2012年9月20日木曜日

4_104 羽越調査 1:黒部川扇状地

 久しぶり(1年半ぶり)に、地球地学紀行のシリーズをお送りします。越中(富山)、信濃(長野)、越後(新潟)、羽前(山形)、羽後(秋田)をめぐる旅でした。今回は、その中のいくつかの地点を紹介していきます。まず最初は、黒部川です。


 9月9日から14日まで、野外調査にでかけていました。千歳空港から富山空港へ向かいました。千歳空港はあいにくの曇り空でしたが、富山に着くときには雲が晴れて、景色が見ることができました。富山空港へ着陸態勢にはいるとき、日本海側から海岸にそって下降していきました、その時、黒部川河口をみることができました。
 そして思いました、「これが地図帳でよく見た扇状地だ」と。
 昔のことなので定かではないのですが、中学校や高校の地図帳で、扇状地の説明で使われていたのが、黒部川の航空写真だったと記憶しています。その写真とそっくりの景色を、飛行機の窓から見ることができました。
 扇状地とは、河川(今回は黒部川)が、山地の急傾斜から平野の緩傾斜になるときにできる特徴的な地形です。広げた扇子(せんす)のような地形です。扇子の根本にあたるところ(扇頂といいます)が、川が山地から平野に出るところ、山地と平野の境界になります。川は、山地の急傾斜のところでは、侵食と運搬の作用が激しく働いています。それが扇頂からは、堆積作用に転換することになります。
 大量の土砂が、扇頂から下流にむかって堆積していきます。堆積が続くと、地形的に高くなり、やがて流路が変わり、新たに低いところへと向かいます。その結果、扇頂を中心として、放射状、同心円状に等高線が並んだ地形が形成されます。扇状地は、土砂たまる先端(扇端といいます)まで広がっていきます。
 扇状地の堆積物は粗い土砂を多数含んでいるので、河川の水は、扇状地では、かなりの量が浸透していきます。水は、伏流して地下水になっていくものも多く、もともとあった平野部の不透水層にまで達します。扇状地の扇端で、地下水が自噴する湧き水が点々とできることがあります。また、扇状地では、井戸を掘ると簡単に地下水ができます。水の豊富なところとなります。
 上流に人がほとんど住んでいない河川の扇状地は、非常にきれいな湧水が出ることになります。黒部川では湧水群があります。
 そんな特徴をもった黒部川扇状地ですが、一度は行きたいところだったのですが、飛行機から見ただけで、時間と調査ルートの関係で寄ることができませんでした。黒部川は、上流もふくめて、思い残しのできた地となりました。そんな時は、次の機会を待てばいいだけなのです。

・残念ネタ・
出かけたときの様子は、
別のメールマガジン(GeoEssay)に書くことが多く、
なかなか地球地学紀行を書く機会がありませんでした。
四国に滞在しているときは、
毎月書いていました。
この度、富山、長野、新潟、山形、秋田へと
調査に出かけました。
GgeoEssayに使いづらいような
残念なネタを紹介することにしました。

・今どきの扇状地・
手元にある最近の高校の地図帳をみてみると、
扇状地の例として使われているのは、
冨士川の支流の京戸川が
甲府盆地の平坦地に出たところの
航空写真が使われています。
黒部川の河口付近は、
今でも扇状地であることは変わりません。
なぜか、黒部川扇状地は地図帳にはないようです。