2011年8月11日木曜日

6_93 大鉱床:レアアース4

 国際政治によってレアアースの不足が話題になりました。そのレアアースが大量に埋蔵されているというニュースが、流れました。まだ、研究段階ですが、その内容を紹介しましょう。

 東大の加藤泰浩教授らは、海底に大量のレアアースがあることを発見しました。加藤さんらは、太平洋の海底を掘削したコアを対象に分析をしました。コアは、東大海洋研究所や深海掘削計画(DSDP: Deep Sea Drilling Project:DSDPの略されます)や国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program:ODP)で採取されたものが使われました。調べられたコアの数は78本ですが、分析された試料は2037個になります。同じコアで深さの違う部分の分析を多数なされたことになります。
 大量の分析から、海洋底の堆積物中にレアアースの濃集があることがわかりました。南東太平洋の海底では、平均の厚さ8mの堆積物で、総レアアース(すべてのレアアースの元素)の濃度は1054ppmとなりました。中央太平洋では平均層厚23.6mで総レアアース濃度625ppmになりました。地球の存在度と比べても、非常に濃集しているといえます。
 鉱業的に採取できるものを鉱床といいますので、海洋底の堆積物中のレアアースは鉱床と呼んでいいものです。海底の堆積物はほとんどが未固結の泥なので、粉砕などの手間をかけることなく、簡単に抽出できるようです。論文ではその検証されています。薄い硫酸を用いれば、セシウム(Ce)以外のレアアースは、1時間から3時間程度で100%近い回収率になることを示されています。非常に簡単に効率的にレアアースを取り出すことができます。
 海底のどの深さにレアアースが濃集しているかは、コアによってさまざまのようです。表層に濃集しているもの、深部に濃集しているもの、ある層に濃集しているもの、まんべんなく濃集しているものなど、いろいろなパターンがあるようです。
 なぜ、このようなレアアースの濃集が海底の泥にあるのでしょうか。さらになぜ、濃集の規則性がいろいろあるのでしょうか。
 鉄質懸濁物質と沸石の仲間の鉱物(フィリップサイト)に、海水中のレアアースが吸着されたためだと考えられています。海洋底の堆積物は、次々と上に積み重なります。いずれの層もある時点の海底の表層にあったものです。海洋底表層の環境、状況によって、鉄質懸濁物やフィリップサイトの堆積量が変わったと考えられます。風や海流による陸からの供給量の変化、火山活動に変動よる成分量の変化などがあれば、吸着されるレアアースの量は変わってきます。深さ方向の濃集部の違いは、このような堆積状態に影響を受けているのかもしれません。今後の検討課題でしょう。
 堆積物の濃集部がどこにあるかは不規則なので調べてみなければなりません。しかし、堆積物全体を対象にすれば、上記の平均値となる量を回収できるはずです。上記の2つの海域だけで、陸上の埋蔵量の1000倍もあると見積もられています。
 他にも、バナジム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などのレアメタルも豊富にあることがわかってきました。深海底の堆積物は、レアアースやレアメタルなどの希少元素の大規模な鉱床となりそうです。
 非常に有望な鉱床だと考えられるので、国際的なレアアースの問題もあった後なので、多くのメディアにニュースとして取り上げられました。まだ研究段階なので、まだ課題もいつくかありそうです。それは次回としましょう。
・卒業研究・
今、4年生の卒業論文の構成をチェックしています。
12月の提出に向けて、
今まで積み上げてきた内容のチェックをしています。
まだまだ、論文や研究報告の形にはなっていません。
もちろん、私が担当している学生に
研究者を目指してい人はいませんが、
大学の学びの総まとめとして卒業研究はいい経験だと思います。
大部の報告を作成するという経験は
きっと将来役に立つと思います。
卒業研究が、大学でどんなことを学んだのかを示す時の
一番のものとなって欲しいものです。
そんな思いがどこまで通じるかどうかわかりませんが、
ただひたすら、個別面談に時間を使っています。
一度で終わった学生は一人だけです。
後は、全員やり直しをしてもらっています。
そして成果は上がっています。
暑けれども頑張ってもらっています。
この苦労はきっと役に立つぞ、4年生諸君!!

・夏休み・
いよいよ大学も夏休みになりました。
教員は採点、評価、そして入力作業と
まだいろいろ忙しいのですが、
来週の半ばに2泊3日の家族旅行へ出かけます。
海岸をめぐり磯遊びをする予定です。
台風の影響が気になります。
直撃でなくても、うねりが残りそうな不安があります。
まあ、いってみるしかありません。
昨年は雨に祟られたのですが。
今年こそはという思いもあります。