2014年4月24日木曜日

4_112 春の四国へ 3:互層

 宍喰(ししくい)の海岸には、砂岩泥岩の繰り返す互層(ごそう)あります。互層は、このあたりでは、垂直に立った地層になっていので、なかなか壮観なものとなっています。互層の断面に時間と変動を見ることができます。

 宍喰のリップルマークには、波がつくったみごとな模様が残っていました。リップルマークは、砂岩の表面に残された模様です。リップルマークは、ある時間面をみていることになります。
 一方、地層の重なっている断面は、時間の積み重なりを意味します。リップルマークもいいのですが、整然と重なっている地層の断面も、時間を意識してみると、なかなか見応えがあります。宍喰での目的は、リップルマークの他に、同じ地層の断面を観察することでもありました。
 宍喰のリップルマークの露頭の脇からも断面がみえます。しかし、周辺には、きれいな地層の断面が出ているところがいくつかあります。とりあえず近くでは、リップルマークの東、県道では次のヘアピンカーブにあります。そこには、道路脇に連続する地層の断面がよく見えます。
 もうひとつ、きれいな砂岩泥岩の互層が見られるところがあります。県道309号から少しはずれ、竹ヶ島に向かいます。竹ヶ島は陸に近く、狭い海峡を橋で渡ることができます。橋をわたってすぐ左手に海洋博物館マリンジャムという施設があります。この施設の脇から海岸にでることができます。
 その海岸にきれいな地層がみえます。リップルマークのあった地層とは、連続しています。
 私が訪れた時は夕方で、潮が引いていたので連続的に地層を見ることができました。海岸の地層は、侵食を受けて、海食台を形成しています。ですから、潮が引くと海食台の上を歩きながら、地層をみることができます。
 竹ノ島の海食台と地層の断面は、なかなか壮観です。ここの地層も、ほぼ垂直に立っています。10cm前後の砂岩と数cmの泥岩が繰り返しています。砂岩は、の黄土色で出っぱっています。泥岩は、黒っぽくてちりちりにくだけ、侵食を受けてくぼんでいます。そんな砂岩泥岩が繰り返しています。砂岩と泥岩の繰り返しは、互層(ごそう)とよばれています。
 互層は、繰り返すという規則性はあるのですが、砂岩泥岩の厚さや量比に規則性がありません。個々の地層には、同じものはありません。それぞれが別の時代に、別の条件によってつくられたものです。そして、一つ一つの地層に流れた長い時間があります。多様な相違や変動が、繰り返し起こることが、互層を形成しました。地層から、そんな時間や変動を味わえるので、見飽きることはありません。

・ストリートビュー・
今回の露頭の位置を確認するために、
地図のGoogle Mapでみたら、
ストリートビューがこのコースを走っており、
道路脇の露頭をみることができます。
興味のある方は、ご覧になってはいかがでしょうか。
また竹の島の潮の引いた海食台も
ストリートビューでみることができます。
なんと素晴らしい時代になったのでしょうか。
自宅に居ながらにして
このエッセイの場所にいって
見たような気分を味わうことができます。
ただし、満足感は現地に行くのと比べものになりませんが。

・異臭・
マリンジャムから海岸に降りようとしたら、
異臭が漂ってきました。
海岸の岩場にこげ茶色の大きな丸い物体がありました。
よく見るとアザラシ?の死体でした。
腐敗が少し進んでいましたが、
それほど古いものではなさそうです。
その海岸はテトラポッドを隔てて
海岸に降りるルートのすぐ脇でもあります。
岩場にはあまりいかないとしても、
施設の人も異臭に気づいていたはずです。
なぜ死んだのか、どうしてここに打ち上げられたのか。
そして、今はその死体がどうなっているか、
気になるところです。

