2007年12月6日木曜日

3_62 大陸地殻の形成:伊豆・小笠原諸島から

 JAMSTECは、伊豆・小笠原諸島で大陸地殻の形成の証拠を発見した、と報告しました。今回は、そのニュースを紹介しましょう。


 大陸と海洋の地殻をつくっている岩石は、違っています。海洋地殻をつくっている玄武岩類は、海底の中央海嶺でできるメカニズムが解明されています。ところが、身近であるはずの大陸地殻が、実はどのようにしてできてきたかは、よく分かっていませんでした。
 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、大陸地殻のでき方が伊豆・小笠原諸島の海洋調査からわかってきたというニュースを発表しました。この報告は、2007年11月1日のGeologyという雑誌に掲載されました。
 大陸地殻が花崗岩の仲間(トーナル岩と呼ばれる岩石)や安山岩からできていることは、大陸を構成している岩石を調べることでわかります。では、このような大陸を構成している岩石が、いつ、どこで、どのようにしてできてきたかは、仮説はいろいろあったのですが、よくわかっていませんでした。地震波を利用した海底調査から、今回、実証的にわかってきたのです。
 日本列島の研究から、列島のようなところ(島弧と呼ばれています)が、大陸の地殻の形成場であると、推定されていました。しかし、日本列島のような発達した列島(成熟した島弧と呼ばれます)は、構造が複雑でなからずしも、大陸の形成場であるという充分な確証が得られていませんでした。
 もし大陸の形成現場を探るなら、できたての列島(未成熟島弧と呼ばれます)を探ればいいわけです。その候補として、伊豆・小笠原諸島がいいとされていました。伊豆・小笠原諸島は、島がいくつもあるものの、大部分は水中にあるため、海底の調査が必要となります。
 JAMSTECは、海洋調査船「かいよう」を用いて、213箇所、相模湾から北硫黄島北方までの1000kmの長さ(側線といいます)にわたって、海底地震計を設置しました。2004年7月と2005年7月に、1ヶ月に渡る調査を2回おこないました。
 その方法は、海面で人工地震(エアガンで音波を海底に向けて発振する方法)を起こし、海底下約35kmまでの地殻を調べるというものです。この観測によって、地殻とマントルの地質構造を調べることができました。
 結果は、予想通り、大陸地殻を構成している岩石が、伊豆・小笠原諸島に、南北に直線状にあることがわかりました。そして、火山のある地殻が厚くなっていることから、大陸地殻をつくるメカニズムは、火山が原動力であることがわかってきました。
 実は、科学の成果の発表だけで話は終わらず、この成果は領土問や漁業権などと密接な関係があることがうかがわれます。
 海岸線から12海里を領海、24海里を接続水域、200海里(約370km)を排他的経済水域と定められています。そして200海里までを大陸棚と定義しています。大陸棚では、天然資源(漁業や海底資源)の開発の主権と、構築物の設置・利用の管轄権が認められています。また、上記の原則以外にも、地理的条件等によっては、海洋法によって大陸棚を延長することができます。
 もし、伊豆・小笠原諸島に大陸棚の存在が科学的に示されたら、排他的経済水域の定義に、根拠を与えることになります。
 今回の調査は、北硫黄島の北方海底でままで、ここより南の海域は調査されていません。いってみれば、排他的経済水域内での調査です。ただ、海底地形図を見ていると、伊豆・小笠原諸島にみられる高まりと似たものが、南に続いています。もし、そこまで大陸地殻の生成が確認できれば、大陸棚を主張する根拠になります。伊豆・小笠原諸島の南側は、アメリカのマリアナと排他的経済水域が接しています。今のところアメリカとの領土問題はありませんが、今後のことを考えると領土を確固たるものにすることは重要となります。
 多くの科学は、国の税金を用いてなされています。今まで科学者は、国よりも科学の成果を優先していたのですが、これからは成果が与える影響も考慮しなければならないようです。

・成果への配慮・
JAMSTECのプレスリリースには、
研究成果とともに、背景として
「大陸的な地殻の存在や日本領土からの連続性などの地質学的知見は、
大陸棚延伸を主張する上で重要な科学的根拠となります(以下略)」
という記述がなされています。
これは、研究成果が、領土や排他的経済水域を考える根拠となることを
意識していることを物語っています。
今までこのような成果に対し、
科学者は無頓着に公表してきた気がします。
しかし、これからは、配慮を持って
成果の公表をしなければならない時代なのかもしれません。

・師走・
いよいよ師走となりました。
皆さんも、年末や来年のことが気にされていることでしょう。
忘年会もはじまってくるでしょう。
私も金曜日に最初の忘年会があり、
今週末には小学校の餅つき大会があります。
大学の講義も終盤になってきました。
今年中にしなければならないこと、
したかったことなどが、頭をよぎります。
なにかとあわただしくなってきました。
そういえば、年賀状も買ったままになっています。
やるべきことを、順番にこなしていきましょうか。