2011年7月14日木曜日

2_92 3か4か:恐竜の子孫 3

 今まで指番号を決めていた発生学的方法ですが、より厳密に突き詰めて研究すると、今までの見落としていたズレが見つかりました。そのズレが、指番号の違いを生み出していました。ズレの発見によって、指番号の問題が解決し、鳥は恐竜の子孫であるという説がより磐石になりました。

 鳥類は、恐竜の仲間から進化してきたと考えられています。ただ、ひとつ問題がありました。恐竜の指は、もともと5本でしたが2本が退化して、3本になっています。親指側から、第1指、第2指、第3指という指番号になります。一方、鳥も3本指なのですが、第2指、第3指、第4指が残っています。
 この鳥の指番号ですが、発生時にできた指のもと(原基と呼ばれる軟骨の塊)のうちどれが成長しているかで決めていました。ニワトリの発生をみていくと、後肢の第4指がつくられる時期に、前肢では同じような位置関係で指が認められています。それは第4指に当たるはずです。そこから若い方へ指番号をたどってくいくと、第2指でおわっています。そのため、鳥の前肢は、第2指、第3指、第4指という指番号になります。これは、動かし難い事実のようにみえます。
 指の発生の過程を、東北大学の田村宏治さんと野村直生さんが、詳しく検討されました。その結果、ニワトリの前肢の指番号が、第1指、第2指、第3指であることがわかりました。
 実は、ニワトリの前肢と後肢では、発生の段階でできかたが違っていることが分かってきました。指番号が決まる段階で重要なZPAと呼ばれる領域があります。ZPAは、ほかの細胞に指の形成という指令を出す「形態形成因子」の細胞群です。今までZPAを基準に指番号が決められていました。
 田村さんらは、ZPAを基準に指番号をみていこうと実験をされました。発生の段階をおってみていくと、前肢と後肢の指のできかたが異なっていることが分かってきました。
 後肢では、指の番号が決まる時期に第4指はZPAの中にあります。ところが同じ時期の前肢では、第3指までがZPAの外にあり、第4指は見えませんでした。前肢のもっとも後ろの指は、第3指として形成されたことになります。発生段階が進むにつれて、後肢の第4指はZPAの外に移動します。この時期に前肢との対応関係をつけると、前肢の第3指が、後肢の第4指に対応して、発生段階の違いによってズレが生じます。
 この移動が生じる現象を今まで気付かれずにいたため、前肢も、後肢に対応させて第2指、第3指、第4指とみなされていたのです。後肢の第4指の移動が発見されたことによって、前肢で第4指とされてきたものが、第3指であることが判明したのです。
 田村さんらの研究によって、恐竜と鳥の指番号の違いは修正され、同じであることになりました。その結果、恐竜と鳥の系統関係における問題が解消されました。鳥は、恐竜の子孫であることが、はっきりしたのです。

・怪我の功名・
田村さんたちのインタビュー記事を読むと、
最初村田村さんが発生の実験をしたとき
ニワトリの前肢が第1-2-3指であるという結果がでました。
ところが大学院生の野村さんが
別のテーマで似た実験をしていたのですが
第2-3-4指という結果を出しました。
検討の結果、観察した時期の違いによって、
ZPAからの見かけ上の位置に
ズレが生じることがわかったのです。
このような2つの実験の違いによって、
ズレを生じた原因も同時に解明できたのです。

・梅雨前線・
北海道も梅雨前線の影響で
蒸し暑い日が続いています。
本来なら、からりとした爽快な初夏を
楽しんでいるはずなのですが、
今年は、少々蒸し暑いです。
ここ数日の蒸し暑さで少々へばっています。
昼前後の授業は暑いです。
窓を全開しても、
板書をしながら授業すると汗だくになります。
ましてパソコンを使った授業は大変です。
それがまだ続きます。
梅雨明けが待ち遠しいです。