2011年12月15日木曜日

2_100 嫌気性細菌:古い化石 2

地質学では、同じような地域で、何度も似たテーマで議論が沸き起こることがよくあります。そんな地域は、地質学において、重要な役割があり、潜在的な可能性をもっているため、今後も同じような議論を湧き起こすことになるはずです。今回の古い化石の見つかったピルバラも、そんな重要な地の一つです。非常に広大ですが。

 西オーストラリアのピルバラ地域から発見された約34億年前の化石は、20年来、科学者の間でもいろいろな議論がありました。近年では、化石であることが多くの研究者から認められてきました。その認定のプロセスは、なかなか大変なものでした。
 恐竜の歯や植物の葉などの化石であれば、化石どうかの疑問はでません。形だけで、だれもの化石だと認めてくれます。しかし、最古とか、非常に古い化石では、それが生物かどうかは、いろいろなプロセスを経なければ認定されません。最初の頃(一番最初かどうかは永年に謎です)の生物は、微小で、単純な形態の単細胞生物のはずです。このような化石は、化石らしいものではありません。逆に化石ぽく見えても、化石でない結晶や自然の産物の可能性があります。生物と無生物との区別が、大切になります。以下ではそのような化石の認定について考えていきます。
 化石であると判定するためには、形態、サイズ、サイズのばらつき、そして生化学的化学組成などの客観的データが必要となります。
 形態とは、生物がもっているべき形のことです。未知の形態は、説得材料にはなりません。現世の既知の生物との類似性が必要です。形態は、直感的、視覚的ですので、重要な根拠です。しかし、決め手にはなりません。球状や繊維状などの形態は、無機的に、つまり生物のかかわりなく化学反応としてできることがあるからです。生物も、簡単で単純な形態を持っているのです。研究者は化石らしきものを、見つけようとしているのですから、そのような形態のものが、まずは候補となります。研究者自信も、それなりの先入観をもって化石探しをしています。ですから、第一歩は形態からでもいいのですが、さらなる証拠は不可欠になります。
 形態がもっているサイズも、生物として持ちうる大きさでなければなりません。火星の生物化石の報告は、化石っぽく見える写真で、インパクトがあり、真実味もありました。しかし、DNAが入らないほどの小さいサイズしかないことが、否定的な見解を生みました。生物がもっているべきサイズは、確保されていなければなりません。むやみに大きのも問題ですが。
 サイズのばらつきは、ある一定の範囲でおさまっているべきです。似た形態の化石が多数見つかっているのであれば、そのサイズの統計的ばらつきは、その生物種が持っている一定の大きさに収まるはずです。統計的に大きなばらつきがあるものは、無機的な成因を反映している可能性があります。初期のピルバラの化石の報告でも、このようなサイズが正規分布している状態を根拠の一つとして示されていました。
 生化学的化学組成とは、今では当たり前になりましたが、化石の構成物質から生化学的にデータを発見することです。生物しか作りえない化学成分(バイオマーカーと呼ばれています)を見つければ、化石が生物であったことの重要な根拠になります。しかし、それはそれでなかなか難しい問題もあるのですが。
 以上のような証拠をいろいろ積み重ねて、化石かどうかを判定していきます。 杉谷らやワーシーらの両グループは、電子顕微鏡や化学分析値などを根拠に化石であること主張しています。化石のサイズはわずか10μmほどで、細菌の細胞の形状をしているといいます。鉄と硫黄からなる結晶(黄鉄鉱(pyrite))もあることから、硫黄などを用いて代謝していたと考えられています。
 そして最後に、化石から得られた生物像と地質調査から得られた形成環境が一致しなければなりません。
 ピルバラの化石は、ストロマトライト(最初に提唱された生物像)が形成される浅海ではなく、メタン生成菌(東京工業大学の上野たちが最初に提唱)やイオウ細菌などの嫌気性細菌が生息していた深海底の熱水噴出孔ではないかというものになりました。このような生物像は、地質調査から得られた環境とも一致して、議論は収斂しつつあるようです。

・いよいよ年末・
師走も中旬となり、
世間はクリスマス気分なのでしょうか。
大学では、卒業研究の提出など、
ばたばたしているので、
そのような浮かれ気分はありません。
もちろん、4年生を担当している教員だからでしょうが。
今度の週末に、久しぶりに家族で街に出ます。
私は、先日の忘年会で街にでたのですが、
なんとなく、まだクリスマス気分になれません。
今週提出が終わります。
ただ、1月末に発表会があるので、
12月末に予行演習をおこなう予定です。
それが終われば、私たちは一段落となります。
御用納めのある28日ですが。

・根雪・
北海道は、今年は定期的に積雪があり、
一度に激しいドカ雪は、局地的に有りますが、
広域には今のところありません。
歳ごとに積雪の状態は違います。
12月中旬なのですが、
もう根雪の様相を持っています。
こんな雪景色が、北海道の冬らしくていいです。
ただ、寒いのはつらいですが。