2014年4月17日木曜日

4_111 春の四国へ 2:リップルマーク

 春の四国の旅の話は、当初、6つほど連続で紹介する予定でした。そうすると、他の新しい話題がとどこおり、同じ話題ばかり長く続くと、読む側も飽きてくるかと思いました。そこで話題を、3つのグループに分けて、詳しく紹介することにしました。今回は、リップルマークを中心とする話題で3回の連載を予定しています。

 徳島県海陽町宍喰は、徳島県でも最も南にあり高知県に隣接しています。宍喰と書いて「ししくい」と読みます。少々難しい読み方になっています。「宍」は、「しし、にく」などと読み、食用の獣肉という意味です。宍喰は、狩猟によって得た肉をたべるという意味で、鎌倉以降につけられた地名だそうです。
 私は、宍喰には何度も来ています。以前にも2回ほど、今回の調査でも日をあらためて、3回訪れました。なぜ、何度もここに来たかというと、国指定の天然記念物の「化石漣痕」があるからです。「化石漣痕」を詳しく調べたいと思っていました。可能であれば、良い光の条件で撮影もできれば思っていました。
 「化石漣痕」の漣痕とは、リップルマークとも呼ばれ、海底にたまった砂が、水流によって波打った模様ができます。古い時代のものなので「化石」とついていますが、生物とは関係ありません。過去のリップルマークという意味合いで使っているのでしょう。
 砂浜などで風によってできる波模様、風紋も、リップルマークとなります。陸地や海底などで、さまざまな場でリップルはできます。リップルマークは、砂の性質と空気や水の流れの性質によって、いろいろな模様ができます。模様から、流れの様子を復元することもなされています。
 宍喰のリップルマークは、海底で形成されたものです。タービダイトとよばれる海底の土砂流が、斜面を流れ下る混濁流によってできたものです。その時の流れや海底にもともとある底層流などによってリップルマークが形成されます。大陸斜面におこった大きな異変の証拠にもなります。
 国道から県道に入り少し行ったところ、道が大きくカーブする山側の切り立った崖がリップルマークのある露頭です。露頭は、ひとつの地層の面が広く見ることができます。その面のリップルマークがきれいに残されています。壁に向かってリップルマークを眺めると、海底の水流が左下から右上にむかって流れていることを感じることができます。
 このリップルマークは四万十帯と呼ばれる地層にあり、約4000万年前に形成されたものです。リップルマークから読み取った流れの方向を、堆積していた時代の海底にもどすと、東北東から西南西に向かった流れになるようです。この方向は、現在の南海トラフにある大陸斜面と同じでもの、4000万年前から似たようなタービダイトが形成される環境があったことになります。つまり、海洋プレートが沈み込むような海溝とそれに続く大陸斜面があったということです。
 列島と海溝のセット(島弧-海溝系と呼ばれています)、つまり付加体形成の場が、ここには古くから存在していたことになります。そんな太古の時間をリップルマークから感じることができます。何度見ても見飽きません。

・露頭のすごさ・
天然記念物のリップルマークは
国道から少し奥まった県道沿いにあります。
地図にもでているのすぐにわかると思います。
でも人里少ない道路なので、
ここでいいのか少々心配になるようなころ、
その露頭が現れます。
露頭をみれば、その大きさや見事さに
きっと圧倒されることでしょう。
リップルマークのある露頭面だけでなく、
横に回ってみると地層の断面がよく見ます。
すばらしいものです。
もし、時間があれば、足を伸ばして
海岸でも断面が出た地層を見ることができます。
その様子は、次回、紹介します。

・ペンション・
今回の宍喰の調査では、
リップルマークのすぐ下にある
ペンションに泊まりしました。
海岸わきにたつ瀟洒なペンションで、
いくつもの棟があります。
なかなかいいところです。
存在は知っていたのですが、
今回はじめて宿泊しました。
この海岸はペンションのものなので、
プライベートビーチになっています。
食事もオリジナルの珍しいものを
出していただけるので
満足いくものとなるはずです。
もし近くでお泊まりの際はおすすめします。

