2011年5月26日木曜日

3_97 低アルベド:暗い太陽4

 「暗い太陽」は、過去の地球では降り注ぐ太陽の光が少なかったことをいいます。しかし、地球には、常に海が存在できるほどの暖かさを保っていたという証拠があります。そのような環境は、少しの大気組成の変化と表層の反射能(アルベド)の変化で、達成できると考えられると提案されました。どんな仕組みでしょうか。

 過去の温暖化ガスは、「暗い太陽」を補えるほど、多くなかったという見積りが、ロージング(Rosing, et al., 2010)らによって示されました。代替として彼らが提案した地球を暖める方法は、アルベド(地球表層の反射能)を下げるというものでした。アルベドが低ければ、地球に吸収される太陽からのエネルギーは多くなり、それが地球を暖める効果になったというものです。
 ロージングらは、アルベドさえ低ければ、自分たちが算出した900ppmv(ppmvとは体積における百万分率のこと)の二酸化炭素と900ppmvのメタンの大気でも、地質時代を通じて平均気温は、0℃を下回わらないと見積りました。では、アルベドを下げる方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
 彼らは、現在と比べて過去(太古代)の地球の表層で違っているものとして、大陸の面積、陸上植物の有無、雲の性質を挙げています。
 大陸は、確かに太古代と比べて増えているということが、いろいろな研究者によって指摘されています。また、陸上植物は顕生代(古生代以降)になって出現するので、増えていることになります。大陸や陸上植物の存在は、氷で覆われない限り、アルベドを下げる効果があります。
 雲のもととなる核(凝結核と呼ばれています)が増加すれば、雲が多く形成されます。現在の凝結核としては、海からの塩の粒子や土壌粒子、硫酸エアロゾル、人為的なエアロゾルが主要なものです。過去には、人為的なエアロゾルはありません。海塩粒子は今も昔もあるので、凝結核の変化に関与なさそうです。
 一方、大陸が増えてくれば、風によって巻きあげられる土壌粒子が増えます。また、生物が増えたり、進化して陸上に進出してくれば、硫酸エアロゾルが多くなります。海洋植物の真核藻類や陸上植物は、硫化物をつくりだし、放出することが知られています。生物による硫化物が大気中で硫酸エアロゾルになり、凝結核を増加させたと考えられます。凝結核が増えると雲が増え、アルベドが大きくなります。つまり、過去のほうがアルベドが低かったことになります。
 さらに、陸地や生物が少なかった時代(太古代)は、雲の粒が大きなもので、雲があっても透過度の高い(アルベドの低い)ものであったと考えました。現在と比べて、過去の雲は、アルベドを下げる性質があったことになります。
 これらの効果を加味してしてアルベドの範囲を推定すると、かつていわれていたような温室効果が高い大気組成でなくても、充分「暗い太陽」の効果を補うことができるというものです。彼らの見積もりのある程度温室効果のある大気(二酸化炭素900ppmv、メタン900ppmv)でなくて、見積で一番低い温室効果の大気組成(二酸化炭素375ppmv、メタン1.7ppmv)であっても、アルベドの効果だけでも、30億年以降は0℃を上回ると推定されています。この見積もりでは、38億年前の海の証拠(堆積岩や枕状溶岩の存在)が上手く説明できませんが、大量の二酸化炭素がなくても、ある程度温室効果ガスがあれば、アルベドの効果によって、地球は海が存在できることを意味しています。
 「暗い太陽」のパラドクスは、大量の二酸化炭素による温室効果だと考えられていたのですが、アルベドさえ低ければ回避できるということです。この説に対して、反論がありますが、それは次回としましょう。

・悪天候・
前回も書きましたが、
いまだになかなかすっきりとした天気が訪れません。
自宅のストーブを今でもつけることがあります。
温度設定を20℃にしているので、
20℃を下回る朝夕には自動的にストーブがつきます。
昼間暖かくなれば、ストーブつけなくてもすむのですが、
からりとした晴天が長続きません。
晴れたと思っても、すぐに曇り雨がちらつきます。
農作物は大丈夫でしょうか。
日照不足と低温の影響はないか、
そろそろ心配になってきました。
東北震災を補うために北海道の農作物は
重要な役割をはたすはずです。
それなのにこの悪天候は少々心配になります。

・ジンギスカン・
北海道でも運動会のニュースが流れて始めました。
でも、寒々としてまだ、早いきがします。
息子の小学校は6月中旬なので、
もう少しは暖かくなっているでしょう。
最近小学校の行事に参加していません。
まあ、もともと運動会や学芸会などの
決まった行事でしか訪れていませんでした。
近々、校庭整備のボランティがあり、
それも待ち遠しいです。
整備のあとは、ジンギスカンがあります。
やっぱり北海道は青空のもとでのジンギスカンが似合います。

