2012年6月7日木曜日

3_109 下部マントル 1:対流

マントルは、一層対流か二層対流か、上部と下部の岩石は同じなのか違うのか。マントルについて、まだ解明されていないことが、いろいろあります。マントルは、近いようで遠いところ、人類はもちろん行くことも、見ることもできない未知の世界です。マントルでも、特にわかっていない下部に関する新しい情報が出てきました。マントルの最新情報を紹介しましょう。

 このエッセイでは、マントルの構造や構成などについて、何度か取り上げてきました。上部マントルの特徴や遷移層の特異性はわかってきたのですが、このたび(2012年5月)、新しい論文が出され、今までわかっていなかった下部マントルの様子が解明されました。それは、均質であると考えられていたマントルが、上下で成分が違うという報告でした。
 その説明に入る前に、マントルの概略をまとめておきましょう。
 マントルは、カンラン岩と呼ばれる岩石からできています。マントルは、特別な場所以外、すべて固体の岩石からできています。岩石のとけたマグマがあることから、マントルも溶けているように勘違いをされることがあります。地殻およびマントルは、基本的に固体の岩石からできています。
 岩石は、力を加えると割れてしまいます。地表でみられる岩石には、実際に多数の割れ目があります。割れ目には、ズレ(変位)のできているものもあります。岩石の大きな変位は、断層とよばれます。断層ができたということは、激しい破壊があったことになり、地震が起こったことを意味します。日本列島のように、海溝で海洋プレートが沈み込むようなところは、大きな力がかかっています。そのような場では、固い岩石がよく割れます。つまり地震がよく起こる場となります。
 物質の性質のひとつに粘性というものがあります。粘性とは、柔らかさ、流れやすさを表す数値です。小さいほど流れやすくなります。岩石は、温度が上昇すると、粘性が小さくなります。ある温度以上になると岩石は、割れることなく、固体のまま流動性を示すようになります。深さ100kmほどで、岩石は流動性を持つようになります。それより上の固い岩石の部分がプレートとして板状に移動していきます。このような岩石の性質が、プレートテクトニクスという現象を起こします。
 また、物質は、温かいものは密度が小さく、冷たいものは大きくなります。岩石も同じで、地球深部の温かいマントルの岩石は流動性をもっているので、上昇してきます。地表付近まで上昇してくると、一部は固い海洋プレートとなり海洋底を水平に移動してていきます。海底下で海洋プレートおよびその下のマントルは、冷やされていきます。やがて冷えて密度が大きくなった岩石は、海溝でマントルに沈んでいきます。これが、マントル対流と呼ばれているものです。マントル対流は、地球の熱を、地球表層、そして宇宙空間に運ぶというメカニズムとみなすことができます。
 このように、一見、単純明快なマントル対流ですが、マントル対流のスピードは、せいぜい年間10cmから数cm程度です。地表ではプレートの移動として実測されていますが、地下深部の対流を観測することはできません。しかし、対流が起こっているという証拠はいくつかみつかっているので、マントル対流はあると考えられています。
 地震波でみると、マントルの深度650km付近に境界が見つかっています。地震波にみえるほどの物性の違いが、その境界にあることになります。境界は一つの面ではなく、ある程度の幅があり、層としてとらえられているので、遷移層と呼ばれています。マントルは、遷移層で上部と下部に分けられています。しかし、上下のマントルにどのような違いがあるのか、特に下部マントルの特徴がよくわかっていませんでした。それは、マントル対流の実態を解明する上でも重要なものとなります。
 今回の報告は下部マントルの物質をある程度限定したという報告でした。詳細は、次回としましょう。

・実測不能・
マントル対流の運動の実測はなかなか難しいものです。
プレートの動きはVLBIという仕組みで
年間10数cmというゆっくりとしたものを
実測値として調べられています。
VLBIという手法はマントル対流へは適応できません。
マントル対流を実測するのは非常に困難なのです。
類推、推定するしかありません。
プレートの運動は重要な情報源ですが、
水のような綺麗な対流ではなく、
遷移層に溜まった後の落下や、
不思議な上昇メカニズム(プルーム)などがあるので、
実態とともに、そのスピードはよくわかっていません。
数100kmかなたの深部はわからないとだらけです。

・母の来道・
今週末から来週末にかけていろいろ行事があるので、
慌ただしくなります。
まずは、母が来道します。
今回は短期間ですが、
次男の小学校最後の運動会の見学が一番の目的です。
母は、畑で作物を作っているので、
長期の滞在は草が生えるので嫌がります。
でも、次男も区切りになるので、
母の来道を期待しているようなので、
呼ぶことにしました。
私が空港までの送迎をすることになっています。
だいぶ高齢になってきたので、
北海道に来るのは大変になってきました。
できれば孫の顔をみることを
励みにしてもらいたいものです。

・金星・
現在6月6日の昼前です。
金星が太陽面を通過する現象が起きています。
いくつかのネットのサイトで生放送がなされているのですが、
TBSのライブ中継がなかなかきれいです。
それを画面に出して時々みています。
北海道は朝は晴れていたのですが、
途中から曇って来て小雨もぱらつきました。
でも、TBSは九州からの中継なので
きれいにみえます。
金星は明らかに黒点よりはっきりと大きく見えます。