2007年9月20日木曜日

5_66 かなたの星まで6:VERA

 この「かなたの星まで」のシリーズも今回で終わりです。最後として、日本が取り組んでいる銀河内の星を正確に測るVERAというプロジェクトを紹介しましょう。

 VERAという、銀河系ある天体の3次元の立体地図を作るという日本の研究プロジェクトがあります。
 私たちの銀河は、教科書にもイラストがあり、もう立体的な構造までわかっているのに、いまさら何をするのかと思われる方もいることでしょう。しかし、この「かなたの星まで」というシリーズを読まれてきた方は、星までの距離を正確に測ることが、非常に困難であることがわかっているので、この計画の重要性がわかるのではないでしょうか。
 地球からの距離が正確にわかっているのは、実は、地球近傍だけなのです。私たちは、奥行きの情報のない状態で、銀河の全体像を推定しているにすぎないのです。銀河の規模で考えると、奥行き、つまり距離の情報が、まだまだ不足している状態なのです。
 すばる望遠鏡は、大気のゆらぎをレーザーを用いた人工ガイド星によって光学望遠鏡の回折限界に近い70ミリ秒角までの精度を達成しています。ヒッパルコス衛星は、大気のゆらぎのない宇宙で、半径1,000パーセクの範囲(3260光年)にある星の年周視差を、1ミリ秒角の精度の観測しました。
 しかし、銀河は広く、約10万光年もの直径があるので、上記の技術をもっていしても、私たちは銀河を、少ししか解明していないのです。
 ところが、まったく違った原理で星を観測する手法があります。それは、VLBIというものです。VLBIは超長基線電波干渉法と呼ばれるもので、電波を用いた観測方法です。正確に一致した時間に、別の地点の望遠鏡で同じ天体を観測します。同じ天体を同じ時刻で別の地点で観測したデータを合わせることによって、仮想的に一つの望遠鏡として扱うことができます。つまり、離れた観測点の距離が直径となった望遠鏡と同じ解像度を持つことになります。ですから、非常の高い解像度を得ることができます。
 日本の国立天文台を中心として、VLBIをより高度にしたVERAという観測が行われています。VERAはVLBIの原理で観測されます。VERAは、岩手県奥州市、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4ヶ所に設置された直径20mの電波望遠鏡で同時に観測されています。
 さらに、VERAでは「2ビーム」望遠鏡という手法を世界で初めて用いて観測されています。「2ビーム」望遠鏡とは、2つの天体を同時に観測するものです。1つの天体だけを観測すると、以前にもいいましたが、大気のゆらぎの影響を受けます。地上で観測する限り、2つの天体でも同じように大気のゆらぎの影響を受けます。しかし、2つの天体の観測データを同時に観測すると、共通する大気のゆらぎの成分を見つけ出して、そのデータを除くことが可能になります。これは、すばる望遠鏡と似た原理を用いています。そのため非常に精度の良い観測データを得ることができます。
 VERAの精度は、10マイクロ秒角です。10マイクロ秒角とは、ヒッパルコス衛星の約100倍の精度に当たります。この精度があれば、銀河系内の天体の年周視差が検出できます。もちろんこれは、世界最高の精度となります。
 VERAは2003年から観測がはじめられ、2007年7月11日には、オリオン座の方向にあるS269(シャープレス269)という星が、1万7250±750光年にあるという結果が報告されました。これは、ヒッパルコス衛星の観測した天体より、5倍も遠い天体でした。その年周視差は189±8マイクロ秒角で、これまでに測定された最小ものでした。
 VERAは、いいこと尽くめのようですが、実はこの手法で観測できるのは、強い電波を出す天体(メーザー源と呼ばれています)が主となります。メーザー源は、銀河系内で1000個ほど見つかっています。その星を10年から15年かけて観測していくというプロジェクトなのです。
 メーザー源の多くは、生まれたばかりの若い星や年老いた星だと考えられています。ですから、銀河の起源や星の進化も同時に解明していくことになのでしょう。

・真実・
VERAとは、VLBI Exploration of Radio Astrometryを略したものです。
またVERAは、ラテン語で「真実」を意味するそうです。
10マイクロ秒角という精度をいいましたが、
ピンとこないと思います。
その精度は、月面上におかれた1円玉を
地球から見分ける精度です。
このとんでもない精度で、
銀河の「真実」が見えるのでしょうか。

・自由時間・
四国の調査から帰ってきました。
台風のため、出発が予定より1日ずれましたが、
予定通り日程を組めました。
しかし、北海道も今年の夏は暑かったのですが
もう涼しくなっていたので、体が緩んでいました。
しかし、四国はまだ、夏の暑さがあり、参りました。
汗をいっぱいかきました。
水分もいっぱい取りました。
4日ほどの野外調査だったのです、
体が慣れてきた頃に、調査が終わりました。
もう少しいたかったのですが、
私もいろいろ仕事を抱えていますので、
なかなか思うようにいきません。
もっと、自由になる時間が欲しいものです。