2011年5月19日木曜日

3_96 温室効果:暗い太陽3

 過去の大気は、地球表層で風化や蒸発、沈殿などで形成された鉱物の種類である程度見積もることができます。それらの見積では、大気の温室効果は、暗い太陽を補うのは不十分だったようです。それも、ケタ違いに不足していたようです。

 時間と共に明るさを増してきた太陽光に対し、地球の平均気温がそれに呼応していたわけではないようです。このパラドクスは、大気中の温室効果ガスの濃度(正確には分圧といいます)の変化で、解決できると考えていました。しかし、その論理は、必ずしも完成していないものでもありました。2010年、暗い太陽のパラドクスに、ロージング(M. T. Rosing)らは挑戦しました。
 温室効果ガスとしては、水蒸気、二酸化炭素、メタン、エタン、アンモニアなどが考えられています。最近の地球温暖化問題では、二酸化炭素が重要であるとされています。暗い太陽のパラドクスでは、大気中の二酸化炭素が、昔は大量にあり温室効果が強く働いていて、時間と共に大気から取り除かれて温室効果が減少して、地表の温度変化を緩和していったとするものです。
 大気中の二酸化炭素の分圧を、過去の地質学的証拠から見積もる試みは以前からされていました。地質学的証拠として利用されてきたのは、古土壌(27.5億~22億年前)、砕屑物の風化帯(32億年前)、蒸発岩(35億と32億年前)などです。
 これらの鉱物のできる条件は、酸化鉄(FeO、Fe2O3)と珪酸(SiO2)、大気、海での平衡関係で考えることができます。成分で考えると、FeO-Fe2O3-SiO2-CO2-H2O系となります。このような系で、二酸化酸素の大気分圧を見積もるのに重要になるいくつか鉱物があります。表層の環境において、菱鉄鉱(りょうてっこう、sidereite、FeCO3)ができるか、できないか。あるいは鉄に富む層状珪酸塩ができるか、できないか。これらの形成条件が大気の状態を反映しています。
 検討の結果から導きだされた大気の二酸化炭素の分圧は、暗い太陽を補うには不十分であることがわかっています。ロージングらは、新たな試みとして、縞状鉄鉱層に着目しました。
 太古代末(20億年前ころ)に縞状鉄鉱層が大量に形成されています。鉄の酸化物としては、赤鉄鉱(hematite、Fe2O3)や磁鉄鉱(magnetite、Fe3O4)が形成されています。縞状鉄鉱層の磁鉄鉱に着目して、上のような系での鉱物の沈殿条件から、大気中の二酸化炭素の分圧を見積もると、現在の大気の3倍程度にしかなりませんでした。大量に二酸化炭素があったとは考えられないとしています。
 メタンもせいぜい二酸化炭素程度の分圧しかなかったと見積もられました。アンモニアも大気中では不安定であったと考えられています。ロージングらが新たに検討した縞状鉄鉱層からすると、どうも過去の大気の成分では、温室効果を充分起こせるほど多くはなかったようです。これは、古土壌などの見積りなどの先行研究と同じ結果になりました。二酸化炭素の分圧では暗い太陽を補えない、という証拠が新たに付け加わったことになります。
 現在の70から100倍ほどの二酸化炭素が必要となるのに、せいぜい3倍程度しか期待できないということです。では、冷たい地球を温めるにはどうするかというと、アルベドの値を低くするしかないようです。それは、次回としましょう。

・晴れない春・
北海道は、なかなかいい天気になりません。
朝、晴れたと思っても、午後には曇ったり、
朝曇って昼晴れて、夕方には雨と
移ろいやすい天気です。
なかなか気がはれません。
桜の季節は終わりそうですが、
なかなか春らしい陽気がきません。
春より前に夏がくるかもしれませんね。

・対処法・
大学には、20歳前後の若者が集まります。
日本のある世代における
その地域の平均的な若者が
ピックアップされているのかといえば、
必ずしもそうではありません。
大学へは入試をくぐり抜けて入学しますので、
学力的にある範囲が設定されます。
私立大学ともなれば、
授業料による保護者の経済力にも
ある一定の範囲が設定されます。
それらの範囲は時期、社会情勢によって変化してきます。
それらの変動を考慮に入れても、
この数年やはり大学生の属性は
変化してきているように見えます。
その変化は、なによるものでしょうか。
私の所属する学科が新設で
1期生から順番にみてきているので
その変動が見えやすのかもしれません。
不景気という経済的影響なのかもしれません。
全入時代による変化、大学のブランド力、
競争力などの変化かもしれません。
たとえ原因を見つけても
対処法が見つかることはありません。
教員は、ただただ精一杯、真摯に
学生に向かい合うことしかなにのでしょう。
この対処法は、今も昔も同じはずです。

