2015年6月25日木曜日

1_140 月の起源 1:3つの説

 月の起源については、すでに紹介していたと思っていたのですが、どうもまだ一度も紹介したことがなかったようです。4月に月の起源に関する新しい証拠が提示されました。その論文とともに、これまでの月の起源についても紹介していきましょう。

 月は、地球から見える一番身近な天体です。全く見えなない新月から、少しずつ太りだし、明るい満月になり、また少しずつ痩せて新月になるという、非常に規則的な満ち欠けをします。その規則性は、暦としても利用されてきました。規則的で、不思議な形態の変化は、古代の人々に、月に対する神秘さを与えたことでしょう。また、月の表面には不思議な白黒の模様があり、古代の人々は、そこにいろいろなイメージを見出してきました。
 人は古くから、月に不思議さ、神秘性を見出してきました。月にちなむ神話や伝説も多数あります。日本では、かぐや姫(竹取物語)が映画にもされ、最近さらに有名になりました。
 20世紀になると科学技術が進歩してきて、月の実態が明らかになってきます。人工衛星による探査、またアポロによる有人探査もおこなわれ、月は、人類がはじめて降り立った地球外の天体となりました。
 アポロの有人探査により、大量の試料を地球に持ち帰ることができました。その試料を分析することで、地球に次いで詳しく調べられた天体となりました。今まで間接的にしか調べることができなかった地球外の天体が、直接分析などできる対象になったのです。
 さて、月の起源についは、古くからいくつもの説が提唱されてきました。それらの説は、捕獲説、共成長説、分裂説の3つに大別されています。これらの3つの説は、人間関係になぞらえ、捕獲説は他人説、共成長説は兄弟説、分裂説は親子説という呼び方をされることもあります。なかなかわかりやすい命名でもあります。
 捕獲説とは、太陽系の別の場所で形成された天体(小惑星や準惑星と呼ぶべきか)が、何らの原因でそれまでの公転軌道が乱された、地球の引力に捕らわれて、衛星となったと考える説です。太陽系のどこか全く別のところの天体が、たまたま衛星となったことになります。成因や形成時期などが、ばらばらでもかまわないという利点があります。しかし、本当にそんなに都合よく衛星となることができるのかという疑問もあります。力学的はなかなか難しい過程になります。
 共成長説とは、地球と月が現在の軌道上で、同じ条件で同時に形成され、惑星と衛星という関係になったというものです。これだと、地球と月の起源を一緒に考えられ、同時にできたことになるので、比較的解明がしやすくなります。また化学的、物理的共通点の説明がしやすくなります。ただし、地球と月の運動量(角運動量といいます)を合わせると、かなり大きな量になります。もし隕石のような材料物質の集積によって、両者が同時にできたとすると、そのような大きな運動量は説明できないという問題があります。
 分裂説とは、地球が形成され、何らかの原因(自転や遠心力など)で地球の一部がちぎれて飛び出し、その破片が月になったという説です。この説では、地球と月の化学的性質の共通点と相違を説明しやすいという利点があります。ところが、そのような現象を起こすには、かつての地球の自転が非常に速くなければなりません。さらに、月の物質が飛び出したあとは、現在の自転の状態にならなければなりません。そのようは急激な自転の変化を起こすメカニズムは、現在わかっていません。
 このように、どの説も一長一短があり、なかなか合意がえられませんでした。ところが、現在では、衝突説で決着をみています。衝突説は、他人説と親子説の合わさったような説です。この説の説明は、次回としましょう。

・探査計画・
こんなに身近な月なのですが、
アポロ計画をピークにして
その後は有人探査がなされていません。
費用がかかりすぎることと
アポロが十分な成果を挙げたためでしょう。
その後も、無人探査機や周回探査機は
何度か送り込まれており、
日本も探査機「かぐや」を送っています。
その内容は、このエッセイでも紹介しました。
「5_67 かぐやが見たもの:日本の月探査」(2007.11.22)
「5_68 かぐやが描く地図」(2008.07.10)
「かぐや」の後継機の計画があるようですが、
なかなか進展していないようです。
現在、月の探査は一段落しているようです。
注目を惹き大きな予算をとるような
目標設定がなかなかできなからでしょうかね。

