2008年5月22日木曜日

6_69 地質の日:地学教育について

 5月10日は地質の日です。あまり馴染みがない記念日かもしれません。昨年に決まったばかりものだから仕方がありません。今回は、地質の日にちなんで、地学教育について考えました。

 ゴールデンウィーク明けの週末となった5月10日の土曜日は、皆さんどう過ごされたでしょうか。私は、実習がある講義日で、1日中大学にいました。そのために、特別なことは何もしませんでした。
 なぜ、5月10日を取り上げたのかというと、実はこの日が、「地質の日」とされていたからです。5月10日は、日本の地質学の黎明期に大いなる貢献をしたライマンらが、200万分の1の北海道の地質図である「日本蝦夷地質要略之図」を作成したのが、明治9(1876)年5月10日だったのです。また、明治11(1878)年5月10日には、地質調査をする組織(内務省地理局地質課)ができた日でもあります。それらにちなんで、「地質の日」が定められました。
 日本地質学会など10の地質に関係する組織や学会が発起人となって、「地質の日」が定められました。「地質の日」は、発起人らによって2007年3月13日に決まったものでした。今年は2回目ですが、「地質の日」を記念して行事に取り組まれたのは、今回が最初となります。いくつかの推進委員会となっている組織で、記念行事が行われました。私の住む北海道でも、いくつか行事があったのですが、私の都合で参加することはできませんでした。今後は、参加していきたいと考えています。
 私は、科学教育に携わるものとして、科学の中でも地質学が重要な学問だと思っています。地質学は教科でいえば、地学に含まれます。しかし、地学の重要性を、市民が理解する機会が少なくなっていのが現状です。
 現在の公教育では、小学校と中学校では理科を習います。理科の中には、地質学の内容が含まれています。しかし、高校の理科(物理、生物、化学、地学、基礎理科、理科総合A、B)で、地質学の内容を含んでいる基礎理科、理科総合B、特に地学をとった人は、それほど多くありません。理系に進学する人で、地学をとる人は少ないはずです。高校時代に地学を学ばなかった人が、大学の教養科目として、地学や地球科学などの地質学に関連する科目を履修しなければ、そのまま卒業することになります。彼らは、高校以降地質学を学ばずに社会人となるわけです。このような社会人は、結構な比率を占めるのではないでしょうか。
 だとすると、社会人には、地質学の知識が中学校の理科どまりで、それもだいぶ以前のことですから、地質学の内容がほとんど記憶に残っていない人もかなりの比率でいることになります。
 地質学が社会でそれほど重要性がなく、教養の一つにするぎないのであれば、問題はありません。ところが、地質学は、建築をするときの地盤調査、環境アセス調査、自然保護と開発で発生する問題、エコマーク、ISOの環境基準、地球環境、自然開発など、深くかかわりがあります。もし、それらのうちのどれかを調べ、評価する立場になった時、地質学の知識が中学生レベルでは、少々不安ではないでしょうか。そして、本当に評価できるのでしょうか。そのような不安があります。
 もちろん、地質学に関わらないで社会生活を営める人も多数いることでしょう。しかし、やがて彼らが親になり、子供を持つことになります。その子供たちは、親自身が日常の地質学的体験が少なく、野外における地質学的素材に対して馴染みがないのですから、子供に親以上に興味を持たせることは、なかなか困難ではないでしょうか。すると、世代を経るに連れて、地質学離れが拡大していくことになるでしょう。同様のことは、地学全体や理科、科学でも起こっています。
 その対策の一つとして、「地質の日」があると考えられます。ですから、皆さんも、来年からは「地質の日」に行われるイベントを、利用してはいかがでしょうか。

・学習指導要領・
高校での理科のうち理科基礎、理科総合A、Bのうちから
1科目以上を履修すべきものと
文部科学省の学習指導要領にはあります。
ですから、これらが履修されていないと
社会科で問題になった未履修となります。
多分、今はそんな未履修はないでしょうから、
理科総合Aをとった人以外は、地質学の内容を学んだことになります。
私の案としては、基礎理科は重要な科目だと思います。
基礎理科を内容的にもさらに充実させて、
すべての高校1年生が学ぶべき
必修の教科にしたほうがいいのではないでしょうか。
文系は2、3年生で理科総合AやBを学ぶべきではないでしょうか。
また、理系は、2年生、3年生から
物理、化学、生物、地学のAやBを学んでいけばいいのではないでしょうか。
選択科目にするのはいいのですが、
学んだ者と学んでない者に差がありすぎるような気がします。
高校は選択の多い学びができるようになっていますが、
学ぶ意欲の強い学生には有効ですが、
意欲の少ない学生には、手抜きをする余地を
与えるのではないでしょうか。
そのような選択科目が個人の個性や特性に
反映されていればいいのですが、
高校卒業時に、大きな学力差となっているようでは困ります。
選択と必修、自由と統一、個性化と平均化など、
両立できればいいのですが、
うまくいかなければ、問題が顕在化します。
教育とは難しいものですね。

・バランスとホット・
このエッセイの「地球の人と」のセクションでは、
今年の最初、1月3日に書いて以来、久しぶりの更新となりました。
万遍なく書くつもりではいるのですが、
ついつい、興味があるのところは、
シリーズ化して何回も書いてしまうので、片寄ってしまいます。
現在、「地球の歴史」のセクションが一番遅れをとっています。
でもまあ、ホットな話題をお届けする方が重要なので、
全体のバランスを考えながらも、
面白そうなものを書いていきたいと思っています。