2012年1月19日木曜日

2_103 首長竜の赤ちゃん 2:プレシオサウルス

ひとつの化石も、詳しく調べると新たな発見がなされることもあります。これが、実物もっている重要さの一つです。胎児と認定するには、それなりの根拠が必要です。なぜなら化石は骨しかなく、押しつぶされているため、体内になったのかどうかが不明瞭になっているからです。

 陸上の首長竜のプレシオサウルスの体内から胎児の化石が見つかりました。この発見によって、プレシオサウルスが胎生であったことがわかりました。そこに至るプロセスを紹介しましょう。
 実はこのプレシオサウルスの化石は、アマチュアの古生物学者のボナー父子が、1987年にアメリカのカンザス州の北で見つけていたものです。彼らは、頁岩から平らな骨がでているのに気づきました。やがてその化石が、プレシオサウルスの骨盤であることがわかりました。地層の時代は白亜紀後期でした。その後、発掘によって、四つのひれ、肋骨、腰、脊柱と首の骨を発見しました。化石の全長は4.7mあり、大型のイクチオサウルス(魚竜)よりひと周り大きいものでした。
 2008年に、ロサンゼルス自然史博物館の新しい恐竜ホールで紹介する前に、以前からあったこの化石を詳しく調べてみることにしました。調べた結果、その化石の体内から、小さなプレシオサウルスの化石が見つかりました。化石は、重なってでることもあり、胎児かどうかの認定は、慎重におこなわなければなりません。
 まず、骨の形が似ていることは重要な情報です。これによって同じ種類の化石であることがわかります。大人の体内の位置から見つかっていること、そして詳しく見ると、胎児の骨盤が、母親の肩の骨の内側面にかかっている位置であったことが母親の内部で成長していたことを示していました。他にも、胃酸による骨の摩耗がない(食事をした経験がない)ことも根拠とされています。以上の情報から、胎児だと認定されました。その結果が、新発見として、昨年の夏に報告されたのです。
 海に完全に適応したイクチオサウルスやプレシオサウルスは卵を陸上で生むことは不可能です。ですから、海中で子孫を残すために、胎生は持っているべき重要な性質であったのです。イクチオサウルスだけが胎生の証拠があり、他の種については、今まで謎であったのが、この度やっとプレシオサウルスもの証明されたわけです。また、イクチオサウルスは複数の胎児を出産していたのですが、プレシオサウルスは一匹の赤ちゃんを産み落としていました。胎生における多様性も同時に認められたのです。
 胎児の化石は体長が1.5mもあり、非常に大きいものだといえます。親が4.7mですから、大きくなるまで体内で成長させてから出産したことになります。クジラのようにプレシオサウルスも、ある程度成長した子供を生み、それを育てていたことになります。もしかすると、出産後も親が子育てをしたり、群れで育てていたかもしれません。これは、鳥類や哺乳類の子育てと似ています。
 恐竜の仲間の少なくとも一部の目、首長竜目と魚竜目では、胎生であったことがわかりました。では、胎生は恐竜のどの分類までもっていたのか、陸上恐竜で胎生はなかったのかなどが、今後の課題となるでしょう。きっと、新たな化石から答えが見つかることでしょう。

・実物の重要性・
実物はいろいろな意味で重要さがあります。
実物しかない迫力、貴重さがあります。
博物館は実物を永久保存する場でもあります。
そんな保存の場があるからこそ、
再発見もできるのでしょう。
実物を読み取る技術は進みます。
新たな技術やアイディアで読み取るためには、
実物が不可欠です。
今回の発見もその一例でしょう。

・多忙に埋没・
センター試験も終わり、
大学では、後期の講義の終盤となります。
我が大学では、来週で講義が終わり、
その次の週は定期テストです。
そして大学の入試となります。
1月から2月は慌ただしく過ぎています。
正月気分はあっという間に吹き飛んで、
日常の多忙に埋没してしまいます。
そんな毎日が続きます。