・蒸し暑さ・
北海道らしい好天の前後は、
じめじめとした蒸し暑い日がありました。
本州の梅雨と比べると、
湿度や暑さは大したことがないはずです。
しかし、北海道の家の多くは、
暖房はあっても、エアコンがない家も多いです。
もちろん我が家もそうです。
冷房や除湿がないと、
昼間の蒸し暑さなかなか耐え難いものです。
しかし、夜には気温が下がるので
なんと眠ることができますが。

2015年6月18日木曜日

2_131 ハビタブル・トリニティ 5:生命誕生の条件

 シリーズの最後に、第二の地球が存在する可能性ですが、これがなかなか大変かもしれません。丸山さんたちの提示されたハビタブル・トリニティは、いくつかの厳しい条件をクリアしなければ、生命は誕生しないと考えられます。

 さて、このシリーズの最後として、地球の生命から学ぶべきことをまとめておきましょう。丸山さんたちは、初期的な大陸(列島)の地溝帯で火山活動が激しい場を提案しています。地球生命の誕生の場は、これまで深海底の熱水噴出孔が有力だったのですが、ハビタブル・トリニティを考えると、より陸地に近い環境が適していると考えています。地溝帯では固有の火山活動が起こっており、生命誕生や維持に必要な栄養素がそろいやすいと指摘しています。これは、今までにないアイディアです。
 また、現在の太陽系がの惑星探査で見つかっている惑星系には、大きく3つのタイプがあります。巨大ガス惑星が太陽に近いところにある(ホット・ジュピター)、遠いところにある(クール・ジュピター)、ガス惑星のない惑星系(ジュピター・レス)の3つです。
 ホット・ジュピターでは、地球型惑星は氷惑星の位置で形成されたものがハビタブル・ゾーンに移動するので、大量に水を持ってしまいます。大量の水は、ハビタブル・トリニティを満たしにくくなります。ジュミター・レスでは、地球側惑星は太陽に近づきすぎて、ホット・スーパー・アースになっていきます。クール・ジュピター・タイプだけが、ハビタブル・ゾーンに地球型惑星ができます。ただし、その惑星は水の量が少なすぎて生命誕生には適さないようです。ほどよい水の量の惑星は、外側から移動してきたものだと考えてます。それも少しはあるだろうと考えています。かなか難しい条件なので、地球型惑星で地球程度の水は彗星の衝突で水を供給するという可能性も指摘しています。
 生命誕生のためいは、いくつかの厳しい条件をくぐり抜ける必要がありそうです。ハビタブル・ゾーンに、適切な大きさの惑星として、大気を保持し続けて、なおかつ多すぎない水の量をもっていなければなりません。この初期条件を満たすことが、生命の星になる重要な条件になります。こ
 生命誕生にいたる道は、なかなか険しいようです。ただし、その条件さえ満たせば、かなりの可能性をもって生命が誕生しそうです。また、条件を維持することも、それほど難しいことではなさそうです。
 陸地(列島)が形成されれば、生命誕生の場が生じ、誕生することでしょう。陸地が広がると、地球の環境は非常に多様になります。誕生したた生命は、多様な環境で、生物の多様が起こります。
 丸山さんたちは、生命誕生の場が初期地球だけのものでなく、現在の地球にも存在するのではないかと考えています。日本のある場所で、不思議な化学反応をしている生物がいることを発見しています。まだ途上の研究ですが、このような生物が現在生まれている生物だとしたら、私の生命観、進化観は大きく変更が迫られます。丸山さんたちの研究が、今後どのような展開を見せるかなかなか楽しみです。

・初夏なのに・
YOSAKOIも終わりました。
6月も中旬になってきました。
春から6月の初夏にかけても、
晴天の日が少なく思えます。
本来はこの時期は、
雪国ではもっと快適な時期になるはずなのですが、
曇っていたり、風が強かったり
北海道らしい快晴の心地よい日が
あまりに少なく思えます。

・地質学・
地質学の話題のうち、火山、地震、津波、地滑りなど
人の命や財産を危険にさらされるものは、
メディアにも大きく取り上げられます。
それ以外の成果としては、
自然科学の中でも地質学は
かなり地味な取り上げ方しかされないようです。
恐竜の化石などは、花形の分野になっていますが、
しょっちゅう珍しい化石が
発見されるわけでもありません。
化石も、科学的重要性も考えると、
話題として取り上げられる頻度は
そうそう多くはないように思われます。
かといって、地質学が科学的重要度が
低いわけではありません。
今回の論文のようば壮大なテーマと
そのインパクトの強烈さは、
地質学の醍醐味を感じさせて
くれるものではないでしょうか。

