2009年2月19日木曜日

1_75 成長のメカニズム:大陸の形成7(2009.02.19)

 いよいよ大陸の形成シリーズも、今回が終わりとなります。最後に、大陸の成長が、なぜ急激に起こるのかを考えていきます。その仮説には、ある鉱物から得られた年代測定の結果が、重要な役割を果たしました。

 原生代がはじまるころ(25億年前)には、現在の2割程度しかなった大陸が、原生代の終わり(5.24億年前)には、現在と同じほどの量にまで成長しました。原生代には、花崗岩の年代から3回(27~25億年前、20~17億年前、13~10億年前)、もしくは川砂のジルコンの年代から4回(28~27億年前、22~21億年前、18~10億年前、7~5億年前)の激しい大陸形成の時期があったことがわかってきました。
 大陸の急激な形成は、大量の花崗岩マグマをつくり出すことになります。列島や大陸地殻を構成する花崗岩マグマは、プレートの沈み込みに伴って形成されます。そのプロセスは少々複雑ですが、以下のようなものであることがわかってきました。
 沈み込むプレートから水や水に溶けやすい成分が、列島の下のマントルに供給されます。供給された水は、列島下のマントルを溶かして、玄武岩マグマをつくります。玄武岩マグマは、すでにある列島地殻下部の玄武岩を溶かしたり、地殻にたまった堆積岩を溶かし、大量の花崗岩マグマをつくります。花崗岩マグマが、そのまま深部で固まれば花崗岩になります。ただし、列島の下では、玄武岩マグマと花崗岩マグマと混じることがよくあり、マグマ混合(マグマミキシングと呼ばれます)が起こると、トーナル岩(あるいは安山岩)マグマが形成されます。トーナル岩とは、大陸地殻や列島の平均的な岩石組成に相当し、大陸地殻そのものといっていいものです。
 このようなメカニズムは、定常的に大陸地殻が形成されていくプロセスを説明しますが、急激な地殻の成長を説明するには、別の何かが起こらなければなりません。その記録が、マントル由来の鉱物から見つかりました。
 ピアソンたちは、その研究結果を2007年にネイチャーという雑誌に報告しまひた。海底から採られたカンラン岩(海洋地殻下のマントル)やオフィオライト(昔の海洋地殻で地上に残されたもの)のカンラン岩に含まれるレニュウム(元素記号Re)に富む白金族の合金からなる鉱物を用いて年代測定(Re-Osの年代測定)をしました。
 このような岩石を用いたのは、海洋地殻がいつ形成されたかを知るためです。もし、大量にそのようなデータを集め、その形成年代にピークがあるようなら、その時期に大量の海洋地殻が形成されたことを意味します。ピークの年代は、それは地球内部から上昇してくる大きな対流(スーパープルームと呼ばれます)があったことを示しています。また、海洋地殻が大量に形成されたということは、それに呼応して沈み込み帯の活動も活発になります。つまり、列島のマグマの活動が激しくなり、大陸地殻がたくさん形成されたということになります。
 ここで示した仮説は、少々複雑なプロセスですが、定常的な大陸成長ではなく、急激な大陸成長を説明できます。
 さて研究の結果、得られた年代はというと、27億年前、19億年前、12億年前に集まりました。これは、花崗岩の年代測定から得られた3回のイベントに対応しています。川砂のジルコンとは時期が違っていますが、大陸急成長のメカニズムを説明する仮説には、それなりの証拠があったことになります。大陸成長は、最終的には地球内部の熱の急激な放出メカニズムとして説明できそうです。
 この一連のシリーズで示したように、大陸の成長の研究は、まだ道半ばです。本当の急成長の時期は、いつなのか。なぜ、そのような熱放出メカニズムがその時期に起こったのか。その時期には必然性はあるのか。などなど、これから解明しなければならない謎は、いっぱいあります。しかし、それも地道に解かれていくことでしょう。

・新たな展開の予感・
大陸の形成のシリーズも今回が終わりです。
少々長くなりましたが、大陸の成長が一様でないことは、
以前から言われていました。
その成長にムラがあることが、明らかになってきました。
平田さんたちの精度のよいデータが
今までの結果と一致しないのは、疑問より、
今後の新しい展開を期待させます。
ですから、他の大陸でのデータが待たれます。
新たなデータが得られたとき、
大陸成長のモデルに展開が生まれそうな予感がします。
平田さんたちの手法は、
大量の試料を処理し、データを出さなければなりません。
並大抵の努力でないことがわかります。
でも、その精度は非常に高いものです。
ぜひ、いい成果が出ることを期待します。

・インフルエンザ・
長男が、今週、インフルエンザB型になりました。
今では、病院にいけば、ほんの10数分で
インフルエンザの判定、またA型かB型かの判別もできます。
家族全員がインフルエンザの予防接種を受けていましたので、
症状も軽く、ほっとしています。
ただし、学校は5、6年生が学年閉鎖となりました。
学年閉鎖といっても、一クラス10数名しかない小さい学校なので、
一般の学校より閉鎖になりやすくなっています。
ところが、他の学校と比べて、児童数も少ないため
感染経路も少ないためでしょうか、罹患率も少なくなります。
実際に、学級閉鎖も他校と比べて多くはありません。
学年閉鎖は、子供が学校に通っている中で
子供のいるクラスが閉鎖になるのは
今回が始めての出来事です。
その分、今年のインフルエンザは、
わが町では、流行しているということなのでしょう。