2015年1月29日木曜日

3_133 プレートはなぜ動くのか 1:熱の移動

 プレート運動において、マントル対流は重要な役割を担っています。ところが、その因果関係については、必ずしも実証されているわけではありません。最近、プレート運動とマントル対流との新たな関係を示す報告がだされました。それに基づいて、プレートテクトニクスについて紹介してきましょう。

 地球の大地の営みの多くは、プレートテクトニクスという考え方で説明されています。大規模なものは海洋底の形成や大陸の移動、巨大山脈の形成から、地震の発生、火山活動、温泉などの小規模なものまで、さまざまな大地の営みが、説明可能です。
 また、プレートテクトニクスは、現在の地球の営みを説明するだけでなく、過去の履歴も解明できます。過去の岩石から、過去の大地の営みをプレートテクトニクスを用いることが解き明かすことができます。うまく利用すれば、未来を予測することも可能です。プレートテクトニクスは、地球の営みや歴史を解明する上で、欠かすことのできないメカニズといえます。
 では、そのプレートテクトニクスのメカニズム自体は、本当に理解されているのでしょうか。表層の大地の運動は実測されるようになってきました。しかし、プレートの運動を大きく左右する、マントルの運動については、実測はされていません。つまりプレートがなぜ動くのかが、まだわかっていないということです。見えるのは「現在の状況」だけです。あまりにも遅い運動はなかなか見えないのです。
 そもそも、プレートはなぜ動くのかという素朴な疑問にどう答えるかです。基本的なメカニズムは、地球の内部の熱がマントル物質を通じて宇宙空間に放出される、という熱の移動によっておこっていると考えられています。簡単に説明しましょう。
 そもそも地球内部に蓄えられている熱の源は、地球が形成にまで遡ります。地球は、膨大な物質が衝突合体しながら形成されました。そのとき、さまざまなエネルギーが大量に、地球に向かて集まってきたのですが、その一部は熱となって地表の岩石を溶かすのに使われたり、宇宙空間に放出されました。また一部は、地球内部に閉じ込められたまま残りました。
 地空内部に蓄えられた熱によって、固体地球の中で岩石より融点の低い鉄が溶けます。鉄は岩石より密度が大きいので、溶けた鉄は地球の内部に落ちていきました。さらに、地球内部の温度が冷めてくると、溶けた鉄が結晶化して固体として沈殿していきます。鉄の結晶化でも熱(潜熱)が発生しました。
 また、物質の成分には放射性元素があり、それが放射壊変することによる熱も加わります。このように地球内部には大量の熱が今も蓄えられていることになります。
 ただし、宇宙空間は冷たいので、熱は外に放出されるようになります。熱の運搬の現れが、マントル対流であり、プレートテクトニクスだと考えられています。その詳細は次回にしましょう。

・1年前のものですが・
このエッセイのもとになる論文は
海洋研究開発機構の小平さんたちが
2014年3月31日に出されたものです。
日進月歩の科学としては、
少々古い情報かもしれませんが、
プレートはなぜ動くのかという疑問に
新たなデータから今までの考えに修正を迫る結果でした。
今回から数回に分けて紹介します。

・冬の雨・
1月下旬は、北海道でも最も雪の降る時期です。
先日、北海道に雨が降りました。
今年は、比較的雪が多い年だと思っていたのですが、
年末と先日の2回の雨には、非常に少々驚かされました。
春ならまだしも、この時期の雨は非常に困ります。
路面がツルツルやベチョベチョになるからです。
それに防寒用の冬靴は防水が充分でないので
水たまりに入ると染みてきます。
足が冷たい思いをします。
春なら、ゆるせるのですが・・・

2015年1月22日木曜日

5_124 ロゼッタ 4:探査

 フィラエは彗星の表面に着陸はしたのですが、2度のバウンドをしてしまいました。幸い、装置は無事でしたが、機体が固定はされていません。また、着陸した地点は、崖の脇の日陰のところでした。困難な状況に陥ったミッションでしたが、まだ希望を持ち続けて、見守りたいものです。

