2016年1月7日木曜日

5_131 113番目の元素 1:人工元素

 明けましておめでとうございます。2105年12月31日に、日本の研究者が発見した元素が、新元素として認定されたという、めでたいニュースが流れました。今年は、この話題からスタートしましょう。新しい元素とは、どのようなもので、どのように発見され、そしてどのように新元素と認定されるのでしょうか。

 すべての元素は、周期律表に示されています。この世を構成している物質すべてが、この周期律表にのっているのです。100個弱の構成物が、この世を作り上げているというのは、単純といえば単純です。
 さて、「水兵リーベ、僕の舟・・・」などという語呂合わせで周期律表を覚えていった記憶を、多くの人はお持ちでしょう。でも、周期律表の下の方になるとあやふやになっていくのではないでしょうか。
 私も、岩石に含まれている元素で、1列から3列あたりから、4列目の亜鉛(Zn)あたりまで分析することあるので覚えています。しかし、それより重い方の元素では、Rb、Sr、Sm、Nd、Pb、U、Thなど、年代測定で分析していた元素の周辺は覚えていますが、それ以外の元素は、はっきりと覚えていません。
 現役の化学の関係者はさておき、かつて元素分析していたものですら、この程度ですから、一般の方は、きっとほとんど記憶から消えていることでしょう。そんな重い元素での日本の科学者が大きな成果をあげました。
 それは113番目の元素の発見です。新しい元素の発見とはいっても、天然には存在しないものです。人工的に合成して新元素であることを確認したということになります。
 天然に存在するもっとも重い元素は、U(ウラン)で原子番号は92番です。61番目のプロメチウム(Pm)とウランより大きな元素は、天然には存在しないことがわかっています。112番目までの元素はすでに合成実験により発見されていました。さらに、原子番号114番目のフレロビウム(Fl)と116番目のリバモリウム(Lv)も発見されていました。ですから、113番目と115番目を飛ばした114個の元素が、これまで確認されていました。
 そして今回、113番目の元素が確認され、そして認定されました。この認定が重要になります。

・不特定一人のあなたへ・
昨年はエッセイをお読みいただき、ありがとうございました。
本年も引き続きよろしくお願いします。
ただし、このエッセイは、購読を強要するものではなく、
読む人の好奇心に任せています。
宇宙のこと、自然のこと、地球のこと、地質のことなどに
興味を持っていただけたらと思ってお送りしています。
興味がなくなれば、購読を中止して頂いて結構です。
興味を覚えたら登録しただけばいいと思っています。
一人でも、どれかのエッセイに興味を持ってもられる方がおられたら
このエッセイを書き、お送りすることに意義があると思っています。
多数の読者を期待して書くのではなく
「不特定一人」の「あなた」へのエッセイとして
書き続ける気持ちは、今も変わっていません。
よろしければ、本年もお読みいただければと思います。

・こころを認めたい・
今回の重い元素を見つけるために
多大な労力をかけ、エネルギーも資金も投じられています。
大きな成果があると、
すぐに「その研究にどんな意味があるの」などという
質問がよくされのを耳にします。
「意味」のところが、「価値」や「人の役に立つ」などに
変わることもありますが、
たとえノーベル賞受賞者にも同じ質問がなされます。
質問者が求めているのは、
すべて社会や自分たちへの見返りを聞きたいのでしょう。
成果が、直接の自分への見返りがなくても、
見返りがあるという答えを聞くことで安心したいのでしょうか。
確かに多くの研究は、国費を使用しています。
研究は、本当に役にたたねばならないのでしょうか。
私は、役に立たなくても、変な理由をこじつけなくても
単に心の赴くまま、好奇心にしたがって科学してもいいと思います。
芸術も人文科学も社会科学も、営利や打算がない
止むに止まれぬ気持ちでなされているものが
いっぱいあると思います。
そのようなものに、社会への貢献を無理やりひねり出させるのは
純粋な心を汚しているようで、どうも好きなれません。
いつから日本人は、そんな打算的な成果を
「こころ」が生み出される成果に
求めるようになったのでしょうか。
少々残念です。