2010年1月21日木曜日

3_82 因果関係:黒点5

 黒点シリーズは、無黒点日がここ数年つづいているということに端を発しています。無黒点について調べていくこと、太陽の活動の変動だけでなく、地球の気候変動にも繋がる可能性があることもがわかってきました。そこには、地球の将来の気候予測をするための注意点が、見えてきました。


 太陽の黒点数は、太陽活動のひとつの指標のはずです。太陽活動は、地球の気候に重要な作用を及ぼしているはずです。なぜなら、太陽は地表を温めているのは確かだからです。
 ところが、不思議なことに、現在の気候シミュレーションからは、太陽エネルギーのわずかな変化が、地球に気候変動を起こさないとされてきました。もし、今までの気候シミュレーションに今まで加味されていなかった作用があったとしたら、新たにシミュレーションをしなおさなければなりません。
 最近注目さている説があります。それも、少々複雑なのですが、太陽の活動と地球の気候変動とには、関連があるという考えです。
 地球には、太陽から来るプラズマ(電子がとれた原子核)の流れ(太陽風と呼びます)が降り注いでいます。太陽風は太陽の活動によって変動します。そのほかにも、地球には銀河の他の天体からきた強いプラズマの流れ(銀河風と呼びます)が降り注いでいます。銀河風は変動はあまりなく、常に一定量が四方から降り注いでいます。
 太陽風は、銀河風を弾き飛ばします。すべて弾き飛ばせるわけではなく、銀河風が地球の大気圏に入ってくることがあります。大気圏に入った銀河風は、雲の形成を促すということがわかってきました。これが新しくわかってきた作用です。
 雲は、平均すると地球の50%ほどの面積を覆っています。人工衛星による過去20年間の観測によると、その変動幅は±1.5%程度しかないそうです。雲が1%増えると、気温が1度下がることもわかっています。
 以上のことから、もし太陽の活動が弱まれば、太陽風も弱まり、銀河風が地球に降り注ぎやすくなります。その結果、雲が多く形成されることになります。このメカニズムが働くのなら、長期におよぶ黒点の極小期は、地球の気候変動に影響を与えることになります。
 特異な極小期が、前回述べたように、周期性もしくは繰り返し起こるということがあれば、今後その時期に入ることもありえます。兆候はあるのです。
 さらに加えると、太陽風や銀河風の直撃は、地球の磁場によっても防がれています。その地球磁場が、過去400年間で16%も弱まっていることが分かってきました。磁場が弱まると、銀河風も地球に入りやすくなります。
 以上のようなことは、地球の寒冷化の要因となります。そうすると、現在問題になっている人為による温暖化の効果は、それとは相反する作用が起こっていることなります。もし地球の寒冷化が進行すると、温暖化は寒冷化が緩和するかもしれません。あるいは、寒冷化が強ければ、地球は大きな気候変動期になるかもしれません。
 今まずなすべきことは、太陽の活動周期と気候の周期性の因果関係を、早急に解き明かしていくことでしょう。その結果、寒冷化することが予測されるのならば、対処をしなければなりません。
 寒冷化への対処は、今までの地球温暖化とはまった相反するものとなるでしょう。寒冷化は、今後、食糧難などが人類の生存を脅かす危機がおこるかもしれません。過去の寒冷化は、大飢饉や民族移動、民族紛争、王朝交代など、人類史に残る大きな変化を起こしてきました。少なくとも寒冷化がきたら大変なことになるという心積もりは必要でしょう。
 長い無黒点は、人類にそのような警告を発しているのかもしれません。もしそうなら予兆を見逃がしては、大きな禍根を残すかもしれません。科学的解明が急務でしょう。

・シミュレーション・
今回の黒点シリーズを終わります。
年をまたいだ連載となりました。
地球の気象、気候のメカニズムは複雑です。
気象現象を記述する方程式には
複雑系の振る舞いをするものが含まれています。
ですから、天気予報は
長期になるほど当たりにくくなったり、
エルニーニョなのど異常気象を起こしやすい時期にも
あたりにくくなります。
どんなに高性能のコンピュータでシミュレーションをしても、
その式や初期条件を決めるのは人間です。
式の正当性を確かめるために、
過去の気象に対して計算して、
シミュレーション結果の成否を判定します。
過去の解読を、未来に適用するのです。
すべての条件、因果関係がわかっていればいいのですが、
人智はまだそこまで至っていません。
多くの可能性に配慮することがじゅうようです。
それは多くの科学者の考えを考慮に入れ、
心積もりをしておくことになるのでしょう。