2014年4月10日木曜日

4_110 春の四国へ 1:付加体

 年度末の3月下旬に、四国へ調査に出かけました。5泊6日の旅でした。千歳を発って、羽田を経由して、高知龍馬空港にいき、そこからレンタカーで出かけました。目的地は四国南東部です。春の四国を巡る調査の様子を紹介しましょう。

 本来は秋に調査に出るつもりでいましたが、忙しくて出れず、延ばし延ばしにしていたのですが、校務の隙間をぬって、3月末にやっと調査に出れました。
 今回の調査で初めて行く地域もあったのですが、ほとんどは何度か行っているところでした。今回の目的は、いくつかの地域を再調査して、データを取りなおすことでした。その地質学的な意味を、何度かに分けて紹介していこうと思います。
 3月下旬、北海道は雪も何度も降っていましたし、まだ雪がたくさん残っていました。同じ日に、高知の太平洋沿岸を走っていると、桜が咲いていました。北海道の雪から四国の桜をみると、日本列島の南北の長さを感じました。
 さて、四国の地質についてです。四国の南部は、四万十帯とよばれる地質が広く分布しているところです。南海トラフと並行して東西に地層が並んでいます。四万十帯は、このエッセイでも何度かでてきました。その時も紹介しましたが、四万十帯は付加体とよばれる地質体です。
 付加体とは、海溝から大陸斜面にかけての列島の地下で形成されるものです。列島に海洋プレートが沈み込む時、海洋プレートの上部の岩石や、その上にたまった堆積物が剥ぎ取られて、列島にくっつきます。それはゆっくりとした動きですが、地球の長い時間のよって営まれる作用なので、大規模で雄大な結果となります。時には大きく激しい変化として、断層の形成や地震を起こします。
 付加体の中には、激しく擾乱をうけたものから規則正しく整った地層まで混在しています。これが付加体の特徴となります。
 剥ぎ取られたものは、非常に多様な岩石の様子やつくり(産状といいます)となります。もとの産状が、きれいに残されたものから、まったくわからなくなるほど乱されたもの(メランジュと呼びます)まで混在しています。
 規則正しく整った地層は、タービダイト層とよばれるものからできています。河川からもたらされた堆積物が河口付近にたまり、洪水や地震などのをきっかけに海底地すべり(重力密度流と呼ばれます)として、大陸斜面を流れ下ります。堆積物の流れ場、傾斜のゆるやかな盆地や海溝付近にたまります。これがタービダイト層となります。海溝付近のタービダイト層は、断層によって、メランジュとして巻き込まれることがよくあります。メランジュには、タービダイトに由来する堆積物が多く含まれているのが観察できます。四国南西部は、付加体がさまざまな様相で分布していることろです。
 春の四国は、付加体を巡る旅となりました。何回かに分けて紹介しましょう。

・大地を眺める・
「地球地学紀行」のコーナーは、
久しぶりの配信となります。
久しぶりになったのには、いくつかの理由があります。
私は、「大地を眺める」という
月刊のメールマガジンを発行しています。
そのエッセイを毎月書いているため、
地学紀行のネタがなくなって、
ついつい間が開いてしまいました。
しかし、今回のように、
以前「大地を眺める」で取り上げた地域であれば、
気にせずにこのエッセイで取り上げることができます。
このシリーズも以前「大地を眺める」で紹介したのですが、
気にせずに紹介してきます。
ご期待いただければと思います。

・1年生・
大学では新学期が始まりました。
1年生は、初々しいく、まじめに授業を受けています。
しかし、2年生以上は馴れて
ちょっとくだけた様子で授業を受けています。
もちろん、1年生でもくだけていたり、
2年生以上でもまじめに受けている学生もいます。
いろいろな個性があるということです。
しかし、まだ大学生活に慣れていない1年生が
まじめに大学生をはじめているのが新学期を感じさせます。
新入生が歩くキャンパスは、春を感じさせてくれます。

