2014年5月8日木曜日

1_125 最古の認定 5:UとThの年代測定

 ジルコンの年代測定は、放射性核種のウランやトリウムの放射崩壊を利用するものです。ウランとトリウムの年代は、回帰直線によって決めていきます。では、その年代測定の方法や原理とは、どんなものでしょうか。

 前回紹介した2つの論文は、古い時代できた鉱物が、新しい時代の地層の中にある構成の粒子となったものを分析した年代です。44億0400万年前という年代は、地球で最古のものなので、年代決定の信頼性が問題となります。
 多くの研究者は、その年代が多分正しいと思っています。なぜなら、鉱物のジルコンから年代測定する手法は、多くのところで使われていて、すでに確立されている技術であることと、その年代の精度が他の手法とクロスチェックを受けているので、信頼性に足ると思えるからです。
 ただし、年代測定やジルコンに詳しい研究者には、不安が残されています。理由のひとつは、さまざまな遍歴をした鉱物なのに、年代の確かさが、まだ十分検証されていないということです。さらに、ジルコンで年代測定に用いている成分が、鉱物の中を移動しやすいことが知られているからです。まして、地球最古の鉱物ともなると、40億年以上、地球の表層付近でさまざまな風化や変質、変成を受けていることになります。その間、本当にその成分は、ジルコンに中に安定的に、時間記録を保存しているのでしょうか。そのような不安を、検証によって払拭することが重要です。
 ジルコンに用いられる年代測定は、ウラン-鉛同位体年代測定とよばれるものです。いくつかの放射性の時計が組み合わさった複雑な年代測定です。それをできるだけわかりやすく説明しましょう。
 ジルコンに含まれている成分で年代測定に利用されている成分は、放射性をもつウラン(U)とトリウム(Th)です。ウランとトリウムは化学的に挙動が似ているため、ウランを含む鉱物にはトリウムも含まれていることがよくあります。
 陽子の数が同じウランという元素でも、中性子の数(質量数)が違っている原子(核種といいます)があります。それを同位体と呼びます。
 ジルコンの中の、ウランやトリウムが崩壊して、鉛(Pb)になっていきます。自然界に存在するウランには、質量数が234(234Uと表記されます)、235Uそして238Uという同位体があります。いずれの同位体も放射性を持っています。232Thも放射性をもっています。234Uは、238Uが崩壊するときにできるもので、中間生成物となります。ですから、ここでは取り上げません。
 いずれのウランもトリウムも、崩壊して、いろいろな経路をたどるのですが、最終的に鉛になっていきます。鉛は放射性をもたない、安定した核種となります。
 ジルコンの年代測定に利用できる放射性核種には、次のようなものがあります。
  元の核種   半減期  崩壊核種
   232Th   140.1億年  208Pb
   235U   7.038億年  207Pb
   238U   44.68億年  206Pb
 放射性核種の半減期が違っているので、成分さえ選べば、多様な年代測定に利用できることがわかります。
 年代測定をするには、ウランと鉛、あるいはトリウムと鉛の核種の質量数ごとに測定しなければなりません。壊れる前のもとの核種(親核種といいます)と崩壊でできた核種(娘核種)を測定します。さらに、マグマから同時にできた違う鉱物(親核種の含有量の違うもの)を、複数測定して、グラフ上で直線(回帰直線)を引いて、その傾きから年代を求めることになります。この方法は、アイソクロン法と呼ばれています。省略しますが、その成分抽出から測定は、なかなかやっかいなことになります。
 2つのウランの放射性壊変がありますので、もともとのウランの同位体比がわかっていれば、ウランの2つの系列から(235U→207Pb、238U→206Pb)、鉛の同位体(ただし安定核種の204Pbも)だけを測定をすれば、年代を決めることも可能になります。ウラン2つの崩壊系列を、数学的に一種の連立方程式で解くことになります。ただし、こちらもアイソクロン法なので、複数の鉱物が必要になります。
 いずれの方法も、アイソクロン法なので、ジルコンの年代測定には利用できません。ジルコンは、一つの種類の鉱物だからです。しかし、実際には年代が求められています。そのからくりは、次回としましょう。

・反省・
皆さんは、ゴールデンウィークに予定していたことが
できたでしょうか。
家族や夫婦、友達、ひとりで
なにかする、どこかに出かけるなどの予定が
順調にこなせたでしょうか。
我が家では、行楽も出かける予定はなかったので
淡々と休みを自宅で過ごしました。
私は、自分のやりたいことを考えていました。
私は、仕事ができなかったのが、一番の反省です。

・桜の季節・
ゴールデンウィークも終わり、
北海道もやっと桜が満開になりました。
今年は少々遅くまで寒さがあったので、
桜も少々遅れ気味です。
ゴールデンウィーク中にも肌寒い日があり、
我が家ではストーブを焚いた日もありました。
でも、着実に春は深まっています。