2011年6月1日水曜日

3_98 反論:暗い太陽4

 暗い太陽のパラドクスのシリーズも、今回が最後です。パラドクスを温室効果ガスではなくアルベドの低下で、解決しようとする説にも問題はあるようです。最後の回では、その問題点を反論からみていきましょう。

 「暗い太陽」のパラドクスを解決するために、温室効果ガスとして二酸化炭素が考えられていました。しかし、地表の地質学的根拠から、温室効果ガス(二酸化炭素)も、それほど多くはなさそうだという予想されました。パラドクスを解決するために、ロージングらは、アルベドについて検討して解決案を示しました。温室効果ガスが少なくても、アルベドが低ければ、太陽からのエネルギーを地表付近に蓄えて地球を温めることができるというのものです。
 ロージングらの考えに対して、反論もあります。その筆頭が、温室効果ガスによって「暗い太陽」のパラドクスを説明しているキャスティング(Kasting、2010)でしょうか。その反論の内容をみていきましょう。
 ロージングらは堆積物(縞状鉄鉱層内の鉄の酸化物の鉱物種)から大気組成を見積もったのですが、そこに問題もあるという指摘です。キャスティングの指摘によれば、太古代の大気組成が、もしメタンが二酸化炭素と比べて1割より多ければ、大気中にメタンから有機物が形成され、カスミのように漂い、アルベドを上げてしまう可能性があるということです。ロージングらによると、メタンが二酸化炭素と同じ程度の量が大気あったとしてシミュレーションをしています。もしそうなら、もっと多くの有機物が大気中にできてしまい、さらにアルベドを上げてしまいます。つまり、地表を冷やす効果となります。
 また、ロージングらのシミュレーションは、一次元モデルで行われているのですが、三次元モデルで計算すべきだと指摘しています。現状のコンピュータの能力であれば三次元モデルの計算も可能だから、三次元モデルで検証すべきだという反論です。一次元モデルの問題点は、極地に氷床があればアルベドを上げる効果があるのですが、そのような効果が反映できないため、不確かなシミュレーションとなるからです。
 ただ、彼らのモデルの利点もあると指摘しています。縞状鉄鉱層が大量に堆積した20億年前後は、酸素の急激な増加があった時期です。そのような時期にアンモニアのような還元的ガスのある大気が存在すれば、即座に酸化されて大気からなくなっていきます。それが温室効果ガスの急激な減少になり、太古代の末に起こった氷河期の原因の説明できます。このメリットは、一つの時代の変化は説明できても、長い歴史を説明できません。「暗い太陽」のパラドクスは時間と共に変化する効果ですが、全時代の通じての説明ができません。まだまだ、解決には時間が必要なようです。
 二酸化炭素の温室効果だけで、「暗い太陽」のパラドクスを解決するのは、地質学的証拠から難しいようです。でも、パラドクスをアルベドだけで説明するのも難しいようです。両者の効果を組み合わせて、解くのがいいのかもしれません。しかし、パラドクスは、時間とともに変化する効果です。その時間変化に対応したメカニズムを説明しなければなりません。
 まだまだ、パラドクスの解決までの道のりは遠そうです。まあ、科学はこのような議論を繰り返しながら進歩していくものなのでしょう。

・教育実習・
我が大学では、この時期に学生が教育実習に出かけます。
実習生は研究授業として教科指導を実際にします。
基本的には担任(ゼミの担当教員)が
その研究授業に出張指導に出かけることになっています。
私は、全ての学生の出張指導に行きたいのですが、
出張するということは、
私が担当している講義を休講することになります。
休講をすれば多くの受講している学生が被害を受けます。
一人と多数を秤にかければ多数が勝ちます。
でも秤で済まないのが現状です。
教育実習は大学の単位として認定します。
教員免許では必修の単位となります。
その指導は小学校などの組織や教諭にお任せします。
大学がその指導にまったくタッチしないのは問題ですし
受け入れ校に対しても失礼です。
その兼ね合いを計らなければなりません。
なかなか難しいです。

・快晴・
今日(5月31日)は非常に心地より
抜けるような青空の広がる晴れです。
北海道らしい青空は、非常に気持ちいいものです。
5月はいい天気の日が少なく寒い曇天が多かったのですが、
5月の最下旬になって暖かくなってきました。
北海道らしい初夏の天気です。
本当ならこんな時に外を出歩きたいのですが、
なかなか時間がありません。
でも、この時期は遠出の出張がよくあるので、
時間があれば、少し寄り道します。
日頃行かないところで
その地域の自然をみることができます。
四国にいるときは、頻繁に外にでかけていたのが
ずっと昔のことのようです。
まあ、過去を懐かしむのはやめましょう。