2008年8月14日木曜日

5_73 固体の二酸化炭素:炭素5

 かつて地球には大量の二酸化炭素がありました。そして、今の大気は、二酸化炭素がほんの少ししかありません。二酸化炭素は一体どこに行ったのでしょうか。

 前回のエッセイで紹介したように、地球には、かつて二酸化炭素を主成分とする大気がありました。それも、今の大気の50倍から100倍ほどの量の主成分でした。今の大気とは、比べものにならない、異なった成分構成になっていました。では、その大量の二酸化炭素はどこに行ったのでしょうか。
 可能性としては、地球から、二酸化炭素が宇宙空間に飛び出していったというものがあります。この可能性は否定できます。地球の隣の惑星である金星の大気を見るとわかります。
 金星は地球と似た大きさの惑星です。大気を引きつける引力の強さは、両惑星で似ています。金星の大気は、地球の900倍近い大気があります。ですから、地球も金星でやや大きいですから、大気を逃がさずにすんだはずです。
 また、二酸化炭素が、選択的に宇宙空間に抜けていく可能性もあります。この可能性も、否定できます。窒素(分子量28)や水蒸気(18)などの昔の大気の成分と比べて、二酸化炭素(44)は大きくなっています。ですから、一番抜けにくい成分だといえます。
 火星の大気からも、それがわかります。火星は、地球の100分の1くらいしか大気の量がありません。火星の大気は非常に薄いのですが、その主成分は二酸化炭素となっています。ですから、二酸化炭素だけが選択的に抜けたということは、なさそうです。
 では、昔の地球の大気の主成分の二酸化炭素は、いったいどこへいったのでしょうか。宇宙空間に抜けたわけではないので、地球のどこかにあるはずです。地球の環境では二酸化炭素は気体ですから、気体のままでは大気に留まります。水(海)にも少し溶けますが、その量はほんの少しに過ぎません。ですから、二酸化炭素がなんらかの化学変化をして、固体の化合物として、どこかにあると考えるしかなさそうです。
 地球の表面で二酸化炭素を含む固体の化合物は、石灰岩が代表です。石灰岩とは、方解石という鉱物からできています。方解石は、炭酸カルシウム(CaCO3)という化合物で、炭酸が主成分となっています。炭酸は、二酸化炭素が水に溶けたときにできる化合物です。
 石灰岩は、日本列島では、ごく普通にみかける岩石です。日本列島でだけではありません。大陸の各地で見つかります。石灰岩のできた時代は、最近の新生代のものから、太古代のものまで、いろいろな時代のものがあり、そしてそれらは大量に見つかります。
 大気中の二酸化炭素が、石灰岩になれば、コンパクトに、そして長期間安定に固体として保存できます。また、いろいろな時代に石灰岩が形成されているということは、大気中の二酸化炭素が、固体化される作用が地球表層で定常的に働いていたことを物語っています。
 実は、かつての地球には、50倍から100倍の大気があったという見積もりは、地殻の石灰岩から推定した値だったのです。では、気体の二酸化炭素が固体の石灰岩に変化するプロセスは、どのようなものなのでしょうか。それは、次回としましょう。

・論文のネタ・
7月の体調不良でした。
本当にまいりました。
まだ、咳が抜けていませんが、
普段どおりの生活ができるようになりました。
来週までは、校務がありますので、
その間はなかなか別の仕事ができないのですが、
8月下旬から、しばらく手作業をともなう仕事を
していこうと考えています。
まずは、標本の整理と、
昨年の調査のデータ整理です。
延び延びになっていたものを、
なんとかこなして、次の論文のネタに
しようと考えています。

・家族旅行・
北海道は8月上旬は、快晴の日が2週間も続きました。
暑い日でした。
8月上旬に家族旅行をしましたが、
快晴の日が続き、予定通りの旅行ができました。
快晴でしたが、乾燥していたので、日陰は涼しかったです。
また、標高の高いところにいたので、
暑さに耐えられないという思いはしなくてすみました。
家族旅行でしたが、標本をなにもとりませんでした。
しかし、山を一つ登ることができました。
それが、収穫でした。