2013年4月18日木曜日

6_108 新鉱物 1:レアアース

 新鉱物は、日本も含めて世界各地から毎年、何十個と見つかります。新たに鉱物ができているわけでなく、発見して分析をしてデータをそろえて新鉱物と認定されます。新鉱物は、研究者やマニアだけの話題に終わることが多いのですが、時々ニュースになることがあります。今回は、そんな新鉱物の話題です。

 先日(4月2日)、日本で新しい鉱物が発見されたというニュースが流れました。この鉱物は、国際鉱物学連合の委員会に申請され、3月1日に承認され、「新鉱物」になりました。それが今回のニュースとなりました。
 世界では年間何十個という新鉱物が見つかっていますし、日本からも毎年いくつも見つかっています。新鉱物の発見が、取り立てて話題になることは、ほとんどありません。今回なぜ注目されたかというと、レアアースを含んでいる鉱物だったからです。
 本エッセイでも、レアアースは何度も取り上げていますが、再度紹介しましょう。レアアースは、英語で”rare earth elements”といい、「地球では稀な元素」という意味です。日本語では、希土類元素とよばれていますが、今ではレアアースという言葉の方がよく耳にします。
 レアアース(希土類元素)はひとつの元素でなく、性質の似た一連の元素を指しています。周期律表を思い浮かべてください。4行目、カリウム(K)、カルシウム(Ca)の右にあるスカンジウム(Sc)や、5行目のストロンチウム(Sr)の右のイットリウム(Y)があります。スカンジウムやイットリウムと同じ3列目(第3族といいます)に属するものを、希土類元素といいます。
 周期律表でイットリウムの下に、バリウム(Ba)とハフニウム(Hf)の間にはランタノイドとよばれものがあり、周期律表に下に別表としてランタン(La)からはじまる15の元素からなかり、それがランタノイドと呼ばれるものです。これらすべてが希土類元素です。ランタノイドの15の元素のうち、プロメチウム(Pm)は寿命の短い放射性元素ですが、それ以外の元素は地球に存在しています。
 ランタノイドの下は、アクチノイドとよばれていますが、希土類元素に属しません。アクチノイドは、アクチニウム、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)までは地球に存在しますが、それより重い元素は、存在しません。アクチノイドはいずれも放射性元素で、安定には存在しません。ただし、アクチニウムからウランまでは半減期が長かったり、放射壊変の中間生成物として存在し天然に存在します。
 レアアースは、周期律表で同じ列にあり、3価の陽イオンになるため、それぞれの化学的性質が似ています。希土類元素が鉱物などに含まれると、ランタニドが一団として含まれることが多くなります。ただし、それぞれが別の元素であり、電子の数も違っているので、性質が少し違っています。
 さて、なぜレアアースが注目されるのでしょうか。それは、現在の先端技術や新素材などは、微量の成分を加えることによって、特異な性質を発揮するようなものが多くなっています。そのような微量成分として希土類元素が利用されています。レーザーを発生させる固体や、発光ダイオード、強力な磁石や超電導素材、あるいは高屈折率のガラス(高機能のレンズ用)など、多様な利用がされています。
 なぜ今回、レアアースを含む鉱物が注目されたのでしょうか。それは次回としましょう。

・承認・
新鉱物には、いくつかの条件があります。
天然のもので安定でなければなりません。
結晶を取り出し、分析して、
性質を明らかにしたデータが必要になります。
データと鉱物名候補をそろえて、
国際鉱物学連合の
「新鉱物および鉱物名に関する委員会」
に申請します。
そこの委員の2/3以上の賛成があれば
新鉱物と承認されます。
最後の評価が人の判断であるところが不思議ですが。

・関心・
レアアースを含む鉱物が
日本から近年ぞくぞくと見つかっています。
2012年の高縄石、2011年には肥前石、
イットリウムラブドフェンなどがあります。
その度にニュースにはなっています。
一つには、次回紹介するレアアースへの
関心の強さがあると思います。