2011年3月10日木曜日

4_101 トゥファ3:西予2月

 トゥファは過去の気候変化を記録している可能性があることがわかりました。地球の古気候解析の素材となるということです。人里離れた名もない沢に、密かに成長するトゥファから、そんなグローバルな展開が起こりました。地元の人にも余り知らていないエピソードです。

 狩野さんらの論文で、中津川のトゥファに関するものは2編あります。最初の1999年の論文は、前回まで説明した季節変化の話でした。2000年の論文では、今回紹介するトゥファの形態や内部組織から考察しています。
 トゥファは、二酸化炭素の脱ガスしたところで沈殿をします。脱ガスが起こりやすいのは、流れの段差のある部分、つまり小さな滝のところです。トゥファは、年間数mmから1cmの厚さで成長します。
 狩野さんらは、トゥファの形態や組織から、5つのタイプに区分されています。その内部組織は、水流と生物に支配されているそうです。その生物とは、トゥファの表面に生息しているフィラメント状のシアノバクテリアのことです。シアノバクテリアの付近で、多数の穴の開いた(多孔質といいます)炭酸カルシウムの沈殿が起こります。
 このシアノバクテリアは、水が枯れることのないところで、よく成長しています。水が枯れるようなところは、あまり生育に適していません。ですから、成育には暖かく、水量の多い夏が適しています。夏には、明るい色の比較的緻密な層を形成します。一方冬には成長が悪く、暗色の隙間の多い層が形成されます。それらの明と暗、密と粗の違いが「年輪」として、縞模様を形成しています。
 トゥファの成長は、炭酸カルシュウムの沈殿の条件に左右されます。それは、降水量と気温が重要な条件となということです。トゥファの年輪は、木の年輪のように季節の様子を記録していることになります。ですから、過去のトゥファを研究することによって、過去の気候を読み解こることが可能となるはずです。そのようなデータを集積していけば、地球の古環境が復元できるかもしれません。
 トゥファの成長速度は、鍾乳石などよりずっと早く、記録媒体としてはいい素材といえます。狩野さんたちは、中津川のトゥファから転進して、各地のトゥファを精力的に研究され、古気候の復元を進められています。
 西予市城川町中津川の人里離れた名もない沢に、密かに成長するトゥファ。それに着目して、こつこつと研究された結果、過去の全地球的な気候変動を読み取る媒体にもなることが突き止められました。面白い研究成果の話がそこにはありました。長くなりましたが、これが、西予市のまつわる、余り知られていないエピソードでした。

・シアノバクテリア・
シアノバクテリアは、光合成をする微生物で、
地球の酸素形成に重要な役割を果たしたと考えられています。
シアノバクテリアは、生育条件を反映して盛衰します。
炭酸カルシウムなどの沈殿物を形成をしながらの成長であれば、
彼らの成長の盛衰が記録として保存されます。
そのようなシアノバクテリアの盛衰が、
今回の成果をもたらしました。
トゥファという素材で
どこまで古いものが手に入るかが、
次なる飛躍のためには重要になりそうです。

・天気次第・
3月になって、天気がよければ出歩くことにしています。
まだ寒い日もありますが、
残された時間を大切に使おうと思っています。
天気になる日を祈りながら日々を過ごします。
天気の悪い日は、データ整理と論文作成という
いつもの淡々として日々を過ごします。