2016年1月14日木曜日

5_132 113番目の元素 2:最強と独創

 人が達成していないことを新たに成し遂げるには、それなりの装置、時には強力なものが必要になります。ただし、そこには工夫や独創性が不可欠になります。そんな装置を用いて、元素の合成はなされました。

 113番目の元素の合成は、理化学研究所(理研と略されます)でなされました。理研にはいろいろな目的の施設が日本各地あるのですが、今回の発見は、埼玉県和光市にある仁科加加速器研究センターでおこなわれました。
 加速器とは、電荷をもった粒子(イオンの状態の原子核や素粒子など)を放出し、電場や磁場などを利用して、移動させ、加速して、目的の物質にぶつける装置です。粒子の加速には、丸形に加速するサイクロトロンや直線的に加速させる(線形加速器)タイプなどがあります。加速した粒子を、対象とする物質に当てて、反応を人工的に起こすことができます。
 仁科加加速器研究センターの重イオン加速器施設には、RIビームファクトリー(RIBF)と呼ばれるものがあります。RIBFには、何種類かの加速器があります。リング状に加速する装置(RC、IRC、SRC)と直線的に加速する装置(理研重イオン線形加速器RILAC)などがあります。リング状加速装置は、多段階に加速していく装置となっています。最終的な加速をするためのSRCは、世界で最初の装置で、総重量8300トンにもなる世界で最大、最強の装置となっているそうです。これらの装置を用いると、ウランまでのすべての元素で、最大の強度のビーム(加速された粒子)を発生させることができるます。大きな原子同士の粒子の衝突が起こせることになります。
 今回の実験は、113番目の元素をつくるために、原子番号30の亜鉛(Zn)と83番のビスマス(Bi)をぶつけてくっつけば、30+83=113となり、113番目の元素ができることになります。これは2種類の原子核が合体するので、核融合を起こす実験になります。亜鉛のビームをつくって、ビスマスに当てて核融合を起こして113番目の元素をつくるという方法がとられました。
 ところがその核融合の確率は、100兆分の1という小さいものです。ですから、長い時間、ビームを当て続けて核融合を起こし、核融合したものを逃すことなく捉え、元素の種類を調べるという一連の実験をしなければなりません。検出にも、いろいろな工夫が必要になります。
 ビスマスに当たる確率が低いため、大量の亜鉛がビスマスを通り抜けて飛び出してきます。そしてその中に113番目の元素も混じっています。113番目の元素だけを選び取れる装置が必要になります。それが気体充填型反跳分離器(GARIS)と呼ばれているものです。
 ビスマスを通り抜けてきた原子を、磁場で粒子を曲げて分けるのですが、質量と電荷によって曲がり方が決まります。ところが113番目の元素の質量は決まっているのですが、電荷が決まっていません。ですからこの装置だけでは、うまく分けることができません。
 電荷をもった粒子がヘリウムガスの中を進むと、原子の電荷がならされて平均的な値をとることが知られています。1113番目の元素は+11.9になります。GARIを用いて、質量(278)と+11.9の電化をもった粒子だけを取り出せば、目的の元素を分けることができます。
 このような最強の装置を用いて113番目の元素が作り出され、独創的な工夫された検出システムで測定されました。その様子は次回としましょう。

・センター試験・
いよいよ大学は入試の季節になりました。
今週末にセンター試験が行われます。
我が大学は、会場になっています。
教職員は総員体制で望むことになります。
大雪や荒天で試験の開始期が
遅れることがないように毎年、願っています。
しかし、こればかりは、人智を超えています。
ただ、何があっても準備を怠なきようにすること、
もし起こったら対処することです。
これしかありません。

・真冬日・
北海道は1月になってから、
何度も真冬日が訪れています。
真冬日とは、昼間も氷点下のままのことです。
エルニーニョのせいで暖冬だといわれています。
確かに現在のところ、積雪量は例年より少ないです。
大きな道は除雪が行き届い、交通量も多いので、
雪は溶けて走りやすくなっています。
もちろん、暖かい日もあります。
暖かい日のあとに、冷え込みがあると
脇道には雪が残っているので
雪が降らないとアイスバーンになります。
しかし、きっと雪はまだまだ降るのでしょう。
時には大雪も降るのでしょう。
それも受け入れるしかありません。