2011年5月12日木曜日

3_95 アルベド:暗い太陽2

 太陽が今より昔のほうが暗かった「暗い太陽のパラドックス」は、二酸化炭素の温室効果で説明できると考えられてきました。その考えに対して、新しい提案が昨年なされました。その論文を中心に紹介しましょう。

 恒星の核融合理論からは、太陽は今より暗かったことになる、ということを前回紹介しました。地球誕生の頃は、今の70%ほどの明るさだと見積もられます。その論理に従えば、地球では、平均気温が氷点下になっていたはずです。ところが、地表は氷点下になることなく、常に液体の水である海が存在していた証拠があります。この矛盾は「暗い太陽のパラドクス」(faint young Sun paradox)と呼ばれ、セーガンとミューレンが最初に提唱したものです。
 彼らは、地球の大気中に含まれていた二酸化炭素やメタンによる温室効果ガスの働きによって、そのパラドクスは解決すると考えていました。
 地球の堆積岩には、いろいろな時代に大量の石灰岩が形成されています。石灰岩のすべてを気体にして大気に加えると、地球初期にあったとされる二酸化炭素量に匹敵するほどになります。パラドクス回避の原理は簡単で、時代ごとに形成された石灰岩分の二酸化炭素を大気に戻でばいいことになります。時間経過の順で見れば、太陽の明るさが増すにしたがって、二酸化炭素が大気から取り除かれていくことになります。太陽が明るくなるとともに(温度が上がる効果)、地球では温室効果が減少していく(温度を下げる効果)ことになります。これが上手くバランスをとりながら起こると、「暗い太陽のパラドクス」が解け、すべてが丸く収まるようなモデルです。
 つじつまが合うモデルですが、分かっていないことがらが、いろいろあります。地球の表面の温度(平均気温)がどうして決まっていくかという問題です。太陽からのエネルギー、地球表層での太陽光の反射能、大気の温室効果などが重要な要因になります。これらの要因がわからない限り、「暗い太陽のパラドックス」が完全には解決しないことになります。
 温室効果についても、いろいろが問題がありそうです。二酸化炭素には温室効果がありますが、地球の平均気温を決定する要因としてどの程度かは、まだ科学的には定量化されていない問題です。地球温暖化問題で、温暖化の予測は完了しているはずなのに、まだいろいろ議論されています。気候は非常に複雑なメカニズムで、まだ科学は完全に解明はしていません。
 また、反射能とは、一般にはアルベド(albedo)と呼ばれています。太陽からの入射エネルギーと地球からの反射エネルギーの比率のことで、0から1の値や%で表します。太陽から入ってくる入射エネルギーは一定で、観測可能な値です。出ていくエネルギーは、アルベドによって決まります。アルベドが大きければ、太陽からのエネルギーが地球を温めることなく外に出ていき、小さければ、地球を温めるために使われることになります。
 月のアルベドは7%ほどです。もし地球に大気も海洋もなく月と同じように大地がむき出しだと、昼間は岩石が熱を吸収し、夜にその熱を一気に放出することになるはずです。すごく寒暖の差の激しい地表となります。もし、地球が完全に雲に覆われていれば、アルベドは70%程度になります。氷だけの世界だったらアルベドは80%なります。ほとんどエネルギーは地球を温めないことになります。
 現在の地球の平均的なアルベド40%程度で、岩石と氷の間の値となっています。この値は、雲や氷の状態によって変動します。また、過去のアルベドは未知の部分が多くなります。なぜなら、二酸化炭素が主体の大気の気候がどのようなものであったのかは、その中で水蒸気の果たす役割などが、まだ充分解明されていません。ですから、アルベドの時間変遷もよく分かっていません。
 このような問題に、2010年にロージング(M. T. Rosing)らは挑戦しました。彼らの研究の結果、暗い太陽のパラドクスを解くのに、温暖化効果ガスの効果はいらないと考えました。その詳細は、次回とします。

・桜・
北国でも、桜が咲き始めてきました。
朝夕、天気が悪いことが多く、
桜を青空のもとで見ることがなかなかできません。
桜には、青空が似合います。
今週末あたりが、見頃になりそうです。
天気がよければ、花見に行きたのですが、
どうなるでしょうか。

