2016年12月1日木曜日

2_143 三畳紀の大絶滅 6:宇宙塵

 層状チャートの中から大量に見つかる宇宙塵に注目した研究を紹介します。もしこの研究による仮説が正しければ、いままでの層状チャートの成因がまったく違ったものになります。真実はどこにあるのでしょうか。

 今回紹介している層状チャートからの衝突の証拠は、丸い粒が多数見つかっていました。しかし、これらは通常の宇宙塵ではないようです。隕石の衝突によってできた粒子や成分が飛んでいるうちに、丸くなった粒子とされています。
 チャートを研究している研究者は、層状チャートから化石を抽出するとき、宇宙塵がたくさん見つかることがあるのを、以前から知っていました。この宇宙塵は、地球外から落ちてくる小さな粒子のことです。
 多量の宇宙塵を、層状チャートの形成メカニズムの解明に利用する堀さんたち(1993)や池田たち(2010)の研究があります。三畳紀の大絶滅とは違った話題になりますが、まったく違った見方を提示しているので、シリーズの最後に紹介していきましょう。
 宇宙塵は、かなりの量が定常的に地球には降ってきていることがわかっています。その量は、毎年100トンほどと見積もられています。ただし、その量は、地質時代の長期に渡ってみていくと、変化していることがわかっていきています。ただしひとつの地質時代の中では、大きな変動はないとみなせます。
 このような前提から、ある時代の層状チャートができる期間では、宇宙塵の降っていくる量には変化がないと仮定できます。チャートと粘土の部分で宇宙塵の量を見積もっていきます。宇宙塵を取り出して数えるのは難しいので、宇宙塵に多い鉄などの化学組成に注目して、宇宙塵の量を見積もっていきます。宇宙塵の量から、チャートと粘土の堆積速度が計算できます。その結果、チャートの堆積速度は、粘土のものより二桁速いことになりました。これは、何を意味しているのでしょうか。
 層状チャートの一般的な形成メカニズムは、チャートと粘土の二種類が堆積量の変化によってできると考えられています。チャートの材料は深海底には定常的に珪質プランクトンの殻が堆積しててきます。粘土層は、量は少ないのですが、陸源の粘土粒が海流や風に乗って定常的に混じってきます。通常時は形質殻の方が多いので、チャート層ができます。生物の大絶滅が時々起こり、その絶滅期間に珪質殻の堆積はストップします。絶滅の間、粘土成分だけが堆積します。それが粘土層になります。大絶滅の非常時に粘土が堆積し、通常時にはチャートが堆積します。これが、層状チャートのでき方だと考えられています。
 ところが堀さんたちの説は、珪質殻が短期間に一気に堆積していくという説です。これは、従来の層状チャートの成因とは全く違ったものです。では、現在海底に堆積している珪質堆積物は、チャートになるはずですから、珪質プランクトンの繁栄の時期なのでしょうか。では前回の不活発な時期はいつでしょうか。氷河期なのでしょうか。疑問はわきます。
 実は層状チャートの成因はまだ確定していなので、いろいろな可能性が提唱されています。生物の大絶滅はあったことは確かなのですが、「なぜ」という原因究明は、K-Pg境界以外は、まだまだの状態です。今後も研究を進めなければらないですね。

・層状チャート・
堀さんたちは、岐阜県の犬山にある
層状チャートの連続したルートで調べました。
時代は、後期三畳紀から前期ジュラ紀のものです。
層状チャートから3000個以上の宇宙塵を見つけています。
そこから統計的な処理もしています。
大量の金属の粒(宇宙塵)が
深海で堆積したチャートから見つかるのは不思議ですね。
理屈ではわかっているのですが、
不思議さを感じます。

・師走・
今シーズンは、何度目の積雪でしょうか。
北海道は週末から週初めにかけて、雪模様です。
まだ根雪には早いと思います。
ですから暖かくなれば、すぐ溶けると思いますが、
真っ白な雪景色は厳冬のように見えます。
12月になったのですが、
論文と卒業研究の添削に追われて走り回っています。
師走ですね。