2015年2月19日木曜日

3_136 プレートはなぜ動くのか 4:マントル対流

 マントル対流が、表層をに現れると、地表を水平に移動します。移動の原動力はどこに由来するのか。当たり前のことのようですが、なかなか一筋縄でいかないようです。冷めた下降流によるものなのか、上昇流が水平移動に転換されたのか。それが問題なのです。

 前回までのエッセイで、小平さんたちの調査の結果、この地域には大きく2つの特徴があることがわかってきました。その特徴は、特異な割れ目があること、地震波の伝わる速さ(伝搬速度)の方向にによって異なっている(方位異方性)というものでした。
 地震波をもちいた探査では、地下の構造に乱れがあると地震波の反射や岩石の密度に変化があると地震波速度の変化として捉えることができます。特に明瞭は不連続な面は、検知しやすくなります。
 今回見つかった構造は、等間隔で形成されている特異な割れ目でした。通常の場合であれば、そこに岩石があれば、地殻もマントルも関係なく、断層が形成されていきます。断層とは、岩石に力がかかり、耐えられなくなり割れるときに、形成されるものです。ですから、割る力と割られるべき岩石があれば、岩石の種類に関係なく、断層は形成されることになります。今回みつかった断層は、地殻から延びているのに、マントルに達することなく境界(モホ面といいます)で止まっています。これは、一般的な形成メカニズムでできた断層ではないことを示しています。
 滑りをおこすような力(剪断応力といいます)を岩石にかけると、力のかかった方向に対して斜めに、一定の間隔で割れ目ができることがあります。このような割れ目のことを、リーデル剪断(Riedel shear)といいます。今回見つかった特異な割れ目は、リーデル剪断に見えるというのです。
 もし太平洋プレートの構造がリーデル剪断であれば、沈み込んでしまった海嶺から離れる方向に引っ張る力が働いていることになります。このような力は、マントルが中央海嶺から離れる方向に流動しており、上に乗っている地殻を動かしていると考えると説明できます。
 もうひとつの特徴である地震波伝搬速度の方位異方性とは、地震波の速度が、マントルの伝わる方向によって違いが生じるということです。マントルを構成している主成分のカンラン石は、1100℃くらいになると流動性を持つようになります。その時流れる方向に結晶が配列するという現象が起こります。結晶は、流動している方向に地震波速度が速くなり、直交する方向では遅くなるという配列ができます。今回の異方性は、海嶺付近のマントルは、プレートの動く方向に流動していることを示しているように見えるのです。
 今回見つかった2つの特徴は、海嶺付近ではマントルが流動することによって、地殻の海嶺から遠ざかる方向に引っ張っていると説明できるというのです。プレートの運動は、マントルの流動(対流)が原動力であるということを示しているというのが、小平さんたちの主張になります。この結論は、今まで海洋プレートが冷えて沈み込み、それが海洋プレートを引っ張っている、というモデルに相反する証拠を突きつけたことになります。
 地質学において、この説はどのような意義があるのでしょうか。それは、次回としましょう。

・異論・
今まで多くの人たちが正しいと思っていたことに
異を唱えることは、なかなか勇気のいることです。
自分のやった調査や観測、実験が
信頼できるものであり、
さらにそれらの事実から導き出される結果を
自分が信じることができれば
常識や主流派に反する考えも
自信を持って提示できるはずです。
ただ、その常識や主流派が大きければ大きいほど
必要な勇気も大きくなります。
今回の異論は、どの程度度でしょうかね。

・平年・
北海道の厳しかった冬もやっと緩んできました。
まだ三寒四温というには早い気がしますが、
暖かい雪解けがおこるような日も挟みながら、
寒さが繰り返されす日が続くように思えます。
ただ、その寒さも2月になると
だいぶ緩んでいるようです。
今年は冬の始まりが早く、
雪も多かったのですが、
1月下旬からは、
厳冬とよべる時期が来る前に
寒さが緩みました。
昨年は2月は寒波が来て冷え込みました。
よく考えると、その年の気象状況を振り返る時
自分の記憶の中の「平年」をもとにしています。
ところが、自分の「平年」が本当かどうかは、怪しいものです。
今では統計で確かめることができるのですが、
そこまでなかなか手間をかけずに
つい思っていしまうのが問題なのかもしれませんが。