2010年10月7日木曜日

1_100 日本最古の鉱物

 最古シリーズです。もともとシリーズにするつもりはなかったのですが、たまたまこの夏、最古の報告が連続してありました。そんなシリーズで、今回は日本最古の鉱物です。

 日本最古の鉱物の報告が行われたのは、今年の8月下旬(科博では20日に発表、ニュースでは25日)でした。一番古いデータは、37億5000万年前という年代でした。
 以前紹介しましたが、最古の地層は、茨城県常陸太田市に分布している約5億1100万年前のものでした。最古の岩石は、岐阜県七宗町のジュラ紀の堆積岩の中に含まれている礫です。「上麻生(かみあそう)礫岩」と呼ばれる層には、片麻岩の礫があり、その礫は以前から古いと考えられており、年代測定をした結果、約20億年前のものであることが判明しました。
 そして、今回、富山県の黒部流域から飛騨山脈にかけての宇奈月地域の花崗岩のジルコンの年代でした。手法は、SHRIMPによるU-Pbによる年代測定です。SHRIMPによるU年代測定は、このエッセイでは何度も紹介しているお馴染みのもので、確立された手法です。
 宇奈月地域は、複雑な履歴の岩石が混在している地域で、日本でも古い岩石が産出する地域と考えられていました。古い岩石の多くは、変成作用を受けている岩石のために年代を決めることが難しくなっています。
 今回の報告は、堀江憲路さん(研究当初は学術振興会特別研究員で、現在は国立極地研究所に所属)を中心にして、国立極地研究所と広島大学、国立科学博物館の共同研究によってなされました。試料は、2006年に採取した花崗岩でした。
 今回見つかったジルコンは、新しいと考えられている岩石の中から得られたものでした。この地域には、広く流紋岩質変成岩が分布し、その年代は約2億5800万年前であることがわかっています。それより新しいと考えられている花崗岩があります。それはマグマと周りの岩石との関係からわかります。流紋岩質変成岩を割って入っている(貫入するという)マグマが固まった岩石があれば、その岩石のほうが後からできたことがわかります。今回みつかったのは、そのような新しく貫入した花崗岩でした。貫入した岩石より、貫入された岩石のほうが新しいのです。矛盾した年代となります。
 しかし、この花崗岩がなかなか複雑のなのです。2つの花崗岩からジルコンを取り出し年代測定をしたところ、それぞれ2億2900±800万年前と2億5600±200万年前の年代が得られました。これらは、貫入関係とは矛盾しない年代でした。このような新しい年代を示すジルコンは、角ばった結晶だったのですが、見かけの違った丸いジルコンも、花崗岩には多数含まれていました。このようなジルコンから、古い年代が得られたのです。
 もしこのような年代が、まだ確立されていない手法や、誤差の大きな方法であれば、測定ミスではないかという判断がなされたり、いろいろな議論をわき起こすことになったはずです。しかし、今回の年代は、すでに確立された手法で、だれもが疑うことのないものでした。
 データが正しいとすると、解釈をどう考えるか。つまり、成因です。それは次回としましょう。

・季節を感じる時間・
一週間、愛媛を留守にしていました。
すると秋も深まり、
朝夕はかなり涼しくなっていました。
各地の秋を見に出かけたいものですが、
なかなかそうもできないのがつらいです。
でも、今が一番時間を作れるときなのだから
そんな季節を感じる時間を持ちたいと思います。

・人物写真・
最近写真をとっていても、
景色や露頭、自然だけでなく、
ついつい人物をいれたり、
人物を中心に置いて撮ることもあります。
人の表情はなかなか興味深いものがあります。
視線の向きのちょっとした違いで、
表情が大きく変化します。
ただ、人の写真は、肖像権があり、
表に出すことができないのが残念ですが、
コレクションとしています。
あまり、度が過ぎると危ない人になりそうなので、
ほどほどにしていますが。