2014年8月21日木曜日

1_131 宇宙の年齢 4:宇宙背景放射

 宇宙の年齢が、昨年から137億年から138億年になりました。その理由は、用いたデータが、WMAPからPlanckに変わったためです。年齢が変わったというより、精度が上がったためでした。

 前回は、古い天体の年代から宇宙の年齢の下限を決める方法のうち、最新の情報を紹介しました。次に、宇宙の年齢を直接推定するために、観測と理論を結びつける方法を紹介します。
 前に紹介したように、宇宙を構成する物質やエネルギーなどの組成を割り出して、そこから宇宙の膨張率を求めれば、宇宙の年齢をかなり正確に見積もることができます。宇宙の組成を正確に求める方法として、宇宙(マイクロ波)背景放射を観測する方法があります。
 マイクロ波とは、電子レンジで使用されているもので、水分に吸収されやすい性質があります。大気中には水蒸気があるのため、宇宙から届くマイクロ波は地上から観測しづらくなっています。そのため、衛星を打ち上げて、地球の大気の影響を受けないところで観測する方法がとられています。今まで、3度におよぶ衛星観測がなされていきました。
 最初は、COBE(Cosmic Background Explorer)という衛星による1989年から1996年にかけての観測でした。宇宙背景放射と均質性と不均質性(むら)を正確に測定することが目的でした。背景放射の温度である2.73度(絶対温度)の波長(マイクロ波)で測定されました。宇宙は大局的には非常に均質でありながらも、10万分の1のむらがあることがわかりました。この結果によって、ビックバン理論の根拠(均質さ)を示すとともに、ビックバンの様子(むら)を知ることにもつながりました。
 2001年6月打ち上げられたWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)衛星は、2010年8月まで観測をおこないました。WMAPは、COBEより位置の分解能と感度を上げました。位置の分解能とはより狭い範囲を精度よくはかることで、感度とはより測定精度(有効桁数)を上げて測定することでした。WMAPによって、それまでの宇宙の基本的なデータが、いろいろと書き換えられました。
 宇宙の組成が、バリオン(見えている物質)が4%、ダークマターが23%、ダークエネルギーが73%となり、ハッブル定数(71±4km/s/Mpc)も正確きめられ、宇宙の年齢が137±2億年となりました。この137億年という値が、宇宙の年齢として、広がりました。ただし、±2億年という誤差がつくことなく、137億年がひとり歩きしていきました。
 3機目にあたるPlanck衛星が、2009年5月に打ち上げられ、2013年10月に運用が終了しました。Planck衛星は、宇宙背景放射をより高感度、高分解能で観測するためでした。その結果が、2013年3月21日に公開されました。
 宇宙の組成は、バリオンが4.9%、ダークマターが26.8%、ダークエネルギーが68.3%となりました。そして、ハッブル定数は67.15±1.2km/s/Mpcとなり、宇宙年齢は137.98±0.37億年となりました。これが宇宙の年齢の138億年の根拠となります。
 WMAPと比べるPlanckのデータは、数値としてはほんの少しの変化しか与えませんでした。しかし、その精度は、2桁よくなりました。そしてCOBEやWMAPのデータをより強固なものにし、より高精度になりました。
 今後も観測は続くでしょうが、これらの値は、より下の桁での変動はあるでしょうが、確定されたといえるでしょう。宇宙の年齢も、2013年にだされた138億年で確定となりました。これからは138億年という年齢を研究者が使い、メディアでこの数値が使われるようになります。しばらくすると、この138億年が宇宙の年齢として定着していくでしょう。

・盛夏が終わる・
北海道は涼しくなりだしました。
朝夕は半袖では少々肌寒くなりました。
夜はもちろん窓を閉めきって寝ています。
これからしばらく、雪の降るまでが、
過ごしやすい快適な時期となります。
ただし、私は、後期のはじまる9月下旬まで
毎週末や不定期に雑多な校務があります。
9月になれば1週間だけ調査にでれます。
それだけを楽しみに過ごします。

・人間ドック・
このメールマガジンが発行される日に
私は、人間ドックにいきます。
毎年恒例で、家内とともに1日の人間ドックを受けます。
午後に問診や栄養指導があるのですが、
検診自体は午前中に終わります。
検査後は、所用を済ませて帰るだけとなります。
その所用がいろいろあって少々面倒なのですが。
しかし、人間ドックも私にとっては
休養の一日となります。