2008年7月10日木曜日

5_68 かぐやが描く地図

 「かぐや」は日本の月探査衛星です。その「かぐや」が、また快挙を成し遂げました。七夕にちなんで「かぐや」の成果を紹介しましょう。

 「かぐや」は、月をめぐる日本の人工衛星です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、2007年9月14日に打ち上げたもので、正式にはSELENE(SELenological and ENgineering Explorer)と呼ばれています。科学と技術における目的がそれぞれあります。科学的な目的は、月の起源と進化を明らかにすることです。また、技術的な目的は、月周回軌道へ人工衛星をもっていき、軌道や姿勢を制御技術を確かめることです。技術的な目的は一応の成功をみていますが、現在は、科学的な目的が重要になってきます。
 「かぐや」は一つの人工衛星のように思われていますが、実は2つの子衛星を従えています。主衛星の「かぐや」は、高度約100kmの両極を通るような円軌道で着くを回るのですが、より高い楕円軌道を周回する2機の子衛星「おきな」と「おうな」から構成されます。もちろん、「かぐや」同様、かぐや姫の話からこれらの衛星の名称はつけられています。
 「おきな」は、高度2400kmまで離れる楕円軌道で、月の裏側の重力場計測のため、地上局と主衛星との間の通信を中継をするリレー衛星としての役割があります。「おうな」は、高度800kmまで離れる楕円軌道にあり、電波を送信することで、月の周りの重力場を測ります。
 「かぐや」については、以前このエッセイでも紹介したのですが、2007年11月7日付けで、日本の月周回衛星の「かぐや」がとったハイビジョン撮影が成功したという話題です。
 4月には、ハイビジョンカメラによる「満地球の出」がテレビで放映され、多くの人の関心を集めました。その映像と前後して、月の全球の地形図が公開されていたのですが、あまり話題になりませんでした。
 「かぐや」に搭載されたレーダ高度計で測定されたものです。その精度は、5mの標高差を見分けられるものです。これまで月の地形図で一番高精度のものは、1994年に行われたアメリカのクレメンタイン月探査の写真測量などによって得られた約27万点の標高基準点のものでした。これは2005年にアメリカの地質調査所(USGS)が公表したもので、ULCN2005(Unified Lunar Control Network 2005)と呼ばれているものです。
 「かぐや」の観測で、3月末までに600万点以上の観測データが集められています。今回の発表されたものは、2週間分の観測データ、約100万点が処理されたものですが、その精度の変化は一目瞭然です。月の地形図は、観測が続けば、さらに精度は上がっていくはずです。
 「かぐや」による探査は、アポロ計画以来の大規模な月の研究が行われれていることになります。そして、日本は今や、惑星や衛星探査においても、予算規模や投入人材は、アポロ計画と比べれば明らかに劣りますが、技術力や科学的成果では、アポロ計画に匹敵しうるほどの実力を持つようになったのです。
 日本の宇宙観測からは、これからも、なかなか目が離せませんね。

・七夕・
今週は七夕なので、月にふさわしい話題を紹介しました。
北海道、いや日本中がサミットでわいていますが、
本来の七夕を味わうには、月を見なければなりません。
いまや月を見る目は、地球からだけでなく、
月にすぐ近くまでに達していています。
それも日本の技術によってです。
スペースシャトルの宇宙の話題が盛り上がりましたが、
科学者たちは、自分に与えられた任務をこつこつと果たしています。
そんな科学者が挙げた成果で、
あまり日の目を見ないものを紹介することにしました。
なお、月の地形図は、
http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2008/0410.shtml
にありますので、興味のある方は、
覗かれてみてはいかがでしょうか。。

・風邪・
先週末から風邪を引いたようで、
咳も出て、少々熱っぽい気もします。
まあ、でも、動き回る元気はあります。
講義は可能な限りおこないます。
講義を休むと補講をしなければなりません。
すると学生に迷惑をかけることになります。
動ける限り、講義を続けるつもりです。
まあ、あまりひどいと講義はできませんので、
ほどほどにしますが。