2008年9月4日木曜日

5_76 温室効果はどこへ?:炭素8

 今回で、地表の炭素のシリーズは終わりです。炭素として一番話題になっているのは、地球温暖化問題です。それに対する見方も、長い地球の歴史を見ていくと、本当なのかという疑問も出てきます。最後にその話題を紹介しましょう。

 地球の歴史をみていくと、大気中の二酸化炭素は、海を通じてイオンから沈殿し、プレートテクトニクスによって沈殿物を石灰岩として陸地に蓄積されていきました。長い時間、この物理化学的変化を続けてきましたが、生物が、その二酸化炭素の固化システムに加わると、固化のスピードは速くなりました。つまり、古生代以降、大気中の二酸化炭素は、急速に減少していきました。
 ところが、二酸化炭素による温室効果の減少は、それほどではなかったようです。古生代以降をみても、中生代は南極に植物繁茂し、恐竜もいたことがわかっています。この当時も、二酸化炭素の減少は続いていたはずなのに、古生代より、暖かかったのです。
 大気中の二酸化炭素の量は、創世ころは現在の50倍から100倍ほどあったものが、現在では大気の量の0.04%しかないのです。カンブリア紀から現在まで、二酸化炭素の固化は、急速に進んでいるはずです。なのに地球は、極寒の星にならず、15℃ほどを保っています。不思議な気がします。
 大気中の二酸化炭素の量が、5桁から6桁(倍ではなく桁です)少なくなりました。今取りざたされている二酸化炭素の温室効果を考えるなら、過去に遡るほど、地球は灼熱の状態になったはずです。ところが、地球は38億年前から現在まで、海が存在できる条件を持っていました。
 多様な条件が複雑に絡み合っているために、このような恒常性(ホメオスタシスと呼ばれます)を持った環境が維持されてきたのだと思います。
 地球の平均気温は、太陽から放射エネルギーと、地球の大気の温室効果によって決まります。温室効果は時間とともに減少しています。つまり、寒くなろうとしています。しかし、地球の平均気温はどうもある一定の範囲に収まっているらしいのです。これは、なぜでしょう。
 そのためには、温室効果を打ち消す作用が必要です。その一番の候補は、太陽の放射の変化です。太陽では、水素がヘリウムになるという核融合をおこなっています。その核融合エネルギーが放射され、地球を暖めています。太陽の核融合は、時間とともに、水素が減りヘリウムが増えることになります。ヘリウム1個に対して、水素は4個必要になります。つまり、太陽内の原子の数は、見かけ上減ってきます。すると核融合の効率が上がり、時間とともに太陽はより強く輝くことになります。その結果、地球への放射も時間とともに増えていきます。
 時間の経過とともに、太陽が明るくなる(暖かくなる)につれて、地球の大気中の二酸化炭素の減少(冷たくなる)していきます。その両方の効果が、地球の温度を一定にする作用として働いたようです。
 ただし、この太陽の核融合の変化は、数十億年単位のゆっくりとした変化です。ですから、数千万や億年単位の古生代以降の温度変化は、地球環境の独自の変動と見るべきかもしれません。
 最近(地質学的に見たときの)地球の気温変化を大雑把に見ていくと、新生代中期以降、気温は減少を続けています。これこそが、大気の二酸化炭素を固体に変えてきた結果かなのかもしれません。もしそうだとすると、地球は、数千万から数百万年の単位でみると、寒冷化していると見るべきなのかも知れません。このように長い時間スケールでみると、地球の環境も違った見え方になります。そんな視点も重要なのではないでしょうか。

・地球温暖化問題・
炭素の地表での循環を考えるとき、
どうしても地球温暖化問題にたどり着きます。
このシリーズの書き始めも実はその話題にするつもりでした。
私は、地質学を学んだためでしょうか、
ついつい地球の歴史と現在の温暖化問題を比べてしまいます。
すると、地球はたいていの環境変化は
すべて経験済みのことに見えてしまいます。
そして、その理論は本当なのだろうかと考えてしまいます。
もし本当だとしても、それは、人類の内の、
文明人の内の、先進国人たちだけが
困って問題しているのではないかと考えてしまいます。
こんなこというと、異端的な意見になりますが、
以前からそういう気がしてしかたがありません。
最近になって地質学者でも同様の発言をする人もでてきました。
しかし、そんな問題も時間が
やがて結論を出してくれるでしょう。
たぶん私が生きている内に結論が出ると思います。
その日まで、私がこの意見を、持ち続けているかどうかの方が
問題かもしれませんね。

・調査行・
9月5日から1週間、能登から飛騨へ出かけます。
その話を、前回のコラムで書いたら、Kawさんから
逆だけど同じコースを行ったという連絡をいただきました。
確かに、松本から、飛騨、能登へというコースをいかれたようです。
ただ、私は、小松空港から能登、飛騨、岐阜、
そして福井へとめぐるコースです。
たぶん観光バスなら、2泊3日くらいでめぐりそうの旅程です。
行きたいところはいろいろあるのですが、
私のんびりと、そして見たい場所はじっくりと時間をかけるので、
あまり多くのところは回れません。
せいぜい、午前午後に一箇所ずつまわる程度です。
そのため、コースが長いと時間もかかります。
私は、このコースを6泊7日かけてめぐります。