2010年12月30日木曜日

4_97 秩父帯:西予12月

 いよいよ今年も終わりとなります。これが今年最後のエッセイです。いろいろ12月中にいろいろやりたいことがあったのですが、やり残しがいろいろでてきそうです。今回は、やり残しの原因となった、西予の地質図にまつわる話をしようと思っています。

 12月になって西予市の地質図をデジタルで作成しました。今後の印刷も考えてA3版カラーで作成しました。地質図は、以前、講演会用に新たにつくったものがあったのですが、大雑把過ぎたのですが、時間切れで充分な検討をせずに終わりました。まあ、一回の講演会用なのでそれで仕方がないと思っていました。
 このたび、別のグループからまた講演を依頼され、1月にする予定となりました。ですから、今回は、やり残した感のある地質図をより詳細にして作成しようと考え、12月中旬に作業を始めした。
 参照していた地質調査所の最新の地質図は、付加体のモデルに従ってまとめられています。なかなかよくできているのですが、西予市では、その区分が混乱しています。また、区分や構造線が従来の考えとは違っていることもわかってきました。さらに、新しい造山運動モデルが提唱されたことによって、いくつか検討をしなければならないこともでてきました。それをまとめていこうと思い立ち、地質図の作成をはじめたのですが、実は、これが結構大変でした。
 西予市には、秩父(ちちぶ)帯とよばれる堆積岩を中心とする岩石が広く分布しています。秩父帯の北に御荷鉾(みかぶ)構造帯、南に四万十(しまんと)帯がほんの少しですが市内に分布しています。西予市の境界より少し広めに地質図は作成しますので、北側には三波川(さんばがわ)変成帯が入ります。
 この三波川変成帯が、四国の大歩危(おおぼけ)の地域の研究で、原岩や変成作用の時代に違いがみつかり、従来の三波川変成帯を「厳密な意味での三波川変成帯」と新しい時代の「四万十変成帯」に二分しょうようと提案されています。
 「厳密な意味での三波川変成帯」は、原岩の形成年代が1億4000万~1億3000万年前で、変成作用のピークの年代が1億2000万~1億1000万年前です。一方、「四万十変成帯」は、新しいもので、原岩の形成年代が9000万~8000万年前で、変成作用のピークの年代が8000万~6000万年前となります。この「四万十変成帯」の年代は、四万十帯北帯の付加体の年代と重複するもので、同じ起源であると考えれます。
 そして、より北の方では、それぞれの造山運動に対応する火成岩類の対応もされています。
 西予市の北方には「四万十変成帯」と「三波川変成帯」が分布することになりそうです。できればそれを区分して図示しようと考えてました。
 秩父帯の堆積岩は、いくつかの付加体で形成されたと考えられています。そして、秩父帯の中には、黒瀬川構造帯と呼ばれる岩石が点在します。西予市では、東(野村、城川付近)には黒瀬川構造帯の岩石があり、中央部(宇和付近)で見えなくなり、西端(三瓶の海岸付近)でまた少しだけ分布しています。
 黒瀬川構造帯は、古い時代の大陸(オルドビス紀からデボン紀)を構成していた黒瀬川変成岩(寺野変成岩類)や深成岩類(三滝花崗岩類)、またその大陸の斜面で形成された海成の地層(シルル紀からデボン紀、ペルム紀)が、ペルム紀に形成されたメランジュの中にあります。それを地図上で区分する必要がありますが、西方の小さな岩体ではどうも混乱しているようです。それを整理する必要があります。
 黒瀬川構造帯の北には、秩父帯北帯があり、前期から後期ジュラ紀の付加体やメランジュで、その中には古生代のチャートや石灰岩、玄武岩など海底でできた岩石類(海洋底層序と呼ばれています)が、異質岩塊として含まれています。
 黒瀬川構造帯の南は、秩父帯南帯があり、後期ジュラ紀から前期白亜紀の付加体です。その中には、ペルム紀から前期白亜紀の海洋底層序が含まれています。
 ところが、黒瀬川構造帯が西予市の中央部でいったんなくなります。秩父帯の北帯と南帯の境界をどこにするかが問題となり、従来の考えと新しい地質図では違っています。それをどう判断するかが問題となります。
 こんなことを12月中ごろから悩んでいます。まあ、これもまとめれば、重要な成果となるはずと考えて、師走の最後の日々を過ごしています。

・集中・
12月中旬に論文を投稿したあと、
やりたいことがあったのですが、
地質図を作成していたり、
今回の件で、いろいろ調べたりしていて、
なかなか時間が取れませんでした。
でもこれが、なかなか面白い作業でもありました。
また、まとまれば、1年間お世話になっている
西予市にもお返しができることになります。
それもあって来年1月までは、
この件に集中しようと考えています。

・師走気分・
いよいよ今年最後のエッセイとなりました。
毎年、大晦日は物理的な境界ではなく
人為的な境界なので
あまりあわてないと思っていましたが、
ところが、単身赴任ですと、
暮れから正月には帰省することになりますので、
少々、日常とは違って、
師走気分、正月気分にもなりそうです。
ただ、このエッセイは、帰省前に作成して、
予約していますので、
これからその気分を味わうことになるのですが。
よいお年をお迎えください。