2013年6月13日木曜日

1_116 三畳紀初期の温暖化 2:致死的

 P-T境界を挟んで、いろいろな異常現象が起こりました。最近、三畳紀初期に起こった異常現象が発見され、「致死的な高温」と呼ばれています。この温暖化が、ペルム紀末のさまざまな異変に続いて起こります。

 古生代と中生代の時代境界(P-T境界)では、生物史上最悪の大絶滅が起こりました。古生代と中生代の生物種が一変するほどの変化でした。そのP-T境界で起こった大絶滅事件には、いろいろな異常現象が伴っていました。超大陸パンゲアの形成から分裂へ、スーパープルームの上昇、世界規模での海退、激しい火山活動、特にシベリアの火山活動(シベリア・トラップと呼ばれています)は広範囲に及ぶものでした。さらに他の大絶滅に比べて期間が長い点も特徴です。通常の絶滅が数10万年の期間で起こるのに対して、P-T境界の絶滅は、2億5200万~2億4700万年前の500万年もかかっています。この絶滅はP-T境界をまたいで起こっています。
 これらの現象は、どれもが地球生命には大きな変化を起こしうるものです。どれかひとつの現象が、他のすべてを起こした原因だったのか。あるいは、いくつもの原因が、複合的に他の現象を起こしたのか。いくつもの現象が、どのような因果関係にあったのかを知りたいのですが、その解明はなかなか困難なようです。
 昨年、P-T境界付近の時代に、新たな異常現象が見つかりました。サイエンス誌(Science)の2012年10月19日付けのオンライン版に発表されました。イギリスのリーズ大学のスンさんらの研究グループが、中国南部の浅い海の堆積物を研究したものです。その地層は、三畳紀の最初期に形成されました。P-T境界の絶滅事件の直後にたまったものです。
 さて、酸素の同位体組成が温度と相関をもっており、同位体組成を分析すれば、海水がなくても、海水温を見積もることができます。知りたい時代、今回はP-T境界付近、あるいは中国の地層では三畳紀最初期の海水の酸素を見つければ、当時の海水の温度を見積もることが可能になります。
 スンさんたちは、地層が赤道付近で溜まったものであるのことを明らかにしています。そして地層には化石が含まれていることがわかっていました。化石(当時生物の殻)をつくっている物質は、当時の海水に溶け込んでいた成分からできたはずです。化石を形づくる物質(多くは炭酸カルシウムCaCO3)の酸素を利用すれば、海水の温度を見積もることができます。この方法は、多くのところで、すでに利用され、実績を挙げているものです。もちろんこの炭酸カルシウムが形成後変化していないという前提が必要ですが。
 化石の酸素同位体の分析の結果、当時の海水温が40℃に達していたことを示していました。浅い海の化石なので、海水表面付近の温度とみなすことができます。現在の赤道の海表面の温度は、平均で25~30℃ですので、それと比べても明らかに高い温度を示しています。
 スンたちは、この高温を「致死的な高温(lethally hot temperatures)」と呼びました。その様子と意義を次回考えていきましょう。

・おわび・
当初、「ペルム紀の温暖化」というシリーズ名をつけたのですが、
論文を読んでいくと、
「三畳紀初期」ということがわかりましたので修正します。
ホームページとブロクは修正しましたが、
発行してしまたメールマガジンは変更できません。
それでお詫びの文章をここに掲載しておきます。
申し訳ありませんでした。

・初夏・
北海道は夏めいてきました。
初夏の心地いい天気が続いています。
YOSAKOIも好天に恵まれ成功裏に終わりました。
私は、テレビ観覧でしたが。
遅ればせながら、エゾハルゼミ鳴き始めました。
先日のニュースでは、今年の6月に入ってからの晴天率が
非常にいいということです。
5月までの天候不順を取り戻すかのように
いい天気が続いています。
農家もこれで一息つけるでしょうか。

・出張・
毎週、教育実習の指導のために出張しています。
その疲れもあるのでしょうが、
あれやこれやと校務が結構あり、
精神的にも疲れています。
それに加えて論文の進行があまりよくありません。
7月には講演会もあるので、
その準備もそろそろしなければなりません。
気ばかり焦って、なかなかことが進みません。
ただ、ひたすら少しでもいいからやり続けることが
最終的には近道なのです。
わかっているけどできないのが人の常なのですが。