2013年8月8日木曜日

5_115 炭素14年代 4:較正

 炭素の年代測定は、1950年を基準とします。それ以前は、炭素の同位体は平衡に達しているという前提です。その平衡も、問題があることがわかってきました。その較正は、どのようにしていくのでしょうか。

 炭素同位体による年代は、1950年を基準として、「○○年前」ということになっているという話をしました。その理由は、1950年前後を境に、人類が核爆弾の実験をやりだしたので、大気中の炭素同位体比の人為による変動がはじまったからだと説明しました。それ以前の炭素14の比は、一定であるとしました。ところが、自然現象としても炭素14の比率は、変動していることがわかってきました。
 自然状態における炭素14比の変動は、形成過程を考えれば理解できます。形成過程を、再度見ていきましょう。
 高いエネルギーをもった水素原子核(陽子)が、地球の大気圏に突入してきます。これを一次宇宙線と呼びます。陽子が、大気を構成している原子核に衝突して、中性子をはじき出します。この中性子を二次宇宙線と呼びます。中性子がさらに窒素14の原子核に衝突して、炭素14が形成されます。大気中で炭素14の形成と、炭素14が崩壊して窒素14にもどるという速度が一定で、平衡状態になっています。平衡状態にある大気の二酸化炭素が、植物に取り込まれ、光合成によって植物の体となります。植物が死ぬことで平衡関係がストップし、放射性炭素14の時計がスタートします。これが炭素14の形成と、時計の仕組みです。
 このような仕組を考えると、いくつかの変動の要因があることがわかります。
 太陽から飛んできた(すべてが太陽からではなく銀河からくるものある)一次宇宙線は、太陽の活動の程度によって変動することがわかっています。
 陽子は電子をはがされた状態で電荷をもっているので、地球の磁場の影響を受けます。磁場の強度には変動があり、地球の入ってくる一次宇宙線の量も変動し、炭素14比も変動します。磁場の地域差もあり、北半球と南半球でも炭素14比が違っていることがわかっています。
 炭素は二酸化炭素として、海水に吸収されたり放出されたりして、平衡状態になっています。その平衡を達成する時、海洋から放出される炭素は、昔のものなので、同位体比に影響をおよぼすことがわかっています。
 さらに、植物が二酸化炭素を吸収(光合成)したり、放出(呼吸)したりするとき、質量数によって出入りする同位体比に差があること(同位体分別と呼ばれています)もわかっています。
 過去の自然状態の炭素14の比も、いろいろな変動が起こっているので、炭素14比が一定という前提では、精度を上げていく時、誤差を生むことになります。誤差の較正は、年ごとの炭素14の比率を正確に測定して、それを基準値として考えるべきです。その比を時計のスタートすることになります。基準値は、毎年の同質の記録で、長い時間の記録をしている試料があれば最適です。
 そのような基準物質として、木の年輪と年縞堆積物などが用いられています。木の年輪は毎年正確に記録されているので、非常に有用な指標になります。年輪では、1万2600年ほどの基準値があります。
 それより古い年代は、サンゴがつくる年輪を用います。サンゴのウラン-トリウム(U-Th)の年代を測定したものと照合され、およそ2万4000年前まで基準とされています。
 さらに古いものは、福井県の三方五湖の一つの水月湖の湖底にたまった年縞堆積物があります。現在3万3000年ほどのデータがあり、測定が進めば5万3000年分の基準値が手に入ると考えられています。
 それらの基準値から年ごとの較正用の曲線を作成していき、その値を基いて年代を較正していきます。
 これより古いものは、炭素14の年代測定では、必要はありません。その話は次回にしましょう。

・格闘する学生・
大学は、定期試験も終わりました。
ただし、私は、卒業研究の目次の添削を個別にしていますので
のんびりとはできません。
目次とはいっていますが、
研究レポートの構成を検討しています。
一番大事なところです。
各自、実践をしていますので、
実践データを活かす構成を考えなければなりません。
そこは知恵の使いドコロです。
それが理解できれば、
自分の研究の重要性を把握することになります。
重要な作業でもあります。
まだ半数のゼミ生が格闘しています。

・今できることを・
8月の北海道は、晴れれば暑いですが、
湿度が低いので非常に快適です。
日陰であれば涼しく
風があれば涼しい心地よくなります。
夏休みになったので、本当はのんびりしたいのですが、
なかなかのんびりできないのが辛いです。
休みを取りたいのですが、
9月まではダメなようです。
調査日程をなんとか1週間とりました。
研究費があり、別の地域の1週間の調査費が
あたっているのですが、
いつ行けるのでしょうか。
まあ今は、今できることをやりましょう。