大きい、
メリハリのきいた三寒四温です。
大学は、この時期、入試、卒業、進級など
いろいろ行事が重なるので慌ただしいのですが、
人生の区切りを迎える学生たちには
新天地での健闘を願っています。