 ロゼッタの着陸探査機のフィラエが、彗星チュリュモフ・ゲラシメンコの表面で2回もバウンドしたことは、前回紹介しました。予想外のバウンドがあったのですが、幸いなことに、フィラエの機能は無事だったようです。
 その後、フィラエ自身が撮影した写真によって、着陸地点の様子がわかりました。なんと、崖の陰なっているところ着陸していたのです。さらに、フィラエは横倒しになっていることもわかりました。
 フィラエの動力源は、ソーラーパネルによる太陽光発電でした。日陰では発電量が十分確保でません。彗星は12時間で一回の自転しているので、太陽の日差しが、かろうじて当たる時間帯があります。ただし、その時間は、自転周期の12時間のうち1時間半、地球の一日に換算すると、3時間ほどの日差しでしか充電できません。太陽光に期待できません。
 探査できるのは、フィラエの事前に充電していたバッテリーが動く間だけです。バッテリーが尽きれば、フィラエのミッションも、ほとんど遂行できないくなります。バッテリーが使えるのは、64時間程度と予測されていました。その間に、可能な限りの観測をすることになります。
 体勢が悪く、機体を固定されていないため、ドリルを使う岩石や氷の調査は断念されました。重力が小さいため、下に力を加えると、反作用で飛び出してしまう危険性があるからです。実は、フィラエの重要な任務としてあったのが、彗星の起源の解明でした。ドリルで地下23cmまで掘って、岩石あるいは氷の試料を機体内に採取して、加熱して気化させ、試料の水素同位体分析をする予定でした。このデータから、彗星の起源を探ろうという目的でした。この重要な任務を断念しざるえませんでした。
 その詳細は学会発表にてなされるはずなので、どういう情報がでてくるかは、今後に期待しましょう。
 ただし、現時点でもいくつかの情報はあります。12月10日の段階で、母船のロゼッタからの観測された彗星の水素中の重水素の比率が、地球も水の値の3倍もあることがわかりました。これは、地球の水とこの彗星の水は、起源は違っていることを示しています。
 彗星は太陽の周りを周回しているので、2015年8月13日に太陽に最も接近します。今後、太陽に接近すれば光が強くなります。そうすれば、フィラエのバッテリが充電できるかもしません。それが起こるとしても、まだまだ先の話でしょうが。
 その後も継続してロゼッタのミッションは継続され、計画では2015年12月31日まで続く予定です。はやぶさのミッションのように、最後まで諦めずに、期待を持って見守りたいものです。

・センター試験・
センター試験が先週末にありました。
我が大学も会場になり、
教職員が総出で対応しました。
雪による公共交通機関のトラブルがあったのですが
受験生の遅刻もなく、
予定通りに試験はスタートできました。
2日間の長丁場の緊張を強いられる受験生ですが、
成功をお祈りしました。
開催側の人間としては、
無事に試験が終わることを祈るしかありませんが。

・今年の冬・
北海道は今年の冬は雪が、結構降っています。
積雪量は思ったほど多くはないですが、
これからどうなるでしょうか。
根雪が早かったり、猛吹雪が何度かありました。
年末に雨が降ったこともあります。
今年の冬は、いろいろ変化に富んでいるようです。

2015年1月15日木曜日

5_123 ロゼッタ 3:着陸

 彗星への着陸は、いろいろな困難があります。小さい天体なので、天体の重力はほとんど利用できません。着陸にスピードがあると、作用・反作用で跳ね返ってしまいます。慎重に着陸しなければなりません。フィラエの着陸の様子を紹介しましょう。

 一般に彗星は、岩石と氷でできていますが、太陽に近づくと氷が溶けて、大量の水蒸気と少し粒子が火山のように吹き出します。水蒸気や粒子(イオンになっていることもあります)が、彗星の尾になっていきます。彗星は、太陽に近づくたびに大量の水蒸気を放出するので、形を変えていきます。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、太陽に近づきつつあり、これから激しい水蒸気の噴出がはじまるはずです。ロゼッタは、その様子を間近に観測しようと計画されています。
 チュリュモフ・ゲラシメンコは小さい彗星ですから、その形態や状態は、近づかないとわかりません。ロゼッタは、フィラエという着陸機を下ろして、表層の探査をしていく予定でした。彗星の形態や表層の様子を調べて、どこに下ろすかを決める必要があります。
 ロゼッタは、彗星の周回軌道を巡りながら、多数の写真を撮影しました。彗星の観測から3Dモデルが作成され、そこに写真が合成され、全体を眺めることができるようになりました。
 観測の結果、彗星はいびつであることがわかりました。大きさの違う2つの玉が棒状のものでつながった形になっています。天体の大きさは、小さな玉が2.5×2.5×2.0km、大きなほうが4.1×3.2×1.3kmで、全体の質量は10^13kgで、密度は0.4g/cm^3になっています。12.4時間の周期で自転していました。この彗星は、私には鉄アレイのような形にみえましたが、ESAの研究者たちは「アヒルに似た形」と表現しています。
 さて、着陸地点の選定です。いくつも候補地があがり、それぞれに一長一短があり、研究者間で議論になりました。最終的にひとつの地点が選ばれ、そこに下ろすことになりました。
 彗星は小さい天体なので、ほとんど重力がありません。近づくのにスピードがあると、作用・反作用の効果が強くて、跳ね返ってしまいます。そのためスピードを極力落として、非常にゆっくりと近づきます。7時間かけて降りることになります。フリーフォールと呼んでいます。
 それほどゆっくり降りても、着地した瞬間に反作用で跳ね返ってしまいます。跳ね返りを防ぐために、スラスターという装置を利用します。スラスターは、フィラエの自重を用いて、足をぐっと下に押し付ける装置が用意されていました。スラスターは故障していることが事前にわかっていました。そこで、ハープーンと呼ばれるヤリを発射して、彗星表面に打ち込み、フィラエを固定することにしていました。
 ところが、ハープーンの発射は失敗に終わりました。フィラエは彗星の表面で跳ねてしまいました。2度もバウンドしましたが、無事着地していたことがわかりました。ただし、その体勢は、非常に危うい状態でした。
 その後にも手に汗握るドキュメントがありました。それは、次回としましょう。