・地デジ化・
ゴールデンウィークは結局、自宅で過ごしました。
その間に、自宅の地デジ化を進めました。
その流れで、衛星放送もスカパーHDに変更することにしました。
衛星アンテナはスカパーの無料キャンペーンを利用しました。
現在は、お試し期間でスカパーHDの方を視聴しています。
いくいくはスカパーe2からHDに変更する予定です。
それにともなって、アンテナやビデオ、
DVDなどの装置の配線もいろいろいじくりました。
また古いアナログビデオをDVD化をしました。
ゴールデンウィークは、家族のものだけですが、
10数本のビデオをDVD化しました。
昔買ったビデオテープのDVD化は違法ですのでしていません。
まあ、テレビで何度も放映してますから、
いまさらビデオテープを見ることもないと思いますが。

2011年5月5日木曜日

3_94 核融合:暗い太陽1

 太陽の輝きは、私たちに大いなる恵を与えてくれます。無尽蔵のエネルギー源として、そのありがたさを私たちは享受しています。太陽の恩恵を当たり前に思い、利用しています。その仕組みには、まだわからないこともあります。そんな太陽のエネルギーの仕組みをみていきましょう。

 太陽は、核融合で輝いています。太陽内で起こっている核融合は、水素(H)原子からヘリウム(He)原子に変わることです。水素原子4つが融合して、ヘリウム原子1個ができます。水素原子4個分の合計の重さ(正確には質量)より、ヘリウム1個のほうが小さくなっています。この質量の差が、核融合によって発生するエネルギーのもとになります。
 その量は、
  E=mc^2(2乗という表現)
という有名な式で表されます。この式は、エッセイでも何度も取り上げています(実は前回も)が、アインシュタインが導いたもので、Eはエネルギー、mは質量、cは光速(定数)です。つまり、質量がエネルギーに変換されるときは、cの2乗倍になることを意味しています。核融合では、膨大なエネルギーが生産されることになります。
 核融合は、太陽の中心部の水素とヘリウムの比率によって、その進み具合が変化します。核融合が進行していくと、太陽の中心部では、水素原子が減っていき、ヘリウム原子が増えてきていきます。すると、圧力が上がっていき、核融合が促進され、よりエネルギーの放出がされることになります。
 核融合の効率の変化は、恒星の内部に関する理論から導かれていることです。この理論の意味するところは、太陽は時間経過と共に輝きを増すということです。言い換えると、太陽は今より昔のほうが暗かったことになります。
 太陽の輝きの変化は、周辺の惑星に大きな影響を与えます。太陽からのエネルギーの変化は、周囲の惑星の表面温度を大きく左右します。私たちは、曇の日は寒く、晴れの日は温かいことを経験していますから、この原理は体感できるはずです。
 地球に降り注ぐ太陽光は、昔は今より少なかったのです。その量は時間と共に変化しますが、現在と比べて地球の初期の頃は、25~30%少なかったと見積もられています。それほど太陽光が少ないと、地球表層の平均気温は、0℃を下回ると見積もられます。
 ところが、地球の表層には常に液体の水(海)が存在していたことが、地質学的証拠があります。河川で運ばれ海底で堆積する地層が、どの時代からも見つかっています。つまり、地表の平均気温は常に0℃より高かったことになります。
 この太陽の理論と地質学的事実の矛盾を、「暗い太陽のパラドックス」(faint young Sun paradox)と呼ばれています。このパラドックスの解釈に新しい考えが昨年提示されました。それは、次回としましょう。

・どこか変・
我が家は、このゴールデンウィークに
地デジ化を進めています。
子供たちがよくみるブラウン管テレビを
先日、液晶テレビに変え、地デジ化しました。
古いテレビはまだ映るのですが廃棄しました。
古いアナログ波用ビデオが2台あります。
カセット付きのビデオ(DVDも内蔵)は再生専用として必要です。
ハードディスク(DVDも内蔵)のビデオをどうするか迷っています。
本当はテレビもビデオもまだ使えるのですが、
新しいものと入れ替えることになりました。
もったいないですね。
この消費が美徳、消費誘導の仕組、どこか変ですね。

・無理せずに・
北海道は5月2日から3日にかけて寒冷前線が過ぎ、
雨風とともに、気温が低下しました。
ミゾレがふったところもあります。
急な寒さに体調を崩しそうです。
次男は、寒さのなか外で遊びすぎて、熱を出しました。
長い連休ですが、
無理をしないようにしないといけませんね。