2015年7月23日木曜日

6_126 新たな地平 1:メッセンジャー

 探査機は長い年月をかけて開発がされてきます。そんな状況を踏まえて、最近の惑星探査の状況を紹介します。水星と冥王星を中心に、新たな地平を切り開いた探査機、そして話題になったエピソード、ニュースも紹介していきます。まずは、水星の探査からです。

 今まで未知であったものを調べて、「新たな地平」(ニューホライズン)を切り拓こうという挑戦には、いろいろなものがあります。未知の惑星を調べる探査機などは、まさに未知を切り拓き、新発見をするための装置です。探査機は、新たな地平の開拓には、重要な役割を担っているはずです。
 地球から離れた惑星を調べるのは、難しい作業となります。これまで、一番太陽に近い水星も、よくわかっていない天体でした。えっと思われる方がいるかもしれません。水星の画像はよく見ているし、その存在も古くから知れているはずです。
 ところが、私たちがみている水星の画像は、半分(45%)がカバーされているだけのものでした。その画像も、1974年から1975年に2度にわたって接近したマリナー10号が撮影したもので、その後は探査機による調査がなされませんでした。水星としてよく見ていた画像は、水星の半分の姿しか表していない、40年も前のものだったのです。
 水星は太陽に近いため、太陽からの熱、電磁波の影響を強く受けるので、その対策が必要になります。太陽の重力に負けないで水星軌道に入ること、さらに水星の公転速度が大きいのでその速度に合わせること、などいろいろ接近には困難さが伴います。
 2004年8月3に打ち上げられた「メッセンジャー」という探査機が、2011年3月に水星の周回軌道に入りました。地球と水星は一番近い時は、1億kmほどの距離なのですが、メッセンジャーは、7年の歳月をかけ、80億kmほどの距離を移動しながら、水星に達しました。これも軌道投入の難しさ故でしょう。
 メッセンジャーの探査で、水星の全容の把握、そして新しい情報の追加がなされました。メッセンジャーは、当初1年間の探査予定でしたが、機体、装置の調子がよくて、1年延長、そしてさらに2年の延長がおこなわれ、結局4年間も延長されて運用されました。最終的には2015年5月まで探査を続け、水星表面へ落下してミッションを終了しました。
 探査の結果、水星に氷があったこと、液体の核がありそうなことなどがわかってきました。
 水星に氷は少々不思議です。太陽に近くて暑い場所にあり、大気もないのに氷が存在するはずがありません。ところが、大気がないと、影の部分は冷たくなります。水星の極地にあるクレータには、常に影になるところ(永久影と呼ばれています)があり、そこは-180℃ほどの低温になっていてると考えられました。そこに氷があれば、溶けずに存在しうると推定されました。その推定通りに、氷が存在していることがメッセンジャーによって確認されました。
 水星には磁場があることがマリナー10号で観測されていました。水星は小さいので内部温度も速く冷めてしまうはずなので、磁場の存在は不思議なものでした。磁場は液体の金属(ふつうは鉄)が流動することで発生すると考えられます。メッセンジャーにより、磁場は双極子(NとS極がある)で、自転軸と合っていることも確認されました。マリナーだけでなくメッセンジャーでも観測されたことから、磁場は安定したものだと考えられます。その原因として、液体の核の存在が推定されたのです。
 液体の核ができるためには、核に不純物(イオウや水素など)がまじると鉄の融点が低くなることから、液体の鉄があっても不思議ではないと考えられるようになってきました。
 このような、身近でありながら未知の惑星、水星の様子が、惑星探査機によって明らかになってきました。

・アメリカの実力・
米ソの冷戦時代は、
お互いの技術力や戦術的優位に立つために、
宇宙開発がさかんに行われました。
その一環として、月の探査や惑星探査も含まれていました。
冷戦の終結後、経済状況の悪化もあり、
探査も見直し、小規模化、低予算での遂行が強いられてきました。
それでも米ソ、さらにいえは米が中心の
惑星探査がなされてきました。
その間にヨーロッパ、日本なども実力をつけてきました。
しかし、やなりアメリカが行なう探査は、
今までの経験や実績があるので、
一日の長があるようです。
今回の紹介予定の探査機もアメリカのものです。

・快晴の希少価値・
今年の北海道の気候は、
日照時間が短く、晴れの日でも湿度が高いので
なかなか快適な日が少ないです。
それでもたまに快晴の青空があると、
ありがたく思えます。
北海道の一番いい天候であるはずの
夏のカラリとした快晴の日は
今年は、希少価値になってしまいそうです。