2010年7月1日木曜日

5_89 きぼう:日本の宇宙探査4

 今回で日本の宇宙探査のシリーズは終わりとします。最後に日本が今後も継続的に運営し、宇宙飛行士も滞在させていく予定の「きぼう」について紹介します。若田さん、野口さんも「きぼう」を建設作業をしながら、施設で実験するという仕事をされていました。


 「きぼう」は、国際宇宙ステーション(International Space Station、略称ISS)に接続されているモジュールのことです。国際宇宙ステーションには、アメリカ、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関(ESA、11ヶ国加盟)が参加しており、いくつかのモジュールが接続されています。「きぼう」もそのうちの一つで、日本が中心になって実験ができる施設となっています。
 建築は、最初、船内保管室が2008年3月11日に打ち上げられたスペースシャトル「エンデバー」で運ばれました。その後、ロボットアームが取り付けられ、2009年7月に打ち上げられたエンデバーによって船外実験プラットフォームが取り付けられ、基本部分はほぼ完成しました。その後もいくつもの装置が加わっています。
 ISSに最初に長期滞在をしたのは若田光一宇宙飛行士で、2009年3月16日から137日間滞在されました。「きぼう」を完成させての帰還となりました。その後、2009年12月から、野口聡一宇宙飛行士が、ISSに滞在することになります。その滞在期間は、若田さんよりも長く161日間という滞在でした。
 さて、ISSに日本のモジュール「きぼう」がつけられ、日本の宇宙飛行士が滞在しているのは、なぜでしょうか。もちろん長期滞在記録が目的ではありません。ワレリー・ポリャコフ宇宙飛行士がミールで437.7日間という破れそうにない記録があります。
 宇宙に滞在する重要な目的は、宇宙の環境、条件を用いた実験をすることです。さらに、その重要性を市民に理解してもらうための広報や教育活動も重視されています。市民からの実験を一般公募したりしています。
 若田宇宙飛行士の滞在中、面白実験と称したものがなされました。その様子は映像が公開されました。見た方もあると思います。たとえば、宇宙空間で、ラジオ体操ができるか、水鉄砲はどうなる、目薬ができるか、魔法のじゅうたんができるか、腕相撲をするとどうなるか、紙飛行機はどう飛ぶか、などの興味がわきそうな実験もいろいろなされました。いろいろ予測できることもあるのですが、予測できないものもあります。これらは市民からの公募によるもので、教育現場などで利用できるようになっています。今でも、その様子の動画は、インターネットで見ることができます。
 野口さんは、若田さんより研究に徹した作業が多くなっていました。無重量、真空、宇宙線などの条件を利用したり、生命の宇宙空間での影響を調べる実験が各種行われています。重力下ではうまくできない結晶(シリコンなど)を無重力でつくってみたり、宇宙空間の哺乳類やイネの細胞への影響、宇宙飛行士を検体にした人体への影響などの実験がなされました。もちろん広報や教育のための時間も確保はされていましたが。
 今だに一般の人が気軽に宇宙空間に行くことできません。地球を離れられるのは特別な人だけです。このように日本人宇宙飛行士の宇宙滞在や、広報教育活動などのさまざまな努力で、宇宙がかなり身近なものになってきました。そして、今後も日本人宇宙飛行士は、養成は続く、宇宙ステーションでの活動が予定されています。
 さて、野口さんは、6月2日にカザフスタン共和国の草原に無事帰還を果たしました。このニュースは、鳩山総理辞任劇の陰であまり伝わることがありませんでした。残念です。

・訂正・
「はやぶさ」の回で、「イトカワ」が
火星と木星の間の小惑星帯にある
と書きましたが、これは間違いでした。
Tabさんからご指摘を受けました。
「イトカワ」は、小惑星ですが、
火星軌道よりも内側をまわる小惑星群のひとつで、
地球接近小惑星(NEO)と呼ばれているものです。
地球に衝突する危険性のある小惑星です。
「イトカワ」は、もともと小惑星帯でも
太陽に最も近い側をまわっていたものが、
なんらかの原因で、より内側を巡る軌道に
変わったと考えらています。
現在は、地球の公転軌道を横切っています。
地球に近づく可能性もあります。
長い年月の後は、太陽、水星、金星、地球、火星のいずれかに
衝突して終わるだろうと考えられています。
そんなNEOの様子を調べるのも
「はやぶさ」の目的であったようです。
JAXAの報道によると、
サンプルコンテナの開封が24日から始まったとのことです。
その作業に1週間ほどかかるようです。
この開封作業、装置もなかなか面白いのですが、
別の機会にしましょう。

・宇宙の話題・
今回のシリーズで紹介したように、
日本が関係する宇宙の話題が、
いくつも連続してありました。
他にも、山崎宇宙飛行士のISSへの15日の滞在や、
陸域観測技術衛星「だいち」の話題、
準天頂衛星「みちびき」など、
いろいろな話題があります。
それぞれのミッションで得られた成果は
報道の多い少ないに左右されませんが、
その重要性が市民に伝えられる機会が減ったのは事実です。
報道はそれなりにされているので、
興味のある人は知っていたでしょうが、
やはり報道量が少ないようです。
政治問題が混迷していためでしょうか。
私の現在の情報ソースは、テレビ、ラジオでないので
興味のある情報をインターネットでは追いかけることになります。
そのため、ついついここで紹介したような話題に目が行きました。
皆さんはどうだったでしょうか。
ぜひJAXAのホームページを覗いてみてください。
http://www.jaxa.jp/