・ブログ・
ロゼッタのスタッフが書いているブロク(英語)があります。
http://blogs.esa.int/rosetta/
スタッフに喜怒哀楽が綴られています。
そこに、最新情報といろいろなコメントが寄られています。
「スタートレック」のカーク船長役の
ウィリアム・シャトナー(William Shatner)からの
コメントも寄せられています。
カナダからESAへのメッセージでもあります。

・卒研発表会・
私の学科では、今週と来週に講義期間中に
卒業研究の発表会があります。
講義期間といっても、午後の講義時間のすべてを使って
学生も教員全員が集まり発表会をします。
卒業研究は3年生のゼミと継続しているため
実質2年かけて作り上げることになります。
3、4年生の必修科目にもなっています。
ゼミごとに熱のいれからはさまざまですが
私のゼミでは、かなり力を入れて取り組みます。
私のゼミの学生は大変な思いをしながら研究に取り組みます。
発表会はその集大成なので、
正装で臨むように希望を出しています。
決して強制はせず、私の希望といっています。
他のゼミの学生は普段着ですが、
私のゼミの学生だけは正装で発表します。
学生たちは一生懸命取り組んだ気概もあるので
素直に正装で発表しています。
達成度は人それぞれですが、達成感は味わっているようです。

2015年1月1日木曜日

5_121 ロゼッタ 1:はやぶさ2

 新年最初の、エッセイは、昨年11月に達成された探査機「ロゼッタ」の偉業からはじめましょう。日本では「はやぶさ2」の話題に押されて、あまり話題になりませんでしたが、重要な成果を挙げたロゼッタを紹介してきましょう。

 昨年暮れの日本では、小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げの話題が大きく取り上げられました。「はやぶさ2」は、12月3日13時22分、種子島宇宙センターから、H-IIAロケットの26号機で打ち上げられました。当初、12月1日に予定されていたものが、天候不良で延期になり、より一層の期待感が増しました。
 初代の「はやぶさ」は、数々の故障に見舞われながらも、知恵と工夫の末、2010年6月13日22時に、地球にたどり着きました。オーストラリアの大地へサンプルの送り込み、自身は燃え尽きて、その使命を果たしました。その後、「イトカワ」からの持ち帰った多数のサンプルが、公開され研究に用いられています。
 「はやぶさ」の成功は、ニュースだけでなく、関連の書籍や映画にもされ、多くの日本人に感動と希望を与えました。このエッセイでも何度も取り上げ、紹介してきました。そんな初代「はやぶさ」の思い入れも背景にあったためでしょう、「はやぶさ2」への期待は嫌が上にも大きくなります。話題にもなり、飛び立つ前から書籍も次々と出版されていました。
 「はやぶさ2」は、厳しい予算で継続されてきたのに、民主党政権でのさらに予算の縮小もあり、計画の見直しがされ、なかなかすすみませんでした。しかし、「はやぶさ」の帰還により、民主党政権でも称賛を受け、2011年度で開発予算がつき、JAXAは正式に打ち上げプロジェクトがスタートさせました。そして開発段階に入りました。そのような多難にスタート後の2014年12月の打ち上げだったのです。
 日本では「はやぶさ2」の打ち上げのニュースに押されてしまい、あまり大きな話題にはならなかったのですが、実は欧米では宇宙関連で、大きなニュースがありました。欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた「ロゼッタ」という探査機のニュースでした。
 ロゼッタは、「はやぶさ」に勝るとも劣らない、困難で重要な任務を遂行していました。なんと、10年にもおよぶ飛行の末、彗星にたどりつき、着陸機「フィエラ」を下ろしました。そのプロセスやミッションについては、次回としましょう。

・謹賀新年・
明けまして、おめでとうございます。
今年の発行日は、元旦になりました。
多くのメールが行き交う可能性があり、
到着が遅くなったかもしれませんが、
のんびりとお読みください。
昨年の末は、STAP細胞の話題を取り上げ、
少々暗い終わりでしたが、
新年は、明るい話題からスタートしたいと考え
探査機ロゼッタを取り上げました。

・ロゼッタストーン・
「ロゼッタ」の名前は、
有名なロゼッタストーンに由来しています。
またロゼッタから飛び出した着陸機「フィラエ」は
ロゼッタストーンの解読の鍵となった
フィエラ・オベリスクにちなんだものです。
フィエラ・オベリスクとは、
1815年に上エジプトのフィラエ島で発見された
大きな岩石でできた記念碑のことです。
ヒエログリフと古代ギリシア語の
2つの言葉で書かれていたました。
このヒエログリフがロゼッタストーンの解読の
重要なヒントになりました。
彗星の起源を解き明かすために、
ロゼッタストーン、あるいはフィエラ・オベリスクへの
故事を再現する期待をこめてつけられたのす。