2016年9月22日木曜日

4_127 南紀の旅 1:白浜

 和歌山に野外調査に行きました。いくつかの調査ポイントがあったのですが、ほぼ予定通りにこなすことができました。今回はその中から、地質の見どころをいくつか紹介していきましょう。

 しばらく「地球地学紀行」のシリーズを配信していませんでした。8月末から9月上旬にかけて、和歌山に調査に出かけたので、久しぶりにシリーズにして書くことにしました。まずは、有名な観光地である、白浜からはじめましょう。
 白浜は、和歌山県西牟婁(にしむろ)郡にあるのですが、関西からは古くから熊野詣での道中になっているので、道路網や鉄道網ができていました。しかし海岸を走る道路は曲がりくねってなかなか大変な行程だったのですが、最近では、白浜までは高速道路ができているので、比較的アプローチが楽になってきました。
 白浜には、地質によって織りなされている名勝がいつくかあります。白い砂が目に鮮やかな白良浜(しららはま)、ラクダ背のような形の島に丸く穴の空いた円月島、海岸に広がった平らな岩の千畳敷、すごい断崖絶壁の三段の崖などがあります。狭い地域に多様な景観があり、見ごたえがある地です。その上温泉があるので、古くから観光地として多くの人が訪れていました。
 白浜温泉は、熱海温泉と別府温泉と並んで日本三大温泉とも呼ばれ、道後温泉と有馬温泉とともに日本三古湯のひとつに数えられています。かつては、白浜は地域の古い名称である「牟婁(むろ)の湯」と呼ばれていました。
 この有名な白浜温泉ですが、実は、近くに火山がないのです。つまり熱源となものが見当たらないのに、温泉がわいています。ただし、温泉の定義には、温度が低く(20℃以下)でも、定められた成分が一定量以上含まれていれば温泉と名乗れます。しかし、白浜温泉は、78℃という高温の熱湯が湧いていますので、温度においても立派な温泉になっています。紀伊半島には、白浜温泉の他にも、湯の峰温泉(92.5℃)などの高温の温泉が豊富に出ているところがあります。熱源となる火山がないのに温泉がでています。少々不思議な温泉です。
 火山が以外に、どこかに、何らかの熱源となるものがあるはずです。周囲には、中新世に活動した火成活動(熊野酸性岩類と呼ばれています)が起こっているので、そのマグマが熱源ではないかと、かつては考えてられていました。しかし、その因果関係は確かめられたわけではありませんでした。それに、1200万年前のマグマなので、あまりにも古すぎるので、熱源となっているかどうかには疑問もありました。
 近年の地電流の調査から、地下10から15kmに、高温の部分があることがわかってきました。その高温部は、深度30kmに沈み込んているフィリピン海プレートから絞り出された高温の熱水を含んでいる領域であることがわかってきました。地下水が、その高温部分によって温められたものが温泉として出てきているのではないかと考えられるようになってきました。似たような起源として、兵庫県の有馬温泉があります。
 実はそんな理屈を考えることもなく、白浜の温泉につかってきました。

・核燃料開発機構・
ここで示した温泉の起源の成果を出したのは、
核燃料開発機構が2004年に調査報告したことでわかりました。
科学にとっては重要な成果がでたのですが、
その調査の目的はわかりません。
核燃料開発機構は、
さまざまな組織改編を繰り返しています。
原子燃料公社
→動力炉・核燃料開発事業団
→核燃料開発機構
→独立行政法人日本原子力研究開発機構
→国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
・・・・など流転しています。
この変遷は、日本の原子力行政の躊躇や迷いを
表しているような気がするのは、私だけでしょうか。

・後期授業のスタート・
後期の授業がはじまりました。
初日は、めまいがするほど忙しさでした。
夕方、研究室の席についた時は、
ぐったりしていました。
まあ、こんな日もあるのでしょうが、
最初だけにしてほしいものですが
どうなることやら・・・・。
なお今日22日は秋分の日で祝日ですが
我が大学は通常授業をしています。