2016年3月17日木曜日

6_136 重力波の観測 5:重力波天文学

 シリーズの最後として、今回の観測の意義を考えていきましょう。最初の観測の成功は、仮説の確かさを示しており、研究は次なるステップに発展していきます。研究実績が積み上げられれば、新しい学問分野が発展していくことになるでしょう。

 重力波を発生し、観測されそうな天文現象には、いくつかの候補がありまひた。それらの現象については、事前にシミュレーションがなされていました。重力波を見れば、それはどの天文現象だということがわかるまで、事前に推定されていました。
 今回の重力波は、2つのブラックホールの合体した現象で発生したものでした。2つのブラックホールが、ぶつかる時の相対速度は、光速度の半分以上にまで達していました。そのブラックホールは、太陽質量の29個分と36個分のものでした。そして最終的に合体してきたブラックホールは、太陽質量の62個分でした。
 ここまで読んで、気づかれたでしょうか。足し算が合わないのです。2つのブラックホールの質量は、29+36=65なのですが、できたブラックホールは62になっています。太陽質量の3個分が消えています。この消えた質量分が、重力波として放出されたのだと考えられています。想像を絶する天体現象です。それが、わずか0.2秒足らずのほんの短い時間に起こったのです。
 今回の観測された現象は、数百年に一度くらいの頻度で起こるものだと考えられています。それほど稀な現象が、よくも観測早々発見できたものだと思います。幸運に恵まれていると思いますが、幸運だけでなく研究者たちの努力があっても賜物です。
 さて、今回の発見には、どんな意義があるのでしょうか。
 重要な意義があります。それは新しい学問分野ができる可能性が生じたことです。最初の発見ができれば、観測できることが証明できたわけです。仮説としては可能であっても、本当に実証されるまでは確かではありません。いったん実証された後は、技術的な向上があれば、感度を上げることができます。理論的に技術開発を進めていって、確実な成果を得られることが証明できたことになります。改良が進めば、計算通りに、より小さい重力波の現象を捉えることが可能となります。たとえば、感度を10倍にすると、1年に数回の重力波の現象が捉えられると考えられています。
 重力波観測装置は、重力波望遠鏡となります。観測が進めば、多数の現象がとらえられ、多様性の把握できるでしょう。重力波現象に基づく天文学が発展することでしょう。
 日本の小柴さんたちがカミオカンデで最初に行ったニュートリノの観測により、望遠鏡として利用できることを示しました。そこから、新しいニュートリノ天文学が生まれました。それと同じような大きな進歩が起こり、重力波天文学が拓かれていくことが期待できそうです。

・別れ・
別れのシーズンです。
大学では、教職員の送別会、卒業式が
今週、立て続けに行われます。
教員で親しい人の退職は、寂しいものです。
学生との別れは、寂しさだけでなく
彼らは期待に満ちた希望があります。
彼らには新しい世界へ旅立つが不安もあるでしょうが
希望に満ちた未来があります。
そんな卒業生たちにエールを送りたいものです。

・時の流れ・
今年度もあと少しです。
学校では、次年度の準備が着々と進んでいます。
一日、一週間、一ヶ月、一年があっという間です。
光陰矢の如しで、時間がまたたく間に過ぎていきます。
校務が忙しくて、研究の時間がとれずにストレスがたまっています。
精神状態にも波があるので、
時間があるから研究できるとは限らないのですが、
時間がないと研究できないのは確かです。
人が感じる時の流れは、
忙しさに比例するのでしょうか、
それとも年齢に比例するのでしょうか。
私の場合は、両者だなのでしょうね。