2010年9月2日木曜日

1_96 He同位体:最古のマントル 2

 最古のマントルというのは、間接的証拠の積み重ねで示されています。でも、間接的証拠でも積み重なると、論理的には完結しなくても、信頼性は上がります。

 最古のマントルされたバフィン島と西グリーンランドの溶岩は、ヘリウムの同位体組成(3He/4He比)が非常に高いことが特徴です。これに、どのような意味があるのでしょうか。
 Heは原子番号が2の希ガスで、同位体(同じ元素だが質量数の違うもの)として、質量数が3と4のものがあります。質量数4のHeが大部分で、3のものはほとんどありません(0.000137%程度)。質量数4のヘリウム(4Heと書く)は放射崩壊(アルファ線のこと)で形成されるものもあるのですが、質量数3のヘリウム(3Heと書く)は、太陽系初期につくられたものです。
 希ガスの性質から、地球初期に起こった脱ガス(大気や海洋の形成)や、現在も続く火山活動によって、地球内部から希ガスは、ほとんどなくなっていると考えられています。実際のマントル由来の岩石には、3Heが少ないことは知られています。ただし、放射性核種の崩壊によって4Heはマントル内で今でも形成されています。
 ですから、バフィン島と西グリーンランドの溶岩に3Heが多いということは、その溶岩のもとととなったマントルは、地球初期以来、ほとんマグマを出すことなく、原始のまま地球内部に存在し続けたということになります。
 さらに、鉛同位体から推定される年代が45.5から44.5億年前と考えてよく、ネオディニウム同位体も原始マントルの値と考えてよいという証拠もあるので、このマントルは、地球初期のものがそのまま残っていると考えられました。これが、「最古の地球マントルの貯蔵庫の生き残りの証拠」の骨子になります。
 残念ながら、直接マントルの岩石の年代や組成が分かったわけでなく、いずれも間接的なものです。いくつかの間接的証拠が同じ結果を示唆しているので、それはもっともらしいと考えられるわけです。このような間接的証拠をいくら積み重ねても、論理的に証明が完結するわけではありません。しかし、説得力は増していくようです。ですから、世界的に権威ある科学雑誌Natureに掲載されたわけです。
 直接的証拠ではないので、それらの証拠のひとつでも、なんらか別の原因で説明可能となったりすると、論理が崩壊する危険性もあります。
 まあ、大きな地球ですから、マグマを今までほとんど出したことがないマントルがあってもいいのかもしれません。しかし、地球は、45億年間も地表にマグマを供給し続けてきました。海洋プレートの海洋底の玄武岩や斑レイ岩は、すべてマグマからできたものです。大陸地殻も花崗岩の一種の火成岩がその一番の構成物となります。ですから、始原マントルが残っているのは、もしかすると奇跡的なのかもしれません。

・山里の初秋・
いよいよ9月になりました。
各地はまだ暑い日が続いているようですが、
私がいる山里は、朝夕は涼しくなり、
虫の音も大きくなってきました。
秋の気配が感じるようになってきました。
昼間は暑いですが、青空の抜けるような蒼が、
秋の色に見えてきます。
ワセの稲は刈り取りがすでに終わっているところもあります。
スーパーでは新米を見かけます。
通常の稲は、やっと花が終わり、実を付け出しました。
山里の秋の始まりでしょうか。

・最古のもの・
最近、「太陽系最古の物質発見」や
「日本最古の鉱物発見」、
「日本最古の地層」というニュースが
立て続けに入ってきました。
それを紹介しようかと考えているのですが、
いずれも文献が手に入りにくいので
紹介できるどうか不安です。
まあ、分かる範囲でお伝えできればと思っています。