2016年6月2日木曜日

5_139 太陽系外物質 2:プレソーラーグレイン

 太陽系外物質は、かなり古くに発見されています。しかし、実際にその物質が太陽系外ものであり、その実態が明らかにされるのには、少々時間が必要になります。今回は最初の太陽系外物質となったプレソーラーグレインを紹介します。

 太陽系外からの物質の可能性は、1960年代には指摘されていましたが、1972年のシカゴ大学のクレイトン(Claytonほか)が、分析してアメリカのサイエンス誌に掲載されたものが、確たる地球外物質の発見となります。その後、1990年代になってからその実態が詳しく報告されてきました。
 その地球外物質がみつかったのは、ある種の隕石(炭素質コンドライトというタイプ)からでした。地球外物質は、プレソーラーグレイン(presolar grain)と呼ばれるもので、太陽系(ソーラー)ができる前(プレ)の粒子(グレイン)という意味です。以前にも、「1_25 プレソーラーグレイン」(2003年8月28日)のエッセイで紹介したことがあります。
 太陽系はできた直後に多くの粒子がいったん溶融するような高温の状態になり、太陽系の素材となった物質が均質化され、太陽系ブレンドができました。しかし、そんな条件の中でも、溶けることなく生き残った粒子がありました。それがプレソーラーグレインとなります。
 通常の隕石は、太陽系の高温時にとけた物質が、結晶化したものが集まってできています。高温のものから結晶化していき、隕石中に各種の鉱物の組み合わさった塊(コンドリュールと呼ばれている)が含まれています。そしてその周囲に最後まで結晶化しなかったような物質が集まり、隕石となっています。このような最後に集まった基質の部分は、マトリックスと呼ばれています。これらのいろいろな段階に形成されたものから、隕石の形成過程を知ることができます。
 では、プレソーラーグレインはどこに存在するのでしょうか。最後まで小さな粒として存在したようで、隕石ができたとき周辺の細かな物質が集まった基質の中から発見されました。
 最初は3つの種類の鉱物が発見されました。炭化珪素(シリコンカーバイト、SiC)、ダイヤモンド(Diamond、C)、そしてグラファイト(Graphite、C)でした。その後、新たにコランダム(Al2O3)や炭化チタン(TiC)なども発見されてきました。非常に小さな鉱物で、数μmから数nm(ナノメートル)くらいしかありません。プレソーラーグレインが地球外の成分であることは。酸素(O)の同位体以外にも、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)、炭素(C)、窒素(N)、けい素(Si)など、いろいろな元素で異常が見つかっていることから、検証されました。
 プレソーラーグレインは、太陽系の材料が、どのようなものから由来しているかを知るためには重要な情報になります。プレソーラーグレインからは、多様な星の終末の状態のものが見出されました。ひとつの起源ではなく、どうも太陽系の材料は、いろいろなものが混在していたようです。
 小さな粒子ですが、分析技術が進んできているので、「もの」さえあれば、かなり詳しく分析が可能となってきました。ですから、まずは探すための目的意識からスタートして、そして実際に「ものを見つける」努力と幸運さも必要なのようです。知恵と幸運の両者がそろって、はじめて成功を納めることができるのですね。

・結びついた思い出・
私が博物館にいたときプレソーラーグレインを展示に使うために
クレイトンと共同研究者でもあった、
甘利さんと連絡をとりました。
プレソーラーグレインは顕微鏡や電子顕微鏡でし見えない、
非常に貴重な資料です。
甘利さんは、快く電子顕微鏡の写真を提供いただきました。
私は、小さいので直接プレソーラーグレインを
見たことはないのですが、
プレソーラーグレインのことを考える時はいつも
会ったこともないのですが、
なぜか甘利さんのことを思い出してしまいます。

・心地よい季節・
いよいよ6月です。
北海道は5月中旬から一気に春から初夏になり
心地よい青空が広がります。
早朝の畑の中を歩いてくるのですが、
そんな快晴の日は、本当に心地よくなります。
北海道に住んでよかったと思える季節です。
先週末同窓会で支笏湖畔の温泉に一泊しました。
両日とも雲ひとつない快晴で、
高原のカルデラ湖ごしに見る山並み、
そんな景色が一番のごちそうでしたが、
もちろん、40年ぶりの同窓生のと邂逅も
勝るとも劣らない感動でしたが。