2009年12月17日木曜日

1_88 境界変化:第四紀問題3

 第四紀が再定義されたということは、そこに重要な地質境界が認定されたということです。その境界やその時代を境に地質が大きく変化したということです。第四紀の地質学的変化は、気候変動です。それも寒冷化の進行というのが、第四紀の再定義のキーになりました。

 第四紀が再定義され、ゲラシア期のはじまりの258.8万年前が、第四紀のはじまりとなりました。
 今までも、第四紀のはじまりについては、何度も議論されてきました。境界が設定あるいは変わるということは、地球規模での地質現象が起こったことを意味します。再定義の議論は、地球規模での地質現象が何で、いつか、ということに尽きます。また、第四紀をなくするという提案もありましが、それは、時代区分の階層性を重視し、統一を取るためでした。あるいは、第四紀の境界では重要な地質現象の変化がないという立場でもあります。
 このような議論の根源は、第四紀とはどんな時代であるのかということに至ります。そして、第四紀は現在も続いている時代であるということも考慮しなければなりません。つまり、現在をも定義することになります。
 新生代後半から、地球は寒冷化に向かっていることが知られています。第四紀前後から、繰り返されてきた氷河期は、その象徴でもあります。氷河期によって、大量の氷が大陸に蓄積されると、海水面は下がり、海洋や大気の循環に大きな異変が起こります。氷河期が繰り返し起こると、生物の進化にも大きな影響を与えます。また、氷河期や間氷期に固有の地質現象も起きるでしょう。
 前回も述べましたが、第四紀のはじまりに起こった地質現象として、以下のような現象が挙げていました。深海底の堆積物中の化石(底生有孔虫と呼ばれるもの)の酸素成分の変化(酸素の同位体比が現在の値より大きくなる)、北半球高緯度の地層で氷河漂流堆積物が出現、中国の砂丘堆積(レスと呼ばれる)のはじまりました。他にも、酸素の成分(酸素同位体ステージのMIS103の基底)の変動が大きくなったり、北半球での氷床ができはじめたり、パナマ地峡が閉ざされるなどの事件が起こります。
 これらはいずれも、寒冷化や氷河期がその原因と考えられています。
 南北アメリカ大陸の間にあるパナマあたりで、現在は運河があるように両大陸は陸続きです。しかし、かつては海で分断されて、両大陸が繋がっていないことが分かっています。パナマで、太平洋と大西洋の海水が行き来していたということは、海流、つまり海洋循環が今とは違っていことになります。それが第四紀の始まりに閉じたということになります。約270万年前のパナマ地峡の閉鎖が原因で氷河期を引き起こしたと考える人もいるようですが、氷河期の結果、パナマ地峡が閉じたとも考えられます。
 これら寒冷化という全地球的な現象が、第四紀のはじまりを特徴付けていることになります。これは大きな気候変動だと考え第四紀が再定義されたわけです。
 第四紀は寒冷化の時代と特徴付けられます。第四紀は、さきほどもいいましたが、現在も含む時代です。寒冷化傾向は今も継続しています。非常に長い地質学的な時間スケールでの寒冷化ですが、その気温の変動は激しいことが知られています。
 一番最近の最温暖期は、縄文時代約6000年前です。そのころは、縄文海進と呼ばれ、氷河期の一番海退が激しいころと比べると場所によっては100mも海水準が上がり、現在と比べても3~5m低く、気温では1から2℃ほど高かったことが分かっています。
 最後の氷河期が終わって、6000年前に温暖期のピークをむかえ、その後地球は緩やかに寒冷化に向かっています。これが繰り返されながら、第四紀は寒冷化が進んでいるのです。やがては氷河期が来るかもしれません。
 地球温暖化が危惧されている現在、背景ではこのような寒冷化が地質から読み取れるのです。この第四紀における気候変動の特徴を、忘れないようにしなければなりません。

・風邪・
風邪をひきました。
現在のところ、熱は出ていないので
インフルエンザではないと思いますが、
時々咳が出て鼻水も出ます。
卒業研究の最後の校正段階にはっています。
あと6名分が残されています。
これだけは、どうしても休めない仕事なので、大学に出ています。
これが終わったら医者にいって、2、3日休む予定です。

・科学の進歩・
第四紀の定義が決定されました。
これは、当面、この定義でいくというにすぎないことを
理解しておく必要があります。
今回決定された定義も、
全研究者が納得してるわけではありません。
今まで、第四紀の定義や存在意義については、
何度も議論されてきました。
新しいデータや視座が提示されたら
再度、定義や存在意義に関する議論が沸き起こるでしょう。
でも、これが科学の進歩といえのですが。