2015年6月11日木曜日

2_130 ハビタブル・トリニティ 4:海水の量

 生命の進化には、惑星として満たすべき条件がさらに必要だといいます。海水の量です。海水が多ければ大陸の岩石できたとしても、陸地ができないことになります。生命の進化には絶妙の条件が必要なのかもしれません。

 丸山さんたちの説では、生命は、軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、なおかつ水、大気、岩石の「ハビタブル・トリニティ」から由来する成分が常に供給され続けるところで、誕生したというものでした。
 複雑に進化した生物であれば、これらの成分を蓄えたり、取りに行ったり、集めたりすることができます。動物であれば、水を飲みに水辺にいくことができますし、植物なら根や実、茎などに養分として蓄えることができます。
 生命の誕生や単細胞のような単純な生物であれば、環境として継続される必要があります。さらに、生命の誕生を考える場合、これらの3つの成分が、常に存在し、いろいろな化合物が繰り返し合成されているところでなければ難しいでしょう。
 「ハビタブル・トリニティ」として成分が循環している環境が生命の誕生の場として望ましいところとなります。生命が誕生した後、進化し続けるためには、このような成分が、継続的に循環している環境が存在しなければなりません。
 地球は、「ハビタブル・トリニティ」を有し、すべての条件を満たしていました。これらの条件は、水の惑星であれば、簡単に満たせるように思われますが、そうでもなさそうです。多くの制約条件があり得ることを、丸山さんたちは指摘しています。
 まず、水惑星として水があり、プレートテクトニクスが働けば、大陸を構成する岩石が形成されます。大陸の岩石である花崗岩や安山岩は、プレートテクトニクスによって海洋プレートが沈み込んだ時、列島で形成される岩石(安山岩)が起源となります。だから水さえあれば、花崗岩は形成されるはずです。
 水は不可欠な存在ですが、水の量が重要になります。
 水が多ければ陸地が形成されません。大陸の岩石があったとしても、海面上にでることがなければ、大陸の成分として海に持ち込まれる量は、非常に少なくなります。大陸があると、岩石の中の成分が風化、浸食、運搬によって、大量に海に持ち込まれるからです。大陸の適切な量が必要なのです。
 太古代(約25億年前)まで大陸と呼べるほどの規模のものはなく、列島があちこち散在する状態だと考えられています。そのような陸地の条件であれば、陸からの栄養素の供給量も少なく、また安定した供給が難しく、生命の進化にはあまり適さなかった環境だと考えられます。生命体を構成するには、栄養素として広い陸地、大陸が必要だったと、丸山さんたちは主張しています。
 地球には常に海が存在していました。しかし、その量(あるいは海水面)は、数100mの範囲で変動してきたと考えられています。6億年前くらいから、海水が「マントルへ逆流」しはじめ、海水量は現在も減っていると考えられています。
 生命誕生や初期の進化では、海洋で多くの時間をかけておこなわれていました。海水があまりに少ないと、その環境を維持するのが難しかったかもしれません。大陸と海水の量にも、ある限られた条件が必要だったと考えられます。

・マントルへの逆流・
海水のマントルへの逆流は、
これまた丸山さんが思いつかれたアイディアです。
地球は内部に蓄えたエネルギーが外部へ放出され
地球が冷めていく過程でとみなせます。
それを原動力として、地球のいろいろな営みが起こっています。
沈み込み帯の環境も、昔と現在まで変わってきています。
水(実際にはOH)を含んでいた鉱物は
昔は温度が高かったため、
分解され水が抜けてた鉱物に変わっていました。
ところが、温度低下により、水をもったままの鉱物として、
沈み込めるようになりました。
これは量は少しずつですが、
マントルに水が持ち込まれているということになります。
その量は海水面にして数100mであったと見積もっています。
これを称してマントへの海水の逆流と呼んでいます。
これもなかなか壮大な話です。

・天候不順・
5月下旬から6月上旬にかけて
天候が不順で肌寒い日が続きます。
先日も自宅でストーブを焚いてしまいました。
稀なことではありますが、
このような天候は時々あります。
北海道にいると、天候不順がいつも気になります。
冷夏や日照不足にならなければいいと思ってしまいます。
なんといっても北海道は農業が重要な産業ですから
天候不順は非常に気になるところです。