2014年4月3日木曜日

5_119 だいち 3:2号機

 「だいち」の後継機が製作されています。「だいち2号」と呼ばれています。当初は2013年度の打ち上げでしたが、少々遅れ、5月に打ち上げられることが先日のJAXAからのニュースがありました。それを紹介して、このシリーズを終わりとしましょう。

 「だいち」の膨大なデータは現在も解析され、利用されているのですが、今後、新しいデータをとることができません。今までの災害や資源管理は、定常的にあるいは緊急時にすぐにモニターできることが必要になります。つまり、観測するための衛星が軌道上にあることが、目的を達成するのに重要になります。後継機として「だいち2号」の開発が進めれていました。その「だいち2号」について、新しいニュースが先日、出されました。
 「だいち2号」は、観測衛星の不在の時期が3年ほどありましたが、2014年5月24日に打ち上げられるとアナウンスされました。種子島宇宙センターから、H-II A ロケット 24号機での打ち上げとなります。
 陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)は、「だいち」の後継機なので、同じ任務をもった利用がされます。国土の最新の地図情報や災害把握、資源の管理などをしていきます。もちろんその観測は日本だけにとどまらず、地球全域に及びます。
 「だいち2号」は、高度638kmで「極軌道」と呼ばれる北極と南極を通る軌道上をまわります。1日で15回ほど周回して、14日で同じ地点にもどってきます。そのため、2週間毎に地表をもれなく観測することができます。
 もちろん「だいち」と比べれば、打ち上げから8年も時間が経過していますから、より高性能のセンサーを搭載しています。「だいち」には、前回紹介したPRISM(パンクロマティック立体視センサ)以外に、AVNIR-2(高性能可視近赤外放射計2型)、PALSAR(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)が搭載されていたました。
 「だいち2号」では、PALSAR-2(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)のみになっています。ひとつのセンサーでは能力が落ちたと思われそうですが、実はそうではりません。PALSAR-2の特徴として、レーダを利用していますので、昼夜や天候の影響を受けることなく観測できるます。地表観測では非常に効果を発揮します。
 「だいち2号」のPALSAR-2の通常使用の高分解のモードでは、3~10mとなっています。しかし、PALSAR-2には、新たにスポットライトモードが追加されました。スポットライトモードでは、「だいち」のもの(10m)より精度が高く、1~3mの分解能をもつようになっています。これは、「だいち」のPALSARにはない性能で、「だいち」のPRISMに匹敵する分解能をもっています。
 さらに、「だいち2号」では、左右に30度傾けることで、広い範囲を観測できる機能をもたせました。その結果、観測できる範囲が2320kmと、以前の約3倍も広がりました。ひとつのセンサーですが、以前ものと同等以上の性能や機能を持っているのです。
 「だいち2号」は、「だいち」と以上の性能を、よりシンプルな形で達成します。その結果、衛星の設計寿命も3年から5年へ、寿命の目標も5年から7年へと延びています。
 日本では、基礎データとして5mメッシュの数値標高や位置情報をもっています。そのデータとの違いを観測することに重点がおこなれています。つまり、国土の災害や地殻変動などによる変化の観測することが、重要な目的となっているといえます。
 少し先になりますが、打ち上げの成功を祈っていましょう。

・入学式・
いよいよ新年度です。
我が大学では4月1日に
入学式が行なわれました。
外は春の暖かい快晴の日となりました。
道路の雪も溶けて、スーツ姿の新入生と
ユニホーム姿のグラブの勧誘の学生たちが混在しています。
緊張しながらも、
期待に胸をふくらませている新入生の顔を見るのは
すがすがしくて気持ちいいものです。

・待ち遠しい春・
先週は野外調査に出ていました。
その内容はおいおい紹介するとして、
高知は桜がすでに咲いていて、
変える頃には日本で一番最初に
開花宣言が出されたというニュースも流れました。
北海道なまだまだ雪がたくさん残っています。
でも日に日に暖かくなり、
雪解けも進んでます。
春が待ち遠しいです。