2007年11月22日木曜日

5_67 かぐやが見たもの:日本の月探査

 2007年11月7日付けで、日本の月周回衛星の「かぐや」がとったハイビジョン撮影が成功して公開されました。今回は月へ向かったかぐやの話題です。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2007年9月14日に種子島宇宙センターから「かぐや」は打ち上げました。かぐやは、日本としては初めての本格的な月探査となります。この月探査計画は「SELENE(セレーネ:SELenological and ENgineering Explorer)」と呼ばれています。SELENEには、「月の科学観測と基盤技術の検証を行う探査機」という意味を込められているそうです。
 アメリカ合衆国のアポロ計画の有人月面探査は、1969年7月16日のアポロ11号が月の静かの海に着陸したときから幕を開け、1972年12月7日のアポロ17号が晴れの海から離陸で終わりました。アポロ計画最後のミッションには、ハリソン・シュミットが初めて地質学者として月面を調査をして、アポロ計画が幕を閉じました。私も同じ地質学者として、地質学者も月を調査できる時代が来たことを、よかったと思えます。アポロ計画は、人類史上の輝かしい記録として、またアポロ宇宙飛行士の月面での光景は多くの人の記憶に残りました。
 アポロ計画で、月に関する非常に多くの情報を、人類は得ることができました。それから早35年近くたちました。しかし、未だに月の起源や進化について、まだわからないことが多々あります。
 今回のかぐやの目的は、月の起源と進化を解明することです。そのために、月の表面の元素組成、鉱物組成、地形、表面付近の地下構造、磁気異常、重力場の観測を全域にわたって行います。これらの情報から月の起源に迫ろうというものです。他にも、SELENEという名前のとおり、基盤技術として将来の月の利用のためのさまざまな観測が行なわれます。
 私が興味のある観測では、月面の元素分析をする装置(蛍光X線分光計)と、鉱物分布を詳細に調べるマルチバンドイメージャとスぺクトルプロファイラ、そして地形や表層構造を調べる地形カメラによるものです。
 蛍光X線分光計やスぺクトルプロファイラはまだ動いていませんが、マルチバンドイメージャ(20mの空間分解能)と地形カメラ(10m)は、もう動作が確認され、最初の画像が公開されています。従来はクレメンタインという探査機による100mの解像度でした。これからはその10倍の解像度となります。地形カメラは、カメラ2台でステレオ撮影しますので、地球並み解像度を持つ月面の立体画像を手にすることができるはずです。
 かぐやは、目的の違う2つの子衛星「おきな」と「おうな」を持っています。2つの子衛星はすでに分離に成功しています。
 そして10月31日にはハイビジョン撮影がなされました。また2007年11月7日には、「地球の出」や「地球の入り」が撮影されました。その様子は、NHKで特別番組が組まれて、その鮮明な画像が紹介されました。ハイビジョンは高解像度の動画ですが、CCDの有効画素数が1920×1080ピクセルで200万画素の解像度を持ちます。ですから、静止画として充分見るに耐えるものとなっています。まるで玉手箱のように、つぎつぎと新しい成果がでてきます。いよいよ初期運用完了後、10ヶ月間の観測がはじまります。さてさて、新しい技術に基づいた観測で、月の起源に決着を見るでしょうか。楽しみです。
 20世紀の惑星探査は、アメリカや旧ソビエトが中心でした。しかし、21世紀になって、日本も各種の月探査機を飛ばし、実際データを取れるようになりました。日本の宇宙探査技術は、「はやぶさ」による小惑星「はやかわ」の試料を持って帰るという技術など、目覚しいものがあります。今後も、空から目が放せませんね。

・メッセージ・
以前、この月探査機の名前の募集がありました。
私の応募しようと思いましたが、
いい名称を思いつかず断念しました。
なんと名前の募集には、11596件の応募があり、
1701名がかぐやで応募したようです。
応募者の中から種子島宇宙センターでの
SELENEの打上げへ招待というのがあって、魅力を感じました。
また、「かぐや」にとりつけるプレートへの
メッセージも募集されました。
多くの人のメッセージと名前を刻んだ
プレートがかぐやには取り付けられています。
その数なんと41万人分です。
メッセージは世界中から集められました。
多分このメッセージはだれも見れないものでしょう。
しかし、このようなことに精力を使ってくれる科学者がいるのが
なんとなくうれしい気がすのは私だけでしょうか。

・冬・
北海道は今週になって冷え込んでいます。
まるで、真冬のように積雪があり吹雪にもなりました。
根雪にはまだ早いので、すぐに溶けるでしょうが、
一気に冬になってしまいました。
北海道の秋は、本当に短く、あっという間でした。