2016年6月16日木曜日

5_141 太陽系外物質 4:超新星のシャワー

 これまで太陽系外の物資について、いくつかの報告事例を紹介してきました。今回紹介するのは、今年春の最新情報です。太陽系外の物質の発見でも、素性や年代などが、かなり限定されたものでした。

 このシリーズの最後は、2016年4月7日付のイギリスの科学雑誌ネイチャーで、ワルナーたち(Wallnerほか)報告した、太陽系外物質の発見についてです。報告は最新のものなのですが、現象が起こった時期は、古いものでした。物質が由来した現象が、なかり限定されたものでしたので、重要性があります。
 報告は、太陽系の近くで起こった超新星爆発の痕跡を発見したというものです。この報告の解説では、地球が超新星爆発によるシャワーを浴びたと表現しています。ただし、太陽系外物質を見つけて分析したというわけでありません。物質を限定しないまま、ある元素を見出し、超新星の痕跡を見つけているのです。多分、何らかの物質として飛来したのでしょうが、物質を分離することなく元素の分析だけされました。
 60Feという放射性核種があります。この60Feの半減期は260万年なので、もともとの太陽系の素材にもあったかもしれない核種ですが、今ではすべて崩壊してなくなっています。つまり、地球では存在しない核種になっています。もし地球のいずれかの物質から発見されれば、それは「最近」飛来したことになります。
 60Feが形成されるような現象は、宇宙空間では超新星爆発です。このような超新星爆発は、確率的には地球近傍、約100パーセク(300光年ほど)内では、100年に2回ほど起こる比較的頻発する現象だと考えられています。超新星爆発で60Feが合成され、なんらかの粒子(著者らは星間粒子を想定しています)として、太陽系、そして地球に飛来したと考えています。
 この60Feの半減期は260万年で、現在の分析精度では1000万年前くらいのものまでなら検出できます。そこで、ワルナーたちは深海底の堆積物の60Feの分析をしていき、検出に成功しました。60Feが見つかった地層の年代は、150~320万年前と650万~870万年前でした。その時代に超新星爆発があったこと、なおかつ何度も起こっていることが、実証されたのです。
 天文学から超新星爆発の確率は推定されていて、実際に超新星爆発という現象も、歴史時代から近年まで、何度も確認され観察もされています。ですから超新星爆発が現実に起こっていることは、みんな知ってはいます。でもあまりに遠くの出来事なので、なかなか実感することができない現象でもあります。そもそも超新星爆発という現象で、物質として地球にまで到達するのかどうか、まして検出できるものが地球に存在するのかどうはだれも調べていませんでした。それを今回の報告が実証したのです。
 地球、あるいは太陽系は、やはり銀河の一員であり、隣近所からの影響を、現在も受け続けていることを、再確認させてくれる報告でした。

・銀河の一員・
今回、着目されたのは、放射性元素でした。
半減期が短かれば
地球にもともとあったものの影響(汚染)は除けます。
同様の発想をすれば、
もっと他の元素でも同様の痕跡を発見できるはずです。
核種を用いれば、多様な超新星爆発などの現象を
見出することもできるかもしれません。
そんなチャレンジをする研究者もきっといることと思います。
そしてそんな報告が増えれば、
地球は銀河の一員で、近隣の天体との関係が
過去から現在、そして未来に渡って続いていることが
もっと鮮明に描かれることでしょうね。

・出張続き・
6月から7月の頭まで、出張が続きます。
1泊のものもありますが、
日帰りの出張も多く、体力的には疲れます。
長短いれれば、毎週どこかに出ています。
今週は2回あります。
肉体的な疲れは寝れば治まります。
でも、精神的疲れはなかなか抜けません。
ですから私は出張は気分転換でもあると
割り切って出張しています。
もちろん手抜きをするという意味ではありませんよ。