2015年6月4日木曜日

2_129 ハビタブル・トリニティ 3:ハビダブル・ゾーン

 生命の惑星になるためには、惑星の軌道条件(ハビタブル・ゾーン)に質量条件を満たした惑星で、さらにハビタブル・トリニティをも満たしていなければなりません。生命の誕生にはいろいろクリアすべき条件があります。

 地球は、青い星、水の惑星などと呼ばれ、「水」があることが特徴となっています。水は生命誕生、そして生命維持、進化においても、なくてはならないものです。
 惑星に水が存在するためには、いくつかの天文学的条件を満たさなければなりません。まず、母星である太陽にも条件が課せられます。太陽の明るさと惑星と太陽の距離が適切でなければなりません。近ければ暑くなり、H2Oは気体になり、遠くて寒ければ氷となります。ある限られた軌道にだけ水が存在できます。この惑星の軌道条件は、「ハビダブル・ゾーン」と呼ばれています。
 また、天体として水を保持し続けるだけの十分な質量(あるいはサイズ)が必要です。大きすぎると木星、土星のようなガス惑星になり、水があっても表層環境で軌道条件を活かすことができません。小さすぎると水星、火星のように大気が薄く、水の存在できる表層の環境を、長期間維持できなくなります。惑星は質量条件を満たす必要もあるのです。
 このような軌道条件を満たした場所に、質量条件を満たした惑星があったときのみ、水が存在します。太陽系でこの条件を満たしているのは、地球だけです。
 軌道条件と質量条件の設定は、惑星の表層に海洋(水)の存在でき、維持ができることを限定するものです。ところが丸山さんたちは、水の存在だけでは生命誕生の条件としては足りないといいます。生命の誕生そして維持には、「栄養素」も必要だというのです。その根拠が前回紹介した生命を構成している化学成分になります。
 人間(生命)の化学成分(元素組成)として、多い順に酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンとなっていました。これらの化学成分は、3つのグループに分けることができます。水素と酸素、炭素と窒素、カルシウムとリンの3つです。これらの3つのグループは、元素が地球のどこから由来しているかに基いて分けられています。
 水素と酸素は水(H2O)の素材で、地球での分布場所は、海洋です。炭素と窒素は大気中です。炭素は大気中には二酸化炭素(CO2)として存在し、窒素は2つ結びついた分子(N2)として存在します。二酸化炭素は、現在の地球には量が少ないのですが、かつては大気の主成分として、大量に存在していていたことがわかっています。
 カルシウムとリンは、岩石中に含まれている成分です。また生命の維持にはカルシウムとリンの他にカリウムも必要不可欠な元素です。これらの成分は、どの岩石でもそれなりに含まれているのですが、大陸や列島を構成している花崗岩や安山岩に多い成分です。つまり大陸の存在が生命の栄養源として重要な要素だと、丸山さんたちはいいます。
 生命に必要不可欠な3つの成分、水、大気、岩石(大陸)を「ハビタブル・トリニティ」と呼びました。軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、ハビタブル・トリニティを備えた惑星こそが、生命誕生に必要な条件になります。
 丸山さんたちの考察はここで終わりではありません。まだまた広がってきます。

・個人に属するもの・
急な体調不良が続きダウン状態になりました。
こんなとき大学教員は講義や校務の休む手続きと
それを補う手続きが必要になり
大変な思いをします。
何も大学教員だけでなく
社会人全般のことでしょう。
ただ大学教員は、個人に依存する仕事が多いせいでしょう。
以前の博物館や研究者であった時は、
通常の休みは、電話連絡で済ませられ
損失は自分の仕事がその間ストップするだけでした。
大学の講義や校務は、いろいろ複雑で
あとで代替もしなければなりません。
大学は大きな組織ですが、
講義や研究を考えると
個人に属する部分が大きいのです。
まるで個人経営の自転車操業状態です。

・音での季節変化・
北海道は暑く感じる日が
ときどき訪れるようになってきました。
そんな日にはエゾハルゼミの声も聞こえます。
北海道の6月では、
夏の訪れを感じさせるものが
植物の移ろいだけでなく、他にもいろいろあります。
ヒバリのさえずりからカッコウの鳴き声へ。
エゾハルゼミとYOSAKOIの練習する音楽や掛け声。
音でも季節を感じることができます。